1 / 36
1 痴話喧嘩から始まる出合い①
しおりを挟む
この国の由緒正しい家柄の者、もしくは才能ある15歳以上が通う私立学園の校舎裏で二人の青年に差し掛かる年齢の少年二人が言い争いをしていた。
「お前の友達は最低だな!告げ口するなんて!」
「告げ口って……そもそもマクシムが娼館なんかに行くのが悪いんだろ!それって浮気だ!」
「はぁ?!」
この学園の騎士科に在籍するマクシムは逆ギレするが、もう一人の少年、魔術科に在籍するロジェは頭に血が登っているので自分よりも体が大きいマクシムへ怖いものなしで言葉を返す。
「僕と付き合っているなら娼館なんかに行くなよ!!」
「はっ!それなら言わせてもらうけどな」
マクシムはロジェを見下ろして不満をぶちまけた。
「お前がやらせないのがいけないんだよ!結婚まではだめって……キスだけとかガキかよ!」
確かにロジェは性行為は結婚まではという真面目な家族で育ったので、それを忠実に守っている。マクシムのことは好きだが、今は一緒にいるだけで楽しいし幸せだと思っていた。
「だから俺は性欲処理しに娼館に行ったんだよ!だからこれは浮気でもなんでもない!ただの性欲処理なんだよ!」
「えっ僕が…悪いの……?」
「お前はいいかもしれないが、俺は性欲旺盛なんだよ!ったく、なにが浮気だよ。お前ふざけんなよっ!」
そう言って、マクシムはぶっきらぼうに言い放ちこの場を早足で去っていった。残されたロジェは、呆然とマクシムの背中を見つめることしかできず、彼が去った後もその場に立ちつくしそのうち眼から涙が溢れ出した。
「……ううっ……僕が悪いのかよ……ひどいよ…」
騎士科のマクシムと出会ったのは、ロジェが廊下で重い書物を運んでいるときに手伝ってもらったのが始まりだ。たまに会うと話しかけてくれて、だんだんと仲良くなっていった。告白したのはマクシムの方からだった。男同士でも結婚しているカップルがいるこの国では同性同士の交際は珍しくもない。自分達はうまく言っていると思っていたが、同じ魔術科のクラスメートから騎士科の生徒たちが娼館に行ったと聞きマクシムもその中にいたと聞いた。彼に問いただすために呼び出して人気がない校舎裏で聞いた結果がこれだった。
「ううっ……ひどい……性欲処理は浮気じゃないって……グスッ……」
「へえ、気になる言葉だね?」
ここには自分しかいないと思っていたら、誰かの声が聞こえた。俯いていた顔を上げると、ロジェと同じ魔術科の生徒のカラスバ=ノシタモクがいた。
「……うひゃあぁっっ!い、いたんだ……ノシタモクさん……」
「それはこっちのセリフだよ。こんなところで痴話喧嘩しててさ。真面目なロジェくんに彼氏がいたんだね。僕、ショックだなあ。しかも騎士クラスの人じゃないか」
「……冷やかしはやめてくれませんか……」
ロジェは気まずげに顔をそらした。恥ずかしい所をクラスメートのノシタモクに見られてしまった。天才魔術師を父に持つかれは父譲りの才能で成績はトップ。生徒からも一目置かれていて教師からも覚えが良い。特別に研究室が与えられるなど特例扱いを受けていた。
鴉の濡れ羽色の黒髪を後ろでしばり、魔術科の制服の黒いローブを着て、かけている眼鏡から見える底が見えない黒目でロジェを見つめるノシタモクに見透かされているようで気まずくなる。同じクラスとはいえノシタモクは授業よりも研究室に籠もっているのでクラスでの交流は特になかった。
「っ……そのっ……変なもの見せてごめん……じゃあ、さよなら」
ロジェは気まずさに耐えきれなくこの場から離れたが、マクシムが去っていった方向とは反対方向に走っていった。もしもマクシムが待っていたら、どうしていいかわからなかったし、今はとにかく一人になりたかった。
「あー、ロジェくん!そっちは帰り道じゃ……これはヤバいじゃん……」
ノシタモクが独り言を言ったのにすでに走り去ったロジェには届かなかった。
ロジェは気まずさのあまりに焦って帰り道とは逆の方向に来てしまった。校舎裏の更に奥は草木の手入れがされておらず伸び放題になっていて、よく言えば植物の楽園のようだった。
「……帰り道と逆に来ちゃった……あーあ……」
自分のうっかりぶりに更に自己嫌悪に陥る。元来た道を戻ればノシタモクと会うと思うと気まずいが、マクシムが待っているかもしれないと思うとますます戻りたくなかった。
「…はぁ…ここで一人で時間つぶそうかな…?」
なにか、近くの茂みで人の声が聞こえる。くぐもった声のような…まさか人が倒れているのか?とロジェは思い、そっと声が聞こえる方にゆっくり歩いていった。
のび放題の緑の茂みが顔にかかって不快に思った時、茂みの隙間から人影が見えたがロジェは驚愕して声が出せなかった。
「はぁっ、やだあ!おしり、壊れちゃうよぉ!」
茂みの隙間からは、可憐な美少年…どこかの貴族令息だったと思われる少年が木の幹に両手を置いて腰を突き出し体格の良い男に後ろから犯されている光景だった。
「サレイユ様っのすごいよぉ!」
「お前の中も最高だっ!」
ロジェには気づかずかなり盛っているようだが、サレイユという名前はこの学園には一人しかいない。騎士団長の息子の名前だったような…とロジェが思い出して、顔が青くなる。とんでもないものを見てしまった…早くここから逃げないとと後ずさりすると背中に何かがぶつかった。
「あー、見られちゃったかぁ…油断した。僕のツメが甘かったよ」
「…えっ…」
後ろを見るとノシタモクがいた。彼はまいったなーとイタズラがバレた子供のような顔をしてロジェを見ている。
「見られたからには、このまま大人しく返すわけにはいかないなあ」
「へっ…?あっあの…だっ、誰にも言いませんから…」
「それは無理かな?」
ロジェは後ろから両肩を掴まれて身体をこわばらせる。
「ちょっと眠っといて」
「…まって!ノシタモク君…」
ロジェは急激な眠気に襲われて意識を失った。
「お前の友達は最低だな!告げ口するなんて!」
「告げ口って……そもそもマクシムが娼館なんかに行くのが悪いんだろ!それって浮気だ!」
「はぁ?!」
この学園の騎士科に在籍するマクシムは逆ギレするが、もう一人の少年、魔術科に在籍するロジェは頭に血が登っているので自分よりも体が大きいマクシムへ怖いものなしで言葉を返す。
「僕と付き合っているなら娼館なんかに行くなよ!!」
「はっ!それなら言わせてもらうけどな」
マクシムはロジェを見下ろして不満をぶちまけた。
「お前がやらせないのがいけないんだよ!結婚まではだめって……キスだけとかガキかよ!」
確かにロジェは性行為は結婚まではという真面目な家族で育ったので、それを忠実に守っている。マクシムのことは好きだが、今は一緒にいるだけで楽しいし幸せだと思っていた。
「だから俺は性欲処理しに娼館に行ったんだよ!だからこれは浮気でもなんでもない!ただの性欲処理なんだよ!」
「えっ僕が…悪いの……?」
「お前はいいかもしれないが、俺は性欲旺盛なんだよ!ったく、なにが浮気だよ。お前ふざけんなよっ!」
そう言って、マクシムはぶっきらぼうに言い放ちこの場を早足で去っていった。残されたロジェは、呆然とマクシムの背中を見つめることしかできず、彼が去った後もその場に立ちつくしそのうち眼から涙が溢れ出した。
「……ううっ……僕が悪いのかよ……ひどいよ…」
騎士科のマクシムと出会ったのは、ロジェが廊下で重い書物を運んでいるときに手伝ってもらったのが始まりだ。たまに会うと話しかけてくれて、だんだんと仲良くなっていった。告白したのはマクシムの方からだった。男同士でも結婚しているカップルがいるこの国では同性同士の交際は珍しくもない。自分達はうまく言っていると思っていたが、同じ魔術科のクラスメートから騎士科の生徒たちが娼館に行ったと聞きマクシムもその中にいたと聞いた。彼に問いただすために呼び出して人気がない校舎裏で聞いた結果がこれだった。
「ううっ……ひどい……性欲処理は浮気じゃないって……グスッ……」
「へえ、気になる言葉だね?」
ここには自分しかいないと思っていたら、誰かの声が聞こえた。俯いていた顔を上げると、ロジェと同じ魔術科の生徒のカラスバ=ノシタモクがいた。
「……うひゃあぁっっ!い、いたんだ……ノシタモクさん……」
「それはこっちのセリフだよ。こんなところで痴話喧嘩しててさ。真面目なロジェくんに彼氏がいたんだね。僕、ショックだなあ。しかも騎士クラスの人じゃないか」
「……冷やかしはやめてくれませんか……」
ロジェは気まずげに顔をそらした。恥ずかしい所をクラスメートのノシタモクに見られてしまった。天才魔術師を父に持つかれは父譲りの才能で成績はトップ。生徒からも一目置かれていて教師からも覚えが良い。特別に研究室が与えられるなど特例扱いを受けていた。
鴉の濡れ羽色の黒髪を後ろでしばり、魔術科の制服の黒いローブを着て、かけている眼鏡から見える底が見えない黒目でロジェを見つめるノシタモクに見透かされているようで気まずくなる。同じクラスとはいえノシタモクは授業よりも研究室に籠もっているのでクラスでの交流は特になかった。
「っ……そのっ……変なもの見せてごめん……じゃあ、さよなら」
ロジェは気まずさに耐えきれなくこの場から離れたが、マクシムが去っていった方向とは反対方向に走っていった。もしもマクシムが待っていたら、どうしていいかわからなかったし、今はとにかく一人になりたかった。
「あー、ロジェくん!そっちは帰り道じゃ……これはヤバいじゃん……」
ノシタモクが独り言を言ったのにすでに走り去ったロジェには届かなかった。
ロジェは気まずさのあまりに焦って帰り道とは逆の方向に来てしまった。校舎裏の更に奥は草木の手入れがされておらず伸び放題になっていて、よく言えば植物の楽園のようだった。
「……帰り道と逆に来ちゃった……あーあ……」
自分のうっかりぶりに更に自己嫌悪に陥る。元来た道を戻ればノシタモクと会うと思うと気まずいが、マクシムが待っているかもしれないと思うとますます戻りたくなかった。
「…はぁ…ここで一人で時間つぶそうかな…?」
なにか、近くの茂みで人の声が聞こえる。くぐもった声のような…まさか人が倒れているのか?とロジェは思い、そっと声が聞こえる方にゆっくり歩いていった。
のび放題の緑の茂みが顔にかかって不快に思った時、茂みの隙間から人影が見えたがロジェは驚愕して声が出せなかった。
「はぁっ、やだあ!おしり、壊れちゃうよぉ!」
茂みの隙間からは、可憐な美少年…どこかの貴族令息だったと思われる少年が木の幹に両手を置いて腰を突き出し体格の良い男に後ろから犯されている光景だった。
「サレイユ様っのすごいよぉ!」
「お前の中も最高だっ!」
ロジェには気づかずかなり盛っているようだが、サレイユという名前はこの学園には一人しかいない。騎士団長の息子の名前だったような…とロジェが思い出して、顔が青くなる。とんでもないものを見てしまった…早くここから逃げないとと後ずさりすると背中に何かがぶつかった。
「あー、見られちゃったかぁ…油断した。僕のツメが甘かったよ」
「…えっ…」
後ろを見るとノシタモクがいた。彼はまいったなーとイタズラがバレた子供のような顔をしてロジェを見ている。
「見られたからには、このまま大人しく返すわけにはいかないなあ」
「へっ…?あっあの…だっ、誰にも言いませんから…」
「それは無理かな?」
ロジェは後ろから両肩を掴まれて身体をこわばらせる。
「ちょっと眠っといて」
「…まって!ノシタモク君…」
ロジェは急激な眠気に襲われて意識を失った。
25
お気に入りに追加
388
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
3/25発売!書籍化【完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
一二三書房/ブレイド文庫様より、2025/03/25発売!
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2025/03/25……書籍1巻発売日
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる