この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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19.守られるだけのお姫様って‥アンタ本気で言ってるの?

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 ‥出来るとは思ってなかったけど出来たよ!!

 シークさんは驚いた顔で、辺りをきょろきょろと見回してる。
 ‥そりゃそうだろう。急に呼ばれたんだもの。
 ここどこ??
 ってなるよね。
 うう‥不謹慎だけど、その顔、可愛い。
 だけどね、出来ると思ってなかったから、僕も驚いてます。(って知ったことじゃないだろう‥)
 雑魚い兵士二人も同じように驚いてたんだけど、流石兵士だ。直ぐ、持ち直して邪魔者を排除する態勢に入った。でもね、雑魚い二人が出来る位の事だ、勿論シークさんが出来ないわけがない。‥ってか、比べるべくもない。
 雑魚い二人が向かって来るか来ないかってタイミングで瞬殺だったよ!
 うん。だよね。分かる。
 あの二人もよく向かって行ったね。格の差とか、直感で分かるよね? 流石にね。‥ダメ元~って奴かな。かかってかなきゃ変態魔術士のアンバーに怒られたりする‥とかかな??
 に、しても。
 シークさん。素敵すぎる~!!
 あの二人をまるで蚊を追い払うみたいに倒したよ。剣も抜かずに。腕一本とか何それカッコイイ。

「あはは、凄いね。お姫様のナイト君? 」
 アンバーの、くすくすって嫌な笑い。
 ‥折角シークさん見てたのに、
 キラッキラのシークさん見てたのに。
 シークさんしか見ていたくないのに!! なんで邪魔するかな~。

 ってか‥

 ‥は?
 誰が誰の、ナイトで
 ‥誰がお姫様だって?! (さっき自分で、自分はキノコ採りに来て、シークはその護衛‥といったのを忘れている。口から出まかせの設定は、所詮即効ぼろが出る)

「取り消してください」
 コリンは後ろに立つアンバーを振り向きもしないで言った。
「何を? 」
 嫌な‥笑いを含んだアンバーの声。
 その余裕、‥ホント腹立つ。
 ‥でも、これ知ってる。扇動スタイルって奴だ。僕を怒らせて、僕の正常な判断力を失わせようとしてるんだ。
 こういう、人の性格を瞬時に把握する所は、‥悔しいけど評価するしかない。
 性格っていうか‥弱点だな。
 恥ずかしいことに僕は‥、挑発に乗せられやすい。
 ‥つまり、単純なんだな。
「‥さっきの言葉、取り消してください」
 僕は、なるべく冷静を心がけて、言葉を選びながら、‥言葉を続けた。
「どうして? 」
 アンバーは相変わらず、くすくすって
 ‥馬鹿にした様な口調だ。
 落ち着け落ち着け‥
「‥事実と違うからです。彼は、僕なんかを守ってはいないし、僕は、彼に守られる存在ではないです」
 振り向いて、出来る限り‥冷めた視線を意識して‥アンバーを睨む。
 アンバーは顔に、嫌な薄ら笑いを浮かべていた。
 気のせいか、楽しそうにも見える。
 人を揶揄ったりするのが楽しいって、ホンッと性格悪いよね。
 ‥イライラする。
「クスクス。彼には君を守る実力が無いってこと? 君は彼をナイトだって認めてないってこと? 」
 ほんっとに、イライラする。今すぐその薄ら笑いを消し去りたい。
 ‥こいつを、殴り倒してでも‥!
 じわじわと、‥僕の心に黒い闇が‥靄が広がっていく。
 だめだ‥このままではこいつの思うつぼ‥
「‥そういう話をしてるんじゃない! 彼が、僕なんかのナイトなんて‥彼に失礼だって言ってるんだ! それに、僕は彼と対等でありたいって思ってる。彼に守られる存在なんて‥彼の足手まといにしかなれない存在なんて‥そんなのは嫌だ。‥僕は、そんな自分のこと、許せない」
 キツイ。
 苦しい、‥こいつのせいで‥
 じわじわじわじわ黒い靄が僕の心を覆っていく。
 あ‥これ、闇魔法だ‥。
 わかってるのに‥分かってるのに、‥抗えない。
「でも、現にいま、君はかれに守ってもらわなくちゃ何も出来ない状態になってるじゃない。困った時に助けて~ってヒーロー呼んだんじゃない。‥君の言葉借りれば、君は立派な彼の足手まといじゃない? 」
「く‥」
 はあ‥こいつが悪いんだ‥こいつがいるから‥
 ホントに気持ちが悪い‥。
 でもここで爆発して、怒りをぶつけたら、それを跳ね返えされるえ‥だから‥。
 ふわっと、肩に暖かい手が乗せられる。
 一気に身体が軽くなる。
 シークさん!! 
「‥コリン、こいつの安い誘いに乗るな。相手に心理面からダメージを与えようとしている、やっすい技だ。引っかかるんじゃない。汚い技を使うしょうもない奴だ」
 コリンが無意識に、シークを縋る様な目で見てしまったのは‥でも、無理はないだろう。
 寸でのところで、闇に支配されるのを免れたんだ。
 闇に支配されて‥自爆する所を掬われたんだ。

「やれやれ、口が悪いね。シーク・ナーサリー? 」

 アンバーが、シークの真名を呼んだ。
 ‥この、性格悪くって、闇の魔法を使うアンバーが、だ。
 コリンは、身体中の血が引くのを感じた。
「! 」
「さっき、君が名乗ったんだよ? お姫様‥コリン・コーナー? 」
 目の前が真っ暗になった気がした。
 そうだ、確かに「真名で人を縛る」という魔法は成功した。だけど、僕はアンバーという‥最悪な魔術士に真名を‥自分だけでなく、シークさんの真名を知らせてしまったんだ。
「カーター、トーマ、お姫様をこっちに」
 奥から、‥あの時見ていた、「大したことない魔術士」が二人出て来た。
 目に光が無い!
 あの顔‥あの目は、「名で縛られている」目だ。なんてこった、術の連続使用が可能とか‥それって、洗脳だよな‥流石性格最悪根暗魔術士‥やること‥つかう魔術が最悪だ。
「止めろ! 触るな!! 」
 僕が身体をよじって逃げようとすると、さっとシークさんが僕を姫抱きにして‥
 魔術士二人をさっきの二人同様、腕一本で払った。
 そして、自分の後ろに庇う様にコリンを下ろすと、縛られていた縄を短剣で総て切り、片手を差し出してコリンを立たせた。
「‥あ、ありがとうございます‥」
 コリンがちょっと頬を赤く染めてシークを見上げる。
 こんな時なのに‥だ。
 ‥僕‥ちょっと危機感が‥どうにかなってないか?? そんな場合じゃないだろ?? しっかりしろ、コリン!!
 ‥でも、好きな人がこんな優しくって‥カッコいいんだもの‥仕方が無くない??
「く‥っっ! 」
 頭を振って、お花が咲きそうになる脳みそを元に戻す。
 とにかく、今は‥目の前の敵!!
 慌ててシークから(断腸の思いで)目を逸らすと、ぶちっと自分の首に着けられた首輪を引きちぎる。
 魔力を抑える首輪なだけあって、結構な魔力で首に着けられてたのに、まるでただの紐みたいに、切る。

 ‥ゴリラか‥。

 アンバーは、ちょっと、ゾッと来たけど、ゾッと来たことを、目の前の敵‥コリンに知られるわけにはいかない。
「いや~カッコいいね。ナイト様」
 動揺を相手に悟られない様に、‥扇動作戦(対コリン)を再開する。
「まだ言うか!! 」
 噛みつくように言い返すコリンは‥でも、さっきみたいな闇に支配されている感はない。
 完全に、正気に戻っていた。
「‥アンタはあの時の!? 」
 シークが、アンバーを睨み付ける。
 あの時の‥
 つまり、「両親の仇」ってこと。
「‥違うと思いますよ。あれはもう、20年も前の話でしょう? 魔術士型の戦士はそんなに長い間、現役ではいられませんよ。加齢により魔力量が減って、もしくは、反射神経が落ちたら、もう駄目です。
 所詮、魔法任せで訓練を怠ってるわけだから、魔力に見放されたらアウトなんですよ」
 つまり、魔力頼りのダメダメさん、ってこと!
 僕は違うよ!? 誓約士としてダメになっても、インタビュアーだし、後々は雑誌社の記者さんになるからね。
 持つべきものは、手に職ですよね~。
 つまり~、アンバーは将来的にも今でも僕たちに勝てないってこと!! だから、下手な挑発は止めて、さっさと諦めて悪事を洗いざらい吐いちゃった方がいいってこと!
 お? これって、「偶然スクープに出会っちゃったルーキー記者の初仕事」じゃない?? 
 ちょっとニマニマしちゃったコリンに 
「はあ、ホントにお姫様は可愛い顔してるのに、口が悪いね。そんなのだったら、そこのナイト君に愛想つかされちゃうよ? 」
 アンバーがため息をついた。
「はあ!? 」
 ちょっと聞き捨てならないこと言わなかった!?
 シークさんに愛想つかされるとか‥
 愛想つかされるどころか、まだ始まってもいないんだぞ!! ‥う‥。(自分で言って、自分で凹む)
「顔だけじゃあねえ」
 さっきまでの、ニヤニヤも腹立つけど‥
 ‥その呆れ顔も腹立つな。
「失礼なこと言うなよ! 訂正しろ! 」
 ‥ホント、あんた人を怒らせる才能あるよ!!
 目を三角にして怒るコリンを、シークが呆れ顔で止める。
「‥コリン、また流されてる。挑発に乗らない」
「ああ‥シークさん、すみません。ありがとうございます」
 てれてれ、シークにデレてしまう。
 やっぱり、シークさん素敵、大人の落ち着きと、包容力を感じる‥。
 包容力‥
 包み込まれたいです‥!
「もう腹立ったから、事情聴取とか、うん、現場検証とかどうでもいいや! ‥そういう話は、後でアンタに直接聞かせてもらう。‥別にね、意識が無くたっていいんだよ。口さえきければ、‥まあ、口がきけなかっても、脳みそさせあれば、記憶を再現する位わけないんだよね。ああ、寧ろもう声も聴きたくないから、そうするか~」

 何度も言う。
 もう、僕、シークさんだけしか今、見てたくないんです!!
 オーラ(?)‥雰囲気迷彩色の、陰険陰湿魔術士とかもう、どうでもいいんです!!
 
「え? コリンさん。顔と‥言ってることがやたら怖いですよ? 」

「コリン・コーナー! 神々の目覚め!! 」
「そう来なくちゃ! アンバー・ラッセン! 漆黒の帝王! 」
 コリンの(なぜか嬉々とした)雷属性の魔法が、眩しい程の閃光と爆音を上げてアンバーの仮想空間を切り裂くと、(やっぱり嬉々とした)アンバーの闇属性の魔法が、その場を黒く染め上げる。
「闇には星がなくっちゃね! コリン・コーナー! アイス・シューティングスター!! 」
 流れ星というより、まんま、雹だな。氷の粒が降ってくるんだから、雹に間違いない。スターじゃない。当たると痛い、‥ホント、冗談じゃなく痛い。地面にめり込んでるとか‥ちょっと、加減して!?
「アンバー・ラッセン。地獄の業火! 」
 対するアンバーは、火属性の魔法だ。‥雹を溶かすためにここら一体燃やすとか‥あんたちょっと‥。

 突然始まった魔法戦争。
 凄まじいい勢いだ。‥周りの空間とかもう悲鳴を上げて、鳥とかも驚いて飛び立ってる。‥いつの間にか周りとこの空間を隔離していた結界が破れてるんだ。
 ちょっと、地獄絵図って程じゃないけど、‥大型魔獣が暴れ狂ってるみたいな光景なんだけど‥。
 二人の魔法は‥凄まじい‥一言でいうと‥そんな感じなんだ。‥いや、凄いんだろうけど‥ 

 アンタら、絶対楽しんでますよね!?

 ‥聞いてるの‥辛くなってきちゃった‥。
 もう、ツッコミどころ満載で、面白すぎるのと、なんかこ恥ずかしいのとで、ホント‥辛くなってきた‥(-_-;)。
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