32 / 310
32.ここに残るという仕事
しおりを挟む
「ザッカ。‥なるだけ情報を引き出してきて欲しい。インタビューで。
どんな小さなことでも、‥何が手掛かりになるか分からないから。どんな小さなことも聞き逃さないで欲しい」
インタビューという単語を強調した。
あくまでも、仕事であって、強要ではない。まして、恐喝ではない。
まあ、ザッカならそんなへまはしないって信じているのだが。
「‥ともかく、十分気を付けて」
と、ナナフルが念を押すと、ザッカが深く頷く。
‥寧ろ心配なのはこっちの方だ。
ザッカは自分の体力‥というか、生命力というか? を過信しているところがあるから。
でも、自分の力を見誤ってるわけじゃないんだ。
だのに、自分の身の丈にあった戦い方で、‥自分の体力を超えてでも戦おうっていうね‥。
体力は、気力で何とかなるって思ってるみたいだ。
‥そんな昔かたぎ(??)な恋人は、だけど
「分かった」
って、ナナフルを見つめて、優しく微笑んだ。
‥気遣いも出来るんだ。優しくって、仕事が出来て、腕も立つ。だけど、恋人の為に頑張り過ぎちゃってちょっと心配になる‥ってどれ程「ときめき要素」が詰まってるんだ。
カッコいいだけじゃなくって、弱い部分が見えて母性本能というか‥庇護欲を誘う‥とか完璧じゃないか‥。
今のセリフだって、そうだ。
分かってる。とは言わない。
人に心配してもらってるのに、「わかってる」って言ったら、なんか「そんなこと言われなくても分かってるよ」みたいに聞こえるよね? って、ザッカは、‥考えすぎかもしれないけど‥そういうことを、結構気にする。
そういう気遣いも、ナナフルのツボだ。
口数は多い方じゃないし、口調は大雑把だけど、人を思いやるちょっとした気遣いがある。
ナナフルが好きになったのも、ザッカのそういうところだ。
見た目がワイルドなのも、いい。笑ったら、ちょっと可愛いのも、いい。
‥もう、とにかく全部がナナフルにぴったりくる。
そんな愛しのザッカは、彼の可愛い恋人の頭に軽く手を置いく。
彼の、‥優しさが滲むような‥信用できるような言葉‥
「ちゃんと、ここに帰ってくる」
には、コリンも頷く。
「僕もシークさんもね」
コリンも、にっこりと微笑む。
幼さが抜けきらない少年の表情。
美少女然としたコリンは、時々、背伸びした様に大人っぽい笑顔を意識したように作る‥これが、このスマイルなんだ。
背伸びした結果、やっと少年の笑顔になるっていうのが、なんともコリンらしいよね。
普段のコリンの微笑は、まさに花の綻ぶような美少女のそれなんだ。
そういう‥なんとも彼らしいところに、ほっこりする。
「行ってらっしゃい」
ナナフルが微笑むと、にぱっと、‥さっきの「大人っぽい笑顔」をつくるのなんて忘れて‥いつも通り花が咲くように無邪気に笑う。
「行ってきます! 」
手を振って、ザッカやシークの元に走っていく。
‥行ってらっしゃい。無事に‥どうか無事に皆が帰って来てくれますように‥。
皆で行ってしまっても、仕方が無い。
‥一緒について行ったところで、自分は戦力にはならない。それどころか、足手まといになるのは目に見えている。
それより、自分には自分の仕事がある。
出来る限り情報を集める。それから、情報を整理する。
そして、彼らが帰る場所を守っておく。
それが、自分の今の仕事だ。
大事な、「自分の仕事」だ。
私も、ザッカ同様「身の丈」はわきまえている。
‥自分を過小評価もしない。自信が無いなら、自信が持てるまで頑張る。‥じゃないと、どの面下げて夢やら目標を掲げられるんだ。ザッカの相棒で、コリンの上司って言えるんだ。
「さて、じゃ、情報の収集といきましょうか」
アンバーの出身地、それから、アンバーが今までどのように生きて来たか。そして、性格、(今回の黒幕に)雇われるメリット。
‥目をつけられた経緯。
黒幕との関係。
なるだけ詳しく全部。
それから、この頃、市場に何か変わったことがないか。
例えば、急に金の流通が増えたなら、黒幕が金を隠れて採掘しているのかも‥みたいな、「目に見える変化」はないか。
だれか、王都の役職持ちでこの頃急に羽振りが良くなった者はいないか、とか。反対に、この頃、追い詰められたような顔をしているって噂が流れている者はいないか。
とか、全部。
まさに関係がある、って思われるものから一見無関係に見えるものまで‥
いままで、ザッカが集めて来た周辺の聞き込み調査を整理して、見えて来るものはないか。
巷には、情報が無分別にあふれている。
そのまま使える情報もあれば、加工しないと使えない情報もある。隠れていない情報もあれば、隠れている情報もある。
隠せるもの、‥隠し忘れているもの。隠せないもの、‥隠せていないもの。
「来るでしょうかね‥」
今、ザッカ、シーク、コリンは騎士団の管理している「牢屋」の見える場所に潜んでいる。
潜んで、‥動きのないまま、もう夜が来ようとしていた。
夜になると、動きのない牢屋はますます静かになった。
こうなると、息をするのも気を遣うんだけど‥、さっきから、見張りの兵士はこっちに気付くどころか、こっちを見ることすらない。
コリンの気配操作だ。
転移後、手早く周りを確認したコリンが
「ここに、僕たちの外に気配操作で隠れている者は‥いないようです」
と、ザッカに耳打ちした。
緊張感で、唾をのみ込みそうになるが、我慢する。
気配操作をしているとはいえ、音は立てない方がいいだろう。そう思ったが、「大丈夫ですよ。普通にしていてください」とコリンに微笑まれた。
‥と、言われても‥。
最初は、息をひそめていたシークたちだったが、あんまり兵士がこっちを見ないことに
‥ホントに、気配が消えてるんだ。
って思った。
‥コリンは、本当にすごい。
「‥ナナフルさんは大丈夫なんでしょうか」
何もすることがない時間が過ぎていると、‥気になるのは、ここに居ない仲間の事だ。特に、ザッカにとっては大事な恋人だ。‥だけど、ザッカはそのことを口にしないだろう。
コリンは、牢屋の方を見つめ‥アーバンを見張りながら
「ナナフルさんには、移動型結界を張っておきました。事務所から出ないのが一番安全ですが、ナナフルさんなら出るでしょう?
あの場にいた僕が素性を調べられるのは、普通に考えられましたからね。事務所には念入りに結界を張っておきました。‥流石に、あるのが分かっているものに、隠蔽魔法はかけられませんが。あるけど、敵がたどり着かない‥という魔法はかけておきました。
‥って以前に、あそこは前から目をつけられてるみたいですね?
職場に面接に行った時に、何個か探査型魔道具壊しましたよ。(← 盗聴器とかそういった類のものだ)
ああ、ここは‥雑誌社だけあって、何処かからマークされてるんだなって思って。
でも、話を聞いてたらザッカさん「ここは、冒険者になりたい人の為の情報誌」って言うから‥、あれ~? 隠すんだ~? って思って。でもね、そのうち信用してもらえたら話してもらえるのかなって思ったんです」
コリンが抑揚のない口調で淡々と話した。
「‥すまん」
ふう、とザッカがため息をつく。
ここで、ふ、とコリンが笑うと
「いいですよ? 」
ザッカをちょっと振り向く。
シークは、「待てよ? コリンが、ただの情報誌じゃなく別の事情を疑っていたってことは‥」って呟くと、
「‥じゃあ、俺に近づいた時には、コリンはもう「(俺に接触することに)何かしら(別)の理由がある」って思ってたってこと? 」
コリンに尋ねた。コリンが苦笑いして、シークに頷き、「すみません」って小声で謝る。
それから、
「でも‥」
と、苦笑いすると
「‥これが‥でも、‥いやね。シークさんの事、何かしらの関係者なのだろう‥って思って近づいたら‥近づいたのに、‥一目惚れしちゃって、「まあ、‥いいか」って思って‥」
ごにょごにょと‥コリンには珍しく歯切れの悪い話し方をする。
「「‥‥‥」」
ニヤニヤとコリンを見るザッカと、ちょっと顔を赤くしているシークの事は見ないことにしたのか、
「もう、無我夢中、何でもいいから‥どんな手段遣ってもいいから、シークさんと付き合いたいって思っちゃってました。‥っていうか、付き合わなきゃ、‥付き合わない理由はないって‥」
真っ赤な顔をしたコリンは二人と目を合わさないで、言葉を続けた。
「‥‥‥なんで? 」
ニヤニヤと尋ねるのは、ザッカだ。シークは居心地悪そうに俯いている。‥上から微かに見える耳が真っ赤だ。
「‥わかんないんです。ただ、喉乾いた時、とにかく、水を飲むことしか考えないでしょ? なんで水飲むの? って悩む人も‥いないでしょ? 喉乾いてるから‥多分‥本能的なものだったんだと思います」
眉をハノ字に寄せて、‥困った様に苦笑してコリンが白状する。
「本能? 」
聞き返したのは、ザッカ。
インタビューしてるわけじゃないけど‥
ついつい、聞き出してしまう。
会話をしているだけだのに、‥つい、話の全貌を知りたいって思ってしまう。
職業病だね。
「ええ」
コリンはそんな先輩に更に苦笑するが、先輩の質問に対し頷くと、
「だから‥理由とか無いです」
‥答える。
「‥本能かあ」
‥それは、仕方がない。
ザッカがぼんやりと思っている横で、シークは更に真っ赤になっていた。
‥それも、仕方が無い。
真っ赤にもなるだろう。あんなに、ストレートに告白されたんだ。‥あれは照れ屋でピュアで奥手なシークには‥ちょっと可愛そう。
しかし、若いなあ。‥年は自分と同じくらいだろうけど、なんか眩しい位、ピュアだ。
そんな彼に感動したから、つい
「運命って奴かね」
気障なこと言ってしまったら、
「あはは、ザッカさんってロマンチストなんですね! 遺伝子かな、って言うならわかりますけど。遺伝子に何か書き込まれてたのかな、って。あれです、親鳥が、雛の口の色を見た瞬間餌をやらなければいけない気分になる、とかそういう‥人間にも、何らかのバグで、遺伝子レベル‥本能レベルで何かを欲したり、求めたりすることがあるのかもしれませんよ」
コリンに笑われた。
‥コリンは汚れてるって感じではないが、ピュアじゃないな。
なんか‥
「‥‥‥」
‥味気ない‥。
バグって‥。
どんな小さなことでも、‥何が手掛かりになるか分からないから。どんな小さなことも聞き逃さないで欲しい」
インタビューという単語を強調した。
あくまでも、仕事であって、強要ではない。まして、恐喝ではない。
まあ、ザッカならそんなへまはしないって信じているのだが。
「‥ともかく、十分気を付けて」
と、ナナフルが念を押すと、ザッカが深く頷く。
‥寧ろ心配なのはこっちの方だ。
ザッカは自分の体力‥というか、生命力というか? を過信しているところがあるから。
でも、自分の力を見誤ってるわけじゃないんだ。
だのに、自分の身の丈にあった戦い方で、‥自分の体力を超えてでも戦おうっていうね‥。
体力は、気力で何とかなるって思ってるみたいだ。
‥そんな昔かたぎ(??)な恋人は、だけど
「分かった」
って、ナナフルを見つめて、優しく微笑んだ。
‥気遣いも出来るんだ。優しくって、仕事が出来て、腕も立つ。だけど、恋人の為に頑張り過ぎちゃってちょっと心配になる‥ってどれ程「ときめき要素」が詰まってるんだ。
カッコいいだけじゃなくって、弱い部分が見えて母性本能というか‥庇護欲を誘う‥とか完璧じゃないか‥。
今のセリフだって、そうだ。
分かってる。とは言わない。
人に心配してもらってるのに、「わかってる」って言ったら、なんか「そんなこと言われなくても分かってるよ」みたいに聞こえるよね? って、ザッカは、‥考えすぎかもしれないけど‥そういうことを、結構気にする。
そういう気遣いも、ナナフルのツボだ。
口数は多い方じゃないし、口調は大雑把だけど、人を思いやるちょっとした気遣いがある。
ナナフルが好きになったのも、ザッカのそういうところだ。
見た目がワイルドなのも、いい。笑ったら、ちょっと可愛いのも、いい。
‥もう、とにかく全部がナナフルにぴったりくる。
そんな愛しのザッカは、彼の可愛い恋人の頭に軽く手を置いく。
彼の、‥優しさが滲むような‥信用できるような言葉‥
「ちゃんと、ここに帰ってくる」
には、コリンも頷く。
「僕もシークさんもね」
コリンも、にっこりと微笑む。
幼さが抜けきらない少年の表情。
美少女然としたコリンは、時々、背伸びした様に大人っぽい笑顔を意識したように作る‥これが、このスマイルなんだ。
背伸びした結果、やっと少年の笑顔になるっていうのが、なんともコリンらしいよね。
普段のコリンの微笑は、まさに花の綻ぶような美少女のそれなんだ。
そういう‥なんとも彼らしいところに、ほっこりする。
「行ってらっしゃい」
ナナフルが微笑むと、にぱっと、‥さっきの「大人っぽい笑顔」をつくるのなんて忘れて‥いつも通り花が咲くように無邪気に笑う。
「行ってきます! 」
手を振って、ザッカやシークの元に走っていく。
‥行ってらっしゃい。無事に‥どうか無事に皆が帰って来てくれますように‥。
皆で行ってしまっても、仕方が無い。
‥一緒について行ったところで、自分は戦力にはならない。それどころか、足手まといになるのは目に見えている。
それより、自分には自分の仕事がある。
出来る限り情報を集める。それから、情報を整理する。
そして、彼らが帰る場所を守っておく。
それが、自分の今の仕事だ。
大事な、「自分の仕事」だ。
私も、ザッカ同様「身の丈」はわきまえている。
‥自分を過小評価もしない。自信が無いなら、自信が持てるまで頑張る。‥じゃないと、どの面下げて夢やら目標を掲げられるんだ。ザッカの相棒で、コリンの上司って言えるんだ。
「さて、じゃ、情報の収集といきましょうか」
アンバーの出身地、それから、アンバーが今までどのように生きて来たか。そして、性格、(今回の黒幕に)雇われるメリット。
‥目をつけられた経緯。
黒幕との関係。
なるだけ詳しく全部。
それから、この頃、市場に何か変わったことがないか。
例えば、急に金の流通が増えたなら、黒幕が金を隠れて採掘しているのかも‥みたいな、「目に見える変化」はないか。
だれか、王都の役職持ちでこの頃急に羽振りが良くなった者はいないか、とか。反対に、この頃、追い詰められたような顔をしているって噂が流れている者はいないか。
とか、全部。
まさに関係がある、って思われるものから一見無関係に見えるものまで‥
いままで、ザッカが集めて来た周辺の聞き込み調査を整理して、見えて来るものはないか。
巷には、情報が無分別にあふれている。
そのまま使える情報もあれば、加工しないと使えない情報もある。隠れていない情報もあれば、隠れている情報もある。
隠せるもの、‥隠し忘れているもの。隠せないもの、‥隠せていないもの。
「来るでしょうかね‥」
今、ザッカ、シーク、コリンは騎士団の管理している「牢屋」の見える場所に潜んでいる。
潜んで、‥動きのないまま、もう夜が来ようとしていた。
夜になると、動きのない牢屋はますます静かになった。
こうなると、息をするのも気を遣うんだけど‥、さっきから、見張りの兵士はこっちに気付くどころか、こっちを見ることすらない。
コリンの気配操作だ。
転移後、手早く周りを確認したコリンが
「ここに、僕たちの外に気配操作で隠れている者は‥いないようです」
と、ザッカに耳打ちした。
緊張感で、唾をのみ込みそうになるが、我慢する。
気配操作をしているとはいえ、音は立てない方がいいだろう。そう思ったが、「大丈夫ですよ。普通にしていてください」とコリンに微笑まれた。
‥と、言われても‥。
最初は、息をひそめていたシークたちだったが、あんまり兵士がこっちを見ないことに
‥ホントに、気配が消えてるんだ。
って思った。
‥コリンは、本当にすごい。
「‥ナナフルさんは大丈夫なんでしょうか」
何もすることがない時間が過ぎていると、‥気になるのは、ここに居ない仲間の事だ。特に、ザッカにとっては大事な恋人だ。‥だけど、ザッカはそのことを口にしないだろう。
コリンは、牢屋の方を見つめ‥アーバンを見張りながら
「ナナフルさんには、移動型結界を張っておきました。事務所から出ないのが一番安全ですが、ナナフルさんなら出るでしょう?
あの場にいた僕が素性を調べられるのは、普通に考えられましたからね。事務所には念入りに結界を張っておきました。‥流石に、あるのが分かっているものに、隠蔽魔法はかけられませんが。あるけど、敵がたどり着かない‥という魔法はかけておきました。
‥って以前に、あそこは前から目をつけられてるみたいですね?
職場に面接に行った時に、何個か探査型魔道具壊しましたよ。(← 盗聴器とかそういった類のものだ)
ああ、ここは‥雑誌社だけあって、何処かからマークされてるんだなって思って。
でも、話を聞いてたらザッカさん「ここは、冒険者になりたい人の為の情報誌」って言うから‥、あれ~? 隠すんだ~? って思って。でもね、そのうち信用してもらえたら話してもらえるのかなって思ったんです」
コリンが抑揚のない口調で淡々と話した。
「‥すまん」
ふう、とザッカがため息をつく。
ここで、ふ、とコリンが笑うと
「いいですよ? 」
ザッカをちょっと振り向く。
シークは、「待てよ? コリンが、ただの情報誌じゃなく別の事情を疑っていたってことは‥」って呟くと、
「‥じゃあ、俺に近づいた時には、コリンはもう「(俺に接触することに)何かしら(別)の理由がある」って思ってたってこと? 」
コリンに尋ねた。コリンが苦笑いして、シークに頷き、「すみません」って小声で謝る。
それから、
「でも‥」
と、苦笑いすると
「‥これが‥でも、‥いやね。シークさんの事、何かしらの関係者なのだろう‥って思って近づいたら‥近づいたのに、‥一目惚れしちゃって、「まあ、‥いいか」って思って‥」
ごにょごにょと‥コリンには珍しく歯切れの悪い話し方をする。
「「‥‥‥」」
ニヤニヤとコリンを見るザッカと、ちょっと顔を赤くしているシークの事は見ないことにしたのか、
「もう、無我夢中、何でもいいから‥どんな手段遣ってもいいから、シークさんと付き合いたいって思っちゃってました。‥っていうか、付き合わなきゃ、‥付き合わない理由はないって‥」
真っ赤な顔をしたコリンは二人と目を合わさないで、言葉を続けた。
「‥‥‥なんで? 」
ニヤニヤと尋ねるのは、ザッカだ。シークは居心地悪そうに俯いている。‥上から微かに見える耳が真っ赤だ。
「‥わかんないんです。ただ、喉乾いた時、とにかく、水を飲むことしか考えないでしょ? なんで水飲むの? って悩む人も‥いないでしょ? 喉乾いてるから‥多分‥本能的なものだったんだと思います」
眉をハノ字に寄せて、‥困った様に苦笑してコリンが白状する。
「本能? 」
聞き返したのは、ザッカ。
インタビューしてるわけじゃないけど‥
ついつい、聞き出してしまう。
会話をしているだけだのに、‥つい、話の全貌を知りたいって思ってしまう。
職業病だね。
「ええ」
コリンはそんな先輩に更に苦笑するが、先輩の質問に対し頷くと、
「だから‥理由とか無いです」
‥答える。
「‥本能かあ」
‥それは、仕方がない。
ザッカがぼんやりと思っている横で、シークは更に真っ赤になっていた。
‥それも、仕方が無い。
真っ赤にもなるだろう。あんなに、ストレートに告白されたんだ。‥あれは照れ屋でピュアで奥手なシークには‥ちょっと可愛そう。
しかし、若いなあ。‥年は自分と同じくらいだろうけど、なんか眩しい位、ピュアだ。
そんな彼に感動したから、つい
「運命って奴かね」
気障なこと言ってしまったら、
「あはは、ザッカさんってロマンチストなんですね! 遺伝子かな、って言うならわかりますけど。遺伝子に何か書き込まれてたのかな、って。あれです、親鳥が、雛の口の色を見た瞬間餌をやらなければいけない気分になる、とかそういう‥人間にも、何らかのバグで、遺伝子レベル‥本能レベルで何かを欲したり、求めたりすることがあるのかもしれませんよ」
コリンに笑われた。
‥コリンは汚れてるって感じではないが、ピュアじゃないな。
なんか‥
「‥‥‥」
‥味気ない‥。
バグって‥。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる