この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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83.情報の価値。

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コリンside


「アンバー? 」


 何処を探しても、アンバーは何処にもいなくって‥
 僕は目の前が真っ暗になった。
 だって、‥嫌な予感がする。
 絶対、こういうのって
 悪いフラグだ。
 揶揄って、僕の事怒らせて、‥気がついたらいないとか、お約束だ。

 どうしていなくなったの? なんて‥いわなくても分かってる。
 アンバーは、さっきのギルドで聞いた会話から‥なにかが分かったんだ。
 アンバーには、‥分かったんだ。
 僕とは‥例の噂があった‥ってことと、例の噂を流した者と、そのタイプの話しかしなかった。
 だけど、アンバーにはそれ以上に、何かが分かったんだ。
 ‥あの会話の中で何かそれ以上の‥分かることがあったかどうかは分からない。
 僕にはわからなかったけれど、アンバーには分かったのだろう‥。

 そのことを、僕には、言わなかった。
 何故か。
 それ以上関わると危険だって容易に分かるから。

 そういう時、‥いなくなった人はどういう行動をとる? 
 仲間の為に、
 身代わりになったりとか、一人で危ない橋を渡ってる。
 それもお約束。

 アンバー‥。
 カッコつけて、悪ぶって‥
 ‥実際問題、
 元悪者だし、実際にカッコイイから、悪い顔も似合うんだけど
 ‥って、そうじゃなくって‥。

 だけど、こっそり‥とかって「カッコイイこと」するガラじゃないじゃないか。
 ドヤ顔で
「こういうのは、不器用なコリンには出来ないだろうけど‥俺には出来る」
 って‥僕の事馬鹿にすればいいじゃないか。
 いつもならそうするじゃないか‥。

 アンバー‥! 


「ザッカさん! アンバーが!! 単独で悪の組織に乗り込んだ‥かもしれない! 」
 僕は、事務所に駆け込んで、そこにいたザッカさんに泣きついた。
「コリン!? 」
 ザッカさんは取り敢えず僕を抱き留めたが、驚いた顔をして僕を見た。
「何のことだ? コリン、順を追って説明しろ」
 小さく息を吐いて、僕を落ち着けさせようと、僕の背中を大きく一度撫ぜた。
 僕は、今日、ギルドで聞いてきたことを、僕の感想なんかが混じらない様に、事実だけ、なるべく簡潔に話した。

 シークさんが所属するギルトではないギルトに聞き込みに行ったこと。
 ギルトで「立ち入り禁止になった森」がある話を聞いたこと。
 立ち入り禁止になった森では、以前地元の人たちが薬草をとっていたらしいこと。

「それだけか? 」
 ザッカさんが念を押して尋ね、僕も記憶を手繰ったけれど‥それ以上のことは思い出せなかった。
 それだけだったように思う。
 僕にとっては
 だけど‥
「アンバーには、多分何か分かったんだ‥それで、一人で確かめに行こうとしたんだ‥と思う」
 ザッカさんは、じっと僕の目を見て、話しを聞いてくれた。
「話は、本当にそれだけ? 他に何か話をしていなかった? その話に‥何か違和感は無かった? ‥覚えている限り、もっと詳しく思い出せるか? 」
 ザッカさんに言われて僕は、聞いた話を最初から順番に全部話した。
 僕は、記憶力にはそこそこ自信があるんだ。
「話してたのは、‥4人だった。一人は、人が好さそうで、口が軽そうな情報屋って感じの男だった。だから、僕が「この男が情報を「たまたま聞いた(本当のところは、意図的な目的を持った第三者によって聞かされた)男」かな。この男が、その第三者の顔を見た確率があるのかな? って聞いたら、アンバーが「噂を広めたいなら、もう少し情報に信憑性を持たせないと‥」って言って‥たしかに、あいつはインフルエンサーにはなり得ないから、情報源‥の条件はクリアしているけど、ちょっと情報として弱すぎる‥。って話をした」
 そこまで話して、何かが引っかかった。

 ん‥?
 ただの噂が情報に変わる条件は、その話に証拠だとか、根拠がしっかりしているか‥ってこと。
 今回の場合、口の軽そうな男が「森が立ち入り禁止になったらしい」って噂を語った。
 そして、「なぜその森が立ち入り禁止になって事を知っているか」という理由が「あの森では薬草が多く採れており、地元の者たちが今までは自分たちで採っていた。だけど、森が閉鎖されたので、薬草が足りなくなって、ギルドにこの頃急に薬草の採取の依頼が入るようになった。自分もその森に薬草を採りに行っていたから確かだ」と語った奴がいた。
 あの瞬間、ただの噂が、根拠のある事実に変わった。

 ‥変えられた。

「アンバーは、そのただの噂を事実に変えた男が、怪しいと思った。‥わざわざ変えた‥つまり、「こういう話にもっていけ、と指示されている(= 悪の組織と直接交流があった? )と考えて、単独調査をすることにした‥ってわけか」
 ザッカさんが顎に手をやって、考える様な顔をする。
 それで僕は‥
「アンバー!! 僕がそんなに信用できないかな!? 」
 一気にアンバーに対する怒りが湧いてきたんだ。


 ‥いや、信用できないっていうか‥
 説明が面倒だっただけじゃないかな‥?

 あんまり怒ってたもんだから、
 ザッカさんが苦笑いしていたことには気付かなかった。

 ‥咄嗟に色々考えがうかばない、自分のポンコツぶりが憎い‥。
 しかも、アンバーにもザッカさんにもそれがバレちゃってるのが‥辛い。


「‥アンバーの事だ。心配は要らないと思う。多分、その男の動向をもう少し見守ろう‥って位だろう。下手に動いて、自分の身を危険にさらすようなことはしないだろう。悪の組織側にいたアンバーだ。顔を知られている奴に会ったら困ること位分かっているだろう。
 アンバーのことはアンバーに任せておけばいい。
 こっちで調べるべきことは、その森では以前は本当に地元の人たちが薬草を採取していた事実があるか‥ってことだ。
 本当にあったのだとしたら、あの噂を事実にした奴も、意図的な情報操作をした奴ではなくただの情報通だ」
 ザッカさんに言われて、はっとした。
 ‥そうか、確かにそうだ‥。
 焦って立ち上がり
「調べてきます」
 ドアに向かおうとした僕を、ザッカさんが苦笑いで引き留めた。
「‥そういうのを調べるのは、慣れている人間の方がいい。下手に地元の人たちに接触して「なんでそんなこときくんだ? 」って疑問を持たれたり「へんなこときいてきた奴がいる」と印象に残られても困るからな」

 ‥ああ‥
 僕は本当に‥

「‥分かりました」

 本当に、何をすればいいかもわかってないし‥
 ‥何も出来ない。
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