この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

文字の大きさ
上 下
11 / 310

11.仕事中、loveモード禁止!! の誓いはどうした。

しおりを挟む
「は? なんのお祝い? 」
 シークが座ったまま、コリンから一歩分離れる。
 顔が真っ赤になっているのが、焚火に照らされてるのに分かった。
 ってか、‥うろたえすぎ。
 コリンが一歩じりっと近づく。
「事件が解決したお祝いです。事件が解決すれば、シークさんの心も晴れるし、皆も平和になるし、治安も良くなるし‥それら全部のお祝いです」
 そう言い切ったコリンには、変な迫力があった。
「なんでそのお祝いに、俺が君にキスするんだ? 」
 シークは完全にひいている。
 なんか、顔も‥表情が固まっている。
 一方のコリンは、キラキラした目の‥いや、ちょっとギラギラした目でシークを見ている。
 ‥なんか怖い。
「僕がシークさんの相棒だからです。嬉しい時には、キスするものです。家族にだって、久し振りにあったら抱き合ってキスしますよね? 」
 コリンは、決して狩られる側の草食動物ではない。
 かといって、別に肉食動物でもない。
 あくまで理性的に、相手を追い込む。ギラギラした目は、野生から来てるのではなく、あくまで理性的に相手を負かせてやろう‥という好戦的な感情からきていた。
 ‥なんてことはない。ちょっと負けず嫌いモードが入っただけの事だ。
 コリンは見た目に反して気が強い。
 一方のシークは、恋愛慣れしてないものだから、「キス」って言葉だけで、もう頭の中が真っ白になってる。
 たった一言で、フリーズしちゃって‥あとはなけなしの防衛本能で防戦一方だ。
 それどころか‥
「‥する‥かな? 」
 ちょっと、流されかけてる。
 ‥この男、舌先三寸のセールストークで要らないもの買わされそう‥。
「しますよね? 」
「するかも‥」
 固まったままのシークが首を傾げる。
 ね。
 って、コリンが丁寧な動作で、頷く。
「だから、僕らも抱き合って、キスするんです。僕らの場合は家族じゃないけど‥命を預け合った、もっと深い関係だから、もっと深いキス‥唇にキスするんです」
 ゆっくりと、
 説得する様に言葉を紡ぐ。
「‥そういうものなのか? 」
「そういうものなんです」
 不満げな‥不信感たっぷりなシークに、コリンが畳みこむように、念を押す。
 そして、幼子に言い聞かせるように、優しく丁寧に‥
「シークさんは相棒を持ったことないんでしょ? 慣れてないんです。‥練習しておきます? 」
 でも、ちょっと雑念が混ざったみたい。ちょっと、本心出ちゃった。
 コリンの目がキランと光ったのを
「練習? 」
 シークは見逃さなかった。
 コリンの目‥あれは、捕獲者の目だ。捕獲されてたまるか‥!
 
 シークの思想が、苦手な微エロモードから、バトルモードに移行した。
 バトルなら、負ける気はしない。否、負けない。

 シークは、身構えた。
 ‥ち‥!
 コリンは、それに気づきながら、でも、落ち着いた口調で
「親愛の情を表す練習です。決してそれ以外の意味はない、キスです」
 ふふ、と微笑み、ギラギラをしまうと‥更に穏やかな口調で説得を続けた。
 説得という名の、狩りを、だ。いや、‥寧ろ詐欺を。
 シークは、小さく息を吐いて気持ちを落ち着かせると
「‥コリンには以前にも別の相棒がいて、そういうことに慣れてるってこと? 」
 反撃に出た。
 こてん、って首を傾げる。
 さっきから、美少年が近いせいで、動悸が半端ないけど、負けるようなシークではない。はったりだってそこそこ慣れている。
「まさか! 相棒はシークさんが初めてです。そんなことには慣れていません。‥は! 」
 で、‥ここにきて、コリンの狩りは‥詰んだ。
 シークの誘導にまんまと引っかかったって奴だ。
 引っかかった! ってシークが嬉しそうな顔をする。
「初心者なのは、いっしょだな! 」
 一緒だから、練習も出来ないな! って。
 コリンは膝から崩れ落ちた。
 ‥完敗‥。

 なんでそう嬉しそうかな‥。もうちょっと騙されてくれてもいいのに‥。

 でも、嬉しそうなシークさん‥、可愛い。
 くう‥可愛い。シークさん、凛々しいのに、可愛いとかナニコレ。ホント、どうしよう。
 今すぐ押し倒してちゅーしたい!! 
 セックスはシークさんからして欲しいけど、ちゅー位なら僕が主導でもいい。寧ろ、したい。シークさん奥手っぽいから、絶対自分から‥とかなさそう。‥その気がない人をその気にさせたい。その為なら、ない色気総動員させますよ!!
「ぷっ」
 後ろでシークが大笑いしている。
「コリンって面白いな! 表情がくるくるかわって、なんか、玩具みたいだな! 」
 完璧に子ども扱いだよ‥。
 ‥セックスへの道は程遠いなあ‥。それどころか‥
 キスしてもらうには、もうちょっとアプローチが必要だなあ。
 もんもんとするコリンに、シークはくすっと微笑むと、
「とにかく、明日には森を出よう」
 ぽん、と頭に手を置いた。
 コリンは、シークを見て、頷く。
「そうですね。いつまでもこうしてても仕方が無いですものね」
僕はシークさんと一緒にいれて嬉しいですけどね。
‥は、あんまり言い過ぎると逆効果だと思い、ぐっと飲みこんだ。


 ‥魔物はいない。
 それは間違いない。
 では、この森に、誰が何を隠している?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

処理中です...