今時な死神と不死身な嫌われ者

ガトリングレックス

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第6話まず1人

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夜になり、人がごった返した十字路に霧が立ち込める。
(最近霧が多いな)
仕事帰りの男性はそう思いながら駅に向かう。
歩いていると、突然悲鳴が聞こえて来る。
(なんだ?)
不安になり、早足で逃げる様に歩いていると、背中に激痛が走り意識がなくなる。
「まず1人、殺した」
黒ずくめの大柄な男は男性から大剣を引き抜き、次にフルスイングで人々を蹴散らして行く。
「剣を振る、お前ら、死ぬ」
「おいおい、俺の分も残しておいてくれよ」
そう言いながら黒ずくめで痩せ柄の仮面を付けた男が女性の首元を切り裂き、血を皮製の手袋で拭う。
「人、たくさん、いる、だから、大丈夫」
「そりゃそうだ。さあ殺戮タイムの開始だぜ」
2人は殺戮を楽しむ。
人々が逃げる姿を見て殺意をむき出しにし、殺しまくる。
警察が来る前にできるだけ人を殺すゲーム。
それが何回も続けられている。
すると逃げずに近づいて来るブラッドの姿があった。
「なんだ、お前、死にたいのか」
「あら、私があなたを殺しても良いのよ」
「お前、俺、殺せない、争って、みせろ」
大柄な男は大剣を構えながらブラッドに突進する。
(単調な男ね)
呆れた表情でリボルバーをホルスターから取り出し、吸血鬼の力で強化する。
銃口を大柄な男に向け、ハンマーを下ろし、発砲する。
赤き銃弾が飛んで来る。
瞬時に大剣を盾にするが、銃弾は貫通し、腹を貫かれた。
「ウガーーーー!?」
大柄な男は激痛に叫びを上げると、怒りを力に変え、ローブを脱ぎ捨て、仮面を外す。
筋肉が発達した肉体。グレーの肌。洋風な黒い兜と黒い鎧を装備している。
「俺の名前、ジャイアント、お前、殺す」
「安直な名前。見た目でつけられて不憫な子」
目を細めながらブラッドはリボルバーのハンマーを下ろし、構えた。

一方その頃ヤマトは情報を元にバイクで十字路に向かっていた。
(まったく、母さんも過保護だな。俺の仕事の手伝いをしたいから外出するなんて。お節介にもほどがある)
ブラッドには過保護なところがあり、眷属家族の仕事に首を突っ込む事が多い。
昨日はコウの仕事場に弁当を運んで来たそうだ。
眷属家族はブラッドのその行為に様々な想いを感じている。
迷惑だと思っている者。
嬉しく思っている者。
人それぞれだ。
信号機が赤になり、ブレーキをかける。
白い線のところで止まると、突然霧が発生した。
(こんなところで来るのか。人を巻き込むわけにはいかない。かと言って赤信号を無視するわけには)
悩んでいる間に、ローブを着た小柄な者が包丁を刺しに襲いかかって来る。
「キャハハ、殺してあげる」
可愛らしい声で包丁を逆手に持ち替え、霧に消える。
(なに?)
いきなりの事で動揺していると、後ろから激痛が走る。
「うっ」
ヤマトは意識を失い、この場に倒れた。
その姿を見た後ろの車の運転手はすぐに警察に通報しようとする。
「ダメよ、そんな事しちゃ」
後ろを振り返ろうとした時には、運転手はすでに死んでいた。
ヤマトが復活した頃には人が何十人も殺戮されていた。
「許さない。人を殺す事がどれだけの罪なのか。確かに俺はお前達を殺そうとしている。だとしても罪もない人々を殺すお前達を俺は絶対に許すわけにはいかない」
決意を固め、バイクを降りると、警棒を取り出し、眷属の力で強化する。
「君の正義の感情、確かに感じ取らせてもらったよ」
「誰だ」
ヤマトの声に反応する様に足音が聞こえて来る。
そちらの方を見ると、特撮に登場するヒーローの様な黒き戦士2人がそこにいた。
片方は白い複眼。
もう一方は赤い複眼をしている。
「あなた達は一体」
「話は後だ、お前は十字路へ向かえ」
「ここは俺達に任せておけ、でないと被害が大きくなるぞ」
「信用しても良いのか?」
「口より行動で示した方が良い、その方がカッコいいぞ」
会話に反応し、小柄な者が血だらけのまま歩いて来る。
「なんかカッコいい2人がいるけど、あなた達何者?」
「罪人に語る名前などない」
「同じく」
黒き戦士2人は拳を強く握り、一斉に加速する。
言われるがままヤマトはバイクに乗り込み、十字路へ向かった。
同時に右ストレートを勢いよく繰り出すが、触れる直前に小柄な者は霧に姿を消す。
(見飽きたな、その動きは)
戦い殺人を何十年もこなして来た経験者の赤い複眼の黒き戦士。
「ディフェンス!」
ベルトから流れる声により、姿が黒から緑に変化し、装甲が強化される。
後ろから忍び寄る小柄な者の攻撃。
(決まった!)
包丁を赤い複眼の者の背中に刺した。
いや、刺さらない。
包丁の刃がへし折れ、車のタイヤに突き刺さり、パンクさせた。
(なんなのこの硬さ!? こんな奴の情報なんて聞いてない!?)
作戦に失敗し、霧に姿を消そうとする。
すると白い複眼の黒き戦士がとてつもないスピードで後ろを振り返り、首を掴む。
しかしまるで霧に溶け込む様にその場から消えた。
霧も晴れていき黒き戦士2人は悪が逃げた事を自覚する。
「すまないセイギ、トランスフォーム。破壊が間に合わなかった」
「気にするなストロンギスト。十字路に向かえばそこに悪がはびこってる。行くぞ」
「そうだぞ、まだチャンスはあるのだからな」
彼らの戦い殺人は終わらない。
そう。
人が犯罪を繰り返す限り、正義の断罪身勝手な殺人は終わらないのだ。
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