この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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78.シークさんに対する皆の評価の見直し。

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 コリンside


 事務所に帰ると、何時ものソファーに座ってザッカさんは怒って‥拗ねて?? 僕たちに背を向けてコーヒーを飲んでいた。
 アンバーは、いつも通りだ。
 ザッカさんの向かいの一人がけのソファーに座って、一緒にコーヒーを飲んでる。
 一緒に‥っていうか‥
 ザッカさんは、コーヒーを持ってるだけで実はさっきから飲んでないんだけど、アンバーは普通に飲んでる。
 アンバーだけが、いつも通りなんだ。
 髪も服もよれっと‥とかしてない。
(ザッカさんは、よく見ると、何時もより髭が生えてる気がするし、ちょっと服がよれっとしている気がする)
 アンバーは‥そういうのがない。いつも通り、腹立つ程の美形だ。
 今日もザッカさんのラフな服を借りて着ている。
 アンバーだったら身長はまだしも、体つきが華奢だからナナフルさんの服の方がサイズ的に合う様な気がするけど、そんなことをザッカさんが許すわけがないんだろう。
 アンバーだから‥とかじゃなくて、ただ、嫌なんだろう。
 独占欲‥っていうか、そういう「愛されてるな~」っていうの? いいな~って。
 ‥ナナフルさんのこと、羨ましいって思ったり。
 まあ、僕は人に期待なんてしませんよ?!
 シークさんにこう思われたい‥とか考える‥期待するのって、でも無理だよね。人の気持ちなんて、他人にはどうにもできないもの。
 だから、こういう気持ちは「僕の感想」であって、「願望」じゃない。羨ましいなって感想。

 相手があることだもん。恋に理想やら願望って‥持たない方がいい。
 
 勿論「こういう関係になりたい」っていう「理想の関係」は、お互いに話合ったりして築いて行ったらいいって思う。だけど、「僕の事だけしか、見ちゃいやだ! 僕の事だけ愛して! 」とか「ヤキモチも焼いてくれないなんて冷たい! 」とかいうのは‥我が儘だって思う。
 そう‥わかってるんだけど、時々物足りなくなったり、‥不安になったり。

 シークさん‥僕の事どう思ってるんだろ‥。

 恋人同士になったけど、僕のシークさんの事を「好き」って思う気持ちと、シークさんが僕の事を「好き」って思ってくれる気持ちはもちろんだけど違う。
 他人なんだから、仕方が無い。
 シークさんは、アンバーに対して、嫉妬とかも‥しないんだろうなあ。
 じっと‥思わずアンバーを見たら
「お帰り~」
 なんて、笑顔で手を振られた。
 コイツは‥本当にいつも通りだ。

 帰りながらナナフルさんが
「ザッカは、「あいつらは恋人どうしだし、子供じゃないんだから」‥って言いながらも、心配そうだったんだよ」
 って言ってた。
 そしてそんなザッカをアンバーは
「コリン一人なら頼りないけど、シークが一緒だから大丈夫だろ」
 って言って慰めてたって。
 ‥僕の事、さらっとディスってるな、アンバーの奴。
 でも、‥僕らの事(というか)シークさんの事、信用してくれてるって感じがする。
 仲間だって‥感じがする。

「‥ごめんなさい。連絡しないで。‥でも、大丈夫だったよ。シークさんと一緒だったし。
 ‥ザッカさん。ホントにごめんなさい。僕、‥なんかいっぱいいっぱいになっちゃって、考えなしに事務所を飛び出したりなんかして‥」
 ザッカさんの背中に謝っていると、アンバーが
「邪魔が入らないとこで、久し振りにイチャイチャ出来てよかったな」
 ニヤニヤ笑いながらちゃかしてきた。
 おい、アンバー今は真剣に謝ってるんだ! 邪魔するなよ。
 僕はアンバーを睨んで
「アンバーは黙っててよ! ‥それに、いちゃいちゃとか‥してないからっ! 」
 最後の方は、小声で付け加えた。
 あくまで、アンバーを黙らせるために、だ。
 でも、
「へ? 」
「え? 」
 その僕のほんの小さな声に反応したのは、アンバーだけじゃなかった。
 鳩が豆鉄砲を食ったような顔で、僕を振り返った顔が、二つ。
 さっきまで給湯室にいたはずのナナフルさんと、目の前のザッカさん。
 ザッカさんが今日初めて、こっちを向いた。
 驚いた顔して、僕の顔? ってか様子を見て、ほ、っとした顔をした。

 ‥何を察して、何に安心したんだろ? 。

 ‥アンバーはやっぱりニヤニヤしてるだけ。
「やっぱりね~。シークがそんなこと出来るとは思ってなかったんだよ~」
 って、‥やたら嬉しそうだ。
 ‥さっきの僕の小声に、「ちょっと残念」って気持ちが透けてたのを、正確に読み取ったのだろう。
 そのうえで、人の不幸は蜜の味って感じで僕の事揶揄って喜んでるんだろう。
 ‥ホント、アンバーってば「いい性格」だよ! っちぇ!

「‥何もなかったのか? ホントに? 一晩二人っきりだったのに? 」
 ‥ちょっと食い気味に聞いてくる、ザッカさん。‥ちょっと‥ウザいです。
 こっちはアレだ。
 娘の貞操が守られて嬉しい‥的な? 
 そういう気持ち、すっごく「理解できちゃう」けど、ウザイ。
 ベタ過ぎてウザイ。
 ナナフルさんの、何となくほっとした顔も‥ウザイ。
 無言で、「ウザイな」って顔したら、ザッカさんが「ごめん」って謝って来た。
 ‥やたら、嬉しそうな顔で。なんなの、もう、ムカつく~!
 ナナフルさんは違った。ニコニコと機嫌が直ったザッカに苦笑いして、僕らから顔をそらすと、ちょっと眉をしかめて、ごく小声で(僕は地獄耳だから結構小さい声でも拾えるんだ)
「‥じゃあ、シークさんにとってコリンはどんな存在なんだろ。‥大事に思ってるからだ手を出さなかったっていうなら評価できるけど、全然そんな気が無かった、コリンのことそういう目で見たことは無い‥とかいうんだったら‥
もしそうだったら、ただじゃ置かない‥。
 その気もないのに、振りもしないで一緒にいるとか‥不誠実じゃないか? 」
 独り言を言った。
 多分、心の声が漏れたんだと思う。
 ナナフルさん‥。本気で心配してくれてありがとうございます。嬉しいです。
 でも、‥心の声駄々洩れですよ。ナナフルさん‥。
 ってか、ホントの不誠実ってのは、「その気もないのに遊びで手を出してくる奴」だと思いますよ?
 僕は苦笑いした。

 でも、ま。ナナフルさんの誤解は解いておきたい。‥ちょっとザッカさんには聞きたくない話かもしれないけど。
「そういう雰囲気にならなかったっていったら嘘になりますけど、‥シークさんの部屋は久し振りに帰ったのもあって、埃だらけで寝れるような状態じゃなかったんです。だから、一晩中、その‥お話してました」
 半分ホントで、
 半分嘘。
 家族に恋人との時間の話とか、するわけないですよね!!
 でも、ナナフルさんの誤解を解きたいから「そんな雰囲気にはなった」って言っとこうかな‥って。
 で、ザッカさんの機嫌急降下。
 ‥ちょっとリカバリーしとこうかな、‥なんて。
 で、
「あと‥そういうことは、ちゃんと、結婚してからかな‥とか、ね」
 ぼそっと付け加える。
 ‥あ、ザッカさんの顔、ぱあって明るくなったよ。
 ホント、僕の言葉にいちいち、一喜一憂って感じ。
 ホントに嫁入り前の娘の父親って感じ。
 娘の報告にころっと騙されちゃて嬉しそうな顔になっちゃったりとか‥ザッカさんって案外単純だよな。
 否、
 信じたいだけ、なのかもね。

 ‥なら、今はまだ僕も‥、可愛い娘のままでいた方がいいのかもしれない。かな、なんて。


 今日。
 皆のシークに対する評価の見直しがあったのを、コリンは知らない(シークもきっとしらないだろうが、‥なんとなく察しているようだ)

 ザッカの中でシークは「安全な奴」認識に格上げして、(格下げ?? )
 ナナフルの中でシークさんは「何なのあの子は‥。紳士なの? それとも、コリンの保護者的立場なの? ‥コリンは片思いなの? その気がないなら一緒にいないで欲しいな」的な不実な奴に降格して、
 アンバー的には、「カマかけたけど‥ホントに何もなかったのか~。なんか、良かった‥」って「でも、ちょっと男としてどうなの? もしかして、‥不能? 」認識に変わった‥って話。(←シーク的には最も不名誉な疑惑)
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