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酒という名の毒液は
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深夜22:23・・・
「あのねぇ嶋野君、あなたもうこの会社に入って1年よね?いつまでこんな仕事に手こずっているの?」
「も、申し訳ありません・・・資料の作成が上手くいかなくて・・・!」
カタカタとパソコンでひたすら文字を打ち込む俺を横で見ているのは森川玲奈さん、俺の専属の上司だ。
詳しい年齢は分からないが見た目で言えば俺とそう変わらない、3つ4つ上ってところだろうか。
「まったく・・・1年も経ってこれじゃ先が思いやられるわね、辞めたら?向いてないわよ。」
「そ、そういう訳には・・・いきませんから・・・すみません・・・。」
「すみませんじゃなくてさっさと結果を出せって言ってんのよ、こんな時間まで社内に残って仕事してるのも無能の証拠、他の誰か残ってる人いる?辺りを見てみたら?」
言われて辺りを見渡しても電気が付いているのはこの一角だけ・・・他は全員とっくに業務を終え既に帰宅している。
そこにあったのは無限の闇と静寂だけだった。
「私、あんたの教育係なの!いつまでもこんなことやられたらこっちの評価も下がる、いい加減にしてくれる!?」
明らかに苛立っている森川さんは俺のデスクを両手でドンッと叩いた。
「すみません玲奈さん・・・俺も玲奈さんみたいに仕事が出来たら・・・!」
「そんな言葉もう聞き飽きた、もういいわ、帰りましょう・・・これ以上は不毛。明日出直しなさい。」
“また”だ、俺はいつもこうして呆れられてこの人の期待に何一つ応えることが出来ない。
「分かりました・・・明日仕上げて提出します・・・申し訳ありません・・・!」
こうやって1年、俺は何一つ成長してこなかった、努力はしているつもりだ、でも結果が出ない。
俺には何が足りないのだろう・・・?
会社を出て背中を丸めながら歩いた、本当に向いてない、玲奈さんの言う通り転職すべきなのだろうか。
「いらっしゃい、席は空いてるとこに座って!」
こんな時、俺はいつも居酒屋に入る。
今日はいつもと違う店にした。
居酒屋は夜中でも人で賑わっていていい、病まずに済む。
カウンター席は空いてなかったから4人掛けの席にやむなく座ることにした、
本来やるべきではないが店員の案内だし荷物も置けてちょうどいい。
「とりあえずビール、あと焼き鳥。」
「かしこまりました、少々お待ちください。」
周囲からは色んな会社の愚痴だったり悩みだったりが聞こえてくる。
大変なのは俺だけじゃない・・・こういうのを聞くと自分だけじゃないんだとちょっと安心する。
でも、安心してばかりもいられない。
俺はこれからどうすればいいんだ・・・。
大きくため息をつきながらジョッキのビールをごくごくと勢いよく飲み喉を鳴らす。
そんな時だった、遠くのカウンターに見覚えのある人影を見たのは・・・。
「(あれってもしかして・・・玲奈さん?机に突っ伏して・・・寝てる!?)」
見間違いだろうか、いや見間違いに決まっている。
あの綺麗で完璧超人で自分にも他人にも厳しいという玲奈さんが居酒屋で潰れてる!?
俺は居ても立っても居られなくなった。
何故か焼き鳥を握りしめたまま俺は“その人”に近づく。
近付けば近づくほど玲奈さんだ、顔は見えないが背格好は完全に玲奈さんその人である。
その時だった・・・近づいたことを盛大に後悔したのは。
「ぅぶ・・・うおええええええええ・・・!」
机に寝ていた女が盛大に嘔吐したのだ。
周囲の客は悲鳴を上げ一気に離れる、しかし店主と思わしき男性は驚く様子も見せなかった。
「ふぅまたかい玲奈ちゃん・・・ったく・・・そんなに大切ならそのきょーへー君とやらに告白でもしたらいいだろうに・・・毎日毎日ここで一気飲みして吐かれちゃたまんないよまったく・・・。」
「ダメれすよぉ・・・恭平は・・・私の部下ですから教育しないと・・・いつも怒ってばっかできっと嫌われてるから・・・あたしなんかが好きなはずない・・・でもあの子はいつも頑張ってりゅか・・・・スカー・・・」
そこまで言うと、その女は寝落ちてしまった
「玲奈さん・・・」
呆然と見つめる俺に気づいた店主が俺に声を掛ける
「あんた今、玲奈さんって言ったのか?まさか知り合いか?」
「あぁいえ、この方の部下です・・・嶋野恭平といいます。」
「何!?じゃああんたが例のきょーへー君か!!?」
店内の店員たちの視線が一斉にこちらを向く。
「“例の”・・・?」
「ああいや、なんでもない、何でもないんだ・・・!とりあえずあんた、仕事を頼まれてくれるかい。」
「仕事・・・?」
居酒屋で客が店主に何を頼まれるというのか。
「玲奈ちゃん、こうなると起きないから家まで送ってってやってよ、すぐそこのマンションだよ。」
「は!?いやいやマズいでしょ上司だしそして何より女性ですよ!?」
とんでもない依頼に腰を抜かしそうになる俺・・・。
「それは大丈夫、何故なら玲奈ちゃん、あんたのことが大好きだから。ここんとこずっと毎日ここに来てはあんたの話ばっかりしてた、仕事が遅いだの何も出来ないだのと最初は愚痴垂れて・・・そして最後は決まって顔を赤くして惚気て終わる。」
そんなところ会社で一度たりとも見たことがない、いつも見下すような蔑むような目でこちらを見るばかり。
「玲奈さんが・・・俺のことを・・・!?」
「んじゃ、頼んだよ・・・そこのボヌールマンションの一階、一番左の部屋だよ。」
勝手に話が進んでいく、最早断ることは出来ないらしい
「鍵は彼女の胸ポケットの中だよ、それじゃ・・・よろしく。」
胸ポケットって・・・ったく・・・。
とりあえず俺は吐瀉物まみれの玲奈さんを背負い居酒屋を出た。
「ボヌールマンション・・・ああ、あれか。」
暗闇ながら遠目に壁にマンション名が照らされているのが見えた、好都合だ。
時折玲奈さんが少量ずつ嘔吐を繰り返すたび足を止めてマンションまで歩いた。
ようやく辿り着いた頃、背中で気持ちよさそうにしていた玲奈さんが目を覚ます。
「うーん・・・いつもごめんなさい店長・・・ありがと・・・」
ぎゅっと自分の首に回った手が強くなる
「はは・・・玲奈さんも完璧超人何て言われながらもちゃんと人間なんだな・・・。」
一番左の部屋・・・ああ、ここか・・・森川と書かれた札が貼ってある、ここで間違いないだろう。
しかし・・・問題はここからだ。
胸ポケット・・・だったか・・・触らなきゃいけないのか・・・?
極力触らないように努力したが、それにも限界がある。
「・・・・・無になろう、そう、これは介護だ・・・性的な意味はない。」
俺は無になって鍵を取り何も考えないように玄関のドアを開いた。
中に入り、電気をつけるとそこにはあまりに想像できないぬいぐるみなんかがいっぱいの乙女チックな部屋がそこにはあった。
近くにあったベッドに玲奈さんを横向きに寝かせる。
「ふぅ・・・これで任務完了・・・さぁ帰ろ・・・ん!?」
部屋を出ようと恭平が踵を返すとその手はギュッと掴まれた。
「着替えさせて・・・?」
ちょっと何言ってるか分からない
まぁ確かにゲロまみれではある・・・着替えさせた方がいいのは確かだ。
「いや無理だろ・・・」
美人で有名な上司を着替えさせる?無茶を言うなって・・・。
俺は近くにあった服を用意して洗面台からタオルを持ってきて目を覆うように巻いた。
下着まではいいだろう、何とかやりきる!
覚悟を決めた俺は触ったこともない女性服に悪戦苦闘しながらもなんとか着替えさせることに成功した。
既に玲奈さんはスヤスヤと可愛い寝息を立てて寝ている。
今なら何をしても気づかれやしないだろう・・・。
俺は静かに彼女に布団をかけた。
これまでお世話になって来た上司だ、意外な一面を見たが弱ってる時に手を出すような真似はしたくない。
普通の男なら我慢できずに行為に及んでいる可能性もあるが・・・そんな野蛮な真似が出来るか。
寝ゲロの心配もある、俺は部屋で玲奈さんを見守ることにした・・・。
ーーー翌朝ーーー
「頭痛い・・・またやっちゃった・・・店長が送ってくれたのね・・・いつもごめんなさい・・・って、え!?」
ベッドの横にはスヤスヤと壁にもたれかかって眠る部下の姿があった。
「ちょ、ちょっと嶋野君!?一体どうしてここに!?」
パニックに声を張り上げる玲奈の声でまた恭平も目を覚ます。
「あ、起きましたかおはようございます・・・よく眠れましたか?」
「え・・・?うん・・・あ、これ夢だ・・・?」
寝ぼけた玲奈さんは俺を強く抱きしめた。
「えへへ、お家に恭平がいる!恭平だーいすき♡」
しかし・・・そこにあったのは確かながっしりとした部下の身体・・・。
「あれ?いる!?夢じゃない・・・!?きゃああああああ!!」
この先俺達の関係が変わったのは言うまでもない、今では俺の大切なかわいいお嫁さんです。
「あのねぇ嶋野君、あなたもうこの会社に入って1年よね?いつまでこんな仕事に手こずっているの?」
「も、申し訳ありません・・・資料の作成が上手くいかなくて・・・!」
カタカタとパソコンでひたすら文字を打ち込む俺を横で見ているのは森川玲奈さん、俺の専属の上司だ。
詳しい年齢は分からないが見た目で言えば俺とそう変わらない、3つ4つ上ってところだろうか。
「まったく・・・1年も経ってこれじゃ先が思いやられるわね、辞めたら?向いてないわよ。」
「そ、そういう訳には・・・いきませんから・・・すみません・・・。」
「すみませんじゃなくてさっさと結果を出せって言ってんのよ、こんな時間まで社内に残って仕事してるのも無能の証拠、他の誰か残ってる人いる?辺りを見てみたら?」
言われて辺りを見渡しても電気が付いているのはこの一角だけ・・・他は全員とっくに業務を終え既に帰宅している。
そこにあったのは無限の闇と静寂だけだった。
「私、あんたの教育係なの!いつまでもこんなことやられたらこっちの評価も下がる、いい加減にしてくれる!?」
明らかに苛立っている森川さんは俺のデスクを両手でドンッと叩いた。
「すみません玲奈さん・・・俺も玲奈さんみたいに仕事が出来たら・・・!」
「そんな言葉もう聞き飽きた、もういいわ、帰りましょう・・・これ以上は不毛。明日出直しなさい。」
“また”だ、俺はいつもこうして呆れられてこの人の期待に何一つ応えることが出来ない。
「分かりました・・・明日仕上げて提出します・・・申し訳ありません・・・!」
こうやって1年、俺は何一つ成長してこなかった、努力はしているつもりだ、でも結果が出ない。
俺には何が足りないのだろう・・・?
会社を出て背中を丸めながら歩いた、本当に向いてない、玲奈さんの言う通り転職すべきなのだろうか。
「いらっしゃい、席は空いてるとこに座って!」
こんな時、俺はいつも居酒屋に入る。
今日はいつもと違う店にした。
居酒屋は夜中でも人で賑わっていていい、病まずに済む。
カウンター席は空いてなかったから4人掛けの席にやむなく座ることにした、
本来やるべきではないが店員の案内だし荷物も置けてちょうどいい。
「とりあえずビール、あと焼き鳥。」
「かしこまりました、少々お待ちください。」
周囲からは色んな会社の愚痴だったり悩みだったりが聞こえてくる。
大変なのは俺だけじゃない・・・こういうのを聞くと自分だけじゃないんだとちょっと安心する。
でも、安心してばかりもいられない。
俺はこれからどうすればいいんだ・・・。
大きくため息をつきながらジョッキのビールをごくごくと勢いよく飲み喉を鳴らす。
そんな時だった、遠くのカウンターに見覚えのある人影を見たのは・・・。
「(あれってもしかして・・・玲奈さん?机に突っ伏して・・・寝てる!?)」
見間違いだろうか、いや見間違いに決まっている。
あの綺麗で完璧超人で自分にも他人にも厳しいという玲奈さんが居酒屋で潰れてる!?
俺は居ても立っても居られなくなった。
何故か焼き鳥を握りしめたまま俺は“その人”に近づく。
近付けば近づくほど玲奈さんだ、顔は見えないが背格好は完全に玲奈さんその人である。
その時だった・・・近づいたことを盛大に後悔したのは。
「ぅぶ・・・うおええええええええ・・・!」
机に寝ていた女が盛大に嘔吐したのだ。
周囲の客は悲鳴を上げ一気に離れる、しかし店主と思わしき男性は驚く様子も見せなかった。
「ふぅまたかい玲奈ちゃん・・・ったく・・・そんなに大切ならそのきょーへー君とやらに告白でもしたらいいだろうに・・・毎日毎日ここで一気飲みして吐かれちゃたまんないよまったく・・・。」
「ダメれすよぉ・・・恭平は・・・私の部下ですから教育しないと・・・いつも怒ってばっかできっと嫌われてるから・・・あたしなんかが好きなはずない・・・でもあの子はいつも頑張ってりゅか・・・・スカー・・・」
そこまで言うと、その女は寝落ちてしまった
「玲奈さん・・・」
呆然と見つめる俺に気づいた店主が俺に声を掛ける
「あんた今、玲奈さんって言ったのか?まさか知り合いか?」
「あぁいえ、この方の部下です・・・嶋野恭平といいます。」
「何!?じゃああんたが例のきょーへー君か!!?」
店内の店員たちの視線が一斉にこちらを向く。
「“例の”・・・?」
「ああいや、なんでもない、何でもないんだ・・・!とりあえずあんた、仕事を頼まれてくれるかい。」
「仕事・・・?」
居酒屋で客が店主に何を頼まれるというのか。
「玲奈ちゃん、こうなると起きないから家まで送ってってやってよ、すぐそこのマンションだよ。」
「は!?いやいやマズいでしょ上司だしそして何より女性ですよ!?」
とんでもない依頼に腰を抜かしそうになる俺・・・。
「それは大丈夫、何故なら玲奈ちゃん、あんたのことが大好きだから。ここんとこずっと毎日ここに来てはあんたの話ばっかりしてた、仕事が遅いだの何も出来ないだのと最初は愚痴垂れて・・・そして最後は決まって顔を赤くして惚気て終わる。」
そんなところ会社で一度たりとも見たことがない、いつも見下すような蔑むような目でこちらを見るばかり。
「玲奈さんが・・・俺のことを・・・!?」
「んじゃ、頼んだよ・・・そこのボヌールマンションの一階、一番左の部屋だよ。」
勝手に話が進んでいく、最早断ることは出来ないらしい
「鍵は彼女の胸ポケットの中だよ、それじゃ・・・よろしく。」
胸ポケットって・・・ったく・・・。
とりあえず俺は吐瀉物まみれの玲奈さんを背負い居酒屋を出た。
「ボヌールマンション・・・ああ、あれか。」
暗闇ながら遠目に壁にマンション名が照らされているのが見えた、好都合だ。
時折玲奈さんが少量ずつ嘔吐を繰り返すたび足を止めてマンションまで歩いた。
ようやく辿り着いた頃、背中で気持ちよさそうにしていた玲奈さんが目を覚ます。
「うーん・・・いつもごめんなさい店長・・・ありがと・・・」
ぎゅっと自分の首に回った手が強くなる
「はは・・・玲奈さんも完璧超人何て言われながらもちゃんと人間なんだな・・・。」
一番左の部屋・・・ああ、ここか・・・森川と書かれた札が貼ってある、ここで間違いないだろう。
しかし・・・問題はここからだ。
胸ポケット・・・だったか・・・触らなきゃいけないのか・・・?
極力触らないように努力したが、それにも限界がある。
「・・・・・無になろう、そう、これは介護だ・・・性的な意味はない。」
俺は無になって鍵を取り何も考えないように玄関のドアを開いた。
中に入り、電気をつけるとそこにはあまりに想像できないぬいぐるみなんかがいっぱいの乙女チックな部屋がそこにはあった。
近くにあったベッドに玲奈さんを横向きに寝かせる。
「ふぅ・・・これで任務完了・・・さぁ帰ろ・・・ん!?」
部屋を出ようと恭平が踵を返すとその手はギュッと掴まれた。
「着替えさせて・・・?」
ちょっと何言ってるか分からない
まぁ確かにゲロまみれではある・・・着替えさせた方がいいのは確かだ。
「いや無理だろ・・・」
美人で有名な上司を着替えさせる?無茶を言うなって・・・。
俺は近くにあった服を用意して洗面台からタオルを持ってきて目を覆うように巻いた。
下着まではいいだろう、何とかやりきる!
覚悟を決めた俺は触ったこともない女性服に悪戦苦闘しながらもなんとか着替えさせることに成功した。
既に玲奈さんはスヤスヤと可愛い寝息を立てて寝ている。
今なら何をしても気づかれやしないだろう・・・。
俺は静かに彼女に布団をかけた。
これまでお世話になって来た上司だ、意外な一面を見たが弱ってる時に手を出すような真似はしたくない。
普通の男なら我慢できずに行為に及んでいる可能性もあるが・・・そんな野蛮な真似が出来るか。
寝ゲロの心配もある、俺は部屋で玲奈さんを見守ることにした・・・。
ーーー翌朝ーーー
「頭痛い・・・またやっちゃった・・・店長が送ってくれたのね・・・いつもごめんなさい・・・って、え!?」
ベッドの横にはスヤスヤと壁にもたれかかって眠る部下の姿があった。
「ちょ、ちょっと嶋野君!?一体どうしてここに!?」
パニックに声を張り上げる玲奈の声でまた恭平も目を覚ます。
「あ、起きましたかおはようございます・・・よく眠れましたか?」
「え・・・?うん・・・あ、これ夢だ・・・?」
寝ぼけた玲奈さんは俺を強く抱きしめた。
「えへへ、お家に恭平がいる!恭平だーいすき♡」
しかし・・・そこにあったのは確かながっしりとした部下の身体・・・。
「あれ?いる!?夢じゃない・・・!?きゃああああああ!!」
この先俺達の関係が変わったのは言うまでもない、今では俺の大切なかわいいお嫁さんです。
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