上 下
4 / 39
目覚める戦士編

第4話 戦いに慣れし戦士

しおりを挟む
幕昰と合流した六問は怪人科の部屋を訪れ、共に入れるように頭を下げた。

「お願いします。もう1度この部署に入らせてください」

「そう言ってもねぇ。君は位が高いんだ。前線で働く必要はないんだよ。それに幕昰くん。六問くんはそもそも警察の人間ではない。我々にはズーシリーズがある。もう彼に頼る必要はない」

上司に断言されてしまった幕昰はそれでも「お願いします」と頭を下げる。
すると光炎が隣に立ち、同じく頭を下げた。

「私からもお願いします。ズースリーの性能は六問さんを超えていません。量産化もまだ整っていないですし、ズーシリーズを集結させるにもかなり時間が掛かるでしょう」

「光炎くん、君はズーシリーズを過信しすぎている。そう言いたいのかね?」

「はい。製作者である私が言うんです。間違いありません」

彼女の熱弁に上司は大きな鼻息を立てると、腕組みをし始める。
そして口を動かした。

「分かった。しかしだよ。もし六問くんと幕昰くんが不祥事を起こしたらすぐに怪人科から出てってもらう。それでいいね」

その発言を聞き、安心した様子で「ありがとうございます」と感謝を幕昰は言った。

それから1日が経過、早朝に出動命令が出たズートレーラーはすぐに現場へ向かう。
運転するのは3人のチームで唯一の男性、鈴静すずしずスズメ。
30代前半で名前から女性だと面と向かう前に勘違いされるのがコンプレックスである。
カーナビの案内に従っていると現場に到着、車両を止めた。

如鬼はズースリーを装着、六問も左手首の腕輪に右手をかざすと電気を纏ってザーガへと姿を変えた。

「六問、いつも通りやれば必ず倒せる。頑張れよ」

幕昰の応援にサムズアップし「はい!」と元気よく返事を返す。
白バイに彼女が乗り込むと、ズートレーラーの後方ハッチが開き出撃して行く。

「じゃあ俺も行って来ます」

「あぁ、任せたぞ」

ザーガは車両から降りると、高く跳び上がり、ズースリーについて行った。

現場に到着すると乾涸ひからびた死体が乱雑に放置されており、その真ん中に堕天使が立っている。

「ようやく来たか。強者よ」

その姿はまるで吸血コウモリと牛の幻獣ミノタウロスを融合させた様な物で、2本の鋭い牙、悪魔を彷彿とさせる2本の角、とんでもない筋肉質なブラウンの体、黒き装飾で身を包んでいる。

「お前! 罪のない人間を何人殺した!」

「罪のない? なにを言っている? 生きていることが罪の人間など、死んで当然だろう」

六問の怒りから放った叫びをバットタウロス・ダークエンジェルは不敵な笑みで返し、バトルアックスを召喚する。

『如鬼、無理は絶対にしちゃダメよ』

「分かりました。これより攻撃に入ります」

スキャンを終えた如鬼がサブマシンガン〈アーチャー〉の銃口を堕天使の左胸に向けて連射する。

「グワ!?」

全弾命中、敵が怯んだところでマガジンを取り外しリロードする。
しかし傷口をすぐさま再生させ、猛突進して来るバットタウロス・ダークエンジェル。
その速度あっという間に60キロを超え、バトルアックスを大きく振りかぶる。

「このぉぉぉ!」

そこにザーガが割り込むと角を掴み、勢いをそのままに投げ飛ばした。

だが黒き翼を大きく広げ荒々しく咆哮を上げると、その場で着地する。

「ふん。人間の強者とはその程度か」

「悪いけどあなたの能力とステータスは把握済み。倒す方法を知っている以上、ここで倒させてもらう」

「そうか、ではそれが事実か、やってみろ! ヲォォォォォォ!」

バトルアックスを構え再び突進を仕掛ける堕天使、それに対してズースリーは白バイに収納された超振動ブレード〈セイバー〉を右腕に装着する。
止まらないバットタウロス・ダークエンジェルに剣先を向けると、腹を貫通し、大量の血が吹き出す。
あまりの勢いに負担が腕へと重くのしかかり「ウッ」と思わず声が出た。

「………あなたの能力は吸血した血を代償に自身を再生させること。再生を続ければいずれ底が尽き撃破可能」

「素晴らしい! 素晴らしいぞ人間! 戦いはこうでなければなぁ!」

人間の策士に喜びながら叫びを上げ、痛みに耐えながらバトルアックスを振りかぶる。

『躱して如鬼!』

「無理です。このまま攻撃を続行します」

大量の返り血を浴びながら命令に逆らい、リロードした〈アーチャー〉でゼロ距離射撃を繰り出す。
思わぬ攻撃に風穴が開けられ吹き飛ばされる堕天使、体を再生しきれず息を切らした様子。
だが戦いを楽しむ彼は高笑いを上げ、バトルアックスをブンブンと振り回す。

(如鬼さん、あの若さで戦いに慣れすぎている。攻めに躊躇ちゅうちょがない。それは戦闘するには向いてるのかもしれないけど……)

彼女のその冷静さ、それを六問には諸刃の剣に見え、嫌な予感がするのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない

めがねあざらし
キャラ文芸
「神嫁は……お前です」 村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。 戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。 穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。 夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...