この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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63.思ってた以上にホラー! 

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「シークさんは知ってた? シークさんに魔力があることと‥魔力を使ったら目の色が変わる事と‥そもそも、魔力を使ってることを‥」

 シークは、一瞬きょとんした表情になった。
 そりゃ、そんなこと急に聞かれたら、驚く。
 しかも、自分は今帰って来たばかりだ。
 帰って来てドアをあけて「ただいま」と言ったか言わなかったか‥ってタイミングでコリンに抱き着かれて、アンバーに意味の分からない事言われて‥コリンも変なことを言ってて‥
 今に至る。
 コリンとアンバーは自分が帰ってくるまでその話をしていたんだろうから分かるんだろうが、自分は帰ってきて急にそんな話をされたんだ。そりゃ、びっくりしかしないだろう。
「え‥」
 シークは、眉を寄せて苦笑いするが、目の前のコリンは‥真剣そのものって顔をしている。
 ‥このことは、よっぽどコリンにとって重要で、衝撃的なことだったのだろう。
 ふう、と一息つくと
「魔力については‥母さんが魔術士だったから、「自分にもあるかも」って思って練習したことがあったんだ。ちょっとだけね。それで、剣にプラスするってイメージで魔力を纏わせる練習をしたんだ。練習って言っても、他の冒険者に教わる程度の事だ。ちゃんと習ったわけでもない。だけど、冒険者ってのはみんなそんなもんだ。必要なことを習うだけに過ぎない。
 そのとき、‥何となく。時々、目の底が熱くなることがあった。自分では見たことはなかったけど、目に変化があるって言われたら、納得は出来る」 
 やっと自分の背中の大剣をおろして壁に立てかけた。
 コリンが「あ」って顔をする。
 シークが今まで大剣すらおろしていなかったてってことに今やっと気づいたんだろう。
「ごめん、シークさん。帰って来たばっかりだっていうのに‥」
 コリンは慌てて謝ったが、アンバーは依然ニヤニヤしている。
 ‥こいつは何考えてるのかよくわからない。
 コリンはちらっと、アンバーを睨み付けた。
「いや。ザッカさんたちは? 」
 ぽん、とコリンの頭に手を置いて「気にしないで」のつもりで微笑んだ(シークにとっては微笑んだつもりだが。実際にはそう表情は変わっていない)
「まだ」
 ちょっと赤くなって嬉しそうな顔をしたコリンが小さく首を振る。コリンには微笑が伝わった様だ。
「そっか」
 シークがまた心なし優しい表情で頷く。
「そりゃそうと。さっきの話。目の底が熱くなるの? 」
 その優しい空気を散らすように、アンバーが首を傾げながらシークに聞いた。
「ああ」
 シークがアンバーを振り向く。アンバーは考え込む様な顔をしていた。
「アンバーは違うの? 」
 コリンが首を傾げる。
 目の底が熱くなるの? って聞いてるってことは‥アンバーは熱くならないってことだ。
「ならないなあ。‥コリンはどうなんだ? 」
 ちらりと視線をコリンに移し、答えを促す。
「魔術を使っても僕は何も変わりは無いよ。手はそりゃ熱くなるけど」
 手に魔力を集めるんだから、熱くなるのは当たり前だ。
 ‥ってことは、シークさんは目に魔力が集まるってことだろうか?
「そりゃ手はな」
「あ、あと魔術紋。魔術紋も熱くなるよね。‥そういえば、アンバーって魔術紋あるの? 」
「見たことないな。あったとしても、腕や足、腹くらいなら自分で気付くだろうから、背中とか頭皮とか自分ではみえない場所にあるのかもな。‥でも今までそんなこと言われたことがないな」
 わざわざ、「言われたことないって、誰に? 」とか聞かない。コリンは未経験だが、別に普通に知識位ある。
 背中とかお尻とか、他の人に見られることがあったけど、誰もそんなこと言ったことない‥って言ったんでしょ? しかも、それって普通に着替えを見られた、とかじゃないんでしょ。わかるよ、アンバーほどの男前ならそういうこと今までありまくったでしょうよ。
 アンバーのエッチの事情とか、ホント全然興味ないし、どうでもいい。
「まあ、暗闇だから分からなかったんだろうし、そもそも、(相手は)職業紋のことすら知らないかもしれないな。まあ、俺も良く知らないし。
 ‥コリン、今度探してみてくれない? 」
 例の色っぽい視線で微笑む。
 ‥このセクハラ男め。
 やたらめったらチャームの魔術を使いまくりよって!! お前はインキュバスか!! 
 コリンが真っ赤になって、怒りを貯めていたら、
「案外尻にあって蒙古斑だと思われてきたのかもな。魔術紋は赤いし」
 シークがぼそりと呟いた。

 ‥恋人をセクハラ(言葉)されて怒ったのかな?
 やきもち? ‥うれしい‥。
 アンバーの微妙な顔も面白いし! ww
 にやにやが止まらないコリンだった。


 で、結局のところ「じゃあ、アンバーはどうなんだ」って話になって、
「‥熱くなるといえば‥背中に違和感はあるかな? 」
 ふう、とため息をついて、アンバーが背中に手をやった。
 ここら辺、って説明しているんだろう。
 丁度肩甲骨の辺りだ。
 ああ、案外あるらしいね。学校にいるとき(教会ね)女の子が「こんなところに出たら、見せられない! 」って言ってて「あ、俺もだわ」って結構な人数が同意したんだよね。なんでも、職業紋が何処にあるか分からないから友達に探してもらったらしい。‥よかったな。お尻とかじゃなくって。他の男子学生についてもそんな感じだった。
 ‥僕なんて友達いなかったから、自分で見れる場所で良かったよ‥。
 コリンはふう、と小さく息を吐いた。
 ‥まあ、アンバーの分は友達の僕が確認してあげよう。
「それかなあ‥。アンバー背中見せて? 」
 コリンが聞くと、にやっとアンバーが笑った。
「いいけど、‥先にコリンの見せてよ、背中だったら、どうせ俺見れないじゃない。俺も自分の背中にどんなのがあるのか知りたいじゃない? 」
 ‥懲りないなあアンバーは。いっそ逞しいな、って思うよ。
 今度はシークがため息をついて、
「俺の職業紋見せてやるよ。魔術紋じゃないから模様が違うけど、それだけでそう変わらない。色も同じだし。ほら、腕にあるからすぐ出せるし。‥上腕なんだ。‥ええと、右だったか左だったか‥」
 ごそごそと上着を脱ごうとするシークをアンバーがうんざりした顔で制止し、
「‥興味なくなった。いい」
 がっくりと肩を落とした。
「はははははは! 」
 二人の漫才みたいな会話になんだかコリンは笑ってしまった。
 因みに、アンバーの職業紋(赤の魔術紋)は左の肩甲骨の所にあった。アンバーは「コリンも見せろ」とうるさかったが、無言で睨み付ける‥というシークには珍しい攻撃を受け、黙った。コリンの方からは表情が見えなかったから分からないんだけど、‥怖かったんだろうか? (めちゃ怖かったようです)
 でも、まあ。
「尻じゃなくてよかった」
 のは、ホントのとこ。
「アンバーもシークさんも目に何らかの変化がある‥。だけど僕はない‥属性の問題かな」
 アンバーは闇属性。シークさんは‥緑色ってことは‥土属性かな‥風属性かも‥? なんだろ‥
 なんにせよアンバーとシークさんの属性は違う。‥属性は関係が無さそう。
 でも、‥これって解明する必要あるのかな。
 その前に今ちょっと気になったことがある。
「でもアンバー‥」
「何? 」
「アンバーは魔術を使っている時自分の目の色が変わったって自分で分かった‥ってこと? 」
 これだ。
 誰かにそう言われたってことなら、それで納得なんだけど、なんか‥アンバーってソロっぽいから‥でも、まああの森でもヘボい兵士と一緒にいたから、そいつらに指摘されたのかな?
 コリンが首を傾げながら聞いたら、アンバーは「ああ」とかちょっと微妙な表情をして
「‥常に、自分の目と目が合ってるって感触があるからな」
 ぼそり、と呟いた。
「‥‥え? 」
 ‥え? 今なんて?
 コリンとシークが自分を見て固まっているのを見たアンバーは何とも居心地悪そうな顔をして
「普通はね。自分の顔は、鏡を見ないとわかんないけど、でも、自分の顔のパーツって常に目の端に入ってるよね? 」
 ぼそぼそと説明を始めた。
 コリンとシークがごくり、と唾をのむ。
「目の端」
 まあ、たしかに。
 コリンは単語を反芻して、頷いた。
「例えば、鼻。目線を下げたら見えるよね。鼻の頭。それを意識してたら、実際には見えていないはずなんだけど口も見える気がするよね? それと同じで、気がついたら、自分の目が見えてる気になって来た。そして、‥質が悪いことに、いつしかその目と目が合うようになったんだ」
「目が合う‥」

 ‥質が悪いというか、気持ちが悪い‥。

 思ってた以上に、ホラー‥。
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