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第20話殺人鬼のお土産
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警戒するミユの顔を見て、にこやかな表情でセイギはパイプイスに座る。
「ヤマダセイギ。あなたがなぜここにいるの」
「おいおい、お見舞いに来てあげたのにその言い方はないだろう」
ランがセイギの声でハッと気づいた。
「その声、もしかして黒い奴の中身があなたっすか?」
「勘が鋭いねぇ。そう、俺が黒い奴に変身していた張本人、ヤマダセイギだ」
親指を立てて、自分の事を指差してみせる。
「あなたは何人も人を殺してきた。それなのにどうして堂々とこの場所にいるの?」
「君は知ってるようだけど、この国において俺の行動を知っている人は数少ない。だからここに居られるんだ」
話の通り、ランはまったく知らない様子。
「あのねオンガ、こいつは20年ぐらい前、人を殺して銀行の通帳やらカードやらを盗んでいる凶悪犯なの」
「人聞きが悪い。俺達は悪い奴を倒しているだけだ。悪い奴から金を奪う、それが悪いとは思ってない」
「人を殺していいのは選ばれた人間だけ。暗殺者や殺し屋、警察とあなたは違う。殺す権利はない人間は殺す権利がある人間に殺される。それが運命」
ミユの言葉に拍手するセイギ。
それを見てランとミユは不思議そうに、いや気持ち悪そうに「えっ」と声を漏らす。
「良いねぇその考え方。本当に君は正義感が強いんだね」
「なにを言ってるの。私は今まで仕事で何人も殺してきた。悪いも良いも関係ない」
ミユの能力は死神ネットのデータベースから殺害対象を特定し、距離無制限で様々な殺害方法で生物や機械を殺すこと。
能力持ちと言うだけで嫌われることは決定している。
だからこの町に保護された。
しかし能力があまりにも強すぎるが故に雇われ屋にスカウトされ、生き残るために何人も暗殺してきた。
そんな自分が正義感を持っているなんてありえない。
「まあ体を早く治してくれよ。おそらくここで戦いが始まる」
「どう言うことっす?」
興味しんしんで、目をキラキラさせるランに、呆れるミユ。
(ホント、オンガはこう言う戦闘物の話につられやすいんだから)
ため息を吐き、セイギの方に視線を向き直す。
「相棒によるとこの町が兵器の実験台にされたみたいでねぇ。実験は成功し、量産されることが決まったそうだ」
「あなたみたいな快楽殺人犯の事を信じるわけないでしょ。早く帰って」
「いやいや、お土産を渡せずに帰れないよ」
セイギは持っている本、正義の殺人を開くと、相棒であるストロンギストが飛び出した。
「相棒の能力で君達のケガを治す。それが俺のお土産だ」
「俺ならケガをしたことを破壊することができる」
ストロンギストはランの方へ手の平を向ける。
「もういい、治ったぞ」
信用していい物か、そうランは思いながら左腕を動かしてみる。
すると、折れていたはずの左腕がすんなり動く。
拘束器具を念動力で外し、ベッドから降り、準備体操をしても平気だ。
「すごいっす! 骨折が治ってるっすよ!」
大喜びではしゃぐランをよそに、今度はミユに手の平を向ける。
「これでお土産は全部だ。じゃあ俺達はこれで失礼するよ」
正義の殺人にストロンギストを戻し、セイギはパイプイスから立ち上がると、本をバッグにしまい、優しく微笑みながら病室を出た。
一方その頃、スーパーで買い物をしているブラッドは眷属と食べるお菓子を色々と買い溜めしていた。
(食材は業者が運んでくれてるから良いとして、みんなのお菓子を買い足さないと)
お節介な彼女の腕にはたくさんのお菓子やふりかけなどが入った買い物カゴがある。
国から支給されるお金で生計を建てている身としてはできる限り買い物はガンガンしておきたいところ。
それはどうしてか。
(全部のお金を使い切らないと国が出してくれないのよね)
国のお金はすべて使わないと次の支給が途絶える。
施設の維持費などを払っても、お金は残ってしまう。
なのでお菓子などを購入し、全額使い切る必要があるのだ。
そうこうしている間に、友人らを見つける。
「あらヒグラシさん」
ブラッドの呼びかけに女性と少女が振り返る。
「おー、ブラッドさんじゃないですか」
40代ほどの女性で、短くまとめられたストレートな黒髮。
疲れきった黒い瞳。
青く縁取られたメガネ。
服は動きやすい赤いジャージを着ている。
彼女の名前はヒグラシコサメ。
ブラッドの友人の1人で、補助金で生活している。
その理由は彼女の隣にいる少女にあった。
「スパークちゃん、ブレイク君も元気?」
「うん。私もブレイクも元気よ」
青いリング状の装飾でツインテールにまとめた金髪。
オレンジ色の光のない瞳。
首にはイナズマのマークがあしらわれたネックレスを付け、青いフードパーカーに青いスカートを履いている。
彼女の名前はスパーク。
ストロンギストと同じくデビルである。
だが見た目だけ見れば普通の女の子だ。
能力は電気を自由に操る能力。
ヒカルとの違いは発電できるだけではなく、吸収したり、生活のために電気を作るなど、攻撃に使うだけではない。
そんな彼女だが、精神の病気を患っている。
それはとても重く、そして悲しい物だった。
「ヤマダセイギ。あなたがなぜここにいるの」
「おいおい、お見舞いに来てあげたのにその言い方はないだろう」
ランがセイギの声でハッと気づいた。
「その声、もしかして黒い奴の中身があなたっすか?」
「勘が鋭いねぇ。そう、俺が黒い奴に変身していた張本人、ヤマダセイギだ」
親指を立てて、自分の事を指差してみせる。
「あなたは何人も人を殺してきた。それなのにどうして堂々とこの場所にいるの?」
「君は知ってるようだけど、この国において俺の行動を知っている人は数少ない。だからここに居られるんだ」
話の通り、ランはまったく知らない様子。
「あのねオンガ、こいつは20年ぐらい前、人を殺して銀行の通帳やらカードやらを盗んでいる凶悪犯なの」
「人聞きが悪い。俺達は悪い奴を倒しているだけだ。悪い奴から金を奪う、それが悪いとは思ってない」
「人を殺していいのは選ばれた人間だけ。暗殺者や殺し屋、警察とあなたは違う。殺す権利はない人間は殺す権利がある人間に殺される。それが運命」
ミユの言葉に拍手するセイギ。
それを見てランとミユは不思議そうに、いや気持ち悪そうに「えっ」と声を漏らす。
「良いねぇその考え方。本当に君は正義感が強いんだね」
「なにを言ってるの。私は今まで仕事で何人も殺してきた。悪いも良いも関係ない」
ミユの能力は死神ネットのデータベースから殺害対象を特定し、距離無制限で様々な殺害方法で生物や機械を殺すこと。
能力持ちと言うだけで嫌われることは決定している。
だからこの町に保護された。
しかし能力があまりにも強すぎるが故に雇われ屋にスカウトされ、生き残るために何人も暗殺してきた。
そんな自分が正義感を持っているなんてありえない。
「まあ体を早く治してくれよ。おそらくここで戦いが始まる」
「どう言うことっす?」
興味しんしんで、目をキラキラさせるランに、呆れるミユ。
(ホント、オンガはこう言う戦闘物の話につられやすいんだから)
ため息を吐き、セイギの方に視線を向き直す。
「相棒によるとこの町が兵器の実験台にされたみたいでねぇ。実験は成功し、量産されることが決まったそうだ」
「あなたみたいな快楽殺人犯の事を信じるわけないでしょ。早く帰って」
「いやいや、お土産を渡せずに帰れないよ」
セイギは持っている本、正義の殺人を開くと、相棒であるストロンギストが飛び出した。
「相棒の能力で君達のケガを治す。それが俺のお土産だ」
「俺ならケガをしたことを破壊することができる」
ストロンギストはランの方へ手の平を向ける。
「もういい、治ったぞ」
信用していい物か、そうランは思いながら左腕を動かしてみる。
すると、折れていたはずの左腕がすんなり動く。
拘束器具を念動力で外し、ベッドから降り、準備体操をしても平気だ。
「すごいっす! 骨折が治ってるっすよ!」
大喜びではしゃぐランをよそに、今度はミユに手の平を向ける。
「これでお土産は全部だ。じゃあ俺達はこれで失礼するよ」
正義の殺人にストロンギストを戻し、セイギはパイプイスから立ち上がると、本をバッグにしまい、優しく微笑みながら病室を出た。
一方その頃、スーパーで買い物をしているブラッドは眷属と食べるお菓子を色々と買い溜めしていた。
(食材は業者が運んでくれてるから良いとして、みんなのお菓子を買い足さないと)
お節介な彼女の腕にはたくさんのお菓子やふりかけなどが入った買い物カゴがある。
国から支給されるお金で生計を建てている身としてはできる限り買い物はガンガンしておきたいところ。
それはどうしてか。
(全部のお金を使い切らないと国が出してくれないのよね)
国のお金はすべて使わないと次の支給が途絶える。
施設の維持費などを払っても、お金は残ってしまう。
なのでお菓子などを購入し、全額使い切る必要があるのだ。
そうこうしている間に、友人らを見つける。
「あらヒグラシさん」
ブラッドの呼びかけに女性と少女が振り返る。
「おー、ブラッドさんじゃないですか」
40代ほどの女性で、短くまとめられたストレートな黒髮。
疲れきった黒い瞳。
青く縁取られたメガネ。
服は動きやすい赤いジャージを着ている。
彼女の名前はヒグラシコサメ。
ブラッドの友人の1人で、補助金で生活している。
その理由は彼女の隣にいる少女にあった。
「スパークちゃん、ブレイク君も元気?」
「うん。私もブレイクも元気よ」
青いリング状の装飾でツインテールにまとめた金髪。
オレンジ色の光のない瞳。
首にはイナズマのマークがあしらわれたネックレスを付け、青いフードパーカーに青いスカートを履いている。
彼女の名前はスパーク。
ストロンギストと同じくデビルである。
だが見た目だけ見れば普通の女の子だ。
能力は電気を自由に操る能力。
ヒカルとの違いは発電できるだけではなく、吸収したり、生活のために電気を作るなど、攻撃に使うだけではない。
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