この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

文字の大きさ
上 下
126 / 310

126.使いたくないけど、使えるなら使おう「#家の威光__ネームバリュー__#と金」

しおりを挟む
「ま、売ってるなら買いたいって言ったら、来てくれる‥かな? 」
 フタバが何でもないって顔で、とんでもないことを言う。
 何を買いたいって、
 魔薬だ。


 今は引き続き、「これからどうしよう作戦会議」をしている。
「いや、来ないでしょ。自分から動かなきゃ来ないでしょ」
 コリンが「まったくお貴族様は」って顔をする。
 フタバが「お貴族様だよ」と、ふっと‥呆れた様な顔をわざと作って言う。

「‥来るしかないなら来るんじゃない? もしくは、行く価値があるとか、‥何故か行きたくなるとか‥例えば、ロナウで釣る‥とかね? 」

 にやり、とフタバが笑う。

 ロナウの吸引体質 + 来たくなる、何か(餌的な? )。

「‥ロナウにそんな能力あるかな‥あくまで戦闘の際に磁石的な働きをしてるだけだと思うんだけど‥。
それに「来たくなる何か」ってなにさ。考えつかないんだけど」
 コリンがため息をつく。
 
 全く思いつかない。
 ていうか‥思い付きで荒唐無稽なこと言わないで欲しい‥。
 僕らには時間が無いんだから。

 って思う。
 だけど、
 いやいや、やる前から出来ないとかいうのは‥よくない。
 考えてみるいい機会かもしれない。
 と、考え直す。

 悪の組織的にとって「美味しい」と思うこと‥
 それ以前に、
 普通の商店にとって「美味しいこと」を考える。
 悪の組織とはいえ、商売人には違いない。
 そう全く別物ではないだろう‥。
 そういえば、そんな当たり前のことさえ、失念していた。

 お金。販売経路‥大口顧客。後ろ盾。

「まずはいいお客って感じで近付くべきかな‥って思うのよ。
 お役所の人間がタッチしにくくって、大きな商売が出来そうな客。
 そして、立場的に、「自分がそんなものを買うことを誰かに知られたくない立場」ってのを相手方に思わせて‥相手(売り手)を優位に立たせてあげる‥」
 正確には、
 優位に立った気にさせてあげる。
 あくまでも、主導権は握っておかないといけない‥。
 フタバは、小声で思いついたことをそのまま口にする。
 独り言のようで、誰かのツッコミを待っている‥っていうような口調。
「客は、ある程度「身分がある」「世間体が気になる」っていう立場じゃないといけない‥ってことだよね」
 と、コリン。
 ロナウが首を傾げ
「例えば、聖職者、教会の偉いさん‥あとは‥高位貴族? 」
 と続ける。
 そこで、にやりとフタバが笑う。
「高位貴族というより、経済界に影響力やら発言権がある、羽振りのいい貴族じゃない? 」
 口元は笑っているけど、‥顔が怖い。
 怒ってるんじゃない。‥何かよからぬことを企んでいる目をしている。
「もしくは‥それを狙ってる‥いま伸びて来てる‥貴族? ‥その方が、新しい事業に手を出しそうだよね?」
 ふふ、っとナナフルが‥同じ様な表情で微笑み、フタバと顔を見合わせる。
「次世代のホープ的な新鋭の新事業‥まあ、老舗は新しい‥というか危険なことにそう手を出さないよね? お金になるかもしれない、だけど公には出来ないこと
 ‥だけど、資金がないなら問題にもならない‥。
 だから、全くの新鋭で保証も資金もないところでも‥駄目ってことよね? 」
「ええ。そうですわ! ナナフル様! 」
 二人で、悪だくみしてる感が凄い。
 二人とも上品な美人だから‥
 余計に怖い。
 妖艶な美しさ、じゃなくて、貴族っぽい、上品な‥美しさだ。
「でも、そんな貴族どこに‥
 まてよ‥フタバちゃんの養子先‥
 ‥ジェラルナン家はこの頃、伸びて来てる子爵家‥
 ‥もしかして」
 口ごもるナナフルに、にやり、とフタバが微笑む。
「叔父様‥いえ、お義父様に協力していただくわ。
 そうね‥「私の恋人が、ダメもとで新しい事業をしようと考えている」ってところかしら? 」
 ころころと笑いながらフタバが言う。
「フタバちゃんが政略結婚するってこと? 」
 ロナウが眉をしかめる。
 いくら作戦の為とはいえ、好きでも無い人と結婚するなんて‥
 って思ってるんだ。
 そんなの、ダメだ‥って。
 ロナウは結構友達想いなところもあるんだ。
 フタバはキョトンとした顔をする。「政略結婚? ああ‥まあそうよね? 」と呟き、
「正確には、私と結婚したい、子爵である私の義父に認めてもらいたい爵位的に格下の婚約者が、藁にも縋る思いで新事業を考えてる、よ」
 とロナウの「間違い」を訂正した。
「???? 」
 ロナウが首を傾げる。
 あと
 なんだか嫌な予感がする。
 魅力的な「えさ」とロナウの吸引体質‥
 さっきフタバは自分の体質のことを言っていなかったか? 
「婚約者って? 」
 恐る恐るフタバに確認を取る。
「勿論貴方よ? ロナウ」
 ‥やっぱりそういう話なんですね‥。
「え! いや、‥僕は」
 気のせいであってほしかった‥! 
 ロナウが目を逸らす。
 ‥巻き込まれたくない‥。
 いや、君だから嫌だっていうんじゃなくって‥結婚は、ほら、好きな人とするもんだし、神聖なもんだし。
 家族の結びつき‥だから、ね? 勝手に自分たちで決める‥とか良くないし。
 ってか、フタバはちょっと‥。
 ‥でも、あからさまに嫌がるのも失礼かな‥? フタバちゃんも女の子だし‥傷つくよね?? 
 と、苦笑いするロナウに
「何言ってるのよ、ふりよ
 私だって厭よ。フリだって、叔父様に「恋人です」って紹介したいのは、本当に好きな人がいいわ」
 フタバはあからさまに迷惑顔だ。
 ‥こっちは気をつかったのに‥!
「フタバちゃん‥」
 ぶすくれた顔するロナウを一瞥してから、コリンはフタバに心配そうな視線を送る。
 
「フリにしてくれるんでしょ? コリン? で、その時「君とホントに結婚するのは僕だ~! 」って王子様が私を迎えに来てくれたら最高だわ! 」
 フタバはコリンにやさしい笑顔を向け、最後は、アンバーをちらりと見た。
 アンバーが王子様な笑顔を返す。
 ‥慣れたもんだ。多分、こういうの、アンバーの「条件反射」みたいなもんなんだ。

「僕って‥」
 僕の意思とか人権とかそういうのは配慮されたり尊重されたりしないんでしょうか‥。

 こころの中で密かに涙するロナウだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。 ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。 「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」 と、親友の父から衝撃の告白。 なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。 母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。 「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」 と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。 でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。 同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。 「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」 「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」 腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡ ※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

処理中です...