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21【番外編】 エリアート妊娠ルート(領主の息子ルミール編) 前編

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※男性妊娠の描写があります。

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 エリアートは領主ジャルミルとの間に生まれた子供フロールを屋敷のメイドに預けて出かけようとしていた。ドアの前で、泣いてエリアートの足にしがみついてるフロールを、エリアートとメイドはなだめていた。

「うわぁん、おかあさん、置いてかないで!」
「すぐに帰ってくるから、いい子で待っててね」

 息子のフロールは髪色はエリアート似だが、顔立ちはジャルミルによく似ていた。つまりルミールにもよく似ている。

「忙しいのに、フロールのお守りをさせてすいません……」

 エリアートはメイドにそういうと、メイドはとんでもないと言わんばかりにエリアートに言った。

「エリアート様はお仕事もされててお忙しいのですから、屋敷の者にどんどん頼ってくださっていいんですよ」
「……その、エリアート様ってやめてほしいな……」
「何を言っておられるのですか。エリアート様は領主様の大切なお方なんですから、様付けは当たり前です」

 ジャルミルとの間に子が産まれてから、村ではエリアートはジャルミルの後妻のような扱いになっていた。村人からは結婚したらよいとよく薦められ、エリアートはその度に返答に困り笑ってごまかしていた。
 エリアートは泣きつかれて寝てしまったフロールをメイドに任せて、屋敷の裏口から出ていく。途中で、庭師に頼んでおいた花をもらい、村の墓地がある方に一人歩いていった。村の墓地の比較的新しい墓がある場所にエリアートはやってきて、とある墓の前で立ち止まった。

「ヨエル、時間が空いてごめん」

 一人そう言うと、エリアートは持っていた花をヨエルの墓の前に置いてしゃがみ、地面の四角い墓石に目線を落とした。ヨエルが騎士団の遠征で魔物との戦いで命を落としてからもう何年経ったのか……エリアートはひとり考える。その間に、領主のジャルミルとその息子ルミールに励まされて、ジャルミルの子を産み子育てに追われて時間は過ぎていった。この墓石の下にはヨエルの遺品を埋葬している。ヨエルがいた騎士団の遠征では、遺体の回収はできず戻ってきたのは生きている者達だけだった。ジャルミルが、ヨエルの墓をわざわざ作ってくれたのだ。エリアートの心の平穏のために必要だとジャルミルは言った。

(ヨエルのお墓の前で、いまだフロールのことを報告できないな……私は情けないな……)

 亡くなったあとでもヨエル以外の男の種で産んだことにエリアートは罪悪感を感じていた。

「エリアートさん?」

 急に声をかけられて振り向くと、花を持ったひとりの少年が立っていた。

「君は……ノイマンさんのところの三男の男の子だったね。こんにちは」
「もう俺は男の子じゃないですよ、エリアートさん」
「ああ、ごめんね。見ない間にすっかり大きくなったね」

 少年は手に持った花をヨエルの墓の前に置いて、エリアートに言う。

「実は来週から王都の騎士団の見習いに行くんです」
「えっ、本当? 急だね」
「ヨエルさんがいた騎士団の団長さんや副団長さんが、俺は筋が良いっていってくれたので。生前のヨエルさんにはガキの頃に剣を教えてもらった恩があるので、その報告に来たんです」
「そうだったんだ。ありがとう」

 ヨエルが剣を教えた少年が見習いで騎士団に行くことに、エリアートはヨエルとの繋がりを感じて胸に懐かしさと暖かさを感じた。

「ヨエルさん、俺は立派な騎士になりますから応援してて下さい。帰って来たらまだお墓参り来ますね」

 少年はヨエルの墓にそういって語りかけていた。エリアートは静かにそれを見つめていた。ヨエルの影響で騎士を目指す村の少年の姿に嬉しくなるも、少年には怪我もなく無事でいてほしい、ヨエルのようにはなってほしくないとの想いもあった。いつの間にか空がだんだんと、赤みを帯びてきて夜になりつつあった。

 +++++++++++++

 屋敷に戻ると、何やら騒がしかった。急な患者が来るとみんな忙しくなるので、エリアートは急いで部屋に戻ると意外な人物がいた。

「エリアートさん、お帰りなさい」
「ルミール様?」

 王都の学園に通っているはずのルミールが、部屋でフロールを肩車して遊んでいた。

「わーい! 母様! 兄様の肩車たのしいよ!」
「ふふ、それは良かったよ」
「ルミール様、フロールの子守をさせてすいません。さぁフロール、お兄様が大変だから降りようね」
「えー」

 渋々とフロールは、ルミールの肩から降ろされ、エリアートはフロールを抱き上げた。

「ルミール様、学園はどうされたのですか? まだ長期休暇は先ではないのですか?」
「実は父上に急に呼びだされて。僕も理由がわからないんだ」

 ちょうどその時にドアがノックされて、執事のユルゲとメイドが入ってきた。

「ルミール様、エリアート様。旦那様が書斎でお待ちです。フロール様は我々がお守りをしてますので行って下さい」
「わかりました」

 執事のユルグとメイドにフロールを頼み、ルミールとエリアートは書斎に向かった。書斎のドアをノックし入ると、ソファーに座ったジャルミルが待っていた。

「父上、お久しぶりです」
「ルミール、また背が伸びたな。このまま世間話をしたいところだが、厄介なことがあるので話したい。説明するから二人共、座ってくれ」

 ルミールはジャルミルの向かいのソファーに座り、エリアートはジャルミルの隣に座るように指示された。

「一体どうしたんですか父上。厄介なこととは?」
「実は少し前に神殿から手紙が来て、幼いフロールに光属性の力があれば神殿に入らせたい、将来は神官として治癒の力を使って人々のために働いてほしいという要望だった。まったくふざけた内容だ……手紙を破り捨てそうになったぞ」
「えっ……?」
「本当ですか」

 神官は早い者は、子供の頃から神殿に入り神官になるように育てられることもある。まさかまだ幼いフロールに神殿からの要望が届くとは夢にも思わなかった。フロールが神殿に取られるかもしれない恐怖を想像して、一気にエリアートは血の気が引いた。

「父上、それなら僕も光属性の治癒力があるのですが、まさか僕にも要請が?」
「ルミール、安心しろ。お前のことは特に言及されてはいない」
「それにしても、急におかしいですね。父上と僕の治癒力は、治るに時間がものすごくかかりますし魔力の回復も遅いから、神殿からは必要ない役たたずの治癒力とされてましたよね」
「最近、神殿の一流の治癒師や治療師が軒並み過労で体を壊したり引退している。聖女様や聖者様と呼ばれる方々も、国の各地で奉仕活動や治療をしていたが、無理がたたり病気がちになっているそうだ。それで、今まで時間がかかる治癒力しか持たない我々に目をつけてきたと考えられるな」
「なんて自分勝手な……」

 ルミールは呆れたように言った。

「父上、手を打たないと! 僕のかわいい弟が神殿に拐われます!」
「慌てるな。私が長年やってきた活動のおかげもあると思うが、元治療者の貴族や商人や有力者の方々が味方になってくれる。私の友、騎士団長アルブレヒトも協力してくれると言ってくれた」
「さすが父上、抜かりないですね。では何故、僕は呼ばれたんですか?」
「お前を呼んだのは、フロールのお守りと、エリアートの身を守らせるためだ。三日後に神殿から神官がやってくる。念のために、エリアートとフロールは村から離れたところに隠れていてほしい。明日の朝には出発してくれ」

 ジャルミルとルミールの二人が話しているのを、エリアートは呆然と聞いていた。まさか、自分の生んだフロールが神殿に取られるかもしれないなんて……。エリアートは目眩のような不快感に見舞われ、ジャルミルの体に寄りかかりそうになってしまう。

「エリアート、顔色が悪いぞ。大丈夫か」
「……申し訳ありません……とてもショックが大きすぎて……」
「念のために誰かを呼ぼう。エリアート、あとは我々で話しておくから今日は休みなさい」
「はい……」

 エリアートは呼んだメイドとともに部屋から出ていった。その後、二人は明日の出発の相談や計画を打ち合わせた。

「ところ父上、話は変わりますが前から言っていた例の件のことです。今回の避難先でエリアートさん、いえ父上の所有物であるエリアートさんを僕が孕ます許可をいただきたいのですが」
「フフフ、言うと思っていた。構わないぞ。村から離れている間に所有物エリアートを孕ませて、私のために孫を見せてくれるんだろう?」
「父上! ありがとうございます!」
「とは言っても、お前がエリアートを孕ませられるならな。ククク……まぁ、できなければ次も私がメス奴隷を孕ませるから安心するがいい。またお前に弟か妹を増やしてやろう」
「父上、僕は自信があるので大丈夫ですよ、ふふふ」

 邪悪な本性を現し会話する父子は、エリアートを再び孕まそうとするおぞましい会話をしていた。今度はジャルミルでなく、フロールの兄でもあるルミールがエリアートに子を産ませようとしていた。よく似た顔の父と子は、淫猥に口を歪めて笑っていた。

 ++++++++++++++++

「兄様、大きい池があるね」
「あれは海だよ。波が高くない時に行きたいね」
「なみ?」

 ジャルミルの知人が持っている海に比較的に近い別荘に避難したエリアート達。ルミールとフロールは楽しそうに笑って窓から海を眺めていた。エリアーはすでに身も心も疲れて、ソファーで横になっていた。昨日、ジャルミルから言われて頭が混乱する中、次の日の早朝に慌ただしくこの海近くの別荘まで移動したのだ。幼いフロールが元気なのが救いだった。ドアがノックされて、村から一緒に来たメイドとその息子の少年が入ってきた。

「エリアート様、お水をお持ちしました」
「ありがとう……ここに着いた途端に体調を崩してしまってすみません……私がしっかりしないといけないのに……」
「領主様から聞いてます。神殿とはいえひどいです。そんな手紙が来れば、親なら誰でもショックで参ってしまいます。私の息子カロッサもフロール様をお守りしますから、安心して休んでて下さい」
「本当にありがとう。そうします」

 水をコップより一口飲むと、フロールを抱いたルミールがエリアートの寝ているソファーの直ぐ側に来ていた。

「エリアートさん、僕はフロールと外で遊んでますのでゆっくりお休みください。カロッサも一緒に来て」
「はい、ルミール様」

 メイドの息子カロッサを連れて、ルミールはフロールを抱いて部屋を出ていった。メイドも掃除や片付けがあるので部屋を出ていって、エリアートは一人、部屋でぼんやりした頭で天井を見上げた。

(……私がしっかりしないといけないのに……情けないな)

 ++++++++++++++++

 フロールのお守りをメイドに任せたエリアートは、部屋で1人ベッドに寝ていたが寝付けなかった。窓から見える外はすっかり暗くなっていたが、エリアートは目がさえてしまっていた。

(フロールは私がいなくても、ちゃんと眠れているだろうか……泣いてないといいけど……)

 何度目かの寝返りを打つと、ベッドサイドに人影が立っていた。部屋のノックは聞こえなかったが、メイドが見に来てくれたのかと思い視線をやるとそこにはルミールが立っていた。

「ルミール様……」
「心配だったので様子を見にきました。フロールはカロッサと一緒に遊んだ後、ぐっすりと寝ていますから安心してください」
「ありがとうございます。気を使っていただいて」
「ふふふ、フロールはかわいい弟ですからね。ところでエリアートさん、フロールに弟か妹を作りたくはないですか?」
「……えっ……?」

 ルミールが突然言い出したことにエリアートは驚いた。

(ルミール様は、今まで一人っ子だったから弟のフロールができたのが嬉しかったんだろうか)

 エリアートがそう思い返事に困っていると、ルミールは寝ているエリアートに顔を近づけた。

「実は父上から、エリアートさんと子作りする許可をいただきました。この別荘にいる期間でエリアートさんにお願いしたいのです。父上からの許可の手紙もあります」
「えっ……?!」

 ルミールはエリアートの枕元にジャルミルの手紙をそっと置いた。エリアートはまさかそんなことを言うとは思わず、身を起こした。

「ルミール様……私は貴方の父親であるジャルミル様の子供を産みました。あなたの弟でもあります。そんな私が貴方と行為をして子を宿すなんて……」

 そんな獣のような行いが許されるのだろうかとエリアートは思うが、ヨエルを裏切りジャルミルの所有物となって忠実な性奴隷としてとっくに穢れた身体になっていた自分には拒否する権利などないほど堕ちてしまっていた。

「僕は今、学園に通いつつ将来の伴侶を探してますがなかなかいい人が見つからなくて。エリアートさんのように人柄がよくて賢く淫らな人はなかなかいませんね。いいメス奴隷を手に入れた父上が羨ましいです」

 ルミールはそう話しながらエリアートの頬に手を添えてルミールの方に顔を向かせた。

「それに父上と同様、僕も光属性の治癒魔法ができます。僕の子を宿せばきっと同じように治癒ができる子供ができるはずです」
「……でも、フロールのように神殿に目を付けられてしまいませんか?」
「父上が守ってくれます。それに治癒魔法が使えれば、ヨエルさんのように怪我で命を落とした人を救うことができます。これは慈善行為でもあるんです」
「ヨエルのような人の命を……」

 ヨエルの所属していた騎士団は治癒をできる者がいなかったと聞いた。エリアートの目を見つめてルミールは優しく微笑んだ。

「今日はエリアートさんの体調を考えてやめておきますが、無理にとは言いません。エリアートさんが僕の子を孕みたいと言えば明日の夜にでもしましょう。では、お休みなさい」

 そう言ってルミールは部屋から出ていった。エリアートはベッドに横になり、ルミールが言ったことを考えていた。

(……光属性の治癒力がある子を産めば……傷ついた人を助けられるのかもしれない……ヨエル……私はどうしたら……)

 昨日、ヨエルの墓の前で会った村の少年を思い出していた。彼が将来、騎士になる頃には所属する騎士団には治癒魔法を使える者がいるのだろうか……エリアートは考えながら眠りに入った。
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