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エンター6「タイピングマッサージ」
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チャイムの音で、我に返った桃菜は、教室から出ようと立ち上がるが、炎理に腕をとられてしまう。
「桃菜ちゃん、ちょっと待って!」
「え、ちょっと、やだ、放して!」
クラスメイト達は諦めと生暖かい目で二人を見送り、先生も、
「鍵置いとくから、戸締り忘れるなよ」
と、ぞろぞろ出ていってしまった。
二人きりになったパソコン教室。
炎理は、桃菜をパソコンの前に無理やり座らせて、
「私さっきの授業中、ううん、昨日からずっと、ない頭を必死に使って考えてた」
桃菜の後ろに立ち、パソコンのモニター越しに、視線を合わせた。
「もう、いい加減にしてください!」
「桃菜ちゃんが何を悩んでるのかわからないけど、タイピングから逃げないで欲しいの」
炎理は優しく桃菜の肩に手を乗せる。
ピクンと桃菜が反応する。
「な、なにをする気ですか……?」
「私が癒してあげるね、『タイピングマッサージ!』」
炎理の手がリズミカルに動きだした。
桃菜の肩をトトン、トン、トトンと軽やかな指先が動く。
「やめて! やめ……え? ぁ、ぁ、あ……や、やだ……ぁ」
指が肩に触れる度に、桃菜から熱い吐息が漏れ出す。
桃菜は急に始まったマッサージに抵抗もできずに、すぐにそのあまりの気持ちよさに飲まれていった。
「桃菜ちゃんは胸が大きいから、肩がこるのかな? ほぐしてあげるからね」
炎理の指がだんだん早くなり、熱を帯びていく。
その熱い指で肩を刺激されると、肩から全神経にかけて炎理の熱が広がっていく錯覚に陥る。
「あ、あぁ……んぅ、石豪華さん、す、すご……ぃ」
「かわいい声だね、桃菜ちゃん、もっと私の指で感じて」
桃菜の身体から力が抜けていき、ふにゃあと椅子にもたれかかるように倒れていく。
お尻が下がり、ニーソに包まれた脚はだらんと広がり、夢見心地で炎理にされるがままになっていく。
モニターに移る、桃菜の顔は快楽に包まれていた。
「そう、力を抜いて……」
「あぁ、んんきゅぅ……んぅぁ……」
桃菜が、だいぶほぐれたのを見計らって、炎理は語りだした。
「そのままでいいから、聞いてね」
炎理は、自分がタイピング部にこだわる理由と、タイピングに対する思いを、得意のマッサージと一緒に、まずは桃菜に聞いてもらおうと考えたのだ。
「私のお父さん……ここの生徒だったんだ。そしてタイピング部の初代部長」
炎理は自慢げに、父の話をする。
蛍光灯の光が、炎理の、エンタキー型のヘアピンをキラリと輝かせた。
「お父さんはね、タイピングがとても好きだったんだ。だけど5年前のタイピング大会でお父さんの技で会場が燃えて……」
マッサージをしながら、炎理は続ける。
「選手、観客ともに怪我人多数。お父さんは行方不明になっちゃった……」
桃菜の脳に、炎理の声は響くだけで、言葉は理解できない。
もう思考能力は残っていないのだ。
「ぁ……ぁ……ぁぁ……んぅっ」
ただ、炎理の指が赴くままに、かわいい声を上げる玩具に化していた。
「その時ね、私はまだ小学生だったんだけど、お父さんの意思を継ごうって決めたの」
炎理の指は、もう火傷しそうな温度に達していた。
桃菜の肩に、炎理の指一つ一つが触れる度に、小さな炎が、白ニーソに包まれた爪先まで、導火線をたどるかのように流れ込んでくる。
そして、爪先を超えると、頭の奥で気持ちよさが爆発する。
桃菜の額には、玉のような汗が浮きでて、綺麗な金色の髪がこびりつく。
パソコン教室は、冷房が効いているが、桃菜には効果がないようだ。
「だから、まずは、お父さんが部長をしてた、タイピング部から始めたいんだ」
「あ……あぁぁ……んぅ……にゃぁ……ん」
桃菜はピクンピクン全身を震わせる。
半開きの口から涎が垂れそうになってることに、桃菜は気がつけない。
「きっと、そこからお父さんの世界が見えてくると思うからっ!!!」
最後にぎゅっと、肩を掴んだ。
「んにゃあぅぁあああああああぁぁぁぁぁっぁぅぁぁ……っぅ!」
桃菜は口を大きく開けながら、身体はピクピクと震えさせた。
瞳は焦点が合っていない。
「どうだった? だいぶほぐれたかな?」
炎理は、自分の話の終わりとともに、マッサージを止めた。
「……ふぁ……な、なんで……?」
突然、マッサージを止められたことに抗議の声が自然に溢れた。
いまだ、快楽から抜け出せない潤んだ瞳で、モニター越しに炎理を見つめる桃菜。
「そのためには、桃菜ちゃんの力が必要なんだ。桃菜ちゃんが何か悩んでるのはわかるけど、深く考えずに、タイピングしてみようよ……」
炎理はそこで一息ついて言った。
「タイピングは自分との闘い、自分から逃げたらダメ、だよ?」
――その言葉が、桃菜の心の深いところに突き刺ささった。
「……う、うぅぅ、う……、わ、私……私、バカだ……ずっと逃げて……うぅぅ……」
惚けていた顔が、今度は悲しみに彩られていく。
炎理はそんな桃菜を、後ろからぎゅっと抱きしめた。
「……桃菜ちゃんの話、聞かせてくれる?」
「ぅん、うん、私ね……」
桃菜はぽつりぽつりと呟くように過去を話し始めた。
「桃菜ちゃん、ちょっと待って!」
「え、ちょっと、やだ、放して!」
クラスメイト達は諦めと生暖かい目で二人を見送り、先生も、
「鍵置いとくから、戸締り忘れるなよ」
と、ぞろぞろ出ていってしまった。
二人きりになったパソコン教室。
炎理は、桃菜をパソコンの前に無理やり座らせて、
「私さっきの授業中、ううん、昨日からずっと、ない頭を必死に使って考えてた」
桃菜の後ろに立ち、パソコンのモニター越しに、視線を合わせた。
「もう、いい加減にしてください!」
「桃菜ちゃんが何を悩んでるのかわからないけど、タイピングから逃げないで欲しいの」
炎理は優しく桃菜の肩に手を乗せる。
ピクンと桃菜が反応する。
「な、なにをする気ですか……?」
「私が癒してあげるね、『タイピングマッサージ!』」
炎理の手がリズミカルに動きだした。
桃菜の肩をトトン、トン、トトンと軽やかな指先が動く。
「やめて! やめ……え? ぁ、ぁ、あ……や、やだ……ぁ」
指が肩に触れる度に、桃菜から熱い吐息が漏れ出す。
桃菜は急に始まったマッサージに抵抗もできずに、すぐにそのあまりの気持ちよさに飲まれていった。
「桃菜ちゃんは胸が大きいから、肩がこるのかな? ほぐしてあげるからね」
炎理の指がだんだん早くなり、熱を帯びていく。
その熱い指で肩を刺激されると、肩から全神経にかけて炎理の熱が広がっていく錯覚に陥る。
「あ、あぁ……んぅ、石豪華さん、す、すご……ぃ」
「かわいい声だね、桃菜ちゃん、もっと私の指で感じて」
桃菜の身体から力が抜けていき、ふにゃあと椅子にもたれかかるように倒れていく。
お尻が下がり、ニーソに包まれた脚はだらんと広がり、夢見心地で炎理にされるがままになっていく。
モニターに移る、桃菜の顔は快楽に包まれていた。
「そう、力を抜いて……」
「あぁ、んんきゅぅ……んぅぁ……」
桃菜が、だいぶほぐれたのを見計らって、炎理は語りだした。
「そのままでいいから、聞いてね」
炎理は、自分がタイピング部にこだわる理由と、タイピングに対する思いを、得意のマッサージと一緒に、まずは桃菜に聞いてもらおうと考えたのだ。
「私のお父さん……ここの生徒だったんだ。そしてタイピング部の初代部長」
炎理は自慢げに、父の話をする。
蛍光灯の光が、炎理の、エンタキー型のヘアピンをキラリと輝かせた。
「お父さんはね、タイピングがとても好きだったんだ。だけど5年前のタイピング大会でお父さんの技で会場が燃えて……」
マッサージをしながら、炎理は続ける。
「選手、観客ともに怪我人多数。お父さんは行方不明になっちゃった……」
桃菜の脳に、炎理の声は響くだけで、言葉は理解できない。
もう思考能力は残っていないのだ。
「ぁ……ぁ……ぁぁ……んぅっ」
ただ、炎理の指が赴くままに、かわいい声を上げる玩具に化していた。
「その時ね、私はまだ小学生だったんだけど、お父さんの意思を継ごうって決めたの」
炎理の指は、もう火傷しそうな温度に達していた。
桃菜の肩に、炎理の指一つ一つが触れる度に、小さな炎が、白ニーソに包まれた爪先まで、導火線をたどるかのように流れ込んでくる。
そして、爪先を超えると、頭の奥で気持ちよさが爆発する。
桃菜の額には、玉のような汗が浮きでて、綺麗な金色の髪がこびりつく。
パソコン教室は、冷房が効いているが、桃菜には効果がないようだ。
「だから、まずは、お父さんが部長をしてた、タイピング部から始めたいんだ」
「あ……あぁぁ……んぅ……にゃぁ……ん」
桃菜はピクンピクン全身を震わせる。
半開きの口から涎が垂れそうになってることに、桃菜は気がつけない。
「きっと、そこからお父さんの世界が見えてくると思うからっ!!!」
最後にぎゅっと、肩を掴んだ。
「んにゃあぅぁあああああああぁぁぁぁぁっぁぅぁぁ……っぅ!」
桃菜は口を大きく開けながら、身体はピクピクと震えさせた。
瞳は焦点が合っていない。
「どうだった? だいぶほぐれたかな?」
炎理は、自分の話の終わりとともに、マッサージを止めた。
「……ふぁ……な、なんで……?」
突然、マッサージを止められたことに抗議の声が自然に溢れた。
いまだ、快楽から抜け出せない潤んだ瞳で、モニター越しに炎理を見つめる桃菜。
「そのためには、桃菜ちゃんの力が必要なんだ。桃菜ちゃんが何か悩んでるのはわかるけど、深く考えずに、タイピングしてみようよ……」
炎理はそこで一息ついて言った。
「タイピングは自分との闘い、自分から逃げたらダメ、だよ?」
――その言葉が、桃菜の心の深いところに突き刺ささった。
「……う、うぅぅ、う……、わ、私……私、バカだ……ずっと逃げて……うぅぅ……」
惚けていた顔が、今度は悲しみに彩られていく。
炎理はそんな桃菜を、後ろからぎゅっと抱きしめた。
「……桃菜ちゃんの話、聞かせてくれる?」
「ぅん、うん、私ね……」
桃菜はぽつりぽつりと呟くように過去を話し始めた。
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