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46.向いてないからって、やらなくていいってわけではないらしい。
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友達付き合いは大変。
‥少なくとも僕は。
教会に来て、誰も知ってる子はいなくて‥。周りは金持ちの子が多くて、教会に来る前に教室(幼稚園的なところ)に来てる子が多くて、そこで字を学んでたり‥。僕は、両親から字や勉強をかなり学んでいたから、彼らと比べて遜色はなかった。彼らは、平民の僕が、‥教室に行っていないのに‥字や勉強が出来るのが憎かったようだ。「生意気だ」って虐められた。金持ちで「力の強い子たち」に虐められてる僕と友達になるメリットは他の子たちには無かったらしく、誰も僕に話しかけてくる子もいなかった。
僕は完全に孤立してた。
だから、一人で勉強も魔術も頑張って、絶対こいつらに負けないぞって。
友達付き合いとか‥、向いてないことに時間を割くより、自分がすべきことは他にある。
‥そう思ってた。
でも、そうじゃなかったみたいだね。
‥苦手でも、しなきゃ、いけなかったみたい。
あそこで、喧嘩腰にするばっかりじゃなくって、もっとしようがあったのかもしれない。‥他にも僕みたいな子はいたけど、その子は、そのうち友達が出来てたものね。
「でも、なんで友達付き合い‥教会じゃあんなに難しかったんだろう。子供の頃は、周りに住んでる子供みんな友達だったのに」
ぼそり、と呟いて訝し気に‥首を傾げる。
「そりゃやっぱり、優劣付けられるような環境では、ライバル心も湧くだろうし‥みんなお友達じゃなくなるよな。自分より勉強が出来る子は、羨ましいし、憎らしいし、悔しい。ましてや、自分たちよりお金持ちじゃない‥って理由で蔑んできた子だったら‥まあ、「生意気な」ってなる‥んだろうね」
ザッカが肩をすくめる。
「子供の頃は、そういうのなくって、皆兄弟みたいに育つものね」
と、ナナフル。
「コリンの兄弟や両親なんかのフォローだって自然に入ってたんだろうしね。「「ごめんな、コリンはちょっと人見知りでね」ってお兄さんから事前に聞かされてたら、ちょっとコリンがよそよそしい態度を取ったとしても「ああ、そういえば、人見知りって(兄が)言ってたな」って感じで、「感じ悪い子だな」ってならなかったりする。‥そういうちょっとした違いはあるんじゃないかな? 」
って言ったのは、コリンの家族に会ったことがあるシークだ。
「そっか‥」
‥自分一人で頑張っていけるって思ってた。
実際、ずっと自分一人で戦って来た。
でも‥
結局は、思ったより自分は「出来てなかった」。
コリンは、力なく笑った。
恥ずかしい。
結局は、家族に守られてたのに、そんなことも知らずにいきがって。
僕はいつになったら、「独り立ち」出来るんだろう‥。
そう思ったら、自然に眉間に皴がよる。
歯を食いしばって俯くと、
「ま。それをひとつ知れたってことで、また一つ成長したってことだろ。
出来てるって過信は、成長を妨げる要因になる‥常に人の批判を真摯に受け止めて、只の悪口だと思うことなかれ。暴言を言われたなら‥ただの罵声なら無視しろ。傷付いて立ち止まっていてしまうだけ時間が無駄だ。
もし、その悪口が具体的であったなら、それは、手痛い忠告やアドバイスだと思って、自分を顧み、改善に勤めよ
って、オッサンが良く言ってた」
頭の上からアンバーの声が聞こえて来た。
「深い言葉だね‥。オッサンって、誰? 」
聞き返したのは、ナナフルだ。
‥オッサンって言葉がこんなに似合わない男は、そういないだろう。
コリンが言ったところで、そう違和感はないだろう。コリンは、あんな見かけだけど、普段からわりと口が悪いし、ちょっと腹黒いし、あざといし、清楚で品行方正からは程遠い性格をしている。
「俺の両親の仇のロング。さっき話した、俺に魔術を教えてくれた人。
あいつは、俺が喧嘩に負けて帰ってくるのを凄く嫌がった。「びーびー泣くな、鬱陶しい」って、まあ、慰められた想い出はないね。
それで、何時も俺に言ってたんだ。それこそ、口癖のようにな。「お前は、あいつに負けたと思うか? それは違う。お前はお前に負けたんだ」だの「お前は、運が悪かったって言うけど、運なんてもんは、実力についてくるおまけみたいなもんだ。お前はあいつより全然実力で劣ってる。自分を過大評価するな」だの‥俺を蔑むことを嬉々として言ってくる奴だった」
アンバーは、ナナフルに対しては、若干語調を柔らかくする。
やっぱり美人に乱暴な言葉って使いにくい。その若干柔和になった表情を見て、またザッカが不機嫌になっている。ザッカは、けっこうヤキモチ焼きなんだ。
「え‥それって‥でも‥? 」
ナナフルが、アンバーの言葉に首を傾げる。
蔑む言葉‥? そんな風には聞こえないんだけど‥?
アンバーが頷く。
「うん。‥この頃は、あれはアドバイスだったんだな‥って時々、思う。あの時は、悲しい時も嬉しい時もとにかく説教されてたから、あいつに対して反抗ばかりしていた気がするけどね。
あれは‥口の悪いあいつなりの‥叱咤激励だったんだなって‥」
と、最後はにっこりとナナフルに優しく微笑みかける。
「いい奴だったんだな。実は」
にっこりと微笑み返したのは、シークだった。
ナナフルは、隣に座るザッカに急にぐっと顎をつかまれ、自分の方を向かされている。
ザッカにしてみたら美形なアンバーの笑顔をナナフルに見せたくない! って感じなんだろうが、急にそんなことをされたナナフルは「?? 」って顔をしている。
「‥いい奴だったとは思わないけど‥少なくとも、俺に時間を割くのすら面倒だ‥ってタイプでもなかったらしいな。まあ、言葉を選ぶ気はなかったみたいだけど。単に‥説教好きだっただけかもしれないしな。
ロングは結婚をしていなかったから、子供と呼べるような奴は俺しかいなかった。だから、俺に自分の座右の銘‥ってか、自分の考えを教えたかった‥とかだったのかな」
アンバーが、ちょっと懐かしそうな顔をした。その顔を見て、シークがまた微笑ましいものを見る様な優しい微笑を浮かべ
「案外、悪の魔術師計画に巻き込まれてなかったら、いいお父さんになれてたのかもな」
って言った。
アンバーは、眉をわざと大袈裟にしかめると
「‥まあ、そういうのは、憶測の話にしかならないから‥」
ってため息をついて、居心地の悪そうな顔をした。
自分の子供の頃の話をして、ちょっとむずがゆくて恥ずかしくなったんだろう。
そんなアンバーは、今までの大人っぽい雰囲気と違って、酷く人間臭かった。
「そうだね」
ふわり、とシークが微笑む。
「よし。教会長をボコりに行ってくる」
「「へ?? 」」
今まで黙っていたコリンが急に顔を上げて、低く呟いた。
きりっとした顔が、凛々しい。
コリンは、いつに増して真剣で、前を見据える瞳には、いつもの様な甘さは何処にも見られなかった。が、冷静‥とは違う。真剣に真面目に‥でも何処か興奮を隠しているようなそんな表情。
頬を高揚させて、「やるぞ! 」って決意を胸に秘めた‥そんな顔をしている。
面食らって、コリンをガン見したのは、ザッカとシークだ。
「苦手なこと避けてちゃいけない。うん。そりゃそうだ。教会長、親切だったんだけど、ちょっと苦手だったんだよな~。目つきがねちっこいって言うか~。だから出来るなら関わり合いたくなかったんだ‥そうだった。なんか色々あってそんなことはすっかり頭から抜けてた‥。
まあ‥直接正面から‥ってのは、やめよう。僕がかっとなって、‥やっちゃわないとは限らない。‥犯罪に問われても困るから、僕がしたって分からない様にしよう。それこそ、人災とは気付かれない様な事を気付かれないように‥。そうだ、小さいことをいっぱいやろう。大きなことひとつ‥より、小さいことが重なる方が地味にクルんだ‥で、弱らせたら勝手にぼろを出すでしょうとも‥」
あ、さっき黙ってたのって、落ち込んでた‥とかじゃなくって‥アンバーの話が心に染みてた‥とかでもなくって、「悪戯」の内容考えてた‥とか??
小さいことが重なる方が地味にクル。
‥小さいことって??
「よし、まずは行動パターンの観察だ。そしてその上で、計画を練ろう」
キラーンって無駄にいい顔したぞ。
‥いいや、止めない。それに、敵の視察って意味があるしね。あの城に気配やら姿を消して忍び込めたコリンだ。尾行の技術なんてなくても、尾行位できるだろう。
‥ホントにスペックやらなんやら色んなもの無駄にしてる‥。唯一美貌は有効利用されてるみたいだけど‥。
いや、俺だったら、きっともっとうまく使える自信がある。
アンバーは目の前の残念な絶世の美少女を心底呆れた‥って目で眺めてため息をついた。
「因みに、小さなことって? 」
シークが恐る恐る言った。
「家に入って蝋燭をつけた瞬間、生温かい風と共に消える。夜トイレに行こうと思ってドアを開けたら、見知らぬ女と目が合う。ポイントは、目が合う、だけ。女の全身とか要らないの。鏡を覗いたら、さ、っと黒い影が走った気がする。これも、本の一瞬。それも、一回だけ。階段を下りてて、一段ある様に見えて、実はない。あれ、地味に怖いよね。これも、一回だけ」
嬉々として、次から次へと悪質な悪戯を羅列する。
コリン‥怖いよ。絶対、全部透明化の魔術で簡単にやるんだよね。で、やられた方が絶対怖いよね‥。
「蛇口捻ろうと思ったら、長い髪がまとわりついてる‥も怖いよね。あと、肩を叩かれて、振り向いたら誰もいない‥とか。
風呂に長い毛が落ちてるとかもね」
ナナフルが楽しそうに付け加える。ちらっと最後にザッカを見たのをシークは見逃さなかった。
「いや、あれは! やましいことは何にもない! ただ、急に雨が降ってきて、後輩がずぶ濡れになったから風呂を貸しただけだ! あと‥肩を叩いた後、消えたのも‥急に足元の板が抜けて落ちただけだ! 」
あ、過去にザッカさんしでかしたんだ‥。
ってか、急に足元の板が抜けるって‥何? おい、コリンなんで目線が泳いでる?
「いや、あのね。あんなに驚くと思ってなかったの。ごめんね。ナナフルさん」
「コリン‥」
め、って顔する麗しのナナフルさんと、
「‥‥俺にも謝れ‥」
悪鬼の如くな顔のザッカさん。
コリンの悪戯で精神的に弱らせよう攻撃‥絶対怖い。絶対、敵に回しちゃダメだ‥。
‥少なくとも僕は。
教会に来て、誰も知ってる子はいなくて‥。周りは金持ちの子が多くて、教会に来る前に教室(幼稚園的なところ)に来てる子が多くて、そこで字を学んでたり‥。僕は、両親から字や勉強をかなり学んでいたから、彼らと比べて遜色はなかった。彼らは、平民の僕が、‥教室に行っていないのに‥字や勉強が出来るのが憎かったようだ。「生意気だ」って虐められた。金持ちで「力の強い子たち」に虐められてる僕と友達になるメリットは他の子たちには無かったらしく、誰も僕に話しかけてくる子もいなかった。
僕は完全に孤立してた。
だから、一人で勉強も魔術も頑張って、絶対こいつらに負けないぞって。
友達付き合いとか‥、向いてないことに時間を割くより、自分がすべきことは他にある。
‥そう思ってた。
でも、そうじゃなかったみたいだね。
‥苦手でも、しなきゃ、いけなかったみたい。
あそこで、喧嘩腰にするばっかりじゃなくって、もっとしようがあったのかもしれない。‥他にも僕みたいな子はいたけど、その子は、そのうち友達が出来てたものね。
「でも、なんで友達付き合い‥教会じゃあんなに難しかったんだろう。子供の頃は、周りに住んでる子供みんな友達だったのに」
ぼそり、と呟いて訝し気に‥首を傾げる。
「そりゃやっぱり、優劣付けられるような環境では、ライバル心も湧くだろうし‥みんなお友達じゃなくなるよな。自分より勉強が出来る子は、羨ましいし、憎らしいし、悔しい。ましてや、自分たちよりお金持ちじゃない‥って理由で蔑んできた子だったら‥まあ、「生意気な」ってなる‥んだろうね」
ザッカが肩をすくめる。
「子供の頃は、そういうのなくって、皆兄弟みたいに育つものね」
と、ナナフル。
「コリンの兄弟や両親なんかのフォローだって自然に入ってたんだろうしね。「「ごめんな、コリンはちょっと人見知りでね」ってお兄さんから事前に聞かされてたら、ちょっとコリンがよそよそしい態度を取ったとしても「ああ、そういえば、人見知りって(兄が)言ってたな」って感じで、「感じ悪い子だな」ってならなかったりする。‥そういうちょっとした違いはあるんじゃないかな? 」
って言ったのは、コリンの家族に会ったことがあるシークだ。
「そっか‥」
‥自分一人で頑張っていけるって思ってた。
実際、ずっと自分一人で戦って来た。
でも‥
結局は、思ったより自分は「出来てなかった」。
コリンは、力なく笑った。
恥ずかしい。
結局は、家族に守られてたのに、そんなことも知らずにいきがって。
僕はいつになったら、「独り立ち」出来るんだろう‥。
そう思ったら、自然に眉間に皴がよる。
歯を食いしばって俯くと、
「ま。それをひとつ知れたってことで、また一つ成長したってことだろ。
出来てるって過信は、成長を妨げる要因になる‥常に人の批判を真摯に受け止めて、只の悪口だと思うことなかれ。暴言を言われたなら‥ただの罵声なら無視しろ。傷付いて立ち止まっていてしまうだけ時間が無駄だ。
もし、その悪口が具体的であったなら、それは、手痛い忠告やアドバイスだと思って、自分を顧み、改善に勤めよ
って、オッサンが良く言ってた」
頭の上からアンバーの声が聞こえて来た。
「深い言葉だね‥。オッサンって、誰? 」
聞き返したのは、ナナフルだ。
‥オッサンって言葉がこんなに似合わない男は、そういないだろう。
コリンが言ったところで、そう違和感はないだろう。コリンは、あんな見かけだけど、普段からわりと口が悪いし、ちょっと腹黒いし、あざといし、清楚で品行方正からは程遠い性格をしている。
「俺の両親の仇のロング。さっき話した、俺に魔術を教えてくれた人。
あいつは、俺が喧嘩に負けて帰ってくるのを凄く嫌がった。「びーびー泣くな、鬱陶しい」って、まあ、慰められた想い出はないね。
それで、何時も俺に言ってたんだ。それこそ、口癖のようにな。「お前は、あいつに負けたと思うか? それは違う。お前はお前に負けたんだ」だの「お前は、運が悪かったって言うけど、運なんてもんは、実力についてくるおまけみたいなもんだ。お前はあいつより全然実力で劣ってる。自分を過大評価するな」だの‥俺を蔑むことを嬉々として言ってくる奴だった」
アンバーは、ナナフルに対しては、若干語調を柔らかくする。
やっぱり美人に乱暴な言葉って使いにくい。その若干柔和になった表情を見て、またザッカが不機嫌になっている。ザッカは、けっこうヤキモチ焼きなんだ。
「え‥それって‥でも‥? 」
ナナフルが、アンバーの言葉に首を傾げる。
蔑む言葉‥? そんな風には聞こえないんだけど‥?
アンバーが頷く。
「うん。‥この頃は、あれはアドバイスだったんだな‥って時々、思う。あの時は、悲しい時も嬉しい時もとにかく説教されてたから、あいつに対して反抗ばかりしていた気がするけどね。
あれは‥口の悪いあいつなりの‥叱咤激励だったんだなって‥」
と、最後はにっこりとナナフルに優しく微笑みかける。
「いい奴だったんだな。実は」
にっこりと微笑み返したのは、シークだった。
ナナフルは、隣に座るザッカに急にぐっと顎をつかまれ、自分の方を向かされている。
ザッカにしてみたら美形なアンバーの笑顔をナナフルに見せたくない! って感じなんだろうが、急にそんなことをされたナナフルは「?? 」って顔をしている。
「‥いい奴だったとは思わないけど‥少なくとも、俺に時間を割くのすら面倒だ‥ってタイプでもなかったらしいな。まあ、言葉を選ぶ気はなかったみたいだけど。単に‥説教好きだっただけかもしれないしな。
ロングは結婚をしていなかったから、子供と呼べるような奴は俺しかいなかった。だから、俺に自分の座右の銘‥ってか、自分の考えを教えたかった‥とかだったのかな」
アンバーが、ちょっと懐かしそうな顔をした。その顔を見て、シークがまた微笑ましいものを見る様な優しい微笑を浮かべ
「案外、悪の魔術師計画に巻き込まれてなかったら、いいお父さんになれてたのかもな」
って言った。
アンバーは、眉をわざと大袈裟にしかめると
「‥まあ、そういうのは、憶測の話にしかならないから‥」
ってため息をついて、居心地の悪そうな顔をした。
自分の子供の頃の話をして、ちょっとむずがゆくて恥ずかしくなったんだろう。
そんなアンバーは、今までの大人っぽい雰囲気と違って、酷く人間臭かった。
「そうだね」
ふわり、とシークが微笑む。
「よし。教会長をボコりに行ってくる」
「「へ?? 」」
今まで黙っていたコリンが急に顔を上げて、低く呟いた。
きりっとした顔が、凛々しい。
コリンは、いつに増して真剣で、前を見据える瞳には、いつもの様な甘さは何処にも見られなかった。が、冷静‥とは違う。真剣に真面目に‥でも何処か興奮を隠しているようなそんな表情。
頬を高揚させて、「やるぞ! 」って決意を胸に秘めた‥そんな顔をしている。
面食らって、コリンをガン見したのは、ザッカとシークだ。
「苦手なこと避けてちゃいけない。うん。そりゃそうだ。教会長、親切だったんだけど、ちょっと苦手だったんだよな~。目つきがねちっこいって言うか~。だから出来るなら関わり合いたくなかったんだ‥そうだった。なんか色々あってそんなことはすっかり頭から抜けてた‥。
まあ‥直接正面から‥ってのは、やめよう。僕がかっとなって、‥やっちゃわないとは限らない。‥犯罪に問われても困るから、僕がしたって分からない様にしよう。それこそ、人災とは気付かれない様な事を気付かれないように‥。そうだ、小さいことをいっぱいやろう。大きなことひとつ‥より、小さいことが重なる方が地味にクルんだ‥で、弱らせたら勝手にぼろを出すでしょうとも‥」
あ、さっき黙ってたのって、落ち込んでた‥とかじゃなくって‥アンバーの話が心に染みてた‥とかでもなくって、「悪戯」の内容考えてた‥とか??
小さいことが重なる方が地味にクル。
‥小さいことって??
「よし、まずは行動パターンの観察だ。そしてその上で、計画を練ろう」
キラーンって無駄にいい顔したぞ。
‥いいや、止めない。それに、敵の視察って意味があるしね。あの城に気配やら姿を消して忍び込めたコリンだ。尾行の技術なんてなくても、尾行位できるだろう。
‥ホントにスペックやらなんやら色んなもの無駄にしてる‥。唯一美貌は有効利用されてるみたいだけど‥。
いや、俺だったら、きっともっとうまく使える自信がある。
アンバーは目の前の残念な絶世の美少女を心底呆れた‥って目で眺めてため息をついた。
「因みに、小さなことって? 」
シークが恐る恐る言った。
「家に入って蝋燭をつけた瞬間、生温かい風と共に消える。夜トイレに行こうと思ってドアを開けたら、見知らぬ女と目が合う。ポイントは、目が合う、だけ。女の全身とか要らないの。鏡を覗いたら、さ、っと黒い影が走った気がする。これも、本の一瞬。それも、一回だけ。階段を下りてて、一段ある様に見えて、実はない。あれ、地味に怖いよね。これも、一回だけ」
嬉々として、次から次へと悪質な悪戯を羅列する。
コリン‥怖いよ。絶対、全部透明化の魔術で簡単にやるんだよね。で、やられた方が絶対怖いよね‥。
「蛇口捻ろうと思ったら、長い髪がまとわりついてる‥も怖いよね。あと、肩を叩かれて、振り向いたら誰もいない‥とか。
風呂に長い毛が落ちてるとかもね」
ナナフルが楽しそうに付け加える。ちらっと最後にザッカを見たのをシークは見逃さなかった。
「いや、あれは! やましいことは何にもない! ただ、急に雨が降ってきて、後輩がずぶ濡れになったから風呂を貸しただけだ! あと‥肩を叩いた後、消えたのも‥急に足元の板が抜けて落ちただけだ! 」
あ、過去にザッカさんしでかしたんだ‥。
ってか、急に足元の板が抜けるって‥何? おい、コリンなんで目線が泳いでる?
「いや、あのね。あんなに驚くと思ってなかったの。ごめんね。ナナフルさん」
「コリン‥」
め、って顔する麗しのナナフルさんと、
「‥‥俺にも謝れ‥」
悪鬼の如くな顔のザッカさん。
コリンの悪戯で精神的に弱らせよう攻撃‥絶対怖い。絶対、敵に回しちゃダメだ‥。
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