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第3話
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会長のおでこにキスをする。
会長の熱がマスク越しに伝わる。恐らく38度以上はあるだろう。
唇を離すと会長と視線がぶつかった。会長の瞳が潤んでいる。
ごめんなさい、ごめんなさい。私、会長にキスしちゃった。
断りもなしに。熱があるのをいいことに。
「会長、かなり熱があるでしょう。凄くおでこが熱いです」
笑って誤魔化した。
ベットに座って、会長に背を向けて、優しく何度も頭を撫でる。
「会長」
「眠っていいですよ。私、ずっとここにいますから」
「喉乾きませんか?」←
「喉乾きませんか?」
私はテーブルに置いてあるペットボトルを手にとると、会長の上体を起こそうとした。
「ん、持ち上がらないな。すいません、私の力じゃちょっと起こせそうにないです。口移しでもいいですか」
私は自分のマスクをとると、ペットボトルの中身を一旦口に含み、会長の口の中へと注いだ。
ところが。
だばだばだばー、と水分が会長の口から零れていく。流石に口移しは無理だったか。
私は自分の行いに後悔すると、そのまま会長の家を飛びだした。
>>>>やり直し
「眠っていいですよ。私、ずっとここにいますから」←
「喉乾きませんか?」
「眠っていいですよ。私、ずっとここにいますから」
会長は安心したのか、すやすやと寝息を立てて眠りはじめた。
良かった。
起きたら全部、忘れていてほしい。
私が会長の髪に触れたこと。私が会長のおでこにキスをしたこと。
どうか全部、忘れて。
暫くすると、会長の部屋の本棚にある本を一冊手にとってみた。
内容は、世界の終わりの話。
人類は遂に滅亡する。その瞬間まであと数時間。
例えばテレビの右下にあるワイプ画面。例えば街中にある大きなモニター。例えば選挙カーで演説するかの如く、「世界滅亡まであと○時間!」などと語る者。
世界中のありとあらゆるもの達が、世界の終わりまでのカウントダウンをする。
意識せざるを得ない環境に皆、不安を抱えたまま最期の時を過ごしている。
そして主人公である僕は何も出来ないまま、無事に最期の時を経て……。
そこまで読んだ私は。
本の最後のページに感想を書いた。←
こっそり涙を拭った。
本の最後のページに感想を書いた。
「明日人類が滅亡するとしたら、貴方はどう過ごしますか」
この問いに対する私の答えを書こうと思ったのだ。
『私は貴方と手を繋ぐ。私は貴方を抱き締める。私は貴方の傍にいる。これが答え。これがすべて。』
私の手は震えていた。こんな告白めいたもの、会長に見られたらおしまいだ。
どうか一生、気付かないで。気付かれてしまったら、私が塵となってしまう。
私はその本を閉じると。
あった場所に戻した。
さっきとは違う場所に戻した。←
さっきとは違う場所に戻した。
今ならまだ、あった場所に戻せる。それなのにわざと違う場所に戻したのは、気付かないでほしいと願いながら、本当は気付いてほしいから。
なんて浅ましい女。自分で自分がいやになる。
私は会長が目を覚ます前に帰ろうと、急いで家を飛びだした。
>>>>やり直し
あった場所に戻した。←
さっきとは違う場所に戻した。
あった場所に戻した。
これでいい。これならきっと、気付かない。少なくとも今は。
「ん」
「あ、会長。目が覚めましたか」
「そこで何してるんだ」
「会長の部屋、本が沢山あるなあって、見てたんです」
「そうか。気になるなら好きな本を手にとってくれていい」
「お気持ちはとても嬉しいですけど、今は会長の体調を治さないと。本ならいつでも読めますから。ね」
大丈夫。私の笑顔は完璧だ。
きっと会長は気付いていない。
会長の熱がマスク越しに伝わる。恐らく38度以上はあるだろう。
唇を離すと会長と視線がぶつかった。会長の瞳が潤んでいる。
ごめんなさい、ごめんなさい。私、会長にキスしちゃった。
断りもなしに。熱があるのをいいことに。
「会長、かなり熱があるでしょう。凄くおでこが熱いです」
笑って誤魔化した。
ベットに座って、会長に背を向けて、優しく何度も頭を撫でる。
「会長」
「眠っていいですよ。私、ずっとここにいますから」
「喉乾きませんか?」←
「喉乾きませんか?」
私はテーブルに置いてあるペットボトルを手にとると、会長の上体を起こそうとした。
「ん、持ち上がらないな。すいません、私の力じゃちょっと起こせそうにないです。口移しでもいいですか」
私は自分のマスクをとると、ペットボトルの中身を一旦口に含み、会長の口の中へと注いだ。
ところが。
だばだばだばー、と水分が会長の口から零れていく。流石に口移しは無理だったか。
私は自分の行いに後悔すると、そのまま会長の家を飛びだした。
>>>>やり直し
「眠っていいですよ。私、ずっとここにいますから」←
「喉乾きませんか?」
「眠っていいですよ。私、ずっとここにいますから」
会長は安心したのか、すやすやと寝息を立てて眠りはじめた。
良かった。
起きたら全部、忘れていてほしい。
私が会長の髪に触れたこと。私が会長のおでこにキスをしたこと。
どうか全部、忘れて。
暫くすると、会長の部屋の本棚にある本を一冊手にとってみた。
内容は、世界の終わりの話。
人類は遂に滅亡する。その瞬間まであと数時間。
例えばテレビの右下にあるワイプ画面。例えば街中にある大きなモニター。例えば選挙カーで演説するかの如く、「世界滅亡まであと○時間!」などと語る者。
世界中のありとあらゆるもの達が、世界の終わりまでのカウントダウンをする。
意識せざるを得ない環境に皆、不安を抱えたまま最期の時を過ごしている。
そして主人公である僕は何も出来ないまま、無事に最期の時を経て……。
そこまで読んだ私は。
本の最後のページに感想を書いた。←
こっそり涙を拭った。
本の最後のページに感想を書いた。
「明日人類が滅亡するとしたら、貴方はどう過ごしますか」
この問いに対する私の答えを書こうと思ったのだ。
『私は貴方と手を繋ぐ。私は貴方を抱き締める。私は貴方の傍にいる。これが答え。これがすべて。』
私の手は震えていた。こんな告白めいたもの、会長に見られたらおしまいだ。
どうか一生、気付かないで。気付かれてしまったら、私が塵となってしまう。
私はその本を閉じると。
あった場所に戻した。
さっきとは違う場所に戻した。←
さっきとは違う場所に戻した。
今ならまだ、あった場所に戻せる。それなのにわざと違う場所に戻したのは、気付かないでほしいと願いながら、本当は気付いてほしいから。
なんて浅ましい女。自分で自分がいやになる。
私は会長が目を覚ます前に帰ろうと、急いで家を飛びだした。
>>>>やり直し
あった場所に戻した。←
さっきとは違う場所に戻した。
あった場所に戻した。
これでいい。これならきっと、気付かない。少なくとも今は。
「ん」
「あ、会長。目が覚めましたか」
「そこで何してるんだ」
「会長の部屋、本が沢山あるなあって、見てたんです」
「そうか。気になるなら好きな本を手にとってくれていい」
「お気持ちはとても嬉しいですけど、今は会長の体調を治さないと。本ならいつでも読めますから。ね」
大丈夫。私の笑顔は完璧だ。
きっと会長は気付いていない。
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