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第一章 燻る火種と冒険の始まり
第一話 ディール、友達と遊ぶ
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ここはどこまでも美しい緑の大地が続くフォルワ大陸の南西端にある辺境の村。その村に住む黒髪の短髪、空色の瞳を持つ10歳の少年がいた。彼は村の誰よりも友達想いで人々が忌み嫌う魔物が載っている魔物図鑑が大好きなちょっぴり変わった子だ。一生消し去ることのできないあの日が訪れるまではどこにでもいる普通の少年だったのに。
おれの名前はディール・マルトス。数日前に誕生日を迎えたから今は10歳。一年中春のように心地良い風が吹いているこれといった特徴のない平凡なダマヤ村に住む子供だ。
今日はともだちと遊ぶ日だからおれは自分の部屋を飛び出して階段を駆け下りながら母さんに聞く。
「母さん、弁当できてるー?」
「とっくにできてるわよ。それよりもディール、そのボサボサの髪を直してから出かけなさいよ」
母さんはいつものように弁当の入った包みを渡してくれた。おれは弁当を受け取りながらいつもの決まり文句を言う。
「髪型なんていいのいいの。そんなことより母さん”いつものやつ”もあるよね!」
母さんの方もいつもの笑顔で答える。
「当然でしょ。今日も特製フルーツサンド2つ入れといたよ」
「よっしゃー!それじゃ行ってきまーす」
「お兄ちゃん、いってらっしゃーい」
勢いよくドアを開けると後ろから妹の明るい送り出しを背に受けた。おれはいつも通り振り向かずに片手をあげて笑顔で家を出た。
おれは村の中を駆け抜けながら待ち合わせ場所である今は使われていない風車へと向かう。おれの住んでる村は一本の石畳の道を挟むように家が並んでおり先へ進むと村の行事を行う広場がある。けど、肝心の風車は広場とは逆方向で村のはずれだ。風車へと向かう道中は相変わらずで、八百屋のばあさんが今日もイヌにリンゴを盗られて元気に杖を振り回して追いかけまわしていた。
「コラァ~~この犬コロめ~、ま~たウチの果物を盗みやがって。待ちな~!」
少し進んだ先の原っぱの上では村のじいさん連中がウトウトしながら日向ぼっこしていた。
「今日も気持ちいいの~、まるで天国みたいじゃ」
「例えでもそんなこと言っとたら迎えが来てしまうぞ」
「「ホッホッホッホ~」」
爺さんたちは走っているおれに気づいて声をかけてきた。
「ディールや、どこに行くんじゃ?」
「いつもの所だよー」
「そうかそうか。気をつけてな~」
「言われなくても分かってるよー」
おれは走りながら昨日の雨で地面がぬかるんでいることに気づいた。危ないと思ってはいたものの楽しみな気持ちを抑えきれずになかなかスピードを落とせない。そして当然のようにやらかしてしまった。ぬかるんだ土に足をとられて前に倒れるように転んでしまった。転んだ拍子に弁当が入った包みからフルーツサンドが1つ飛んでいってしまった。おれは急いで落ちたであろう場所へ向かうと残酷なことにそこには泥だらけのフルーツサンドが落ちていた。
「やっちまった――――!」
おれは大声をあげてその場で呆然としていたがハッと我に返る。包みの方を確認すると多少包みは汚れたが中身は無事だった。ふぅーと大きく安堵ともため息ともとれる息をはいた。服についた泥や土を落としながら焦らずゆっくりと両手で包みを抱えて風車へたどり着くとそこにはすでにおれのことを待ち望んでいたであろう先客がいた。先に紹介しておくと、この綺麗なブロンドのサラサラ髪でキャメル色の瞳を持つ端正な顔立ちの先客はおれのともだちのレイだ。レイはどっかの王国の貴族の家系らしく村から少し離れた大きな屋敷に住んでいる。
「おーい!レイ――」
おれの呼びかけに反応した友達はゆっくりと立ち上がり手を振った。おれがレイの目の前に立つとレイは心配そうに言った。
「遅かったじゃないか。服汚れてるけど大丈夫かい?」
「大丈夫だよ。それよりはやく遊ぼうぜ」
小高い丘の上に立つこの風車は今やもう誰も使っていないおれたちだけの遊び場になっていた。気持ちいいそよ風が吹くこの場所でおれたちは風車の周りを走り回って追いかけっこしたり、木にくっついている赤と金の斑点模様がある謎の虫をつかまえたりして遊んだ。太陽が一番高くなりいっぱい動き回って腹の虫が鳴き始めた頃、おれはレイと昼ごはんを食べることにした。
「レイ、飯食べようぜ」
「いいね!早く食べよう」
レイはバスケットから見るからに美味そうな肉や野菜を取りだして渡してくれた。おれたちはお互いに弁当のを分け合いながら食べた。やっぱり、高い肉は美味いな。メインを食べ終わった頃にレイがワクワクしながら聞いてくる。
「ディール、今日もあれ持ってきてくれた?」
「当然だろ」
おれはレイに1つしかないフルーツサンドを渡した。
「僕これ大好きなんだぁ」
レイから満面の笑みがこぼれる。レイはこのフルールサンドが大好物らしい。レイが大きな口で頬張ろうとしたときにこちらを向いた。
「あれ、ディールは食べないのかい?」
「おれは待ちきれなくて途中で食べてきちゃったよ」
「なんだぁ、ディールは食いしん坊だね」
昼ご飯を食べ終わって寝転がって休んでいると、レイが話し始める。
「ディールは夢とかあるかい?」
「夢か、考えたことなかったな。毎日のんびりできればそれでいいかな」
おれはあんまり深く考えずにパッとでてきた言葉で返した。
「毎日のんびりか。ディールらしいね」
「レイは何か夢でもあるのか?」
おれがそう聞くとレイは体を起こしながら話した。
「この間先生に外のお話をいっぱい聞かせてもらったんだ。世界には光り輝く滝やしゃべる骸骨がいるらしいんだ。だから、それを見てみたいんだよ!」
レイは目を輝かせながら話した。おれはレイの夢の話を聞きながらその情景を想像しようとしたけどムリだった。だってあまりにも聞きなれない単語が出てくるからだ。けどおれは何となくだけどレイの楽しそうな顔を見て言った。
「そりゃオモシロそーだな」って。
そしたらレイの話が止まらなくなって気づけば夕方になっていた。
「僕、もう帰らなきゃ」
レイが寂しそうにつぶやいた。だからおれは明るく元気づけるように言った。
「また、あそぼーぜ!」
「うん‼」
前にレイが話してくれてたけど、いつも屋敷で勉強や武芸の稽古詰めらしい。それで息抜きで使用人に手伝ってもらって屋敷から抜け出しておれと遊んでるらしい。おれはその話を聞いて以来レイの家のことについて聞くのはやめることにした。だって遊んでる時くらいは楽しいことだけ考えてたいだろ?そうしておれたちは解散してそれぞれの家路についた。
おれの名前はディール・マルトス。数日前に誕生日を迎えたから今は10歳。一年中春のように心地良い風が吹いているこれといった特徴のない平凡なダマヤ村に住む子供だ。
今日はともだちと遊ぶ日だからおれは自分の部屋を飛び出して階段を駆け下りながら母さんに聞く。
「母さん、弁当できてるー?」
「とっくにできてるわよ。それよりもディール、そのボサボサの髪を直してから出かけなさいよ」
母さんはいつものように弁当の入った包みを渡してくれた。おれは弁当を受け取りながらいつもの決まり文句を言う。
「髪型なんていいのいいの。そんなことより母さん”いつものやつ”もあるよね!」
母さんの方もいつもの笑顔で答える。
「当然でしょ。今日も特製フルーツサンド2つ入れといたよ」
「よっしゃー!それじゃ行ってきまーす」
「お兄ちゃん、いってらっしゃーい」
勢いよくドアを開けると後ろから妹の明るい送り出しを背に受けた。おれはいつも通り振り向かずに片手をあげて笑顔で家を出た。
おれは村の中を駆け抜けながら待ち合わせ場所である今は使われていない風車へと向かう。おれの住んでる村は一本の石畳の道を挟むように家が並んでおり先へ進むと村の行事を行う広場がある。けど、肝心の風車は広場とは逆方向で村のはずれだ。風車へと向かう道中は相変わらずで、八百屋のばあさんが今日もイヌにリンゴを盗られて元気に杖を振り回して追いかけまわしていた。
「コラァ~~この犬コロめ~、ま~たウチの果物を盗みやがって。待ちな~!」
少し進んだ先の原っぱの上では村のじいさん連中がウトウトしながら日向ぼっこしていた。
「今日も気持ちいいの~、まるで天国みたいじゃ」
「例えでもそんなこと言っとたら迎えが来てしまうぞ」
「「ホッホッホッホ~」」
爺さんたちは走っているおれに気づいて声をかけてきた。
「ディールや、どこに行くんじゃ?」
「いつもの所だよー」
「そうかそうか。気をつけてな~」
「言われなくても分かってるよー」
おれは走りながら昨日の雨で地面がぬかるんでいることに気づいた。危ないと思ってはいたものの楽しみな気持ちを抑えきれずになかなかスピードを落とせない。そして当然のようにやらかしてしまった。ぬかるんだ土に足をとられて前に倒れるように転んでしまった。転んだ拍子に弁当が入った包みからフルーツサンドが1つ飛んでいってしまった。おれは急いで落ちたであろう場所へ向かうと残酷なことにそこには泥だらけのフルーツサンドが落ちていた。
「やっちまった――――!」
おれは大声をあげてその場で呆然としていたがハッと我に返る。包みの方を確認すると多少包みは汚れたが中身は無事だった。ふぅーと大きく安堵ともため息ともとれる息をはいた。服についた泥や土を落としながら焦らずゆっくりと両手で包みを抱えて風車へたどり着くとそこにはすでにおれのことを待ち望んでいたであろう先客がいた。先に紹介しておくと、この綺麗なブロンドのサラサラ髪でキャメル色の瞳を持つ端正な顔立ちの先客はおれのともだちのレイだ。レイはどっかの王国の貴族の家系らしく村から少し離れた大きな屋敷に住んでいる。
「おーい!レイ――」
おれの呼びかけに反応した友達はゆっくりと立ち上がり手を振った。おれがレイの目の前に立つとレイは心配そうに言った。
「遅かったじゃないか。服汚れてるけど大丈夫かい?」
「大丈夫だよ。それよりはやく遊ぼうぜ」
小高い丘の上に立つこの風車は今やもう誰も使っていないおれたちだけの遊び場になっていた。気持ちいいそよ風が吹くこの場所でおれたちは風車の周りを走り回って追いかけっこしたり、木にくっついている赤と金の斑点模様がある謎の虫をつかまえたりして遊んだ。太陽が一番高くなりいっぱい動き回って腹の虫が鳴き始めた頃、おれはレイと昼ごはんを食べることにした。
「レイ、飯食べようぜ」
「いいね!早く食べよう」
レイはバスケットから見るからに美味そうな肉や野菜を取りだして渡してくれた。おれたちはお互いに弁当のを分け合いながら食べた。やっぱり、高い肉は美味いな。メインを食べ終わった頃にレイがワクワクしながら聞いてくる。
「ディール、今日もあれ持ってきてくれた?」
「当然だろ」
おれはレイに1つしかないフルーツサンドを渡した。
「僕これ大好きなんだぁ」
レイから満面の笑みがこぼれる。レイはこのフルールサンドが大好物らしい。レイが大きな口で頬張ろうとしたときにこちらを向いた。
「あれ、ディールは食べないのかい?」
「おれは待ちきれなくて途中で食べてきちゃったよ」
「なんだぁ、ディールは食いしん坊だね」
昼ご飯を食べ終わって寝転がって休んでいると、レイが話し始める。
「ディールは夢とかあるかい?」
「夢か、考えたことなかったな。毎日のんびりできればそれでいいかな」
おれはあんまり深く考えずにパッとでてきた言葉で返した。
「毎日のんびりか。ディールらしいね」
「レイは何か夢でもあるのか?」
おれがそう聞くとレイは体を起こしながら話した。
「この間先生に外のお話をいっぱい聞かせてもらったんだ。世界には光り輝く滝やしゃべる骸骨がいるらしいんだ。だから、それを見てみたいんだよ!」
レイは目を輝かせながら話した。おれはレイの夢の話を聞きながらその情景を想像しようとしたけどムリだった。だってあまりにも聞きなれない単語が出てくるからだ。けどおれは何となくだけどレイの楽しそうな顔を見て言った。
「そりゃオモシロそーだな」って。
そしたらレイの話が止まらなくなって気づけば夕方になっていた。
「僕、もう帰らなきゃ」
レイが寂しそうにつぶやいた。だからおれは明るく元気づけるように言った。
「また、あそぼーぜ!」
「うん‼」
前にレイが話してくれてたけど、いつも屋敷で勉強や武芸の稽古詰めらしい。それで息抜きで使用人に手伝ってもらって屋敷から抜け出しておれと遊んでるらしい。おれはその話を聞いて以来レイの家のことについて聞くのはやめることにした。だって遊んでる時くらいは楽しいことだけ考えてたいだろ?そうしておれたちは解散してそれぞれの家路についた。
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