この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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150.新たな関係 (気が利く大人な(自称)ロナウside)

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「ったく、アンバーがややこしいこと考えるから‥。進む話も進まなかったぞ」
 ふぅ‥ってロナウがため息をついた。
 ヤレヤレ呆れたって顔で、アンバーを見る。
 ‥ロナウなりの「気遣い」なんだろうけど、どうもロナウがやるには荷が重い‥ってか、力不足。
 こういうのって、もっと大人な男が「そんなこと気にするんじゃないよ。俺とお前の仲だろ? 」って渋く言うもんだ(イメージ)。勿論その前提に、それまで培ってきた友情とか信頼とかが必要なわけで‥。

 アンバーからの信頼はおろか、その前提の友情も生まれてないロナウが「俺とお前の仲‥」とか言っても‥ねぇ。

 そもそも、ロナウってそういう器じゃないよ。

 ‥ってみんな口には出さないけど、思ってる‥。
 そして、それを口にしない‥口に出来ない位しか、彼らとロナウには「信頼関係」がない。
 そこにあるのは、「呆れ」と「遠慮」だけ‥っていうね? 


 そもそも、ロナウがこんな「暴挙」に出たのは、彼なりの優しさからだった。
 彼も勿論「これって‥僕が言っていい台詞かな? そんなにアンバーと僕って仲良かった? 」って考えた。‥考えはしたけど‥「でも、‥僕以外にこんな台詞を言えるような、気が利いた人間はいない」→ じゃあ、仕方が無い。やろう。ってなったんだ。


(side ロナウ)


 だってね。
 本来ならこういうの、ザッカさんの役目だって思うんだ。
 だって、ここのリーダーじゃん? だけど、ザッカさん、そういうタイプじゃないじゃない? 頼りない‥って言ってるわけじゃ勿論無いよ? そういう‥人のタイプによって慰め方‥フォローの仕方変える、とかいう‥器用なタイプじゃないでしょ? ってこと。
 スパーンと「うじうじすんな、メンドクサイ! 」「水くせぇ! 」「悩むより行動に移す方が早え! 」って感じ一択じゃない? 
 ザッカさんだけじゃない。ここの大人は‥

 女神なナナフルさんは大人だけど、「人には事情もありますからね」って感じだし、(案外冷たいの)
 シークさんは、黙ってスープだし。‥言葉を掛ける‥とか苦手そうだよね。

 揃いも揃って‥ここの大人はこんな感じだ。(いっちゃなんだが、へっぽこだ)

 仲間に気を遣って、だけど仲間には「気を遣わせないように、わざと悪態つく友情」とかいうタイプはここにはいないんだよ。
 (残念なことにね)
 そして、更に残念なことに
 ‥皆その事に気付いてないんだ!

 なら、唯一気付いた僕がそうするしか‥ないでしょ??
 友情とか‥アンバーと僕の間に存在してないのなんてもとより承知だ。だけど‥言わなければいけない。‥男にはそんなときもある。
 いけ‥! 頑張れ‥ロナウ!


 で、冒頭の台詞を言った‥わけだ。
 結果‥彼が思う以上に滑ったんだけど。

「‥うん、そうだな。わるかったね。テイナー君。君には迷惑を掛けたね‥」
 アンバーが眉を寄せて、いかにもすまなそうな顔で‥じっとロナウを見る。
 勿論、演技だ。
「そんな‥アンバー、僕らはそうは思ってないよ。だって、仲間じゃないか。仲間なら何でも思ったことを口にしてくれていい。
 不安に思ったなら、言ってくれたらいい。
 アンバーが僕らのこと考えてくれてるってこと‥僕は分かってるから。
 でも、ごめんね。テイナー君。
 ‥君には迷惑だったね‥君とアンバーは会ったばっかりだから‥」
 ロナウから視線をそらし、こちらも困った様な表情を浮かべるのは、コリン。
 こちらも‥勿論演技だ。
 じっと
 ‥だまって、ロナウに非難するような視線を送るのは、シークだ。
 ‥こっちは、二人の演技に乗っかった演技‥なのかどうか不明だ。


「いや‥あの‥」
 
 思ってたのと、違う。
 なんか、僕だけ‥空気読めない冷たい人みたいになってる‥。

「‥つまらんことしてないで、さっさと会議に戻るぞ。ったく、アンバー、一応そいつ(ロナウ)なりに気を遣ってくれてるって分かってるんだろ? それだのに、コリンまで一緒になって‥。シークは‥何を考えてるのかさっぱりわからんが‥
 まあ、そんな顔でそいつを見るな‥」

 気が利かないと思ってた脳筋・ザッカに気を遣われてしまった‥。
 僕‥要らないことした‥。チェ‥。カッコ悪いの‥。

「はぁーい。ごめんなさ~い。ザッカさん」
 ぺろ、って舌を出して謝るコリン。‥さっきの演技だったの?? 酷いや‥。
 肩をすくめてアンバーが苦笑いする。
 ‥こいつも演技か。
 ロナウがむ‥としてたら、くるっとアンバーがロナウを振り返って
「悪かった。ザッカ。それと‥」

 ありがとな、ロナウ君。
 こそっとアンバーが小声で呟き、ふ、っと微かに「ロナウに向けて」微笑んだ。

 さっき、アンバー‥僕のことロナウって‥。それにさっきの笑顔‥!
 ‥可憐だった‥! 儚くって、綺麗で‥凄く‥
 ばっと顔が真っ赤になったロナウだった。


 惚れっぽいロナウが恋に落ちる一部始終を見ていたフタバは、冷めた視線をロナウに向けながら、

 ‥ロナウ、アンバー様は渡しませんわよ‥。

 嫉妬とは反対の感情を持つのだった。(仮にとはいえフタバはロナウの婚約者なんだけどね‥)
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