この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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18. コリン、初めての。

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 ‥ひ‥っ!!

 ぞわっとした! ぞわっとしたぞ!!
 何、さっきの笑い! 「色気駄々洩れの悩殺スマイル」って言われて女の子にキャーキャー言われてた兄ちゃんズの笑顔の方が、まだ健全な感じしたぞ!!
 ‥あ、そうか。
 種類が違うんだ。
 健全じゃないのは変わりないけど、‥そうだな~「とろっ」‥と、「どろ~」位雰囲気が違うんだよ(え?分からないって? )
 そうそう‥幼馴染のマーシャたちが言ってた。
「ホント‥アデルって素敵よね。大人の男って感じするわ~」
 因みに、アデルって僕の上の兄の名前。下の兄の名前は、リンクって言うんだ。
「ほんと、あの蜂蜜色の瞳にとろかされそうって気になるのよね~」
「とろかされたい~! 」
 ‥とろかされるとはそれいかに‥って感じなんだが、でもなんかニュアンスは伝わってくる。
 つまり、兄ちゃんの色っぽいは、「とろっ」って感じなんだ。
 とろっと蜂蜜にならとろかされてもいいのかもしれないけど‥、どろっと得体のしれない粘質の黒い液体に飲み込まれるのって‥絶対怖いよね。

 想像して、僕が固まっていると、二枚目半は、目を細めて、細い‥白い神経質そうな指で僕の頬に触れた。ひやり、とするくらい冷たい指だった。
 でも、ゾッとしたのはその冷たさのせいじゃない。

 や‥やめてくれ‥っ!
 ちゅーとかしそうなくらい、顔近づけるの止めてくれ‥っ!
 目を見つめないでくれ‥!
 初めては、好きな人って決めてるんだ!!

「アンバーも、物好きだなァ。そいつ、そんな顔してるケド、男だぜ? 」
「いや、下手な女よりイイんじゃないか? 」
 雑魚共が後ろで、ゲスい事言い出した。
「違いねえな。見たことない位別嬪だもんな」
 冗談はやめてくれ‥っ誰がこんな奴に‥! 指一本触れられ‥指ではさっき触れられたから‥これ以上触れさせてたまるもんか‥!!
 僕は、まだ自由が利く首を思いっきり振って、二枚目半から顔を背けた。そのまま勢い余って、ゴロリと転がり‥ ‥雑魚い兵士にぶつかって止まった。
 あっちに転がってもこっちに転がっても周りは敵ばかり。せっまい空間に敵ばかり。
「あははは、転がった! 面白いなあ! 」
 二枚目半が、軽い笑い声をあげた。
 くそ‥っ
 どうにか現状を打破しないと‥っ! 
 考えろ‥。
 さっき、二枚目半が言ってた「魔力封じの首輪」それさえ外せたら‥。
 誓約士で、魔力がどんなに莫大だろうと、魔力封じをかけられてしまうとこの通り手も足もでない。
 ‥そうか、組むのはそのせいなのか。
 詮索中など、魔力を使っているとき、どうしても周りへの注意が散漫になる。そのサポートの為。
 誓約士と組む者は、そこら辺の「心得」みたいなものを習うらしい。
「誓約士様が、御供も連れないで一人でってことはないだろうさ、おい! 連れの奴は誰なんだよ! 」
 雑魚い兵士その1の‥背の高い方が、ぐいっとコリンの顎を掴み上を向かせた。
 距離が近い、‥ダメだ、ムカついて気分悪い。
 頭が痛い。‥ちょっと寒気もするから‥きっと、今顔色は紙みたいに真っ白になっているだろう。
 いや‥気分が悪いのは、あの二枚目半のせいか‥。ホントにこいつの魔力は‥気持ちが悪い。
さっさとこの空間から出ないと‥発狂しそうだ。
「おい、やめてやれよ。顔色悪くなってるじゃねえか、怖がってるんじゃねえの? 」
 雑魚い兵士その2の、小太り。
 悪人だけど、自分はいい人~みたいなポーズとか、マジで勘弁してほしい。
 偽善者にすらなれてないよね。(偽善者は悪人に加担しないよね)
「は!? こいつ、さっきアンバーさんに結構な剣幕で言い返してたじゃねえか! 怖がるとかそんなタマかよ! 」
「‥そりゃ、アンバーさんは顔がいいから見てても気持ち悪くならないんじゃねえか? やっぱり、男でも、見つめ合うならイイ顔の方がいいわな‥」
 さっきから聞いてて分かったんだが、つまり、「アンバー」てのが、あの二枚目半の名前ってことか。
 ‥名前、偽名かな。
 僕はやらないけど、魔術士の中では「真名」で縛る魔術士もいるはずだ。
 それを魔術士であるあいつが知っていないはずがない。
 ‥ってか、小太り! 取り消せ! さっきの言葉じゃ、僕がアンバーの顔は許容範囲みたいに聞こえるじゃないか!! ないない!! アンバーの顔はない!!
 だが‥今は、乗るか‥泣き落としでもなんでも‥手段は選ばないよ!!
「‥怖いよ‥。こんなに人に囲まれて、長時間わめかれた事なんてないんだ‥。ここには、ホントにキノコ狩りに来ただけで‥もう一人の人は、父さんが護衛にって付けてくれたんだ」
 設定、キノコ狩りにきた坊ちゃん。シークさんは護衛。
 僕の泣き落としなんかで引っかからないだろうけど‥
 って、ちょっと引っかかった。
「なんでこんなとこに来たんだ? 」
 背の高い雑魚いのが、語気を弱めて聞いてきた。
「以前から、ここにはキノコがいっぱいあるって地元の人に聞いてて」
 これは、ホント。
 地元の人が「キノコの時期だから早く山に入りたい」って言ってたんだ。
「表に兵隊がいて、止められただろう? 」
 と、小太りは‥ちょっと、「世間知らずな坊ちゃん」に説教モードだ。
 け!
 悪党に説教される覚えはない!!
「だって、僕は誓約士だから、‥ちょっと腕を試してみたいなって思ったんだもん」
 ‥言っちゃった「だもん」、言っちゃった。
 自分で言いながら引くな‥なんだその坊ちゃん。泣いて許されると思うのか!? いや、実際は、‥泣き真似しようと思ったけど、涙とか出なかった。‥から、泣きそうに‥喋ってみた。
 しかし、いや、ないわ~。
 自分の設定だのに、自分が一番ドン引き。
 雑魚いの二人も呆れ顔。だが! よし。疑ってる様子ゼロだ。
 誓約士の資格を取ったのを鼻にかける世間知らずの坊ちゃん、腕試しに立ち入り禁止場所にキノコ狩り。
 ‥咄嗟についた嘘だが、なんかあり得るぞ!?
 アンバーは、呆れた様にため息をつく。‥こいつは信じてない。そりゃまあね。
「ま、理由とかどうでもいいです。どんな理由であれ、あなたには死んでもらいます。さ、先生方もつまらないことしてないで、さっさと殺してしまいましょう。魔術士で誓約士なんて危険な物‥置いておくと災いにしかならないんで」
 さっきまでとは違う。‥あきれ果てたって感じの口調。呆れた‥っていうより、「興醒め」って感じ。僕を揶揄うのに飽きたんだろう。
「‥先生方がやらないなら、私がしますよ? 」
 アンバーの赤い目が光る。
 ‥光った様な気がした。
 アンバーの身体をぶわっと黒っぽい靄がおおう。
 オーラとかじゃない。これは、‥魔力だ。
 黒い魔力が溢れて身体の外に出てるんだ。
 ‥この人は、きっと魔力を体の中に留めて置くのが苦手な人なんだろう。普通そういうのは、学校やら神殿にいって習うんだけど、‥きっとこの人のご両親は子供にそこまでの教育を与えることが無かったのだろう。
 ‥平民は、そういうことはよくある。
 普通だったら、「宝の持ち腐れ」で、そのまま大人になる人間の方が多いんだけど、偶にこうして、教わらないと危険って人が正しいところで教わらないまま悪人に利用される。
 そんなことを考えている間にも、黒い靄が僕に迫ってくる。
 ‥考え事をしてるまじゃなかった。
 ‥万事休す。
 やったことないけど‥
 何もせずに殺されるよりましだ‥!!
「コリン・コーナー! 召喚! シーク・ナーサリー!! 」
 僕は、初めての魔法‥やや、闇寄りの魔法「真名で他人を縛る」をしてみることにした。
 初めてで、失敗するかもしれないのに、愛する人を‥実験台にするとか‥ない、とは思うけど‥。
 僕、なんでも初めては好きな人がいいんです! (←違う)
 ‥なに、僕は誓約士。他人の行動を‥時間を縛るのには慣れてる。ただ。
 この場にいない人間を、転移させることは‥出来るかな!?

「てめえはさっき外にいた!! 」
 雑魚い兵士その1が叫ぶ。

 ‥出来たぁ~!!
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