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67.コリンの戦闘スタイル
しおりを挟む自分が苦手なことを見つけるのって、簡単だけど、簡単に見つかる様なものだけじゃない。
例えば、反射神経が鈍いってのは、‥あれは、自覚の問題だな。
「もしかして‥僕って反射神経‥」
とか急に気付いた‥とかいう類のものでは無い。
反射神経が鈍いって、カッコ悪いけど、命にかかわることだから、「いや、何とかなるし~」とか強がってられない。
咄嗟の攻撃に反応して、避けて反撃する。
その必要性があるのは、なにも剣士だけじゃない。
魔術士だって急に攻撃されることもある。
魔術士は、自分以外の魔力に敏感だから他の魔術士が「いるな」ってすぐに察知出来るんだけど、魔力を持たない者を察知するのは、苦手だ。
つまり、気配を消した剣士が後ろにいる‥ということに気付くのも遅い。どんなに殺気を出していようとも、だ。
‥殺気を出してるって言っても、気配を消されてるんだ‥分かるわけがない。
って、コリンたち魔術士は憤るんだけど、剣士も
‥殺気も出してない上に、気配も‥時には姿も消してる魔術士がわかるわけあるか!
って思っている。
お互い様だ。
剣士にとって魔術士は「敵に回せば厄介な相手」だし、それは魔術士にとっても同じだ。
だから、「相手の実力をはかる前に、敵の中に魔術士を見かけたら先行攻撃を掛けておこう」って思う。だからパーティーの仲間にいる魔術士には、常に魔力探知を掛けておいてもらう。
魔力探知は、目を瞑って暗闇の中の小さな明かりを見つけるような作業らしい。
多くの魔術士にとってそれは凄く集中力が要り、凄く魔力と体力をつかう。そして、目を瞑っている状態だから、勿論自衛がおろそかになる。
だから、その作業間の自分の身の防衛を他のメンバーに任せることになる。
完全に相手任せになってしまうのだ。
だから、仲間を信頼し切っていない魔術士は、自己防衛の為にほんの少し自分の周りに気を配る。‥完全に目を瞑らずに時々ちょっと薄目を開けて周りを見ながら‥暗闇を歩くんだ。結果、どちらもが中途半端になる‥。
気配察知をしている時は、当たり前だけど魔力を少しずつ放出しながら移動することになる。
相手の魔力を探すと同時に、相手からも魔力を見つけられやすくなる。
(ちょっとだけ集中力を欠いているので)探知能力のそう高くない状態の魔術士が、敵の魔術士の魔力を察知する前に、敵の魔術士がこちらの存在に気付いたら、‥大概結果は分かるだろう。
先行攻撃を仕掛けられ、剣士は逃げ、剣士に逃げられ‥探知によって殆どの魔力を持っていかれている魔術士は、なす術もない。
珍しいことではない。‥結構よくあることなんだ。
だから、魔術士はソロでパーティーに加わらない。アタッカータイプの剣士一人、タンクに攻撃型魔術士、ヒーラーに魔術士(結界、治療型)ってパーティーが多いのはそういった理由からだ。
ヒーラーの魔術士が探知をしている間の身辺警護をタンクの魔術士がするって感じだな。
大概この魔術士二人は「できてる」から、先に足切りされるのは、剣士ってことになる。攻撃型魔術士の攻撃力は剣士には劣るけど、ヒーラーに随時治療してもらいながら二人で逃げきる位なら出来るからね。
そうやって信頼関係とかを築いてきた魔術士コンビがイケメン剣士にヒーラーが惚れることによって崩れたりすることも、またよくあることで‥。で、ヒーラ―の魔力探知時の身辺警護を誰がするとかもめてるうちに敵に見つかる‥とかね~。
‥これも、結構よくある。やっすい愛憎小説だな~。バカらしい。
結構、チーム内の人間関係ってのは、ドロドロしてる。
「よく知らん奴とパーティーとか組む奴の気が知れん。自分の身を守れるのは自分だけだな」
コリンは常日頃からそう思って来た。
‥だから、魔力探知時は自動攻撃機能をつける。あと、魔力探知時の外に漏れる魔力を最小限に抑える。‥いずれは、魔力を表に出さずに探知する方法を考える。
いずれもコリン程の魔力がないと出来ない芸当だ。
‥見つけた後は、相手に気付かれないうちに、先制攻撃。
一発目の一撃で撃破だ。
‥まあ、魔術士だからと言って悪者とは限んないんだけど、そこは「ここに居る自分以外の奴は悪役認定」って割り切っていかなければいけないな。うん、非情さも必要だ。(←そんな馬鹿な)
‥なんせ、自分は反射神経が鈍い。先制攻撃を受けたら終わりだ。
受けたら‥受けたら、結界だな。
自動攻撃の攻撃力なんてたかが知れてる。(コリン曰く、所詮、C肉が倒せる程度)一発目から本気で来られたら、絶対に負ける。
自分の反射神経でも対応出来る位のスピードにしてくれる、‥一瞬だけ半径1mの範囲をスローモーションにするような結界を張っておくくらいなら、そう魔力も使わない。
自動攻撃に反応 → スローモーション結界が展開 → 最大の防御魔法で攻撃を防御(もしくは、避ける)。
「で、次の攻撃が来るまでに魔術で攻撃だな」
防御で跳ね返すと、やっぱり自分も反動で後ろに飛ぶ。‥後ろに飛ばないように壁を作ったらいいんだろうけど‥そうしたら、攻撃を上手くいなせない。
壁に叩きつけられるってわけだ。
「敵の攻撃をそのまま跳ね返して攻撃するタイプの奴の気持ちがわかった」
僕もそれをしよう。
それだと、相手からの攻撃が大きい程相手に与えるダメージも大きい。
「だけど、跳ね返した攻撃の軌道修正が重要だな。跳ね返して、何処に行くか分からないとか‥避けられる‥とか話にならないよな。跳ね返す角度の計算も素早くしないとな」
‥そういう自動計算の魔法陣つくっとこ。
プログラミングって奴だ。瞬時に攻撃を分析して跳ね返す角度を計算、それから導き出された防御壁の角度になる様に魔力を放出して、防御壁を構築。
「問題は、計算の速さだな。なるべく早くできるようにプログラムを改良しよう」
魔法陣(プログラミング)は魔道具の様に道具を使うわけではない。魔道具は機械であり、ハードディスクである。魔法具は、それらを動かす動力である魔力とそれに命令を与えるプログラミングがいる。
魔法陣は、簡易のプログラミングである。
魔道具と違い誰でも使えるわけでもないし、簡易だから使い捨てだ。
魔道具は、エンジニアと共同で開発できるが、魔法陣は魔術士が一人で研究開発するしかない。自分の魔力との相性のものだから、自分の魔法陣は自分でしかできない。
魔法陣作成は、時間とか思い付きだとか、何より魔力がいる作業だが、コリンはこの作業が嫌いじゃなかった。
凝り性だし、負けず嫌いだし、あと、誰かと共同作業じゃないからだ。
「流石僕。業界(?)最速、誤差最小にして、威力増大効果も付与。もう、天才って感じするね! 」
これで倒れてくれるだろう。
‥っていうか、倒れてくれないと困る。倒れないまでも、相手が体勢を立て直す時間をなるだけ長く取ってくれないと‥」
連続で最大攻撃とか、なかなかキツイ。
体力に自信はあるが、瞬発力はそうない。
同じ力でダラダラと戦い続けるのは問題ないけど、最大の攻撃を連続して打つことは出来ない。
「あと、一対一なら問題ないけど、周りを囲まれるのは困る。周囲5m瞬間氷結とかで固まってくれたらいいけど‥アンバーみたいに瞬時で融かされると困るんだよな。まあ、アンバー程の術者はそういないから、実は火属性はそう怖い相手じゃないんだけど、水は困る。
相手の攻撃をちょっとでも食らっちゃったら、次に僕が雷属性の攻撃を打ったら、自分が感電するし、氷結させようとしたら、自分も凍るし。
‥自分に向かって来た水を氷に変えて相手に跳ね返せるようにしよう。氷柱みたいな奴。刺さったら無事じゃすまない奴‥」
「ん‥。はじめから氷柱で攻撃して、刺さったら相手の血液も凍らせる‥とかどうだろう‥」
「刺さったら電撃が発動して、感電死ってのもいいかも‥。でも、これは超小型魔法陣を氷柱につけないといけないから、手間だし却下。凍死でいいや。触れたものを凍らせる‥位なら魔法陣なくても出来る(←普通の魔術士は出来ないが、コリンならできる。きっとアンバーも教えれば出来る)」
魔術の合わせ技だ。
魔力も高く、優秀なアンバーなら教えれば出来るだろうが、コリンは絶対教えないし、コリンが教えなければアンバーは絶対そんなえげつない連続技考えつかない。
アンバーはどちらかというと、扇動作戦とか「頭を使う」作戦の方が向いている。
コリンも頭は使っているが、使い方が違う。コリンは、準備に時間と頭を使うだけで、戦闘時において、頭と身体をいっぺんに使うのは苦手。結構勢いに任せるタイプ。力技で何とかなるタイプ。
コリンは結構こういった感じで日々、色々イメトレをしている。
で、「これは採用」って奴は実行するために訓練開始。
採用されたものは、結構えげつない。だけど、コリンの実践訓練は、相手がいないので「相手がどういう状態になる」かはシークたちにはわからない。ただ、「コリンは相変わらず凄いな」って思うだけだ。‥相手が凍死してたり感電死してたり、氷の針山みたいになっているのは、今のところコリンの頭の中だけ。
‥その攻撃が使われないで済めばいいな、って思う。
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