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56.いちゃついてるわけでも、襲っているわけでもない。
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「悪の組織はそういうことも分かってたってわけか」
ふむ、とザッカが唸る。
「僕一人が、ちょっと調べただけでわかったようなことは、勿論分かってたでしょうね」
なんせ、人数もいるし、準備期間が長い。例え、個人の能力差があっても、人数と時間がそれを埋めてくれるだろう。それに‥「明確な目的」がある。相手の目的も分からず調べているコリンたちとは違う。
「あと、ここで調べておけることはある? 」
シークの問いかけに、コリンは首を傾げて暫く考える素振りをし、間もなくして首を振る。
「無いと思います。少なくとも、今は思いつきません。ここにいても仕方が無いから、一度帰った方がいいかと」
シークとザッカが頷く。
「よう、お帰‥」
ニコニコと機嫌のいい顔で三人を迎えたアンバーに
コリンが抱き着く。
「‥?! コリン? 」
さっき上げた腕をおろすことさえ忘れて、アンバーが動揺した声を出す。
コリンは抱き着いたまま、更に自分の頬をアンバーの胸に埋め‥すり‥と頬ずりする。
‥と思ったら、
「熱っつ! 」
アンバーが両腕でばりっとコリンを自分の胸から剥がした。
「至近距離で雷魔法打つとは‥お前、俺を殺そうとしてるのか‥、抱き着いてからの至近距離での攻撃とか‥凄まじいハニートラップ(←? )だな‥っ‥」
攻撃を受けた部分なのだろう、ちょっと焦げた鎖骨辺りをさすりながらアンバーがコリンを睨む。
「イヤなに‥驚かしただけだ。‥でも、そうか‥」
アンバーの怒りをさらっと流したコリンが、ぶつぶつ言いながらアンバーから離れる。
と、
「ちょ‥な‥!? 」
コリンからアンバーに向かって真っすぐ線を引くように地面が盛り上がる。
と、その場所が太陽光を跳ね返してきらきらと見える。
‥霜柱?!
その先にいるアンバーは足を地面に縫い付けられ‥
次の瞬間、憤怒の形相でその氷を解かす。
「何のつもりだ‥」
低い、低い声。
「‥吸わないの? 」
対するコリンの声も低い。
「は? 」
予想外の‥全く意味の分からないコリンの言葉に、アンバーは眉をしかめて、コリンを睨む。
「魔素、吸わないの? 」
コリンが、アンバーの瞳を見上げる。
「魔素? 」
アンバーが息をのむ。
「‥僕を攻撃するために、周りの魔素を吸って魔力に替えて攻撃する方が効率的だと思うけど。‥現にアンバーの魔力はさっきの「魔力遮断」と「ファイアーブレス」で半分以下に減っている」
アンバーの瞳を睨むように見つめたままコリンが言葉を続ける。
「‥何を言って‥」
アンバーがもう一度息をのむ、が、視線が外せない。‥高等魔法の「行動制御」だ。
コリンは、アンバーを試している。
嘘を言わないか、目を見て判断しようとしている。
目を見つめられても、嘘が言える人間ではないと、コリンはアンバーを「信じてい」いる。
ふ、と身体から力が抜ける。
身体が一気に軽くなったアンバーは、その場に膝から崩れ落ちる。
そのアンバーの腕をコリンが‥相変わらずの力でぐいっと引っ張り上げ、とん、と自分の胸の真ん中あたりに固定する。
「こ‥コリン!? 」
いや、コリンは男だ、男だからこういうことは‥気持ち悪いとかいう類の行為なはずなんだけど‥ドキドキする。もう、赤面して‥顔から火が出そうってこういうのだろうって感じだ。
コリンは、平坦な‥だけどちょっと艶のある声で
「アンバー、僕に触れて。‥目を瞑って、僕に触れた手に意識を集中させて‥」
言って、自分も目を閉じた。
ええ!?
「‥言う通りに」
コリンのイラついた様な低い声に、ひっと思わず声を上げそうになる。
「手に集中‥!? ええと‥目を瞑って‥だっけ?? 」
ふわ、っと‥
アンバーとコリンの周りが温かくなる。
シークには多少魔力がある。だから、二人の間で魔力が移動したのが分かった。
ああ、これ魔力譲渡だ。ヒールみたいに魔力で傷を治すんじゃなくて、まっさらな「魔力」を他の魔術士に譲るやつだ。
ヒールは、「光魔法」っていう「色」がついてて、それは目的の為にしか使われない。だけど、魔力譲渡は、まっさらで「色」がついてない魔力だから、例えばそれをアンバーの火魔法にも闇魔法にも使える。
「アンバー悪かった。ちょっと試したかったんだ。‥黙って試したりして‥悪かった。後で説明するから、とにかく魔力を回復させて‥」
コリンの静かな声。
「きれい‥」
魔力がないナナフルには、魔力の移動は見えなかった。
ただ、周りがキラキラ輝いて見えた。
コリンの金茶の髪がそのキラキラに照らされて、金の糸の様に見える。
神々しい‥。
美形二人が佇むそれは‥一枚の宗教画の様にも、見えた。
「綺麗だけど‥」
‥ドキドキする。
心臓に、悪い‥。
「なんか、コリンがアンバーを誘惑してるみたいに見える‥」
「それな‥」
若干赤面したザッカとナナフルがコリンたちから目をそらす。他人の濡れ場を覗いてちゃった気分に‥ちょっと似てる‥。
気まずい‥。
俺は‥
シークはぐっと拳を握りしめて、コリンたちを睨んだ。
目をそらしたりなんかしてやらないぞ!! ガン見してやる!!
‥後で、ちょっと拗ねてるシークに気付いたコリンが盛大に慌てて、言い訳を言い続けながら宥めたのはいうまでもない。
ふむ、とザッカが唸る。
「僕一人が、ちょっと調べただけでわかったようなことは、勿論分かってたでしょうね」
なんせ、人数もいるし、準備期間が長い。例え、個人の能力差があっても、人数と時間がそれを埋めてくれるだろう。それに‥「明確な目的」がある。相手の目的も分からず調べているコリンたちとは違う。
「あと、ここで調べておけることはある? 」
シークの問いかけに、コリンは首を傾げて暫く考える素振りをし、間もなくして首を振る。
「無いと思います。少なくとも、今は思いつきません。ここにいても仕方が無いから、一度帰った方がいいかと」
シークとザッカが頷く。
「よう、お帰‥」
ニコニコと機嫌のいい顔で三人を迎えたアンバーに
コリンが抱き着く。
「‥?! コリン? 」
さっき上げた腕をおろすことさえ忘れて、アンバーが動揺した声を出す。
コリンは抱き着いたまま、更に自分の頬をアンバーの胸に埋め‥すり‥と頬ずりする。
‥と思ったら、
「熱っつ! 」
アンバーが両腕でばりっとコリンを自分の胸から剥がした。
「至近距離で雷魔法打つとは‥お前、俺を殺そうとしてるのか‥、抱き着いてからの至近距離での攻撃とか‥凄まじいハニートラップ(←? )だな‥っ‥」
攻撃を受けた部分なのだろう、ちょっと焦げた鎖骨辺りをさすりながらアンバーがコリンを睨む。
「イヤなに‥驚かしただけだ。‥でも、そうか‥」
アンバーの怒りをさらっと流したコリンが、ぶつぶつ言いながらアンバーから離れる。
と、
「ちょ‥な‥!? 」
コリンからアンバーに向かって真っすぐ線を引くように地面が盛り上がる。
と、その場所が太陽光を跳ね返してきらきらと見える。
‥霜柱?!
その先にいるアンバーは足を地面に縫い付けられ‥
次の瞬間、憤怒の形相でその氷を解かす。
「何のつもりだ‥」
低い、低い声。
「‥吸わないの? 」
対するコリンの声も低い。
「は? 」
予想外の‥全く意味の分からないコリンの言葉に、アンバーは眉をしかめて、コリンを睨む。
「魔素、吸わないの? 」
コリンが、アンバーの瞳を見上げる。
「魔素? 」
アンバーが息をのむ。
「‥僕を攻撃するために、周りの魔素を吸って魔力に替えて攻撃する方が効率的だと思うけど。‥現にアンバーの魔力はさっきの「魔力遮断」と「ファイアーブレス」で半分以下に減っている」
アンバーの瞳を睨むように見つめたままコリンが言葉を続ける。
「‥何を言って‥」
アンバーがもう一度息をのむ、が、視線が外せない。‥高等魔法の「行動制御」だ。
コリンは、アンバーを試している。
嘘を言わないか、目を見て判断しようとしている。
目を見つめられても、嘘が言える人間ではないと、コリンはアンバーを「信じてい」いる。
ふ、と身体から力が抜ける。
身体が一気に軽くなったアンバーは、その場に膝から崩れ落ちる。
そのアンバーの腕をコリンが‥相変わらずの力でぐいっと引っ張り上げ、とん、と自分の胸の真ん中あたりに固定する。
「こ‥コリン!? 」
いや、コリンは男だ、男だからこういうことは‥気持ち悪いとかいう類の行為なはずなんだけど‥ドキドキする。もう、赤面して‥顔から火が出そうってこういうのだろうって感じだ。
コリンは、平坦な‥だけどちょっと艶のある声で
「アンバー、僕に触れて。‥目を瞑って、僕に触れた手に意識を集中させて‥」
言って、自分も目を閉じた。
ええ!?
「‥言う通りに」
コリンのイラついた様な低い声に、ひっと思わず声を上げそうになる。
「手に集中‥!? ええと‥目を瞑って‥だっけ?? 」
ふわ、っと‥
アンバーとコリンの周りが温かくなる。
シークには多少魔力がある。だから、二人の間で魔力が移動したのが分かった。
ああ、これ魔力譲渡だ。ヒールみたいに魔力で傷を治すんじゃなくて、まっさらな「魔力」を他の魔術士に譲るやつだ。
ヒールは、「光魔法」っていう「色」がついてて、それは目的の為にしか使われない。だけど、魔力譲渡は、まっさらで「色」がついてない魔力だから、例えばそれをアンバーの火魔法にも闇魔法にも使える。
「アンバー悪かった。ちょっと試したかったんだ。‥黙って試したりして‥悪かった。後で説明するから、とにかく魔力を回復させて‥」
コリンの静かな声。
「きれい‥」
魔力がないナナフルには、魔力の移動は見えなかった。
ただ、周りがキラキラ輝いて見えた。
コリンの金茶の髪がそのキラキラに照らされて、金の糸の様に見える。
神々しい‥。
美形二人が佇むそれは‥一枚の宗教画の様にも、見えた。
「綺麗だけど‥」
‥ドキドキする。
心臓に、悪い‥。
「なんか、コリンがアンバーを誘惑してるみたいに見える‥」
「それな‥」
若干赤面したザッカとナナフルがコリンたちから目をそらす。他人の濡れ場を覗いてちゃった気分に‥ちょっと似てる‥。
気まずい‥。
俺は‥
シークはぐっと拳を握りしめて、コリンたちを睨んだ。
目をそらしたりなんかしてやらないぞ!! ガン見してやる!!
‥後で、ちょっと拗ねてるシークに気付いたコリンが盛大に慌てて、言い訳を言い続けながら宥めたのはいうまでもない。
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