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35.自覚した想いと、気付かせてはいけない想い。 シークside
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ホントの誓約を見た瞬間に気付いたのは、俺のメンタルの弱さと、コリンに対する俺の気持ちだった。
そして、その衝撃は俺をへこませるのに十分な‥打撃力を持っていた。
あの時俺は、誓約で‥固められたんじゃない。動けなかったんだ。
自分が、咄嗟の思い込み‥誓約された「かも」っていう思い込み‥で動けなくなる程メンタルが弱いこと。
だけど、‥それだけじゃない。
あまりにコリンが眩しくって。一目で‥地面に縫い付けられたんだ。
‥一目惚れしたのが、コリンだけじゃなく自分もだったってこと。
それに気付いた方が、驚いた。(気付いたっていうか、‥思い出した? っていうのかな)
徐々に「コリンに」絆されたんだって思ってた。‥思い込んでた。
コリンから好きって言われて、俺の方も徐々に‥絆されたんだって‥。
だって、あんな可愛い子だ。好きだって言われて嬉しくないわけがない。そりゃ、「騙されてるのかも」「まさかこんな可愛い子が」とも思ったけど、でも、本気と嘘が分からない程間抜けじゃない。‥これまで沢山の人間を見て来た。自分の甘さ故若い頃は騙されもしてきた。
でも、コリンはそうじゃない。
コリンは真っ直ぐな人間だ。
騙すってこと、知らない。それは、「それがダメなことだから」って意識するから‥とかいう話じゃない。もっと、単純に‥そんなこと考えもしないからだ。
いい奴、っていうより、正直な奴。
好きだったら、‥好きだから‥好きって言う。‥嫌いなら、きっと見向きもしない。
損得勘定なんか、コリンの「好き」には介入してこない。
そんな真っ直ぐで、素直で可愛くってその上魔術士としても優秀で頼りになるコリンに、好き好き言われたら、好きになってもおかしくない‥なんて思ってた。
でも、違った。
実際は、はじめっから好きになってた。‥一目惚れしてた。だけど、‥なんだか恥ずかしくって、自分は違う‥みたいな態度を取って来てたんだ。
‥何故って。
単純な理由だ。
男の矜持って奴だ。今まで一人で生きて来た。Sランク冒険者にもなったし、信用も積んできた。
‥俺にだってプライドみたいなものはある。
それに‥そもそも恋愛なんて、したことが無い。
だけどそれって逃げる理由にならない。
今までみたいに、コリンの俺への気持ちに胡坐をかいて、コリン任せ‥とかじゃダメだ。
嫌いなら嫌いって、早々に言うべきだったんだ。コリンが言ってた「一緒にいたら好きになってくれるかもしれない」‥みたいなもん、相手‥俺にとって都合のいい関係だ。
だらだら、とか良くない。
‥まして、俺は気付いたんだ。‥コリンの事好きだって。‥初めて会った時から好きだったって。
ちゃんと、コリンに気持ちを伝えるべきだ。
‥お試し期間で逃げ切ってる今の状態じゃ‥ダメだ。
‥でも。
俺の気持ちとコリンの気持ちに温度差があるかもしれない。
あの時、コリンは「運がいいから、見切り発車しても大丈夫だって思ってた」って言ってた‥。そう、俺への思いも「重い」ものじゃないのかもしれない。
でも、「結婚したい」ってコリンは言ったんだよな‥。
好きかも‥って程度の俺の気持ちを伝えるのは、果たして誠実っていえるのだろうか?
コリンの本気に応えられる自信がないなら、「好き」とか、結婚しよう‥とかいうべきじゃない。
それは、誠実じゃない。
‥誠実じゃないのは、俺の主義に反する。
って言いながら‥。
ホントの俺は、もっと単純でもっとズルくって、もっと‥ガキっぽい。
面倒なことは嫌だ。だから結婚‥とか責任を伴うようなことは考えたくない。だけど、コリンに嫌われたくないし、コリンの「一番」が自分じゃなきゃ嫌。
アンバーとコリンが親しく話してるのも嫌。‥ヤキモチ焼いて、‥恋人でもないのに、独占欲からアンバーに嫉妬して‥。
その根っこにあるものの正体だって‥普通に分かってる。
今更「自分の後ろをついて来てた弟分が他の者を尊敬するようになったのが‥他に懐いてるのが嫌」「親離れならぬ、兄弟離れが寂しい」とか‥そんな白々しいことで誤魔化す‥とか、流石にしない。
‥コリンに恋してる。コリンを独占したいって思ってる。‥それを認めない程、カマトトじゃない。
俺もコリンが好きだ。
その一言が言えていない。
なのに‥その前にキスしたんだったっけ‥。
俺って‥。
‥なんか、自分で自分が‥情けない。
「ほら、コリンが馬鹿なことばかり言ってるから、シークが呆れ顔になってるぞ」
ははは、
軽い口調でアーバンがコリンを揶揄う。
コリンは、目を剥いてアーバンを睨み付ける。
この二人は、‥あれだな。じゃれてる子犬みたいなもんだ。
嫉妬する要素やら、甘さなんてこれっぽっちもない。‥コリンにとっては、魔術も含めたいい友達になれるかもしれない。それを俺が変なこと言って、「じゃあ、‥近づくの止めます」って気を遣わせちゃうとか‥どうかと思うよな。狭量‥とかそんなレベルじゃない。男子クラスメイト全員に対して「こいつら全員俺の娘に惚れてるんじゃないだろな」なんて勘繰るヤバい過保護親父だ。
落ち着け、俺。
一度目を瞑り、また目を開く。
「もう! 馬鹿なこと言ってるのは、アーバンだろ!! 僕の事デブだとか、子供みたいなこと言ったりしてさ! 」
コリンがアーバンに言い返す。
楽しそうに。
俺の変な嫉妬になんてちっとも気付かない様子で。
大丈夫、二人は‥コリンはまだ俺のこの想いに気付いていない。
俺がこんなに子供だって‥大人じゃないって‥気付いてない。
‥こんなに、コリンが好きだって気付いていない。
だから、
「そんなどうでもいいこと‥俺は気にしてない」
って、俺は、さも関心なさそうに‥何時もの俺が言いそうなことを言った。
‥自分で自分の言いそうなこと分析するって‥どうなんだ。
「シークさんは、アーバンと違って大人なんです~! 」
べーっとアーバンに舌を出して、コリンが俺の腕を掴んできた。
ちょっとドキッとしたけど‥
‥この長年凝り固まった表情筋はちっとも動作してないだろう。
今は、‥それがありがたい、かも。
「ふうん」
ちらっと俺をアーバンが見て、含み笑い‥みたいなものを浮かべたのが‥ちょっと腹が立った。
そして、その衝撃は俺をへこませるのに十分な‥打撃力を持っていた。
あの時俺は、誓約で‥固められたんじゃない。動けなかったんだ。
自分が、咄嗟の思い込み‥誓約された「かも」っていう思い込み‥で動けなくなる程メンタルが弱いこと。
だけど、‥それだけじゃない。
あまりにコリンが眩しくって。一目で‥地面に縫い付けられたんだ。
‥一目惚れしたのが、コリンだけじゃなく自分もだったってこと。
それに気付いた方が、驚いた。(気付いたっていうか、‥思い出した? っていうのかな)
徐々に「コリンに」絆されたんだって思ってた。‥思い込んでた。
コリンから好きって言われて、俺の方も徐々に‥絆されたんだって‥。
だって、あんな可愛い子だ。好きだって言われて嬉しくないわけがない。そりゃ、「騙されてるのかも」「まさかこんな可愛い子が」とも思ったけど、でも、本気と嘘が分からない程間抜けじゃない。‥これまで沢山の人間を見て来た。自分の甘さ故若い頃は騙されもしてきた。
でも、コリンはそうじゃない。
コリンは真っ直ぐな人間だ。
騙すってこと、知らない。それは、「それがダメなことだから」って意識するから‥とかいう話じゃない。もっと、単純に‥そんなこと考えもしないからだ。
いい奴、っていうより、正直な奴。
好きだったら、‥好きだから‥好きって言う。‥嫌いなら、きっと見向きもしない。
損得勘定なんか、コリンの「好き」には介入してこない。
そんな真っ直ぐで、素直で可愛くってその上魔術士としても優秀で頼りになるコリンに、好き好き言われたら、好きになってもおかしくない‥なんて思ってた。
でも、違った。
実際は、はじめっから好きになってた。‥一目惚れしてた。だけど、‥なんだか恥ずかしくって、自分は違う‥みたいな態度を取って来てたんだ。
‥何故って。
単純な理由だ。
男の矜持って奴だ。今まで一人で生きて来た。Sランク冒険者にもなったし、信用も積んできた。
‥俺にだってプライドみたいなものはある。
それに‥そもそも恋愛なんて、したことが無い。
だけどそれって逃げる理由にならない。
今までみたいに、コリンの俺への気持ちに胡坐をかいて、コリン任せ‥とかじゃダメだ。
嫌いなら嫌いって、早々に言うべきだったんだ。コリンが言ってた「一緒にいたら好きになってくれるかもしれない」‥みたいなもん、相手‥俺にとって都合のいい関係だ。
だらだら、とか良くない。
‥まして、俺は気付いたんだ。‥コリンの事好きだって。‥初めて会った時から好きだったって。
ちゃんと、コリンに気持ちを伝えるべきだ。
‥お試し期間で逃げ切ってる今の状態じゃ‥ダメだ。
‥でも。
俺の気持ちとコリンの気持ちに温度差があるかもしれない。
あの時、コリンは「運がいいから、見切り発車しても大丈夫だって思ってた」って言ってた‥。そう、俺への思いも「重い」ものじゃないのかもしれない。
でも、「結婚したい」ってコリンは言ったんだよな‥。
好きかも‥って程度の俺の気持ちを伝えるのは、果たして誠実っていえるのだろうか?
コリンの本気に応えられる自信がないなら、「好き」とか、結婚しよう‥とかいうべきじゃない。
それは、誠実じゃない。
‥誠実じゃないのは、俺の主義に反する。
って言いながら‥。
ホントの俺は、もっと単純でもっとズルくって、もっと‥ガキっぽい。
面倒なことは嫌だ。だから結婚‥とか責任を伴うようなことは考えたくない。だけど、コリンに嫌われたくないし、コリンの「一番」が自分じゃなきゃ嫌。
アンバーとコリンが親しく話してるのも嫌。‥ヤキモチ焼いて、‥恋人でもないのに、独占欲からアンバーに嫉妬して‥。
その根っこにあるものの正体だって‥普通に分かってる。
今更「自分の後ろをついて来てた弟分が他の者を尊敬するようになったのが‥他に懐いてるのが嫌」「親離れならぬ、兄弟離れが寂しい」とか‥そんな白々しいことで誤魔化す‥とか、流石にしない。
‥コリンに恋してる。コリンを独占したいって思ってる。‥それを認めない程、カマトトじゃない。
俺もコリンが好きだ。
その一言が言えていない。
なのに‥その前にキスしたんだったっけ‥。
俺って‥。
‥なんか、自分で自分が‥情けない。
「ほら、コリンが馬鹿なことばかり言ってるから、シークが呆れ顔になってるぞ」
ははは、
軽い口調でアーバンがコリンを揶揄う。
コリンは、目を剥いてアーバンを睨み付ける。
この二人は、‥あれだな。じゃれてる子犬みたいなもんだ。
嫉妬する要素やら、甘さなんてこれっぽっちもない。‥コリンにとっては、魔術も含めたいい友達になれるかもしれない。それを俺が変なこと言って、「じゃあ、‥近づくの止めます」って気を遣わせちゃうとか‥どうかと思うよな。狭量‥とかそんなレベルじゃない。男子クラスメイト全員に対して「こいつら全員俺の娘に惚れてるんじゃないだろな」なんて勘繰るヤバい過保護親父だ。
落ち着け、俺。
一度目を瞑り、また目を開く。
「もう! 馬鹿なこと言ってるのは、アーバンだろ!! 僕の事デブだとか、子供みたいなこと言ったりしてさ! 」
コリンがアーバンに言い返す。
楽しそうに。
俺の変な嫉妬になんてちっとも気付かない様子で。
大丈夫、二人は‥コリンはまだ俺のこの想いに気付いていない。
俺がこんなに子供だって‥大人じゃないって‥気付いてない。
‥こんなに、コリンが好きだって気付いていない。
だから、
「そんなどうでもいいこと‥俺は気にしてない」
って、俺は、さも関心なさそうに‥何時もの俺が言いそうなことを言った。
‥自分で自分の言いそうなこと分析するって‥どうなんだ。
「シークさんは、アーバンと違って大人なんです~! 」
べーっとアーバンに舌を出して、コリンが俺の腕を掴んできた。
ちょっとドキッとしたけど‥
‥この長年凝り固まった表情筋はちっとも動作してないだろう。
今は、‥それがありがたい、かも。
「ふうん」
ちらっと俺をアーバンが見て、含み笑い‥みたいなものを浮かべたのが‥ちょっと腹が立った。
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