この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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154.役者の才能。

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「‥へえ、テイナー君が‥そういうタイプには見えなかったですが‥
 恋は人を変えるってことですかね? 」
 困惑した顔で先生が言った。
 
 なんだそりゃ、どんな仕事だよ。
 
 とか、聞かない。
 だって、それ程親しくない。

 鼻っから「こいつは失敗するだろう」って決めつけるのもおかしい。
 それは‥失礼だ。
 だって、ロナウは(あんなだけど)貴族だし。

 ‥貴族だから、失敗しても親が何とかしてくれるんじゃね? 
 って平民は思ってしまう。
 貴族の内情や「ホントのところ」なんて知らないし、知ろうとも思わない。
 だって、
 関係ないし。
 そう‥関わり合いになりたくないじゃない。

「無礼な! 」
 って言われて‥目をつけられても困る。
 もう、生徒と学生って関係ではない訳だし、関係ないし‥。
 先生として面倒見も悪くないって自負してるけど‥そこは線を引いて置かないといけない。
 
 自分は「皆の」先生だから。

「どんな仕事だ? 」
 って聞いたのは、ミューラーだった。
 こっちは
  
 どうせ、くだらない仕事だろう。失敗するのは目に見えてる。
 今のうちに「それは無理だ」って教えてあげた方が親切だ。そして、ベネットさんも目を覚ますだろう。
 
 いかにこいつが間抜けで頼りなく‥私の方がずっと頼りがいがある男だって!

 っていう、下心が透けて見えてる表情だ‥。
「ええと‥ミューラー君だっけ? ‥僕は失礼ながら君とそんなに親しくなかったように記憶しているんだけど‥」
 困惑したような「作り笑顔」でロナウが言った。
 困惑した顔、ではない、「困惑したような顔」だ。
 ここで、こんな表情が出る辺り、ロナウも貴族なんだなって‥ってコリンは思った。(← あくまでコリンの偏見)

 心臓が強い。‥冷静だ。

 悔しいけど‥。こういうのって「そういう教育受けて来たから」出来るってとこもあるよね。やっぱり、ああ見えても‥貴族なんだよね‥。平民の僕は勿論そんな教育受けてないから腹立ったらブチ切れるし(← コリンが短気なだけ)、動揺したら‥全部顔に出ちゃう。(それは教育云々ではなくコリンの性格。同じ平民でもシークもアンバーも「そんな感じ」ではない)

「そ‥そういうこと言ってるんじゃない。
 僕は、君が婚約者だといったベネットさんと親しかったんだ。将来結婚したいとも思ってた! ‥っだから、みすみす彼女が不幸になるって分かってて、君の馬鹿な行動をそのままにしておけないんだ! 事業? 今まで働いてきたこともない君が‥しかも、長男じゃないから領主教育を受けて来た訳じゃないよね? それに‥起業を考えているのなら、学院(※ 花嫁修業的なティストの強い女学院と商人になる為の知識を中心に教える学院がある。こっちは魔法は教えない。ミューラー君が言っているのは商人の為の学院のことだろう)に行って知識を得るべきではないか? それか、どこかに働きに行ってノウハウを得るとか‥
 兎に角、そんなふわ~とした考えで‥! 婚約者を困らせるのは止めるんだ! (ってか、こんないい加減なやつとの婚約はさっさと解消するんだ! ベネットさん!! )」
 ミューラーが顔を真っ赤にして言った。
 怒ってる、凄く。

 こいつも貴族なのに‥貴族も怒るんだな。

 コリンはぼんやりとそう思った。
 二三点間違えてるところはあるけど、こいつなかなかいい奴かも? だって、フタバちゃんの事心配してるんだよね? ‥もしかして、ロナウのことも心配してるのかな??

 因みに

 間違えてる点一点目。
 ロナウは別に商人になるわけでは無い。
 二点目(きっとこっちの方が重要)
 ‥お前が勝手にフタバちゃんの事好きってだけだよね? フタバちゃんはロナウを選んだんだよね? ‥フタバちゃんのことは‥お前には関係なくない? 好きな女が不幸になるなんて嫌だ! とか‥気持ち分からんでもないが、それはフタバちゃんにいうべきことじゃないか? 「こいつより俺の方が君のことを幸せにできる! 」って‥。
 でも、フタバちゃんに言わないってことは‥フタバちゃんが自分の事選ばないだろうって分かってるってことじゃない? だから、ロナウに八つ当たりしちゃった‥的な?

 ‥いい奴撤回、しょうもない奴。

 でも、まあ。
 そう思うのは一般的、かな~。

「僕は店を開いて商売をしようって言ってるんじゃない。とある「これから売れるであろう」商品の仲買をするんだ。
 その商品は、とても希少で、入手が困難。そして、入手ルートが確定されていないし、入手が困難な商品なんだ。
 一般的に出回るような商品じゃないんだ。
 だけど、僕はこの商品は「必要としている人間」にはとても必要なものであると考えている。
 僕の考えている仕事は「必要としている人間」にその商品を確実に届ける仕事だ。
 それも、安心安全に、だ。
 フタバちゃんのお父さんは顔が広い。そして、彼の知り合いには‥勿論ながら「色んな人」がいる。その中には当たり前に‥僕がこの商品を「必要としている人間」だって「分かる」人間もいるってことだ。
 この新しい事業は‥リスクも多いが、チャンスをものにすれば利益も大きい。
 その為に、僕は使えるものは何でも使いたいんだ。
 フタバちゃんのお父さんの人脈‥。
 僕はそれは事業拡大のチャンス‥「新たな顧客の開発」によい環境‥だって思ってるんだ」
 ロナウは、僕らが考えた「計画案」を噛まずに言った。
 しかも、「自信満々」って顔で。
 ‥意外とロナウは芸達者。
「結婚する前から婚約者の父親の人脈をあてにするなんて‥お前はどうしようもない奴だな! 」
 ミューラー君、怒りがヒートアップ。
 ‥どんどん周りに人が増えて来た。
「どうしたどうした? 喧嘩か? ミューラーとテイナー? ‥それに、コーナーまでいる‥何があったんだ? 」
 って興味津々な野次馬や
「ミューラーとテイナーはベネット嬢を取り合っているらしい。コーナーは‥なんでいるのかはわからん」
 って野次馬に説明する野次馬。
 
 これは観客だ。

 さあ‥ロナウ。この観客を味方につけてみろよ? 

 心の中で「にやり」と悪い笑いを浮かべるコリンとフタバだった。
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