今時な死神と不死身な嫌われ者

ガトリングレックス

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第21話武器の暗示

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スパークには同じくデビルの友人がいた。
共にゲームをして遊ぶ仲だったが、30年前、戦いで戦死した。
しかも彼女の目の前で。
その結果友人であるブレイクの幻聴が聞こえるようになり、その後コサメの親が他界。
困り果てたコサメは能力者を保護することを目的とした町の事を知り、引っ越す。
見た目は普通の子どもと変わらないため、能力を使ってもこの町では普通の事だと思われる。
ここなら安心して生活できる。
事実デビルであるスパークを気持ち悪がる者などいない。
ブラッドも事情を知って、支えてくれている。
「今日は3人でお買い物?」
「はい、今日は家で働いているファイヤーがステーキを焼くと言うので、それ用のお肉を買いに。ブラッドさんは?」
コサメの質問にブラッドは買い物カゴを見せる。
「こっちはお菓子の買い溜めよ。必要以上のお金が入ってくるからしめしめと使ってるわけ、基本20代は軽く超えてる子達が多いから、仕事のストレスで相談しに来るの。だからそのために色々と用意しないと」
話し合いをしていると、スパークがコサメの裾を引っ張ってくる。
「どうしたのスパーク」
「デビルの気配がする。しかもこのスーパーの近くに」
デビルとは元々人間を殺すために生まれた存在。
それがここにいると言うことは・・・・・。
「多分ウェポンさんじゃないかな。最近引っ越して来たアイシアさん家のデビルの、もう戦いは終わったんだからやられたりしないでしょ」
スパークの耳にブレイクの幻聴がささやいてくる。
「でも、ブレイクは近づくなって」
するとコサメはスパークに満面の笑みを浮かべる。
「大丈夫大丈夫、ご近所づきあいは大切なんだからね。ブラッドさんも一緒に行きませんか?」
「えぇ、歴戦の悪魔と会えて光栄だわ」
ブラッドは興味がそそられ、スパークの案内でコサメと共にウェポンと呼ばれていたデビルの元へ向かった。

一方探されているウェポンはセルフレジで会計を済ませていた。
(あのデビルの気配、ふん、今の俺はマスターの家で色々としなくちゃならないんだ。さっさと帰るとしよう)
黒い鎧を身に付け、黒い触手が全身に巻きついている。
会計を済ませ外に出ると、マスターであるアイシアの一軒家に帰ろうとする。
(ミサイルで飛んで帰ることができないのは悔やまれるが、まあ仕方ない、徒歩で帰るか)
ウェポンを見た者達は驚きを隠せない様子で目を丸くする。
能力者達が住んでいる町でもさすがに驚かれる。
その表情を見る度に苛立ちを感じる。
(俺はオオアタリのデビルだ。人間共の視線に一々かまっている時間はない)
マスターであるアイシアとその家族以外の人間と仲良くなる筋合いはない、そう想いながら生きてきた。
戦いを求め、殺意をむき出しにした頃もあった。
今ではすっかり丸くなり、戦いには無縁の生活をしている。
(マスターは会社で泊まるから、食材は冷蔵庫に入れておこう)
歩きながら考えを巡らせていると。
「ウェポンさーん」
コサメの声で振り返り、デビルであろう少女であるスパークを見て、「げっ」っと、怪訝そうに声を上げる。
「ハア、ハア、ハア、追いついたぁ」
走って来たのだろうか、息が上がっている。
「デビルのマスターか。俺に何の様だ」
「いやー、ご近所さんに挨拶しに来たんですよ。私はヒグラシコサメ、この子はスパーク、そしてこの人が私のお友達のブラッドさん」
「よろしくお願いね」
2人の挨拶にウェポンは早く帰りたいと言う気持ちを抑え、挨拶を返す。
「改めて、俺は武器の暗示、ウェポンだ。この町に来てまだ日は浅い、これからよろしく頼む」
アイシアにも言われた。
ここに生活するにあたり友人は作っておけと。
そうすれば信頼を得られ、この町に溶け込めると。
自分に果たしてできるのだろうか。
友人を作り、もし絶望感を味わうようなことがあったりしたら。
そう思うと気が重くなる。
「色々と大変だろうけど、手伝いが必要なら呼んでね」
「分かった。とりあえず電話番号を登録したいんだが」
「そうですね。ちょっと待っててください」
コサメはバッグからデバイスを取り出し、ウェポンが持つデバイスに電話番号とメールアドレスを送る。
「はい、送りましたよ」
「じゃあ次私ね」
ブラッドも同じく電話番号とメールアドレスをウェポンのデバイスに送る。
「これで完了っと」
ウェポンはデバイスが受信した2つの電話番号とメールアドレスを承諾するように操作し、登録を完了した。
「なにかあったら電話してください、相談に乗りますから」
「あぁ、その時は頼む、じゃあな」
そう言ってウェポンは手を振りながら後ろを振り返ると、突然火炎放射が襲いかかる。
次元の裂け目から大剣を何十本も取り出し、何本もある触手で持ち、盾にする。
「なに者だ」
殺意をむき出しにしたその兜から覗かせる目で敵を捕捉する。
長い黒赤髮を白いリボンで止め、可愛らしく見開いた白い瞳がアワアワと泳いでいる。
女子学生なのだろうか、制服を着ており、左手には可愛いらしくディフォルメされた赤い化け物のパペットを付けている。
「あの制服、確か雇われ屋の」
目を細め、気嫌いそうに言うブラッドに、コサメはバッグから電気の殺人を取り出そうとした。
「今、私達を攻撃したよね」
『あぁ、確かにしたな。どうする?』
「攻撃を仕掛けたあいつが悪いんだもん」
ゆっくりとウェポンの前に立つスパーク。
「殺しても構わないよね、ブレイク」
『殺してやろう、スパーク』
「『絶対に殺す」』
電気を放出し、一気に加速する友達を、コサメは止めることができなかった。
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