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118.密室の恐怖。
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「‥‥‥」
コリン‥それは‥どうかと思うぞ。
コリン自身もどうかと思っているのだが、勿論ここにいる全員がそう思っている。
だけど、
ザッカたち事務所側の人間としては「そうはいっても、そんなこと言ってられないしな」って気持ちを前面に出したい‥ってのが本心。
フタバは、「‥そこまでして頼みたいことなんだ、この件。まあ、‥今まで一方的に通信を断ってきたコリンが連絡してきた位だからな‥」と、複雑な表情でロナウの出方を見ている‥って状態。
コリンは‥
やるべきことはした。あとは、‥ロナウの気持ち次第だ。
ここで、「いやだ」って言うんだったら‥言っちゃなんだが利用価値はない。
大分ゲスなこと考えていた。
今まで黙って俯いていたロナウが顔を上げ、口を開く。
「え! コリン君が友達になって欲しいって! しかも、僕の事、誰よりも特別って! 凄い進歩じゃない!? 進歩っていうか‥寧ろ、もうすぐ恋人じゃない?! 特別なんだもんね!? 」
‥満面の笑みで。
「え!? 」
ザッカたちが‥ドン引きした。
今までコリンが塩対応過ぎて、普通(?)の対応されただけで、嬉しく感じちゃったりする‥ってことかな!?
塩水飲まされ続けて、初めてもらった真水が美味し~! って感じ?
「え!!? いや、友達だからね?! 僕が恋人として好きなのは、あくまでもシークさんで、これから先もテイナー君の気持ちにはこれっぽっちも応えられないからね?! 」
いやいや、予想外にぐいぐい来られてパニック起こして、折角手渡した真水に塩混ぜちゃってるよコリン??
ここは抑えて!!
ザッカたちの願いは‥
コリンには‥届いてない様だ(← コリンはそれどころじゃない)
‥気持ちも分るけど。
確かに、ここであやふやにしたら、まずい感じするよね‥この子。
危険な感じだわ~。
「友達! 」
焦って友達友達と念を押すコリンに
「まずは友達からってことだね!? 」
うんうん、と弾ける笑顔のロナウ。
‥コリンよ。今までこいつにどんな対応して来たんだ?
「嬉しい」のライン低すぎない!? 低いってか‥ちょっとおかしいってか‥っていうか‥この場合、この子がおかしいのかな?!
スーパーポジティブ過ぎないか?! ‥確かにコリンじゃないけど、「聞いてた!? 」って言いたくなるよね‥。聞いてたとしたら‥嫌なところが耳に入ってない感じ? いや、まさか耳に入ってないってことはないだろうけど‥「今はいいか」って感じにしといた‥のかな?
他のメンバーよりはロナウのこういうところを見慣れているフタバは苦笑いで「いつもの茶番劇」を見ていた。
これ見てると、「頑張ってもどうにもならない片思い」ってある、って感じするよね‥。
正攻法でイケイケゴーゴー。
それ一本。ひねりもない。
コリンに、恋の駆け引きが通用する気もしないから‥情熱で押し切ろう‥って悪い手でもないとは思うんだけど‥でも、それでずっとダメだったんだから、もう少し学べって思うわよね。
押してダメなドアを‥そもそも、引き戸かもしれないドアを‥押して押しても‥開かないならいっそ無理矢理‥って押し壊そう‥とするけど、それも丈夫過ぎて壊れないっていうね?
押してもダメなら、構造の分析、っていうだろうが!!
あと、コリンて‥
あんたは、間違いなく脳筋だ。脳筋はうちの実父で見慣れてるのよ! 暑苦しい。
うちの父様は脳みそだけじゃなく、趣味は筋トレって感じだったから、見た目もマッチョで、暑苦しさ更にドン! だった。兄様たちは見た目だけはほっそりしてたけど(隠れ細マッチョって奴だ)、父様はそういうのじゃなくて、腕なんか私の足程あるんじゃないか‥って感じの、見るからに筋骨隆々って感じだった。
そんな見た目だったから、「私は朴念仁で不器用で‥」ってのが口癖だろうが、周りも「だろうね~」って反応しかなかった。
だって、イメージ「熊」だもん。熊に繊細さや器用さを求める方が無理って奴だ。
でも、ま。貴族である以上。貴族らしい計らい事が苦手でも「朴念仁で不器用」で済ませちゃダメな事案よね。
‥兄様たちはそこまではひどくないであろうことを願いたい。
でも、ま、裏に一物‥っていうのよりずっと好感は持てる‥のは、確かよね。
実質捨てられた‥んだけど、実は父様のこと嫌いじゃない。父様も、多分私のことをホントに嫌ってるわけではないと思う。‥接し方が分からないだけで。
‥多分ね。父様は、普通の貴族として不器用‥とかだけじゃなくって、「愛情に対して」も不器用なんだ。
母様や兄様たちみたいに、自分にストレートに愛情を向けてくれれば好きだってわかるし、好きって気持ちを自分からも返せる。でも、私みたいに「分かりにくい」のは、分からないから‥どうしていいか分からない。でも、嫌いっていうのは違う。でも、好きかと言われたら‥どうなんだろう? ‥ていうか、同じ子供の中で一人だけ、好きじゃないってどうなんだ? 子供に順序なんて付けたらダメだろ? ってそういう‥彼の中の良心だとか常識だとかがね‥こころにひっかかるんだろう。
で、色々考えて分からなくなって‥考えるのを放棄するっていうね?
実際は‥
子供に順序なんてないなんて、神話だ。
合う合わないは、親子だって当たり前にある。それは仕方がない。
だけど、表向きは同じ様に接する。‥大事なのは寧ろ‥そっちだ。
こころの中まで誰も覗かないし、誰も非難しない。
だけど、彼にはそれが出来ないんだろう。
不器用だから‥
だから‥私たちは離れてる方がいい。
‥その方が、父様に嫌われずに済むし、きっとその結果‥いつかいい関係が築ける。
母様は‥よくわかんないけど。
‥嫌われてなければそれでいい。
関心がない‥ってのは分かるけど、せめて嫌われたくないな‥と思う。(流石にね)
親に親としての(凝り固まった)常識や‥無償の愛情を求める程は‥幼くないつもりだ。
私だって将来自分の子供にそんな愛情を持てるかどうか、分からない。
私が得られなかった愛情をせめて自分の子供に‥とは思わない。そういう愛情は、ただの私の自己満足で、単なる押し付けにしかならないだろうから。
「フタバちゃんの攻撃ってどんな感じなの? 空間の切り取り‥って聞いただけじゃあんまりイメージがわかないっていうか‥」
気付いたら(脱線して)また父様のことを考えて、ぼんやりしていたフタバの視界に‥突如入ってきたのは、黒髪赤目のブラックな王子様だった。
‥なんてこともない、アンバーはこの(カオスな)現状を見かねて話を変えようって思ったんだ。
「アンバー様! 」
は~。カッコイイ!!
今まで筋肉マッチョの脳筋のことでいっぱいだった頭にはちょっと刺激が強い‥っ!
眩しい!
麻袋と絹の反物程違う!! (← なんじゃその例え)
人間の価値は顔じゃないけど‥結婚するなら、ごついのより‥出来れば綺麗な方がいい。
顔の良さで、七難まではカバーしなくても、最低でも三難位はカバーできそう。
「顔がいいからいいか~♡♡」
ってなりそう~!
顔って残念ながら、生まれ持ったものだ。頭とか剣の腕とかは、努力次第で、後からなんとか出来るけど(注:なんともならないこともある。実際フタバの剣の腕は、努力したけどなんともならなかった)
だから、可愛い子供が欲しければ、カッコイイ人と‥って方が常識っていうか‥ね?
「あ! そうですよね! 特殊ですよね! お見せしないと分からないですよね! 」
すっくと立ちあがり、
周りに何もない場所(さっきまでコリンたちが修行してた場所)に案内され、移動する。
では‥
すう、と息を吸い込む。
「マーク! カット! ア~ンド フローズン! 」
標的は、ぽつりと地面に置かれた小さなリンゴだ。
「マーク」で、切り取る場所‥リンゴの周りの地面を印付けして、「カット」で周りの空間ごと切り取って、丁度透明なボールの様なものを作り、風魔法でリンゴの入ったそのボールを持ち上げる。「フローズン」の呪文でそのボールごと氷漬けすると、ボール状の膜が消え、凍り付いたリンゴは地面に叩きつけられ、粉砕。
シンプル。
技名が特に。
以前聞いたコリンやアンバーの技の名前とか、もっと厨二って感じだのに。
そして、容赦なく怖い。
‥これ人間相手にやったら‥
粉砕されてまだ凍ったまま転がるリンゴを見つめていると、
「私だけだったら、C肉程度の魔獣位しか「マーク」できませんよ」
と、くすくす笑ってフタバが皆の「怖い」を否定してくれた。
‥私だけだったら?
ザッカが眉間に皴を寄せ首を傾げると、コリンが頷いて、すっとフタバの前に立った。
フタバとコリンの周りが薄い青色の光に包まれる。
フタバが前を向いたまま頷き、
「攻撃範囲拡大、標的捕獲速度アップ。マーク! 」
今度はコリンとフタバがさっきと同じ呪文を叫ぶ。
巨大な球体がドーム型に現れ、宙に浮‥かないで‥消える。「カット! アンド フローズン! 」がないからだろう。
「流石に、周りの自然を壊してしまうと何ですので‥」
コリンがはにかんだ顔で言う。
「これで、攻撃範囲は、直径8ⅿ‥10m弱位のボール位になります」
フタバはコリンの言葉に頷くと、ザッカたちに説明する。
コリンは
「さすが昔より大きくなったな‥」
首を傾げ、考える素振りをし
「ベネット嬢も僕の能力も上がったからね」
フタバにふわっと微笑む。褒められたフタバは真っ赤になって「ふん、当たり前よ! 」って照れ隠しの‥ツン、だ。
コリンもこの二人の前ではツンデレだし、フタバと「この」コリンってちょっと似てるね。
ってか、普段のコリンを知ってる者としては違和感スゴイワ~。
ザッカは苦笑いだ。
「(直径が10m弱のボール)ちゅ‥中型獣くらいかな? 」
ボソッと、若干青ざめながらアンバーが呟いた。
いくらアンバーでも
ヒト、20人くらいは行けるかな。
とは言わなかった。
対人攻撃があり得ること‥については考えなかったのか、もしくは、それも良しと考えているのか、ザッカとシークは二人のダブル攻撃に興味津々だ。
「標的の捕獲速度アップさせて‥どの位なの? 魔犬クラスの速さには対応できるのか? 」
「例えば飛翔型の魔獣の動きにそれは対応できるの? 」
フタバが「応答を」と、目でコリンに促す。
「僕が目で追える範囲の速さなら。あと、高さについても同じです。僕が見える範囲は全部攻撃範囲です」
コリンが頷いて、答える。
つまり
目が合えば、
マークされて‥フリージングされて‥即死。
「分散されると厄介ね。敵が自然と一か所に集まる‥なんてことはありえないものね」
ナナフルが首を傾げる。
流石ナナフルさん。
真のハンター。
「‥ああ、そこでテイナー君です。
テイナー君が集めてくれるんです。
テイナー君の闇属性によって、影を集めるんです」
「影を集める? 」
ザッカとシークが息を飲む。
「魔術士が真名で人を召喚することが出来るってことは知ってますよね。彼の場合は、影から本体を操ることができるんです。真名による召喚と違って、誘導‥程度のものなんですけどね。
影を‥まるで紐かなにかの様に‥ひとところ‥僕らの空間の中に‥呼び寄せて‥集めて‥」
いや、もうわかったから、聞きたくないです。
集めて、ボール作って、ふわっと浮かして、バラバラですよね。
その密室(ボール内)‥恐怖空間だよね‥。
さっきのは、リンゴだったから何とも思ってなかったけど、
魔物(とか人)だったら、‥凍るまで意識あるよね‥。
残酷‥だよね??
「あ、抵抗するとなんだから、対象物が空間に入った瞬間感電させますよ? 雷で一瞬です」
皆の視線に気付いたのか、コリンが補足した。
苦しいのは‥一瞬、かあ。‥なら、いいかな??
いいかなあ‥。
コリン‥それは‥どうかと思うぞ。
コリン自身もどうかと思っているのだが、勿論ここにいる全員がそう思っている。
だけど、
ザッカたち事務所側の人間としては「そうはいっても、そんなこと言ってられないしな」って気持ちを前面に出したい‥ってのが本心。
フタバは、「‥そこまでして頼みたいことなんだ、この件。まあ、‥今まで一方的に通信を断ってきたコリンが連絡してきた位だからな‥」と、複雑な表情でロナウの出方を見ている‥って状態。
コリンは‥
やるべきことはした。あとは、‥ロナウの気持ち次第だ。
ここで、「いやだ」って言うんだったら‥言っちゃなんだが利用価値はない。
大分ゲスなこと考えていた。
今まで黙って俯いていたロナウが顔を上げ、口を開く。
「え! コリン君が友達になって欲しいって! しかも、僕の事、誰よりも特別って! 凄い進歩じゃない!? 進歩っていうか‥寧ろ、もうすぐ恋人じゃない?! 特別なんだもんね!? 」
‥満面の笑みで。
「え!? 」
ザッカたちが‥ドン引きした。
今までコリンが塩対応過ぎて、普通(?)の対応されただけで、嬉しく感じちゃったりする‥ってことかな!?
塩水飲まされ続けて、初めてもらった真水が美味し~! って感じ?
「え!!? いや、友達だからね?! 僕が恋人として好きなのは、あくまでもシークさんで、これから先もテイナー君の気持ちにはこれっぽっちも応えられないからね?! 」
いやいや、予想外にぐいぐい来られてパニック起こして、折角手渡した真水に塩混ぜちゃってるよコリン??
ここは抑えて!!
ザッカたちの願いは‥
コリンには‥届いてない様だ(← コリンはそれどころじゃない)
‥気持ちも分るけど。
確かに、ここであやふやにしたら、まずい感じするよね‥この子。
危険な感じだわ~。
「友達! 」
焦って友達友達と念を押すコリンに
「まずは友達からってことだね!? 」
うんうん、と弾ける笑顔のロナウ。
‥コリンよ。今までこいつにどんな対応して来たんだ?
「嬉しい」のライン低すぎない!? 低いってか‥ちょっとおかしいってか‥っていうか‥この場合、この子がおかしいのかな?!
スーパーポジティブ過ぎないか?! ‥確かにコリンじゃないけど、「聞いてた!? 」って言いたくなるよね‥。聞いてたとしたら‥嫌なところが耳に入ってない感じ? いや、まさか耳に入ってないってことはないだろうけど‥「今はいいか」って感じにしといた‥のかな?
他のメンバーよりはロナウのこういうところを見慣れているフタバは苦笑いで「いつもの茶番劇」を見ていた。
これ見てると、「頑張ってもどうにもならない片思い」ってある、って感じするよね‥。
正攻法でイケイケゴーゴー。
それ一本。ひねりもない。
コリンに、恋の駆け引きが通用する気もしないから‥情熱で押し切ろう‥って悪い手でもないとは思うんだけど‥でも、それでずっとダメだったんだから、もう少し学べって思うわよね。
押してダメなドアを‥そもそも、引き戸かもしれないドアを‥押して押しても‥開かないならいっそ無理矢理‥って押し壊そう‥とするけど、それも丈夫過ぎて壊れないっていうね?
押してもダメなら、構造の分析、っていうだろうが!!
あと、コリンて‥
あんたは、間違いなく脳筋だ。脳筋はうちの実父で見慣れてるのよ! 暑苦しい。
うちの父様は脳みそだけじゃなく、趣味は筋トレって感じだったから、見た目もマッチョで、暑苦しさ更にドン! だった。兄様たちは見た目だけはほっそりしてたけど(隠れ細マッチョって奴だ)、父様はそういうのじゃなくて、腕なんか私の足程あるんじゃないか‥って感じの、見るからに筋骨隆々って感じだった。
そんな見た目だったから、「私は朴念仁で不器用で‥」ってのが口癖だろうが、周りも「だろうね~」って反応しかなかった。
だって、イメージ「熊」だもん。熊に繊細さや器用さを求める方が無理って奴だ。
でも、ま。貴族である以上。貴族らしい計らい事が苦手でも「朴念仁で不器用」で済ませちゃダメな事案よね。
‥兄様たちはそこまではひどくないであろうことを願いたい。
でも、ま、裏に一物‥っていうのよりずっと好感は持てる‥のは、確かよね。
実質捨てられた‥んだけど、実は父様のこと嫌いじゃない。父様も、多分私のことをホントに嫌ってるわけではないと思う。‥接し方が分からないだけで。
‥多分ね。父様は、普通の貴族として不器用‥とかだけじゃなくって、「愛情に対して」も不器用なんだ。
母様や兄様たちみたいに、自分にストレートに愛情を向けてくれれば好きだってわかるし、好きって気持ちを自分からも返せる。でも、私みたいに「分かりにくい」のは、分からないから‥どうしていいか分からない。でも、嫌いっていうのは違う。でも、好きかと言われたら‥どうなんだろう? ‥ていうか、同じ子供の中で一人だけ、好きじゃないってどうなんだ? 子供に順序なんて付けたらダメだろ? ってそういう‥彼の中の良心だとか常識だとかがね‥こころにひっかかるんだろう。
で、色々考えて分からなくなって‥考えるのを放棄するっていうね?
実際は‥
子供に順序なんてないなんて、神話だ。
合う合わないは、親子だって当たり前にある。それは仕方がない。
だけど、表向きは同じ様に接する。‥大事なのは寧ろ‥そっちだ。
こころの中まで誰も覗かないし、誰も非難しない。
だけど、彼にはそれが出来ないんだろう。
不器用だから‥
だから‥私たちは離れてる方がいい。
‥その方が、父様に嫌われずに済むし、きっとその結果‥いつかいい関係が築ける。
母様は‥よくわかんないけど。
‥嫌われてなければそれでいい。
関心がない‥ってのは分かるけど、せめて嫌われたくないな‥と思う。(流石にね)
親に親としての(凝り固まった)常識や‥無償の愛情を求める程は‥幼くないつもりだ。
私だって将来自分の子供にそんな愛情を持てるかどうか、分からない。
私が得られなかった愛情をせめて自分の子供に‥とは思わない。そういう愛情は、ただの私の自己満足で、単なる押し付けにしかならないだろうから。
「フタバちゃんの攻撃ってどんな感じなの? 空間の切り取り‥って聞いただけじゃあんまりイメージがわかないっていうか‥」
気付いたら(脱線して)また父様のことを考えて、ぼんやりしていたフタバの視界に‥突如入ってきたのは、黒髪赤目のブラックな王子様だった。
‥なんてこともない、アンバーはこの(カオスな)現状を見かねて話を変えようって思ったんだ。
「アンバー様! 」
は~。カッコイイ!!
今まで筋肉マッチョの脳筋のことでいっぱいだった頭にはちょっと刺激が強い‥っ!
眩しい!
麻袋と絹の反物程違う!! (← なんじゃその例え)
人間の価値は顔じゃないけど‥結婚するなら、ごついのより‥出来れば綺麗な方がいい。
顔の良さで、七難まではカバーしなくても、最低でも三難位はカバーできそう。
「顔がいいからいいか~♡♡」
ってなりそう~!
顔って残念ながら、生まれ持ったものだ。頭とか剣の腕とかは、努力次第で、後からなんとか出来るけど(注:なんともならないこともある。実際フタバの剣の腕は、努力したけどなんともならなかった)
だから、可愛い子供が欲しければ、カッコイイ人と‥って方が常識っていうか‥ね?
「あ! そうですよね! 特殊ですよね! お見せしないと分からないですよね! 」
すっくと立ちあがり、
周りに何もない場所(さっきまでコリンたちが修行してた場所)に案内され、移動する。
では‥
すう、と息を吸い込む。
「マーク! カット! ア~ンド フローズン! 」
標的は、ぽつりと地面に置かれた小さなリンゴだ。
「マーク」で、切り取る場所‥リンゴの周りの地面を印付けして、「カット」で周りの空間ごと切り取って、丁度透明なボールの様なものを作り、風魔法でリンゴの入ったそのボールを持ち上げる。「フローズン」の呪文でそのボールごと氷漬けすると、ボール状の膜が消え、凍り付いたリンゴは地面に叩きつけられ、粉砕。
シンプル。
技名が特に。
以前聞いたコリンやアンバーの技の名前とか、もっと厨二って感じだのに。
そして、容赦なく怖い。
‥これ人間相手にやったら‥
粉砕されてまだ凍ったまま転がるリンゴを見つめていると、
「私だけだったら、C肉程度の魔獣位しか「マーク」できませんよ」
と、くすくす笑ってフタバが皆の「怖い」を否定してくれた。
‥私だけだったら?
ザッカが眉間に皴を寄せ首を傾げると、コリンが頷いて、すっとフタバの前に立った。
フタバとコリンの周りが薄い青色の光に包まれる。
フタバが前を向いたまま頷き、
「攻撃範囲拡大、標的捕獲速度アップ。マーク! 」
今度はコリンとフタバがさっきと同じ呪文を叫ぶ。
巨大な球体がドーム型に現れ、宙に浮‥かないで‥消える。「カット! アンド フローズン! 」がないからだろう。
「流石に、周りの自然を壊してしまうと何ですので‥」
コリンがはにかんだ顔で言う。
「これで、攻撃範囲は、直径8ⅿ‥10m弱位のボール位になります」
フタバはコリンの言葉に頷くと、ザッカたちに説明する。
コリンは
「さすが昔より大きくなったな‥」
首を傾げ、考える素振りをし
「ベネット嬢も僕の能力も上がったからね」
フタバにふわっと微笑む。褒められたフタバは真っ赤になって「ふん、当たり前よ! 」って照れ隠しの‥ツン、だ。
コリンもこの二人の前ではツンデレだし、フタバと「この」コリンってちょっと似てるね。
ってか、普段のコリンを知ってる者としては違和感スゴイワ~。
ザッカは苦笑いだ。
「(直径が10m弱のボール)ちゅ‥中型獣くらいかな? 」
ボソッと、若干青ざめながらアンバーが呟いた。
いくらアンバーでも
ヒト、20人くらいは行けるかな。
とは言わなかった。
対人攻撃があり得ること‥については考えなかったのか、もしくは、それも良しと考えているのか、ザッカとシークは二人のダブル攻撃に興味津々だ。
「標的の捕獲速度アップさせて‥どの位なの? 魔犬クラスの速さには対応できるのか? 」
「例えば飛翔型の魔獣の動きにそれは対応できるの? 」
フタバが「応答を」と、目でコリンに促す。
「僕が目で追える範囲の速さなら。あと、高さについても同じです。僕が見える範囲は全部攻撃範囲です」
コリンが頷いて、答える。
つまり
目が合えば、
マークされて‥フリージングされて‥即死。
「分散されると厄介ね。敵が自然と一か所に集まる‥なんてことはありえないものね」
ナナフルが首を傾げる。
流石ナナフルさん。
真のハンター。
「‥ああ、そこでテイナー君です。
テイナー君が集めてくれるんです。
テイナー君の闇属性によって、影を集めるんです」
「影を集める? 」
ザッカとシークが息を飲む。
「魔術士が真名で人を召喚することが出来るってことは知ってますよね。彼の場合は、影から本体を操ることができるんです。真名による召喚と違って、誘導‥程度のものなんですけどね。
影を‥まるで紐かなにかの様に‥ひとところ‥僕らの空間の中に‥呼び寄せて‥集めて‥」
いや、もうわかったから、聞きたくないです。
集めて、ボール作って、ふわっと浮かして、バラバラですよね。
その密室(ボール内)‥恐怖空間だよね‥。
さっきのは、リンゴだったから何とも思ってなかったけど、
魔物(とか人)だったら、‥凍るまで意識あるよね‥。
残酷‥だよね??
「あ、抵抗するとなんだから、対象物が空間に入った瞬間感電させますよ? 雷で一瞬です」
皆の視線に気付いたのか、コリンが補足した。
苦しいのは‥一瞬、かあ。‥なら、いいかな??
いいかなあ‥。
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