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42.珍しい、わけではない。
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それぞれの理由で暗くなっているアンバーとコリンの様子を敢えてスルーして、
「アンバーの仲間では、闇属性持ちっていうのは珍しかったのか? 」
ザッカが質問を続けた。
インタビューの極意は、如何に対象者に話しやすい環境をつくるかだ。
相槌も打ち、話の続きを促し、時には煽てもする。だけど、脱線しない様に、手綱は握っておく。
対象者には話しやすい環境を‥
だのに、‥落ち込ませてどうする。コリンは、インタビュアーとしてまだまだだな‥。
ザッカは、心の中でちょっとため息をついた。
まあ、‥これだけの人間がいるんだ。
自由に発言をさせて、その中からいるものを抽出して‥拾っていく方法の方がいいかな。
その為には、会話を発展させていく必要があるから、ここで会話を終結させている場合ではない。
‥落ち込ませてる場合ではない。
「いいや? 珍しくなかったよ」
さっきまで項垂れていたアンバーが顔を上げ、ザッカを見て、首を振る。
それを聞いて、同じくさっきまで項垂れていたコリンが顔を上げ
「うっそだあ。だって、全然先生見つからなかったよ? それって、それだけ需要が無いってことだよね?
‥あ‥。表だから‥か? 」
不満な声を上げ‥
途中で気付いたのか「ああ‥そうか」と‥難しい顔をする。
‥ああ、そうか。表だから持ってても、誰もわざわざ言わないんだ。
だって、イメージが悪いから。
光属性も、闇属性も主流は、精神操作だ。
闇属性の方がその傾向が顕著だから、闇属性の方がよりその印象があるんだけど、光属性もメインは精神操作だ。
光属性の魔術士と対話すると、安心するし、多幸感を感じる気がする‥っていうのは、何も、術者の人柄や雰囲気の問題だけじゃない。そう感じる魔術‥仕込まれたって言ったら語弊があるが‥の術中に、魔術士は対象者を誘うのだ。
状況は‥印象は全く真逆だけど、闇属性の魔術士もそれと全く同じ状況を作りだす。
恐怖感、焦燥感‥絶望感、嫌悪感。アンバーが使っている煽りやらもそれの一つだ。
二割の適性と、あと二割は元々持っている性格、あと六割が訓練っていう特殊な属性だ。
二割の適性‥というのは、精神部分ではない‥実技の部分があるからだ。
光属性だと、治療と、結界。闇属性だと、威圧と再生(通常は、対象は主に一人の感覚と行動程度。死者に「再生」は効かない)だ。(あの森を再生させたアンバーがどれ程凄い術者か、という話だ。そして、それを無茶振りするコリンっていうね‥)
再生と治療は、「傷をする状態の前に戻る」と「傷が治った状態にする」と、傷が完治するという結果だけみたら似ているから、時々混合されやすいが、施術方法が全く違い、人体に魔術をかけた場合、‥なんとなく想像がつくと思うけど、光魔法だと「あったかくって気持ちい」という感じがして、闇魔法だと「やたら痛い」。
肩こりやなんかの「状態異常」は、治療術では治療できるが、「再生」の対象ではないので、(徐々にその状態になったという状況は「再生」の対象ではない)元の健康な状態に「再生」されることはない。
病気も同様。
突然のケガやなんかは再生で直せるけど、病気は「徐々にその状態になった」ので治せない。
光魔法の「治療」: 病気や怪我の治療。対象は生物のみで、無機物は対象外。以前の怪我や、生まれつきの不調も治療できる。死者の治療は不可能。
闇魔法の「再生」: 突然の怪我に対応。怪我の前の状態に戻すことが出来る。生まれつきの不調については、「不調では無かった状態」が存在しないので、「再生」不能。以前の怪我については、術者のレベルによって、「以前」というスパンが決まる。術者が上級だと、「以前」が伸びるが、そうではない場合は、「直前のみ」ということになり、大概がその程度。術者に「愛がない」(笑)から、人体に施術した際は、やたら痛い。
という感じかな。
「再生」は、昔ちらっと言ったみたいに、人体に使用される場合は、拷問の為に使用される位で、人体には普通は「治療」が使われる。
実技部分は、適性があり、なおかつ訓練をしないと「職業として成立する」レベルにならない。だけど、光属性の治療と結界は職業として需要が多いから、人気は高い。教会としても、イメージ的にもいいし‥力を入れる。だけど、威圧は、単体だと使えないし‥再生は取得が困難だ。困難なんだけど、職業としての需要はあまりない。無くもないけど‥誓約士同様凄くマイナーだ。
あと、これも職業病‥の一種なのかもしれないけど、やっぱり光属性の魔術を使っている魔術士は、表情も柔らかく明るい。逆に、闇属性の魔術士は、‥やっぱり表情に出る。雰囲気にも出る。
アンバーが闇属性の魔術を使ってる時もそうだった。何とも絡みつくような嫌~な雰囲気と、あと、これはアンバーの美貌あってのものなんだろうけど、妙に甘い淫靡な雰囲気が辺りに漂っていた。
魅了は、光属性と闇属性の共通の魔術なんだけど、‥それは、納得できると思う。
癒される魅力も悪の魅力も‥人を惹きつけるもんね。
「僕たちが教会で‥表側で学んでいた人間だったから、闇属性の魔術の需要が少なかったってことか」
教会で魔術を学んでいる人間が、ダークなオーラ漂わせてる‥って感じ悪いもんな。
‥なるほどなるほど。
「コリンはダークなオーラ漂わせてないな」
ザッカがコリンを見た。
威圧‥もコリンが使っているところを何度か見たことはあるけど、別にそんな感じ‥いつもと変わった様子はなかった。
「ええ、僕はピンポイントに威圧だけ習っただけなんです。精神操作の方はノータッチだから、影響は受けにくかったんじゃないかと。
あと、威圧の取得に全然時間がかからなかったです。それが一番大きいと思いますよ。
闇魔法だったら闇魔法の、光魔法だったら光魔法の事を考えている時間が長い程影響を受けやすいですからね」
コリンがさらっと言って、にっこり微笑んだ。
‥つまり、威圧はあっさりマスターしたから、闇属性の魔術に染まるような時間はかかってない、ってことですね?
‥やっぱり、さらっと「私は優秀です」アピールしましたね?
ザッカは、ちらっと、悔しがっているであろうと思われるアンバーを視線だけで振り返る。
でも、アンバーは、うんうん、と小さく頷いて同意しているだけ。
また「厭味か」って顔されるか? って思ったコリンも、ちらりと‥うんうんと納得しているアンバーを見て、安堵したり、ちょっと不思議に思ったり。
‥さっき悔しがってたのって、魔力量の話だけなのかな? 技術面は‥確かに、アンバーも‥。闇属性の魔術なら完全にアンバーの方が上だもんな。
‥そうだ。アンバーは闇属性の魔術については、すこぶる優秀だった。なんせ、説明だけで最難度の「再生」成功させてたもんな‥。
因みに、そんなことは絶対に「よくあること」ではない。コリンが「威圧」を初見でマスターして(やっと見つけた)先生の自信を消失させる‥という事件があったが、あの先生がアンバーを受け持っていたら‥どうなっていただろうか。‥その場で気絶するかもしれない。
‥いや、魔術オタクぽかったから「百人に一人の逸材だ! 」って興奮し過ぎて、頭に血がのぼって倒れるかも。(←結局倒れる)
‥それ位の大事件だ。
何それ。ズルい。‥すっごいジェラシー。
センスばっかりは練習したところで何とも出来ないからなあ。
コリンは、また‥今度はちょっと睨むみたいに‥ちらっとアンバーを見て、
ちょっと下唇を出して、拗ねた様な顔をしてしまうのだった。
「その割に、アンバーってどっぷり闇色に染まってるよな。‥雰囲気とか。確か、他の属性も使えただろ? 」
ザッカが苦笑いした。
‥そういえば。
コリンも頷いた。
アンバーは、確か火だったか? 辺り一面を火の海にしてたよね?
だけど‥地獄の業火‥っとか、やたら悪っぽい火だった気がする‥
もちろんだけど、他の属性を使う際にも、「それらしい」オーラが出る。性格やなんかにも影響してくる。だから、属性を聞いて結構、「やっぱりね」って思うことがよくある‥って感じになるんだ。
複数の属性を持っている人間は、だから、そのうち一つの属性の性質だけしか表にでないってことは、普通はない。
コリンは氷と雷の魔術を主に使う。氷と水は別だ。水を凍らして氷‥ではない。無から氷を作り出すのだ。
大概氷属性の魔術士は、クールな‥とか言われるタイプが多い。
コリンがクール? ‥雷も属性だから、クールなのと激しいのが合体して、ああなったとか?? それとも、闇属性の魔術同様、特に考えないでも感覚で使えるから、意識してないってことか??
アンバーは、ああ、って小さく頷いて
「俺の雰囲気がダークなのは、あれだ。元からの性格だ。それと、ちょっと悪な方がモテるんだ」
‥本人は多分冗談で言ったつもりなんだろうけど、そんな風には全然見えない。
ちょっとドン引いた。
‥ないわ~。
誰にモテようとしてたんだ。あそこにいた兵士か? さっき全然興味ない宣言したコリンか?! それとも、こんなダークな俺もカッコイイ~か?! ナルシスト自意識過剰野郎め!
‥って思ったが、アンバーがモテるだろうってことは、否定しない。普通に、モテるだろう。スタイルもいいし、顔も声もいい。おまけに魔術の才能ありまくり‥の天才君。普通にモテまくりだろう。
‥別に羨ましくはない。(‥負け惜しみじゃないよ! )
‥顔見知りになったよしみで教えてやる。
ザッカは、にやっとアンバーに笑うと
「ま、人にもよると思いますけどね」
言ってやった!
美形が必ずしもモテるとか思うなよな!!
「そうだそうだ! 」
コリン、大賛同。
‥負け惜しみ感が‥ 半端ない‥っ!
シークは苦笑い。ナナフルは‥
優しい微笑みがかえって残酷だわ~。寧ろ、呆れてくれ~。
ふふ、と微笑んで、ナナフルが覚めたお茶を淹れ直すために、立ち上がる。
台所で湯を沸かしながら
さっきまでの会話を整理する。
「闇の属性。先生の常備された隠れ里。用意周到な世襲計画‥。だけどそれは、‥別に短期集中で閉じこもって出来るものでは無い‥。じゃああそこで何が行われていたんだろう‥」
闇の属性は、裏には多い。
でも、それは元々の「隠れた需要」が満たされているに過ぎない。‥隠さなければ、闇の属性は珍しい属性ってわけではない。
それに加えて、アンバーの住んでいた隠れ里は、‥両親を目の前で殺害され、親の敵に育てられている子供ばかり‥心がすさんでいる者が多くてもおかしくはない。
だけど、その中で育ててもらった恩もあるだろうし、住んでいる内にここが故郷って感じで愛着も湧いてくるだろう。そして、信用も‥。
そこでの暮らしが当たり前になる‥。そして、それは子供である方が馴染みやすい‥。
魔術士の「後継者」に冒険者の子供を選んだのは‥、単純に「魔力を持っている子供」だってことが分かりやすいから。それと‥身元が分かりにくく、「殺害」「誘拐」したところで、足がつきにくいから。
魔力のある子どもを探す手間を減らし、子供に自分たちの望む形で魔力を学ばせるように仕向ける。
「彼ら」の望む形‥、暗殺者の育成? アンバーも攻撃型の魔術に優れているってコリンは言っていた。嫌な‥闇の属性を思わせる攻撃型の魔術を使うって‥。闇の属性‥裏に多い需要‥
アンバーが少し習っただけで使えた、最難度魔術「再生」‥。実は、アンバーは以前から知っていたんではないだろうか? ‥嘘を言っているようには見えなかったが、「それ」と認識していないだけで、以前からつかっていたとしたら‥。
再生‥
治療とは違う‥「元に戻す魔術」。
そういえば、さっき怪我をしているアンバーをコリンが治した時
「流石に天災魔術士の「治療」は痛くないな! 俺がならった「おまじない」は、もっと痛いぞ‥。仲間がやったらもっと痛いうえに、治らないしな」
って言っていなかったか?
再生は痛い。
怪我をしていない状態に「戻る」。それは‥治療に似ている‥。
闇の属性で、「治療」といって教えていたのは、「再生」だったってことか‥。そういう言葉で教わったわけでは無かった。だから、コリンに言われた時にもぴんとこなかった。だけど、‥方法ややり方はわかる。規模が全然違ったから同じものだと思わなかった‥?
隠れ里は、「再生」の魔術士を育成しようとしているんだ‥。
「アンバーの仲間では、闇属性持ちっていうのは珍しかったのか? 」
ザッカが質問を続けた。
インタビューの極意は、如何に対象者に話しやすい環境をつくるかだ。
相槌も打ち、話の続きを促し、時には煽てもする。だけど、脱線しない様に、手綱は握っておく。
対象者には話しやすい環境を‥
だのに、‥落ち込ませてどうする。コリンは、インタビュアーとしてまだまだだな‥。
ザッカは、心の中でちょっとため息をついた。
まあ、‥これだけの人間がいるんだ。
自由に発言をさせて、その中からいるものを抽出して‥拾っていく方法の方がいいかな。
その為には、会話を発展させていく必要があるから、ここで会話を終結させている場合ではない。
‥落ち込ませてる場合ではない。
「いいや? 珍しくなかったよ」
さっきまで項垂れていたアンバーが顔を上げ、ザッカを見て、首を振る。
それを聞いて、同じくさっきまで項垂れていたコリンが顔を上げ
「うっそだあ。だって、全然先生見つからなかったよ? それって、それだけ需要が無いってことだよね?
‥あ‥。表だから‥か? 」
不満な声を上げ‥
途中で気付いたのか「ああ‥そうか」と‥難しい顔をする。
‥ああ、そうか。表だから持ってても、誰もわざわざ言わないんだ。
だって、イメージが悪いから。
光属性も、闇属性も主流は、精神操作だ。
闇属性の方がその傾向が顕著だから、闇属性の方がよりその印象があるんだけど、光属性もメインは精神操作だ。
光属性の魔術士と対話すると、安心するし、多幸感を感じる気がする‥っていうのは、何も、術者の人柄や雰囲気の問題だけじゃない。そう感じる魔術‥仕込まれたって言ったら語弊があるが‥の術中に、魔術士は対象者を誘うのだ。
状況は‥印象は全く真逆だけど、闇属性の魔術士もそれと全く同じ状況を作りだす。
恐怖感、焦燥感‥絶望感、嫌悪感。アンバーが使っている煽りやらもそれの一つだ。
二割の適性と、あと二割は元々持っている性格、あと六割が訓練っていう特殊な属性だ。
二割の適性‥というのは、精神部分ではない‥実技の部分があるからだ。
光属性だと、治療と、結界。闇属性だと、威圧と再生(通常は、対象は主に一人の感覚と行動程度。死者に「再生」は効かない)だ。(あの森を再生させたアンバーがどれ程凄い術者か、という話だ。そして、それを無茶振りするコリンっていうね‥)
再生と治療は、「傷をする状態の前に戻る」と「傷が治った状態にする」と、傷が完治するという結果だけみたら似ているから、時々混合されやすいが、施術方法が全く違い、人体に魔術をかけた場合、‥なんとなく想像がつくと思うけど、光魔法だと「あったかくって気持ちい」という感じがして、闇魔法だと「やたら痛い」。
肩こりやなんかの「状態異常」は、治療術では治療できるが、「再生」の対象ではないので、(徐々にその状態になったという状況は「再生」の対象ではない)元の健康な状態に「再生」されることはない。
病気も同様。
突然のケガやなんかは再生で直せるけど、病気は「徐々にその状態になった」ので治せない。
光魔法の「治療」: 病気や怪我の治療。対象は生物のみで、無機物は対象外。以前の怪我や、生まれつきの不調も治療できる。死者の治療は不可能。
闇魔法の「再生」: 突然の怪我に対応。怪我の前の状態に戻すことが出来る。生まれつきの不調については、「不調では無かった状態」が存在しないので、「再生」不能。以前の怪我については、術者のレベルによって、「以前」というスパンが決まる。術者が上級だと、「以前」が伸びるが、そうではない場合は、「直前のみ」ということになり、大概がその程度。術者に「愛がない」(笑)から、人体に施術した際は、やたら痛い。
という感じかな。
「再生」は、昔ちらっと言ったみたいに、人体に使用される場合は、拷問の為に使用される位で、人体には普通は「治療」が使われる。
実技部分は、適性があり、なおかつ訓練をしないと「職業として成立する」レベルにならない。だけど、光属性の治療と結界は職業として需要が多いから、人気は高い。教会としても、イメージ的にもいいし‥力を入れる。だけど、威圧は、単体だと使えないし‥再生は取得が困難だ。困難なんだけど、職業としての需要はあまりない。無くもないけど‥誓約士同様凄くマイナーだ。
あと、これも職業病‥の一種なのかもしれないけど、やっぱり光属性の魔術を使っている魔術士は、表情も柔らかく明るい。逆に、闇属性の魔術士は、‥やっぱり表情に出る。雰囲気にも出る。
アンバーが闇属性の魔術を使ってる時もそうだった。何とも絡みつくような嫌~な雰囲気と、あと、これはアンバーの美貌あってのものなんだろうけど、妙に甘い淫靡な雰囲気が辺りに漂っていた。
魅了は、光属性と闇属性の共通の魔術なんだけど、‥それは、納得できると思う。
癒される魅力も悪の魅力も‥人を惹きつけるもんね。
「僕たちが教会で‥表側で学んでいた人間だったから、闇属性の魔術の需要が少なかったってことか」
教会で魔術を学んでいる人間が、ダークなオーラ漂わせてる‥って感じ悪いもんな。
‥なるほどなるほど。
「コリンはダークなオーラ漂わせてないな」
ザッカがコリンを見た。
威圧‥もコリンが使っているところを何度か見たことはあるけど、別にそんな感じ‥いつもと変わった様子はなかった。
「ええ、僕はピンポイントに威圧だけ習っただけなんです。精神操作の方はノータッチだから、影響は受けにくかったんじゃないかと。
あと、威圧の取得に全然時間がかからなかったです。それが一番大きいと思いますよ。
闇魔法だったら闇魔法の、光魔法だったら光魔法の事を考えている時間が長い程影響を受けやすいですからね」
コリンがさらっと言って、にっこり微笑んだ。
‥つまり、威圧はあっさりマスターしたから、闇属性の魔術に染まるような時間はかかってない、ってことですね?
‥やっぱり、さらっと「私は優秀です」アピールしましたね?
ザッカは、ちらっと、悔しがっているであろうと思われるアンバーを視線だけで振り返る。
でも、アンバーは、うんうん、と小さく頷いて同意しているだけ。
また「厭味か」って顔されるか? って思ったコリンも、ちらりと‥うんうんと納得しているアンバーを見て、安堵したり、ちょっと不思議に思ったり。
‥さっき悔しがってたのって、魔力量の話だけなのかな? 技術面は‥確かに、アンバーも‥。闇属性の魔術なら完全にアンバーの方が上だもんな。
‥そうだ。アンバーは闇属性の魔術については、すこぶる優秀だった。なんせ、説明だけで最難度の「再生」成功させてたもんな‥。
因みに、そんなことは絶対に「よくあること」ではない。コリンが「威圧」を初見でマスターして(やっと見つけた)先生の自信を消失させる‥という事件があったが、あの先生がアンバーを受け持っていたら‥どうなっていただろうか。‥その場で気絶するかもしれない。
‥いや、魔術オタクぽかったから「百人に一人の逸材だ! 」って興奮し過ぎて、頭に血がのぼって倒れるかも。(←結局倒れる)
‥それ位の大事件だ。
何それ。ズルい。‥すっごいジェラシー。
センスばっかりは練習したところで何とも出来ないからなあ。
コリンは、また‥今度はちょっと睨むみたいに‥ちらっとアンバーを見て、
ちょっと下唇を出して、拗ねた様な顔をしてしまうのだった。
「その割に、アンバーってどっぷり闇色に染まってるよな。‥雰囲気とか。確か、他の属性も使えただろ? 」
ザッカが苦笑いした。
‥そういえば。
コリンも頷いた。
アンバーは、確か火だったか? 辺り一面を火の海にしてたよね?
だけど‥地獄の業火‥っとか、やたら悪っぽい火だった気がする‥
もちろんだけど、他の属性を使う際にも、「それらしい」オーラが出る。性格やなんかにも影響してくる。だから、属性を聞いて結構、「やっぱりね」って思うことがよくある‥って感じになるんだ。
複数の属性を持っている人間は、だから、そのうち一つの属性の性質だけしか表にでないってことは、普通はない。
コリンは氷と雷の魔術を主に使う。氷と水は別だ。水を凍らして氷‥ではない。無から氷を作り出すのだ。
大概氷属性の魔術士は、クールな‥とか言われるタイプが多い。
コリンがクール? ‥雷も属性だから、クールなのと激しいのが合体して、ああなったとか?? それとも、闇属性の魔術同様、特に考えないでも感覚で使えるから、意識してないってことか??
アンバーは、ああ、って小さく頷いて
「俺の雰囲気がダークなのは、あれだ。元からの性格だ。それと、ちょっと悪な方がモテるんだ」
‥本人は多分冗談で言ったつもりなんだろうけど、そんな風には全然見えない。
ちょっとドン引いた。
‥ないわ~。
誰にモテようとしてたんだ。あそこにいた兵士か? さっき全然興味ない宣言したコリンか?! それとも、こんなダークな俺もカッコイイ~か?! ナルシスト自意識過剰野郎め!
‥って思ったが、アンバーがモテるだろうってことは、否定しない。普通に、モテるだろう。スタイルもいいし、顔も声もいい。おまけに魔術の才能ありまくり‥の天才君。普通にモテまくりだろう。
‥別に羨ましくはない。(‥負け惜しみじゃないよ! )
‥顔見知りになったよしみで教えてやる。
ザッカは、にやっとアンバーに笑うと
「ま、人にもよると思いますけどね」
言ってやった!
美形が必ずしもモテるとか思うなよな!!
「そうだそうだ! 」
コリン、大賛同。
‥負け惜しみ感が‥ 半端ない‥っ!
シークは苦笑い。ナナフルは‥
優しい微笑みがかえって残酷だわ~。寧ろ、呆れてくれ~。
ふふ、と微笑んで、ナナフルが覚めたお茶を淹れ直すために、立ち上がる。
台所で湯を沸かしながら
さっきまでの会話を整理する。
「闇の属性。先生の常備された隠れ里。用意周到な世襲計画‥。だけどそれは、‥別に短期集中で閉じこもって出来るものでは無い‥。じゃああそこで何が行われていたんだろう‥」
闇の属性は、裏には多い。
でも、それは元々の「隠れた需要」が満たされているに過ぎない。‥隠さなければ、闇の属性は珍しい属性ってわけではない。
それに加えて、アンバーの住んでいた隠れ里は、‥両親を目の前で殺害され、親の敵に育てられている子供ばかり‥心がすさんでいる者が多くてもおかしくはない。
だけど、その中で育ててもらった恩もあるだろうし、住んでいる内にここが故郷って感じで愛着も湧いてくるだろう。そして、信用も‥。
そこでの暮らしが当たり前になる‥。そして、それは子供である方が馴染みやすい‥。
魔術士の「後継者」に冒険者の子供を選んだのは‥、単純に「魔力を持っている子供」だってことが分かりやすいから。それと‥身元が分かりにくく、「殺害」「誘拐」したところで、足がつきにくいから。
魔力のある子どもを探す手間を減らし、子供に自分たちの望む形で魔力を学ばせるように仕向ける。
「彼ら」の望む形‥、暗殺者の育成? アンバーも攻撃型の魔術に優れているってコリンは言っていた。嫌な‥闇の属性を思わせる攻撃型の魔術を使うって‥。闇の属性‥裏に多い需要‥
アンバーが少し習っただけで使えた、最難度魔術「再生」‥。実は、アンバーは以前から知っていたんではないだろうか? ‥嘘を言っているようには見えなかったが、「それ」と認識していないだけで、以前からつかっていたとしたら‥。
再生‥
治療とは違う‥「元に戻す魔術」。
そういえば、さっき怪我をしているアンバーをコリンが治した時
「流石に天災魔術士の「治療」は痛くないな! 俺がならった「おまじない」は、もっと痛いぞ‥。仲間がやったらもっと痛いうえに、治らないしな」
って言っていなかったか?
再生は痛い。
怪我をしていない状態に「戻る」。それは‥治療に似ている‥。
闇の属性で、「治療」といって教えていたのは、「再生」だったってことか‥。そういう言葉で教わったわけでは無かった。だから、コリンに言われた時にもぴんとこなかった。だけど、‥方法ややり方はわかる。規模が全然違ったから同じものだと思わなかった‥?
隠れ里は、「再生」の魔術士を育成しようとしているんだ‥。
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