この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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102.わかること、わからないこと、出来ること、出来ないこと。

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(コリンside)


 もう、分からない事ばっかりなんです。

 アンバーは、僕に「自分に素直になって」って言った。
 僕がシークさんのこと好きなのは、「シークさんが僕に持っていないものを持っている」から、僕にとって刺激になるって話は以前した。だけど、今はそんなこととは別に、純粋にシークさんのこと好きだって話も。
 だけど、それを、アンバーは「洗脳のせいで」僕が「自己啓発の為に」シークさんを選んだって言ってるんだよね? 
 ‥確かにきっかけはそうだったかもしれないけど‥
 いや、あれはそういう‥頭で考えたものじゃなかった。
 あれは、直感だった。
 一目惚れだった。
 シークさんの性格なんて会った瞬間に分かるもんじゃない。性格云々は後だ。
 この人の性格はこの通り好ましいから、自分が好きになっても、仕方が無いって自分の頭に納得させたのは‥会って秒で告白した‥後だった。
 つまり、洗脳関係ない。
 ‥恥ずかしい話、ぶっちゃけ、顔が好みだったんだ。でも、顔が好みっていうのなんかカッコ悪かったから‥自分の中で色々‥後付けで理由を考えた‥んだと思う。

 僕が好きなのは、洗脳を自覚した今でも、シークさんだけだ。

 だけど、さっき僕はアンバーのこと突っぱねられなかった。
 キスしてもいいかな~って‥多分‥思った。
 いや、いいかな~じゃなくて、‥キス位ならって感じ? 知らない仲じゃないし。‥キス位は。(いや、それおかしいだろう)
 というか‥逃げるってのも変に意識してるみたいで変っていうか~。
 なんか、逃げられるとか感じ悪いじゃん??
 って思ったんだよな~。
 好きとかじゃなくて‥嫌われたくない‥違うな、「キライじゃない」これだ。
 ‥何が分かんないって、自分が一番分からん‥。
 なかったことにならないかな~。

 僕がぐるぐると考えながら頭を抱えれていると、アンバーが
「ま、自分の心ってのは複雑だよ。そう、こう! って分かる事じゃない。
 今は分かる話からした方がいいんじゃない? ザッカたちも待ってるんだろうし」
 ‥アンバーが珍しく普通のこと言う‥

 ‥ってか、こんな時に恋愛の話とかしてる僕がおかしいんだよ‥。反省!!

「そうだった! 悪かった! 」
 両頬を自分でぱーんって叩いて強制終了!

 気分、切り替えです!!

「(うわ~。顔に手形バッチリついてる‥いたそ~‥でも、ここはもう突っ込むべきじゃない。それが空気を読む男って奴だ。‥俺っていい男‥)‥そうそう。
 ‥ところで、俺の適性検査ってのはもう終わったっけ? 」
 アンバーは、何でもないって風を‥
 装おうってしてるんだろうけど、全然装えてない。
 わかります‥めちゃドン引きしてるの分かります。
 僕の顔、真っ赤なんでしょう? めっちゃ手形ついてますって感じなんでしょ? そりゃもう、ドン引きって程な感じなんでしょ?? ‥分かります。だって顔めっちゃ熱いもん。

 強くたたき過ぎた‥っ!

 でも言わないぞ。
 せっかくアンバーがスルーしてくれてるんだ。‥スルーの方向で。
 僕は、ふう、と息を整えるべく大きく息を一つ吐く。
「終わった。
 使える属性が思った通り一つじゃなかったから、性格や使用目的やなんかから、どれをメインの属性にするか考えよう。
 ‥まず、アンバーの使える魔術は、闇と土と火。
 闇は、メインの属性にしないでおこう。といっても‥別に封印してしまう必要も無い。だけど、今後は出来るだけ補助的な利用‥という感じを心がけて行こう。」
 ちらっとアンバーを見て、反応を確認。
 アンバーは時折相槌を打ちながら、真剣に話を聞いている。
 大丈夫だ。話について来てくれてる。
 僕の提案についての反発も今のところ特にはなさそうだ。
 小さく頷くと話を続ける。
「アンバーが使える魔力で、闇以外で‥ってなると、強いのは火だね。
 今まで火と闇って組み合わせた使い方しかしてこなかったわけなんだけど、今後は、火の魔術単体で使っていくようにしていきたい」
 アンバーが神妙な顔で頷く。
 お、意外。これも抵抗なし。「今更スタイルをかえるの!? 」って反論があるかも、って思ったけど‥
 ま。アンバーは元々闇の魔術にいい印象持ってなかったわけだし? 「教えてくれるなら」って感じなのかな?
 今度もまた僕は、小さく頷いて言葉を続けた。
「土も‥普通の人と比べたら決して弱いわけじゃないんだけど‥攻撃魔法向きではない。
 勿論、土の魔術も攻撃魔法として使えるんだけど‥今までアンバーは使えることすら自覚してなかったようだから、今更一から練習するんじゃ間に合わない。
 ってとこかな~」
 と、これも一応説明しておく。
「成程」
 アンバーも納得した様だ。
「今後は、火の魔術の基本を練習していきたい。‥だけど、僕は知っての通り火の魔術が使えない。だから、魔術の基本を教えることは出来るが、それ以上は出来ない。
 僕の魔術書に呪文やなんかは載ってるから、それを見て練習していこう」
 頭の中で、あの本とあの本(総て自前)なんかがいいかな‥とか段取りを考えていると
「分った。
 ‥だけど、前から不思議に思ってたんだけど‥
 コリン程の努力家で、魔力が豊富でも、使えない属性の魔術は使えないもんなの? 」
 アンバーが首を傾げながら、聞いて来た。
 ‥ちょっと感激。
 質問が出るってことに、感激。疑問を持つって、興味を持ってくれてるってことだよね??
「体の中で、まっさらな魔素が自分の使えるそれぞれの属性の魔力に変換されて初めて、魔術として使えるんだ。使えない属性ってのは、はじめっから魔素が魔力として変換されないんだ」
 喜びを隠せない、ニコニコ顔(多分そうなってるだろう)で僕が説明をする。
 アンバーは真剣な顔で聞いている。

 僕、先生になったみたいだ!!
 
 僕は、地面に水の入ったコップの絵を2つ書いて
「つまり、まっさらな状態の魔素を水として、例えば二つの属性の魔力が使える人だったら‥
 魔素‥水が、赤色の色粉の入ったコップと青色の色粉の入ったコップに日々分けられる。
 赤い水、青い水っていうのが、魔力に変わった状態だ。
赤い水と青い水(と、多少頑張れば紫の水)は取り出せるけど、緑色の水は作ってないし、そもそも作れないから、取り出せない。
 可能か不可能かって話で、才能も努力も関係ない」
 そんな説明をした。
「コリンの場合は? 雷は氷の応用って言ってたよね? 」
「応用魔法を使ってる魔術士は、魔素の振り分け先が直にコップじゃなくて先に、鍋っぽいもんになるんじゃないかな? 水→氷 って感じもそう。
 で、鍋に赤い水‥水の魔術用の魔素を入れて、水のまま使うなら、そのままコップに移す。氷として使うなら、凍らせて、別のコップに移す。
 氷から雷は‥どういう原理なのかは知らないけど‥。それこそ、鍋的なものがなんとかしてるんじゃない?? 」
 コリンは雷が出来る仕組みをよく知らない。
 知らないけど、出来てるからいいんじゃない? って感じ。そこら辺は気にしない。
 普通は、「原理が分からなきゃ出来ない」ってものなんだけど‥コリンの場合は、「偶然やってたら出来た」らしい。
「俺は、火用のコップと土用のコップと闇用のコップがあるってこと? 」
 アンバーが首を傾げる。
 そうだよね。そう思うよね。

 でも違う。

「闇と光は、色粉的な存在。何か別の魔術のコップに色粉を足しているに過ぎない。それも、元から入っている色粉じゃなくって後から足してるもんだ。
 闇と光自体は、魔力の溜まる場所がない。だから、闇の魔術だけや、光の魔術だけの人は、いない。コップが無かったら、水は入れられない」
 闇と光は精神魔術。
 他の魔術とは根本的に違う。
「ちなみに、他の魔術と他の魔術を混ぜることを‥さっきの水の話で言ったら紫の水のことを、混合魔術っていうんだけど、今までアンバーは、闇と火の混合魔術を使っていたわけではない。火の魔術に闇の要素を加えていたに過ぎない。
 アンバーは、土と火の魔術が使えるから、混合するならこの二つってことになるんだけど‥混合魔術はそう簡単に使えるものじゃない。
 学校に行かないで‥きちんとした先生に師事しないで、混合魔術の取得は‥まず無理だ」
 土と火の混合‥火山的な感じかな?
 まず無理なんだけど‥
 アンバーって色々規格外だから‥なんか出来ちゃいそう‥。
「可能性がゼロじゃないなら、やらないって手はなくないか? 」
 ‥僕が思うならまだしも、自分で言うか。「俺って天才だからなんか出来そう~」とか思い上がり発言やめろよな!!
 僕は、アンバーをじろりと睨み
「その限りなくゼロに近い確率にかけて、他の50とか60ある可能性の練習を疎かにするのも‥どうかと思うけど。
 それに、‥混合する魔術が火っていうのがね‥。危険だ」
 冷静な口調で言ってやりましたよ!!
 先生は、「何か出来そう~」で生徒や周りを危険に晒しませんよ!!
「‥そっか~。何かごめんな。‥気ばっかり焦っちゃってさ」

 ‥こっちこそ、冷たい言い方して‥ごめんね~!! (なんか自己嫌悪)

 
 胸が痛んだコリンだった。
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