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正義編

第6話普通の生活

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家に戻ったセイギは母にただいまの挨拶をした後、手を洗い、2階に登り、自分の部屋に入り、勉強机に〈正義の殺人〉を置く。
ページを開き、ジャスティスの様子を確認する。
傷だらけで、血溜まりができる程、ジャスティスの状態は良くなかった。
だが〈正義の殺人〉の中に入れば、傷も次第に癒える。
この具合だと、3日待てば完全に治るだろう。
「それまでデビルとの戦闘は避けなきゃなぁ」
そう言いながら、学校から出た宿題をやり始める。
と言っても別に難しい問題が書いてある訳ではない。
数学なら掛け算や割り算、国語なら小学4年の漢字。
障害者だからワザと難易度を下げている。
別に障害者を侮辱している訳ではない。
そうしなければ内容について行けずただ潰れるだけ。
正直言ってセイギは簡単な漢字しか書けない。
分からない漢字はスマホで検索し書き写す。
5枚のテストが終わったところで、数学のテストをやり始め様とする。
「セイギ!、ご飯できたよ!」
母の張りのある声に反応し、1階に降りる。
今日はハンバーグランチだ。
「いただきます!」
「はい、召し上がれ」
セイギはフォークとナイフを使い、ハンバーグを食べ、ごはんを口に入れる。
「うん、美味しい」
「良かった」
母もポテトフライを食べ、ごはんを口に入れる。
ヤマダ一家は4人家族で、セイギには10歳歳上、つまり27歳の姉がいる。
姉は1人暮らしをしていて、この家にはいない。
実はセイギと3人は血が繋がっていない。
あれは10年前、セイギが7歳の頃。
いじめっ子とケンカになり、力が強かったセイギは相手の首を絞め、殺害してしまった。
それを知った実の父と母は失望し、蒸発。
少年院では衝動を抑えられない自分をいじってくる人達をボコボコし、出られる期間が長びいたりした。
そんなこんなで3年の月日が流れ、ようやく出られたと思えば今度は孤児院に入り、新しい家族を待つと言う。
それはセイギにとっては嬉しかったが、今までの経歴では到底かなわないと思われた。
ましてや障害者など、家族にしたい人などいないだろう。
そんな事も理解できず、次々に拾われて行く子どもを見るとイライラが募るばかり。
なんでもらってくれないのか、そんな疑問がさらにイライラを募らせる。
チャンスが訪れたのは、中2の頃だった。
優しそうな夫婦がセイギを拾ってくれたのだ。
手続きを済ませ、家族となった。
それから1年、ライトノベルやマンガが好きになったセイギは本専門の中古ショップで安い本を探していた。
そこで見つけたのがデビルフェイスシリーズ〈正義の殺人〉だった。
108円とお手頃な値段だったり絵が好みだったので、購入した。
家に帰り、早速自分の部屋で〈正義の殺人〉を読み始める。
それはセイギにとって狂気じみていた。
しかしせっかく買った物なのだからと、最後まで読む決心をする。
読むにつれて主人公の正義が歪んで行く。
最悪の敵に対して、悪意の数値が見える主人公は倒すのをやめた。
それに悪意がないから。
悪気があってやってる事じゃないから。
主人公の力は悪意によって強くなるから。
結局主人公は敗れてしまい、仲間が敵を倒して終わりとなった。
腑に落ちない結末にがっかりしながらも、面白かったのも事実。
最後後書きを読んですべてが終わるはずだった。
しかし後書きにはこう書かれていた。
[この本を読んでくれてありがとうございます。違うデビルフェイスシリーズを読みたい方もいると思います。ですがそれはできません。なぜならそれはあなたがこの本を買った時点で、使い魔を手に入れているからです。知ってて買った人もいれば知らずに買った人もいるでしょう。一応説明しますとこの本には内容に合わせて悪魔を忍ばせています。別にあなたを食べたり傷つける事は一切しませんし、ごはんも必要ありません。ただあなたは悪魔と生活するだけで良いのです。ですが悪魔は幽霊と違って他人に見えてしまいますし、物質にも触れられます。そこでこの本の出番です。この本はポ○モンで言うモン○ターボールの役割を果たし、悪魔を保管する事ができます。別に勝手に出てくる事はないのでご安心を。見られたくない時に有効活用してください。それと彼ら彼女らは殺人のプロでもあります。気に入らない者がいれば殺してくれます。悪魔と言うのは人間では到底殺す事ができない化け物であり、簡単に人間を始末するでしょう。また性格もあり、殺し方も様々です。者によっては目立つやり方で殺人を起こし、警察や軍人に目をつけられ、攻撃されるでしょう。ですがご安心下さい。悪魔はその程度では死ぬ事はないですから。と言っても軍事兵器は進化しています。悪魔を倒せる武器もできているかもしれません。その際はご了承ください] 
そんな事が書いてあり、不気味に思っていると、後ろから肩を触られた気がして、後ろを振り返る。
そこにいたのは、ラノベの主人公を思わせる悪魔だった。
この半年後、原作者が重い病気になったとスマホにメールで知らせがあり、さらに遺産をデビルフェイスシリーズを持っている者1人に相続する事が続きに書かれていた。
それについてセイギは強制参加であり、殺し合いになると予想し、戦う決心をする。
現在、おそらく原作者は死亡し、その子ども達が言葉を無視して遺産を相続している可能性がある。
それでも殺し合いは全国で起きている。
そんな中で今まで3人倒して来たジャスティスとセイギ。
だがそんな事を家族に言える程バカではない。
これは2人の戦いだ。
戦いに家族を巻き込む訳にはいかない。
それもあるが、また失望されて離れて行ってしまったら生き場を失ってしまう。
そんなのは嫌だ。
そう思いながら今を生きている。
「ごちそう様でした」
「お粗末様でした」
セイギは皿を洗い場に置き、テレビを見る。
そこに映っていたのはコンビニ強盗殺人のニュースだ。
この頃多発しているこの事件はデビルの仕業だと思われる。
「この犯人、まだ捕まらないのよね。警察はなにをしてるのかしら」
「犯人は防弾チョッキを貫く強力な銃を所持してて、しかも現金を盗み終わったらどこかに透明になったみたいに消えるらしいよ。だから捕まらないんじゃないかな」
「まったく、これじゃあ気軽にコンビニに行けないわね」
母の一言に「そうだね」と言い返した。
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