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第十二話 現実世界
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学校へと向かう途中、僕は昨日のことを思い出す。
「昨日は本当にドキドキしたなぁ……」
一晩経った今でも、思い出すと胸が高鳴り、顔が熱くなってくる。
「いやいや……落ち着け僕……」
首を振り、気持ちを落ち着かせようとしてると、バシンと背中を叩かれた。
「いたっ!!」
「おっはよ、元気に学校にいこー!」
幼馴染の春乃(はるの)が僕に声をかけて、追い抜いていく。
僕と違って体が大きく、ショートカットにしているので、昔はよく男の子と間違えられて怒っていた。
バレー部のキャプテンも努めていて、身体、性格的にも「元気」という言葉がよく似合う笑顔の多い女の子だ。
「いたいよ、春乃もっと加減してよ」
「あはは、有人は元気が足りてないみたいだったからねっ!」
有人(ありと)は現実世界での僕の名前だ。
VRMMOでアイアと名乗っていることは絶対に秘密だ。
春乃より背は小さく、体も細い。
並んで歩くと、少しコンプレックスを刺激されるが、ずっと仲のいい友達だ。
二人で学校の話しをしながら歩く。
というか、横で喋ってる春乃にほとんど相槌を返しているだけだったのだが、
「ねぇ、有人って今話題のVRMMOのゲームしてる?」
「えっ!?」
春乃から突然ゲームの話題がでたので、僕はまさかと数舜固まってしまった。
「ほら、昔から有人ってゲーム好きだったでしょ?」
なんて答えるべきなのか、わからない。
「な、なんで、急に? 春乃ゲームとか興味ないんじゃ……?」
「うん、そうなんだけど、バレー部内でも話題になってて、私みたいにゲームしてなかった子も面白いって言うから、どうなのかなぁって」
「……うん、してるし、とっても面白いよ」
悩んだが、まさか一緒にゲームしよう! となるはずもないし、僕は素直にプレイしてることを伝えた。
「そうなんだ……じゃあさ、私が買ったら一緒に……」
「お、ありんこじゃねぇか!」
と、春乃の話しを遮り僕に声をかけてきた男。
校門の前で偶然出くわした学校で一番会いたくない男、桐矢(きりや)だ。
「ありんこ、ちょっと来い?」
「……わかったよ、ごめん春乃、またね!」
「ちょっと、有人!」
僕は小走りで桐矢の元へと向かう。
あまり絡まれてるところを幼馴染にみられたくないというの思いもあった。
下駄箱の隅へと連れていかれて、いつものように今日のお昼にと用意していたパンを奪われる。
名前をもじってか、アリとキリギリスだと周りからは言われている。
「じゃあ、パンはもらってくぜ!」
キリギリスなら冬に食べ物がなくなってアリに助けを乞うが、人である桐矢は食べ物が尽きないので、改心もしない。
はぁ、と僕はため息をつきながら、教室へと向かった。
「昨日は本当にドキドキしたなぁ……」
一晩経った今でも、思い出すと胸が高鳴り、顔が熱くなってくる。
「いやいや……落ち着け僕……」
首を振り、気持ちを落ち着かせようとしてると、バシンと背中を叩かれた。
「いたっ!!」
「おっはよ、元気に学校にいこー!」
幼馴染の春乃(はるの)が僕に声をかけて、追い抜いていく。
僕と違って体が大きく、ショートカットにしているので、昔はよく男の子と間違えられて怒っていた。
バレー部のキャプテンも努めていて、身体、性格的にも「元気」という言葉がよく似合う笑顔の多い女の子だ。
「いたいよ、春乃もっと加減してよ」
「あはは、有人は元気が足りてないみたいだったからねっ!」
有人(ありと)は現実世界での僕の名前だ。
VRMMOでアイアと名乗っていることは絶対に秘密だ。
春乃より背は小さく、体も細い。
並んで歩くと、少しコンプレックスを刺激されるが、ずっと仲のいい友達だ。
二人で学校の話しをしながら歩く。
というか、横で喋ってる春乃にほとんど相槌を返しているだけだったのだが、
「ねぇ、有人って今話題のVRMMOのゲームしてる?」
「えっ!?」
春乃から突然ゲームの話題がでたので、僕はまさかと数舜固まってしまった。
「ほら、昔から有人ってゲーム好きだったでしょ?」
なんて答えるべきなのか、わからない。
「な、なんで、急に? 春乃ゲームとか興味ないんじゃ……?」
「うん、そうなんだけど、バレー部内でも話題になってて、私みたいにゲームしてなかった子も面白いって言うから、どうなのかなぁって」
「……うん、してるし、とっても面白いよ」
悩んだが、まさか一緒にゲームしよう! となるはずもないし、僕は素直にプレイしてることを伝えた。
「そうなんだ……じゃあさ、私が買ったら一緒に……」
「お、ありんこじゃねぇか!」
と、春乃の話しを遮り僕に声をかけてきた男。
校門の前で偶然出くわした学校で一番会いたくない男、桐矢(きりや)だ。
「ありんこ、ちょっと来い?」
「……わかったよ、ごめん春乃、またね!」
「ちょっと、有人!」
僕は小走りで桐矢の元へと向かう。
あまり絡まれてるところを幼馴染にみられたくないというの思いもあった。
下駄箱の隅へと連れていかれて、いつものように今日のお昼にと用意していたパンを奪われる。
名前をもじってか、アリとキリギリスだと周りからは言われている。
「じゃあ、パンはもらってくぜ!」
キリギリスなら冬に食べ物がなくなってアリに助けを乞うが、人である桐矢は食べ物が尽きないので、改心もしない。
はぁ、と僕はため息をつきながら、教室へと向かった。
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