この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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134.ナナフルに誓う。

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 フュージ・コールネンド・ネーメル

「ナーメルは、お母様のお家の名前よ。フュージはナーメル家の長男ってわけね」
 母さんが言ってた。
 父親の名前は知らない。
 母さんが
「父様はいないけど、母様にはフュージがいるからいいの」
 って言うから、聞くのは止めた。
 ‥絶対聞かない方がいいやつだろうって思うし。
 
 きっと、父親はろくでもない奴なんだろう。
 だから、そいつのせいで、僕と母さんは家を出て逃げ回る羽目になっているんだろう。
 母さん‥僕の父さんは一体、どんな悪い奴なんだ?
 
 母さんが言わないなら聞かない方がいいんだろう。
 そして、僕は‥そのろくでもない父親のせいで名前を変えさせられて、‥これからは男であることさえも隠して、生きていかなければならなくなった。
 ‥絶対殺してやる。
 母さんを殺した奴は‥
 ナツミさんが殺してくれたらしいってイオさんから聞いた。
 ナツミさんは、この村の用心棒なんだって。
 詳しいことは‥聞かない方がいいって言われたから聞かない。(父さんの正体以上にヤバい気するもんね)

 ナナフル・レイン

 僕の新しい名前。
 ‥全然慣れない。
 呼ばれても、自分の名前だって気がしない。
 女の子の名前‥
 そして、
 平民の名前‥。
 ‥それはいい。
 別に貴族でよかったって思ったことは無い。
 貴族だったから母さんは殺された‥んだろうし。(なんとなく、そんな気がする)
 それに、
 僕は、貴族の子だのに
 魔力がない。
 全く、ほんのちょっとも‥なかったらしい。

「騎士紋‥憧れてたのに‥」
 一人でいるとき、‥ぼそりと呟いてしまっていた。
 ネーメル家は比較的騎士紋が出やすい家だ。
 騎士紋が出やすい家って珍しいんだ。魔術士紋は貴族だったら結構でやすい紋なんだって。
 そのうちひょっこり出るかもしれない。
 魔術士紋は、生まれた時出てなかったらもう出ない紋らしいけど、騎士紋は成長してからでるかもしれない紋ならしい。
 ‥っていっても、10歳位までかな~。
 僕は来年10歳になっちゃうから、ここ1年が勝負の年だな。
 騎士紋を持つ者は、身体が健康で、精神もまた健全で、信念があり、弱き者に優しく‥忠誠心が強い。
 憧れるね。
 理想の男だね! 
 そして‥
 ‥僕からは遠い‥
 自分の細っこい腕と足を見つめる。

 僕がもし、そんな男だったら母さんを守れたんだろう。

 事件直後うなされて目が覚めて、そういって泣いた僕に「イオ母さん」(← そう呼べと言われた)が
「ナナフルはナナフルのままで大丈夫だ。ナナフルのことは私やザッカ‥皆が支えてあげるよ」
 って言って、ザッカも僕の事抱きしめてくれたけど‥
 ‥それって、男として、どう。
 嫁って設定だけど、‥僕は男で女の子じゃない。
 でも、確かにザッカなら「騎士っぽい」な‥。
 いいな‥。
 って思った。

 そして、そんな時遠くの村に働きに行っていたザッカの父さんが帰って来たんだ。長期休暇なんだって。
 見慣れない僕が家にいて料理を手伝っているのを見て首を傾げたザッカの父さん・ダンクさんに、イオ母さんは、
「ザッカの嫁」
 って僕を紹介した。
 傭兵だったっけ、警備兵だったっけなダンクさん。
 イオさん曰く「脳筋で嘘がつけない」そして「単純バカ」ならしいから、
「ホントのことは言わない(言えない)」
 らしい。
「絶対馬鹿正直に言っちゃいそうだし、言わなくても顔に出そう」
 だから。らしい。

「嫁!! 」

 ダンクさん‥信じちゃってるじゃん。
「別嬪だな! 良かったな! ザッカ! ナナフル、俺の事は父さんって呼びなさい! 」
 って言ったんだ。
 いや、‥はい。(ナナフル苦笑い)
「ザッカ! 女の子は大事にして、ちゃんと守ってやるんだぞ! 」
 ザッカ、面白そうな顔するんじゃない。
「はい! 俺は、ナナフルを守って一生愛します! 」
 いい返事するんじゃない。
 そのとき‥
 ザッカの胸元‥? 鎖骨の辺りが光った気がしたんだ。
 ん? ザッカって‥ペンダントとかなんかしてたっけ??
 ‥つい、襟元を覗き込んでしまった。
「ナナフル!? 」
 ザッカが真っ赤になって、ダンクさんにからかわれる。
 鎖骨の下のあたり‥光ったのは、痣だった。
 青い、痣‥。
 あの痣は‥
「騎士紋!! 」
 夢にまで見た‥
 騎士紋だった。

「え!? 」

「ザッカ! それ、絶対騎士紋だよ!! 」
 で、ダンクさんと一緒に村長さんに聞きに行って、騎士紋であることが分った‥ってそれからは大変だった。ザッカは村長さんに剣を習わせてもらったり、(村長に授業料を出してもらう代わりに村長の家で、雑用やなんかをして働かされていた)騎士団に入って稽古に明け暮れたり‥
 会えない間は、ナナフルとは文通をしていたっけ。

 久し振りにあった二人がお互い一目惚れをしたり、‥は、また別のお話。

 ‥これが、ザッカ、騎士紋が出た。の真実。
 ナナフルも結構忘れてたし、ザッカに至っては、結構もっとロマンチックな感じに記憶をねつ造していた。

「ナナフルに誓ったんだ。「きっと幸せにする、この騎士紋に誓って」って」
 いい顔をするザッカに、真っ赤な顔して俯くナナフル。
 キラキラした顔して話を聞くコリン。

 ‥皆幸せそうだから、真相とかもうどうでもいい。
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