この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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60.儚い光 コリンside

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「眩しすぎるものなんて‥要らない。目が疲れる。俺は‥」
「俺は、コリンでいい。コリン位の微かな光で、俺はいい」


 いつものアンバーとは違う、真剣な顔。
 僕の事好きだって言ってくれてるんだって、分かる。
 本気なんだなって‥わかる。
 嬉しい‥には変わりないけど、反応に困ってしまう。
 正直「ぐいぐい行く」のには慣れてるけど、「ぐいぐい来られる」のには慣れてない。
 ぐいぐい行くのは、自分のペースだ。相手が引いてる‥って分かったら、引く。自分はそれが出来るし、そうしてきたつもりだ。そもそも、臆病だし割とヘタレだから、割とさっさと引く。まあ、それだけ「どこか冷静で冷めた部分がある」ってことなんだろうけど。
 ‥でも、来られる‥のは勝手が違う。相手のペースで、‥自分のペースじゃない。


 コリンは恋愛慣れしていない。それどころか、恋愛にしり込みしているところがある。
 だから、ぐいぐい来られると‥困惑してしまうのだろう。


 恥ずかしい、どうしよう‥って気持ちが先に来ちゃう。
 さっさとこの話を終わらせたいって、逃げたくなる。だって、自分の選択肢は断る一択だから。
 これ以上、どんな話をしても、何を聞いても、自分の答えは変わらないのだから。
 だけど、コリンの「一番」がシークになる前から、コリンにはそんなところがあった。
 自分に自信がない。相手が信じられない。‥相手の言ってることが信じられない。
 相手が自分なんかを本気で好きなわけがない。相手は自分を騙しているのかもしれない。それこそ、自分を出し抜こうとしているだけかもしれないし、誰かが言うように「顔だけの」「遊び相手」って思っているのかもしれない。
 だから、何も聞きたくない。考えたくない。
 何も聞かず、考えずに「断る」一択。
 ‥そんなんじゃ、そもそも恋愛なんて始まろうはずがない。
 そして、今までコリンは恋はおろか、教会内に親しい友人を作ることも無かった。
 でも、今は違う。
 なぜなら、コリンはもう決めてしまっているから。その、硬いばっかりの頭で「自分が好きな人は、‥シークさんだけだ」って、‥頑なに。
 初めは「思い込み」だった。自分と違うものを持つシークに対する憧れだとか、尊敬‥この人は好きになっても大丈夫っていう安心感だとか‥そういう分析結果に則って、その結果「シークさんが好き」って自分を納得させた‥自分に「思い込ませた」。元々はそれだけだった‥と思う。一目惚れって思ったけど‥今でもちょっとは思ってるけど(だって、シークさんは見た目もあんなにカッコイイわけだし(←コリンの意見です)見るからに強そうだったし(←コリンの第一印象です)背も高いし)だけど、今ではそれだけじゃなくって、優しかったり、誠実だったりするシークさんのスペシャル素敵な人柄を知ったり、料理が上手だって知ったり‥僕の家族にも認められたりとかしてさ‥、ああ僕、「ホントにシークさんのこと好きなんだ」って思ってる。「シークさんの事を恋愛の対象として好きなんだ」って。
 シークさんに逢えたこと、僕の今までの人生の中で一番の幸運だって本当に思える。
 もし、ぐらっと心が動くようだったら‥自分で自分が許せない。
 だから、他の人の言葉なんて‥聞きたくない。
 聞かせないで欲しい‥。
 でも、
「ごめん、気持ちにはこたえられない」
 って言葉、言いたくなんかない。
 そりゃ、‥いくらなんでも僕にだって良心くらいある。
 相手の気持ちを考えるなら、誠実に正直に答える? なるべく相手が傷つかないような言葉を選ぶ?
 ‥そんなの、「是」以外だったら何言っても同じだ。どんな言葉を使っても、断るって事実は変わらない。
 だから、「何て言おう」とか‥悩みはしない。
 シンプルに
「ごめん、気持ちにはこたえられない」
 だ。
 それは分かってるし、言わなきゃなあって思うんだけど‥ 
 ただ、言いたくないな‥ってのが、一番‥かなあ。

 ‥今までの関係を崩したくない。
 否、自分の弱さや、狡さを‥見たくない。

「アンバー‥」
 つい眉根を寄せてしまう。真っ直ぐ見つめることができなくって、瞳だけでアンバーを見上げたら、

「そんな顔させたいんじゃねえよ。コリンの場合困らせたら、僅かな望みすらぶっちぎりそうだもんな。そんなことはしねえよ」
 は、っと意地悪い笑みを浮かべて、アンバーが言った。

 細めた目と、僅かに上がった口元が‥色っぽい。
 わあ、アンバーはこういう顔似合うなあ。
 アンバーって、キレイな顔なんだけど、綺麗に「すましてる」より、こういう顔がよく似合う。妖艶な小悪魔って感じ? 綺麗で優しそうで‥清楚なナナフルさんとは全然種類が違う。
 アンバーが闇属性だから? ‥悪役顔だから? 
 しばし見惚れてしまったことを、大袈裟に眉をひそめて‥誤魔化す。
「僕はそんなことしないよ! 」
 無理矢理、顔を作ったら、口元がすねた子供みたいに‥とんがってしまった。

 ‥うわ、きっと僕、今すっごい変な顔だ。

 アンバーの言ってること‥でも図星だ。
 僕は、‥アンバーが面倒臭くなりかけていた。
 面倒臭いから、いっそのこと‥って、アンバーの事「ぶっちぎろうと」してた。
 結構‥本気で。
 だから、アンバーが「話を無理やり終わってくれた」ってのは、普通に分かるんだけど‥ありがたく乗らせてもらおうと思う。ここでこの話をうじうじ続けてたら、絶対‥「ああ、もう面倒臭い」って言ってしまう気しかしない。
 だけど、僕がアンバーと同じ立場だったら、‥シークさんに困った顔されたら‥僕はシークさんに同じこと言えただろうか? 同じように「はぐらかして」なかったことに出来ただろうか? 

 困ったシークさんの顔を見て、見込みなんて全然ないって思って‥悟って‥
「いや、ごめん。忘れて」「今まで通り友達でいよう」って言えただろうか? 。

 ‥今はそんな気はなくても、一緒にいさせて。
 僕はそうシークさんに言えるだろうか? 
 ‥あれ、言ったっけ??
 だけど、シークさんの場合、僕だから嫌、とか、他に好きな人がいるから無理‥とかじゃなかったしなあ。
 シークさんの混乱に乗じて‥っていうか、半ば無理矢理「押しかけた」って感じで‥
 今の僕とアンバーとは状況が違う‥って言うか‥。

 ‥ああもう。
 ホント、面倒臭い。

 恋って、厄介だ

 コリンは、そっとこころのなかで苦笑した。

 ホントに。
 こういうのって、僕、思った以上に向いてない。
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