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第十一話 決意
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「ここまでくれば、大丈夫だな」
と、クルセイダーは僕を地面にそっと下ろした。
僕は、不覚にも、離れるのに名残惜しさを感じてしまう。
そんな、気持ちを打ち消そうと、大きな声でお礼を言った。
「本当に、ありがとうございましたっ!」
「いや、君が無事でよかったよ」
クルセイダーはニコリと微笑んだ。
気づけば僕は、その微笑みをポーッと見つめ続けていた。
「ん、どうかしたかい?」
「な、なんでもありません!」
僕は、弱いものを守れるヒーローになりたかった。
目の前にいるクルセイダーが、僕の理想そのものに見えた。
そして、これではまるで僕は助けられるヒロインだ……。
「とりあえず、何か装備を戻した方がいいよ」
と、言われて気が付いた。
僕はまだマントの下は裸だったのだ。
「あ、は、はい!!」
ダメだ、頭が働いてない。
慌てて、ステータスを確認すると――良かった、装備は外されていただけで、ちゃんと持っていた。
ステータスで装備を着用すると、シュンッといつもの青銅の鎧と白いノービスワンピースがアバターにも装着される。
「おや、ノービスだったのか? レベルは?」
僕の装備を見て、訪ねてくる。
「はい、レベルは20です」
「20!? 上げたねぇ……ノービス縛り?」
「あ、いえ……その……」
うまく言葉に出来ない。
ただ人と会うことや、町に入るのが恥ずかしかったとも言えないし……。
思い悩んでいると、クルセイダーが、
「言いたくないならいいんだ」
と、気をつかってくれるので、僕はもうやけくそ気味に本当の事を打ち明けた。
「いえ……恥ずかしくて、森をさまよっていたら、こんなレベルになっちゃいました……」
クルセイダーは一瞬固まって、大きな声で笑った。
「ははは、そうだったのか、いや、そうだね、君みたいな目立つ女性キャラクターは注目の的になるだろうしね」
「いぇ、そんな……」
ここで本当は男なんですと言えばよかったのかもしれないが、なぜか口には出せなかった。
その代わりに、自己紹介をする。
「あ、あの、ぼ……私アイアです」
「うん? あぁ、俺はマモル、ジョブは見た目通りのクルセイダーだよ」
「マモルさん……」
僕は借りたままのマントをきゅっと抱きしめてから、マモルさんに返した。
「助けてくれて、本当にありがとうございました」
「いいんだ、ただ、森の町は、町中でもPK可能な町だから、君みたいな女の子は別の町を拠点にした方がいいと思う」
そ、そうだったのか……。
おかしいとは思っていた。
町中でスキルを繰り出せるなんて、危ないにも程がある。
「わかりました。違う町に移動します。ありがとうございます」
「……あと、お節介じゃないなら、君の転職手伝おうか?」
「え?」
「ほら、ノービスのままだと何かとこのVRMMOは物騒だしね、あんなことがあったけど、ゲームを続けていてほしいんだ……このゲームは面白いって思って欲しいんだ」
「……いいんですか?」
「もちろんだよ」
気が付けば、また僕はマモルをじっと見つめていた。
現実世界では、いじめられていても、助けてくれる人なんていなかった。
だから、この世界では僕は弱い人を助けてあげられる強いキャラクターになりたかった。
でも、この世界なら、助けてくれる人がいる。
それは、今僕が女キャラだからなのかもしれない。
でもそれでもいい。
僕は強い剣士にならなくてもいいのかもしれない。
本当は、誰かに助けて欲しかったんだ。
僕は、もうヒーローになんて、ならなくてもいい……。
鎧越しに、そっと自分の胸に触れる。
心臓がドクンドクンと早鐘をうっているのがわかる。
頬が熱を帯びていく。
僕は言う。
「あの、ステータスSTRに振ってますけど、アコライトに転職したいんですけど……いいですか!?」
と、クルセイダーは僕を地面にそっと下ろした。
僕は、不覚にも、離れるのに名残惜しさを感じてしまう。
そんな、気持ちを打ち消そうと、大きな声でお礼を言った。
「本当に、ありがとうございましたっ!」
「いや、君が無事でよかったよ」
クルセイダーはニコリと微笑んだ。
気づけば僕は、その微笑みをポーッと見つめ続けていた。
「ん、どうかしたかい?」
「な、なんでもありません!」
僕は、弱いものを守れるヒーローになりたかった。
目の前にいるクルセイダーが、僕の理想そのものに見えた。
そして、これではまるで僕は助けられるヒロインだ……。
「とりあえず、何か装備を戻した方がいいよ」
と、言われて気が付いた。
僕はまだマントの下は裸だったのだ。
「あ、は、はい!!」
ダメだ、頭が働いてない。
慌てて、ステータスを確認すると――良かった、装備は外されていただけで、ちゃんと持っていた。
ステータスで装備を着用すると、シュンッといつもの青銅の鎧と白いノービスワンピースがアバターにも装着される。
「おや、ノービスだったのか? レベルは?」
僕の装備を見て、訪ねてくる。
「はい、レベルは20です」
「20!? 上げたねぇ……ノービス縛り?」
「あ、いえ……その……」
うまく言葉に出来ない。
ただ人と会うことや、町に入るのが恥ずかしかったとも言えないし……。
思い悩んでいると、クルセイダーが、
「言いたくないならいいんだ」
と、気をつかってくれるので、僕はもうやけくそ気味に本当の事を打ち明けた。
「いえ……恥ずかしくて、森をさまよっていたら、こんなレベルになっちゃいました……」
クルセイダーは一瞬固まって、大きな声で笑った。
「ははは、そうだったのか、いや、そうだね、君みたいな目立つ女性キャラクターは注目の的になるだろうしね」
「いぇ、そんな……」
ここで本当は男なんですと言えばよかったのかもしれないが、なぜか口には出せなかった。
その代わりに、自己紹介をする。
「あ、あの、ぼ……私アイアです」
「うん? あぁ、俺はマモル、ジョブは見た目通りのクルセイダーだよ」
「マモルさん……」
僕は借りたままのマントをきゅっと抱きしめてから、マモルさんに返した。
「助けてくれて、本当にありがとうございました」
「いいんだ、ただ、森の町は、町中でもPK可能な町だから、君みたいな女の子は別の町を拠点にした方がいいと思う」
そ、そうだったのか……。
おかしいとは思っていた。
町中でスキルを繰り出せるなんて、危ないにも程がある。
「わかりました。違う町に移動します。ありがとうございます」
「……あと、お節介じゃないなら、君の転職手伝おうか?」
「え?」
「ほら、ノービスのままだと何かとこのVRMMOは物騒だしね、あんなことがあったけど、ゲームを続けていてほしいんだ……このゲームは面白いって思って欲しいんだ」
「……いいんですか?」
「もちろんだよ」
気が付けば、また僕はマモルをじっと見つめていた。
現実世界では、いじめられていても、助けてくれる人なんていなかった。
だから、この世界では僕は弱い人を助けてあげられる強いキャラクターになりたかった。
でも、この世界なら、助けてくれる人がいる。
それは、今僕が女キャラだからなのかもしれない。
でもそれでもいい。
僕は強い剣士にならなくてもいいのかもしれない。
本当は、誰かに助けて欲しかったんだ。
僕は、もうヒーローになんて、ならなくてもいい……。
鎧越しに、そっと自分の胸に触れる。
心臓がドクンドクンと早鐘をうっているのがわかる。
頬が熱を帯びていく。
僕は言う。
「あの、ステータスSTRに振ってますけど、アコライトに転職したいんですけど……いいですか!?」
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