この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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24.さて、「事件」の真相は。

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 さて、調査なのだが、騎士団がさっさと、主犯・アンバーによる商人襲撃事件ってことでかたずけようとしている。
 騎士団も「真犯人」の手下なのだろう。だから、ここに駆けつけるのが異様に速かったのだろう。
 他の人間に、色々調べられたらマズイっていう奴なんだろう。‥全部の騎士団が買収されてるわけでもなかろうが、ここに来た騎士団は、少なくとも買収されているんだろう。(ギルドに依頼が入るのを邪魔したのもきっとこいつらなんだろう)
 一重に騎士団って言っても、色々な部隊がある。
 ここに来たのは、騎士団って言っても、地元の青年たちが志願して入っている志願兵‥っていうのかな、地元警備をしている騎士団で、王都の貴族なんかが所属している騎士団とは違う。
 地元警備が買収されてちゃダメでしょう‥って思うけど、もしかしたら脅されてるかもしれないから、そればっかりは何とも言えない。
 騎士団の指揮も、なんか王都の偉いさんが来てしてるみたいだし。
 ‥バックについてる悪人が王都の貴族とかだと言っているようなもんだ。貴族をバックにつけた大商人かもしれないな‥。
 兎に角、調べにくいな。
 ってザッカさんとナナフルさんが苦い顔している。
 ‥やっぱり、二人は只の「冒険者」雑誌の記者じゃない。
「僕にも何でも言ってください! 役に立ちます! 」
 って主張したけど、僕は、ここぞという時に使う隠し玉だから、今は顔を隠しておいてねって、フードを深くかぶらされた。
 ‥確かに、僕にはいろいろ考えて動くのって、無理だ。記憶力はそう悪くないと思うけど、経験も少ないから知識の引き出しも少ない。(でも、これは今から挽回の余地はある)「これは」って閃きもないし、咄嗟の判断も早い‥とは言い切れない。(行動力‥って点だったら、体力には自信はあるんだけどね。持久力もあるし。‥多分、僕は頭脳派っていうより、肉体派寄りなんだろうね。兎に角、先に動く、みたいな‥)
 ‥単純なのは、‥認める。
 さっきも、シークさんはナナフルさんたちがあのタイミングで来たことに疑問を直ぐ抱いていたのに、僕は「来てくれたんだ! 」って先に喜んじゃってた。
 そもそも、勝手にこの事件そのものを過小に判断して、上司である二人に報告・連絡・相談の義務を怠ってた。
 ‥僕ってダメダメだ‥。

 さて、今回の件だけど、アンバーが捕まって地元の人たちは、「やれやれ。もう安心」ってなってるけど‥
 勿論、アンバーが真犯人なわけではない。
 ただ、利用されただけに過ぎないんだ。きっと、トカゲの尻尾切りって奴で、切られちゃうんだろう。
 こういうのは、現場を押さえなければいけない。ここで身内の騎士団が調査という名の、隠蔽工作をしている間に、真犯人は逃げちゃうだろうから‥犯人が分かるって事は絶対にないんだろう。
 この先も、何人もの「アンバー」が出て、やっぱり真犯人は逃げる‥。
 アンバーは知ってる限りのことはしゃべるだろう。そこまでの忠儀心は、真犯人に対してないな‥って今回アンバーを見てて思った。だけど‥そこまでの情報もアンバーは真犯人から与えられていないな、とも同時に。
 ただ、仕事として、ここに誰も近づかない様にしろって言われてるだけ‥って感じかな。
 だから、アンバーに尋問したところで、真犯人に繋がる情報なんて出てこないだろう。でも、あれだけ魔力があるアンバーなら真犯人の魔力を覚えてるだろう。だから、魔力を追跡して犯人探しにつなげることだってできるだろう。‥でも、それを真犯人に繋がる騎士団に気付かれてはならない。兎に角、「何も知らない」を通すしか、自分の身を守る術はないだろう。
 
「コリンは! まったく、無茶ばっかりして! 」
 結界が消えて‥騒ぎ始めた騎士団にいち早く気付いた、ナナフルさんは慌てて現場に駆け付けた、ってザッカさんが言ってた。そりゃあ、もう凄い勢いだった、らしい。
 泣いてる僕を見てザッカさんがシークさんを疑った時には、びっくりしたな~。
 でも、二人に凄く心配させちゃったことは反省したし、凄く‥嬉しかった。
 ‥父さんや母さん、兄さんたちにはこのこと言わないでおこっと。
 きっと凄く心配して
「そんな仕事辞めてしまえ!! 」
 っていうかも。
 一人前に扱われてないって不満だったけど、‥僕が頼りないんだから仕方が無いんだよね。悔しいけど、でも焦ったって仕方が無いんだろう。それに、実力以上に見せたって、‥結局今回みたいにこんな結果だったら、その時の方がたちが悪い。
「やっぱり!! 」
 とかって、もっと信用がなくなるかも。
 でもね、僕は今色々こんなこと考えてる間に、「そう言う問題でもないかも」って気付いたよ。
 仕事は出来て当たり前、人の評価云々‥とかじゃなくって、結果的に仕事が滞りなくできる様に、周りの力を借りたって、やり切ることが一番大事。‥って。
 人の評価ばっかり気にして、‥僕は何か思い違いをしていたよ。

「ナナフルさん。ザッカさん。‥すみませんでした。‥次は頑張りますから、‥こんなことが無いように気をつけますから、クビにはしないでください」
 ナナフルさんたちに謝ると、二人が苦笑いして頭をポンポンしてくれた。

「反省できたなら、お前は、一歩前進できるさ」
 ザッカさんが、ちょい悪オヤジな感じで笑って、ナナフルさんは僕を抱きしめてくれた。
 ‥ナナフルさんの胸はシークさんと違って、広くはなかったけれど、思ったより鍛えてるって感じがした。あと‥なんか、いい香りがした。(あ、当たり前だけど、柔らかくはなかったよ。‥なんか意外な気がしたのは内緒)
 それにしても‥
 ‥は~ナナフルさんの腕の中って、何か落ち着く~。安心感半端ない~。気持ちいい~。いい香り~。
 ってベタベタ触ったりクンクンしてたら、ばりってザッカさんにはがされた。
 ザッカさん、目が怖い‥。
 ‥ザッカさん、それってやきもちですか? 大丈夫ですよ。僕が好きなのは、シークさんですから。
 シークさんは僕にちゅーしてくれたんですよ! 
 ちゅー‥。
 ‥無意識に手が唇に触ってしまう。
 ‥さっきのこと思い出して顔が熱くなる。
 ちゅーしてたの、ザッカさんとナナフルさんに見られてないよね?? ‥大丈夫だとは思う。ナナフルさんたちが来たのは、あの後、僕が取り乱してた時だったから。
 でも、抱き着いてたのは見られたな‥。
 誰かに見られたら嫌だ、恥ずかしい‥ってこと、今までになかった。
 友達に見られて嫌って感じより、家族に見られて気まずいって方が嫌かな~。
 ‥ナナフルさんたちに見られた時、そんな感じがしたよ。
 ナナフルさんたちの反応も、「悪い! 見てないから! 」とか大人~な生温かい対応だったり、「何かあったの? 何? 何? 」って興味津々だったり、揶揄ったりするような反応じゃなかった。「勤務中に何してるんだよ」でもなかった(←そういえば、そうだった。勤務中だった)
 まず、僕の事心配してくれた。シークさんが僕を泣かせたんじゃないかって、心配して‥シークさんを責めたりして‥。

 ‥まるで、妹を心配する兄みたいだった。

 そういえば、ナナフルさんたち二人は、(理想の)兄みたいなところもある。実際の兄は、心配というか「ったく、コリンはほんとどんくせ~な!! 」って暴言が先に出る。今では、あれは本心じゃなくって、照れ隠し‥じゃないけど‥素直に、「心配したぞ」っていうのが恥ずかしかったんだってのが分かるようになった。‥だけど、かなり最近まで、僕は兄たちの「暴言」を言葉通りにしか受け取れていなかったんだ。(兄たちもだけど、何より僕が「若かった」からね)‥だから、そんな僕が、「悔しい、いつか見返してやる!! 」って思ってもおかしくないでしょ?? 
 心配されてるのは‥分かるんだけどね~。いまいち、伝わりにくいっていうか‥。素直に、感謝できなかったっていうか‥。
 今は、お互いそういう「青さ」が抜けてきて、関係も変わって来た‥とは思うけど、そもそもホントの兄弟っていうのは、結構「メンドクサイ」とは思う。
 照れとか、「今更言わなくてもいいや」とか「言わなくても分かるだろう」的な甘えだとか‥。
 その結果、‥実はお互いの事結構知らなかったり、伝わってなかったり。
 そういう、伝わりにくさが、二人には、ない。もう、過保護って位、開けっ広げな愛情で僕に接してくれる。
 ナナフルさんは、たま~に、理想の母さんみたいだけど、見た目とかは、「カッコイイ兄」たちだ。
 理想の兄たちだ。
 ホントに、見掛けだけの実の兄ちゃんズとかえっこしたいな~。

 僕より、10センチほど高いナナフルさんと、ナナフルさんよりさらに15センチほど高いザッカさん。(ザッカさんって、雑誌社勤務だのに、やたらに鍛えてるんだよね‥身長も高いし、ラフな格好してるからわかるんだけど、何気にマッチョだし)シークさんは‥ザッカさんと同じ位‥なのかな? でも、肩幅がザッカさんより広いし、身体がもっとしっかりしてるから、ザッカさんより大きく見える。
 シークさん。‥見れば見る程カッコイイ‥。
 このカッコいい人にさっき、僕キスされちゃったんだ‥。
 ちょっと強引に‥、なんだか野生動物って感じで‥すっごいカッコよかった。
 目がギラギラして、‥色っぽいっていうか‥野性的な色気があった。
 腰が抜けそうになったよ‥。
 酸欠ってのもあるけど、‥色気にあてられたってのもあるのかも。
 は~。好き。
 ホント、好き。

「コリン。目がハートになってるぞ‥。ホントに好きなんだな。‥顔は平凡だけど、Sランクの冒険者だし、きっと今まで凄い努力して来たんだろうな」
 苦笑いしてザッカさんが揶揄って来た。
 ザッカさんは、こうして明るいところで見ると、短く刈り上げられた金髪が爽やかで、骨ばった首筋とか、盛り上がった上腕筋とか逞しいし、無精ひげも、ちょっとたれ目の赤っぽい目も(ちょっとたれ目だった! 初めて気づいた! )ちょい悪親父感アップでいい感じ。兄たちとはタイプが違うけど、モテそうな顔してる。
 兄たちは凄くモテるんだ。なんせ、「出来る男」たちだからね。
「顔は平凡だけど、優しそうな人だね。きっといい人なんだろうね」
 にこっと聖女な微笑みの‥ナナフルさん。
 聖母‥ただの、オカンキャラじゃない。理想のお母様なのだ。
 ‥僕の母さんは、パワフルで、なんか、キラキラかっこよくって、‥多分普通のお母さんじゃないんだ。スタイルは、ボンキュッボンって感じで女らしいのに、‥なんか、父さんより「父さん」なんだ。性格が、男前なんだ。
 そんな母さんだったから、僕は密かに「儚げな優しい母さん」ってのに理想を持ってた。
 そういう母さんは、きっと笑顔が可愛くって、料理が上手でパンケーキなんかを朝ご飯に焼いてくれて、バニラエッセンスの香りと石鹸の香りがするんだろうな~。怒る時も、母さんみたいに、ヤバい‥殺さヤラれる‥とか危機感感じるんじゃなくって、「め」って感じで怒って、子供が泣いたら抱きしめてくれるんだろうな~。って。
 ある時、幼馴染な悪友にそんな話したら「そんな母ちゃんは実際にはいねえよ」って笑われたし、「お前‥自分の母ちゃんに失礼だろ? おばさんのなんに不満があるんだよ。美人で羨ましいよ‥。儚げかって言われたら、違うけどな。明るくって‥いや、明るいというより‥華やか‥そう、華やかで、大輪の薔薇って感じだよな。ゴージャス美人。サイコーじゃねえか」って怒られた。‥皆に向ける母さんの顔は、僕に向ける母さんの顔とは違うよ~って言いたいかって言われたら、別に言いたくもない。母さんの事、嫌いじゃないから、人に母さんの事悪く言う気なんて、ない。
 だけど、「理想の母さん」像を追い求めるのは許してほしい。
 バラみたいに華やかな母ちゃん‥向かうところ敵なしみたいな無敵母ちゃんじゃなくって、いつもニコニコひまわりみたいに笑う母さんや、ひっそりと僕らを影から支えてくれる白百合みたいな‥そんな母さん。‥そんな、理想の母さん像。夢に見る位は許してほしい。
 ナナフルさんを見た時、そんなことを思い出した。
 ‥理想の聖母様‥。お母様‥。
 麗しいんです。ホント、人じゃないって感じします。天女みたいです。
 白銀の髪が太陽の下でキラキラして、もう神々しいって感じです。
 神です。女神です。
 男だのに。

 にしても‥二人して、何なの「(シークさんの)顔は平凡」って。
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