この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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23.衝動。Sideシーク(21、22のシークside。ほぼ、場面的には重複しています)

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 しっかりしろ。俺。

 さっき、俺は‥どうしたっていうんだろう。
 衝動に突き動かされる‥って、‥俺に限ってはないって‥何故か思ってた。
 俺は、‥自分の事を過信していた。
 流されていいもんじゃないだろ?
 相手は、自分よりずっと若い子供‥でも、成人してるって言ってたからその点はセーフか? ‥いや、年齢的な話じゃない。
 心の問題だ。
 コリンは、まだ子供だ。年齢ではなく、精神的に子供だ。今まで、ずっと教会にいて、「外の世界」に出たのは初めてで、色んなことに慣れてない。色んなことが初めてなんだ。
 しかも、‥今まで周りの皆を敵だと思ってた子なんだ。信じられる大人が、先生位しかいなくて、同級生は、仲間としか思ってこなかった。
 外の世界で、初めて自分コリンに普通に接して来た人間が俺だったのかもしれない。(※ いくらなんでもそこまでではないのだが、反省モードに入っているシークはそこまで発想が飛躍している)
 きっと、勘違いだって間違いだってある。
 ‥俺のこと好きだって言ったことがそもそも「勘違い」なのかもしれない。
 恋愛に憧れて、恋ってものに理想を持ってて、俺にそれを重ねてるのかもしれない。俺だから、じゃなくて、たまたま初めて見たのが俺だったから、だ。
 ‥初めて会ったのが俺だったから、運命‥って勘違いしたのかも。
 錯覚してたのかも。
 俺じゃなく、心の中で理想化された俺に恋心を抱いていたのかも。
 でも、さっきので‥ちょっと「理想とは違う」って気付いた‥かな。
 幻滅させたのかも。
 俺に悪いところは‥実はない。勝手に理想を押し付けられて、勝手に幻滅されて‥。
 俺がしたことも‥ちょっと手痛い社会勉強だって言えるかもしれない。‥言わないけど。
 ‥俺は言わない。
 そんな人間じゃないし、そんな人間にはなりたくない。

 ‥今日の事は全部、俺が悪い。

 恋に恋してる‥自分を好きだって言ってくれてる相手に手をだしちゃ、ダメだろう。しかも、‥気付いたら俺は、まだ返事もしていない‥。そんな、恋人にもなってない相手に手を出すとか、無いだろう。
 相手に言われたから? それが、どうしたって話だ。
 そもそも、コリンは可愛すぎる。‥危険な程可愛い。ただでさえ、モテたことない俺の理性なんてぐらぐらだのに、‥あの可愛さはヤバい。あんな可愛い顔で見上げられたら、‥無理だ。だから、目をなるだけ合わせないようにしてきたんだろうが!!
 危ない危ないって自分に言い聞かせてたのに、‥タガが外れた。目の前で、俺を見上げるコリンにタガが外れた。
 あんまりにコリンが可愛かったから‥理性が利かなかった。

 どうしよう。‥なんて謝ろう。いや、謝り方の問題より、まず謝らないと。

 ‥っていうのが一番重要な問題なのに、俺は、逃げ出したくなってる。最低だな‥。
 コリンに‥コリンの軽蔑した顔を俺に向けられるのが怖い。我に返って泣かれるのも‥「大丈夫ですよ」って困ったように苦笑いされるのも‥怖い。
 コリンに嫌われるのが‥一緒にもういられなくなるのが怖い。
 コリンの心配じゃなくて、俺の心配をしている。
 いつの間に俺はそんな卑怯な人間になってしまった?
 いつの間に
 俺はコリンの事を‥。

 目の前では、コリンの先輩たち二人も固まっている。
 コリンの
「シークさんは、僕が世界で一番、信頼できる人で、‥世界で一番好きな人なんだ。シークさんが僕に酷いことなんてしない。僕が‥シークさんと居て、嫌な思いすることなんて絶対にない! 」
 って言葉に固まったんだ。
 ‥そりゃ、驚くよね。
 二人の様子から、二人が家族の様にコリンを心配してるのが分かった。そんな大事な弟みたいなコリンが急に、見ず知らずの男を「世界で一番」なんて言ったんだもんな。
 こいつ、コリンに何した?! 
 って思われたよね‥。
 二人は、でも俺を責め立てる‥ことも忘れる程放心してるらしく
「コリン‥」
 って言ったっきり、またフリーズしてる。
「す‥」
 すみませんって‥つい(コリンにではなく、二人に、だ。俺って奴は‥)謝りそうになった俺の言葉に被せるみたいに、コリンが
「ああ‥そうだ。紹介しますね。
 僕の一番大事で、一番大好きな人、シークさんです。それは知ってますよね。ええと‥、僕はまだ、インタビューは出来てないんですけど‥、取り敢えず、シークさんの人となりは‥分かりました。
 シークさんは強くって、凄く優しいし‥凄くかっこいいんです」
 って言った。
 そして、俺を見上げる。一瞬。ほんの一瞬だ。ちらっと、視線を寄こしたって感じかな。
 その顔は、‥恥じらってるとかいう初々しい顔じゃなかった。
 その顔は

 もう、逃がしてあげませんよ。

 だった。
 言ったわけでもなかったけど、‥不思議と伝わった。きっと間違えてはいないと思う。‥これ、魔法って奴かな。
 顔がかっと熱くなったと同時に、
 背筋はちょっとぞくっとしたよ。

 コリンは、次の瞬間には、また先輩たち二人の方に向いて、(何故か俺のことを平凡って連呼している先輩に)「平凡じゃないもん」「カッコいいもん」ってあざと可愛く呟いたりしている。
 先輩たち二人の俺に対する評価、「平凡な顔」は、この上なく正しい評価だ。それに対して「失礼な」とか‥反論はない。そこは、問題はない。‥ただ、「平凡な顔で悪いか? 」とは‥ちょっと思わないでもないが‥。人のこと言えるような顔か? ‥はないな。二人とも、‥顔がいい。顔がいいからって、人の事「平凡」って連呼しないでもいいんじゃないか‥? それは、‥人権侵害だ。俺のことは、放っておいてくれ‥。
 ‥問題は‥あの二人はコリンを‥ちょっといい子だと思い過ぎてるのではなかろうか? ってことなんだけど‥。
 コリンはそんなに心配しなきゃならない程‥頼りなくない。
 恋愛に不慣れなのは、本当だろう。
 ‥コリンは‥気が強すぎる。気が強すぎて、折角見つけたおもちゃ(=俺)に逃げられるのが、嫌なんだ。‥それは、恋愛とは違う。
 その「負けん気」やなんかを‥恋だと勘違いしてるんだ。
 でも、ちゅーは、きっとホントに驚いたんだろう。あの反応‥初めてだった‥? 
 そして、‥これは、自惚れなんかじゃなく‥嫌じゃなかったようだ。あの時のコリンは‥あざとい‥とかじゃなく、本気でただ可愛かった。俺のことでいっぱいいっぱいって感じでホントに‥。
 ‥だからいいって話じゃない。「結果オーライだからいい」っていうのは、どう考えても年上の男として問題がある。
 結果がオーライじゃなかったら、‥どうしてたつもりなんだ‥。
 ‥今後はこんなことが無いように、肝に銘じよう‥。

 それはそうと‥

「あの‥どうしてここに? 」

 これは‥かなりの疑問だよ?
 冒険者の雑誌なんてふざけたもんの記者の情報収集能力じゃないよね?? ここ、どこにも公開してないよね?? しかも、今の今までコリンの気配操作と、アンバーの結界で、ここで何かが行われてることを知っている人はいなかったはずだよ?? それが‥このタイミングで現れられるって‥、いっそ最初から「尾行つけてたの? 」ってレベルだよね?? 最初って‥どこだろ。ギルドからかな。‥でも、そうでもない限り考えられないよね‥。
 実際には、
 ‥つけられてはいないと断言できる。気配なんてなかった。殺気をだしていなくても、普通人間には「いるっていう気配」がある。
 この二人は‥なんか「デキる」ようだが(なにが‥っていうのまでは分からないが、この二人は何か只者じゃない)、気配操作ができる程の「達人クラス」にも見えない。魔力がある‥とかはよく分からない。でも、そっちの方面でつけてきてたら、コリンが気付くよね? でも、さっき何二人の登場にコリンも驚いていた。
 きっと、ずっと後ろにつけてきてたわけじゃない。
 情報源って言ったら、‥ギルドぐらい。
 ギルドに知り合い‥それも、冒険者じゃなく、受付や、運営者に知り合いがいる可能性がある。
 ‥何者だ?
 コリンもだけど‥この二人も正体不明‥。
 俺は‥

 気が付かないうちにとんでもないものに目をつけられたのか?
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