ないたドラゴン

広瀬あかり

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泣いたドラゴン

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あるむらに、いっぴきのドラゴンがおりました
それはそれはかっこいいすがたでひとびとはドラゴンにいのったのです

このせかいをしあわせにしてくださいと

そのドラゴンはこのむらのまもりがみとしてあがめられていました。

そんなとき、どこかたともなくあるうわさがながれたのです。
あのドラゴンのなみだにはどんなねがいもかなえるちからがあると...

ひとびとはそれをきいてたちあがります
「あのドラゴンをなかせてねがいをかなえてやろう」と

ひとびとのねがいはさまざまでした
おかねもちになりたい、しあわせになりたい、びょうきをなおしたい
いろんなひとたちがかってなりゆうでドラゴンをねらいはじめます

ほんとうはドラゴンのなみだにそんなちからはないのです
これまでずっとやさしくしてくれたひとたちがとつぜんおそいかかってくるのです
ドラゴンはどれほどこわかったでしょう・・・

ドラゴンはにげます、どうして?というおもいをかかえながら。

なんにちもなんにちもひとびとはドラゴンをおそいました。

そんなとき、エレというちいさなおんなのこがとつぜんさけんだのです

「やめて!あのこはかなしんでる!どうして?ずっとたいせつにしてきたじゃない!」

しかし、そんなこえはだれにもとどきません
ひとびとのこころにはそれぞれのねがいをかなえることしかありませんでした

しかしおんなのこはあきらめず、ひとびとのふくをひっぱり、かたをたたき
じぶんがなぐられながらまいにちまいにちさけびます

「もうやめて!しんじゃうよ!!」

ドラゴンはまいにちなげられるいしやぼうでからだもツバサもボロボロです
しかし、いちどもドラゴンはやりかえそうとはしませんでした。

「おねがい!もうやめてよぉ!!」

エレはなみだをながしおおごえでさけびます

そのときです

ふわり・・・エレのからだがとつぜんそらへとまいあがりました
そしてきがつくと・・・

「うそ・・・わたしドラゴンのせなかにのってる・・・!?」

《なぜわたしはにくまれる?わたしがなにをした・・・?》

せなかのうえでドラゴンのかなしいこえがきこえました

「ごめんね、ごめんね・・・」

ドラゴンのせなかにぎゅっとしました

《おまえはわたしのみかたでいてくれるのか・・・?》

「うん、そうだよ・・・!」

そういったとたん、ドラゴンのりょうめからおおつぶのなみだがあふれます
そしてそのなみだのひとつぶがかぜにのりエレのてのひらのうえにおちたのです

エレはぎゅっとそのなみだをだきしめました

「もしも、もしもおねがいがかなうなら・・・このこを、このこがしあわせになれるばしょにおくって!」

すると、とつぜんてのなかのなみだがひかりはじめました
そしてドラゴンのからだはしっぽからすこしずつきえていきます

「・・・・ドラゴンさん、いままでたすけてあげられなくてごめんなさい」
《なにをいうか、さいごのさいごでたすけられた・・・もはやここにきぼうはない、ありがとう・・・もうひとつぶは・・・おまえのしあわせを・・・」

なにかをいいかけ、ドラゴンはきえてしまいました

そしてそのご、エレはじぶんでつくったドラゴンににせたくびかざりをたいせつに、
ドラゴンのしあわせをいのりながらみずからもそれはそれはしあわせにいっしょうをすごしましたとさ・・・。
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