恋人から性欲処理は浮気じゃないとキレられた僕はクラスメートに寝取られる

雫谷 美月

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1 痴話喧嘩から始まる出合い①

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この国の由緒正しい家柄の者、もしくは才能ある15歳以上が通う私立学園の校舎裏で二人の青年に差し掛かる年齢の少年二人が言い争いをしていた。

「お前の友達は最低だな!告げ口するなんて!」
「告げ口って……そもそもマクシムが娼館なんかに行くのが悪いんだろ!それって浮気だ!」
「はぁ?!」

この学園の騎士科に在籍するマクシムは逆ギレするが、もう一人の少年、魔術科に在籍するロジェは頭に血が登っているので自分よりも体が大きいマクシムへ怖いものなしで言葉を返す。

「僕と付き合っているなら娼館なんかに行くなよ!!」
「はっ!それなら言わせてもらうけどな」

マクシムはロジェを見下ろして不満をぶちまけた。

「お前がやらせないのがいけないんだよ!結婚まではだめって……キスだけとかガキかよ!」

確かにロジェは性行為は結婚まではという真面目な家族で育ったので、それを忠実に守っている。マクシムのことは好きだが、今は一緒にいるだけで楽しいし幸せだと思っていた。

「だから俺は性欲処理しに娼館に行ったんだよ!だからこれは浮気でもなんでもない!ただの性欲処理なんだよ!」
「えっ僕が…悪いの……?」
「お前はいいかもしれないが、俺は性欲旺盛なんだよ!ったく、なにが浮気だよ。お前ふざけんなよっ!」

そう言って、マクシムはぶっきらぼうに言い放ちこの場を早足で去っていった。残されたロジェは、呆然とマクシムの背中を見つめることしかできず、彼が去った後もその場に立ちつくしそのうち眼から涙が溢れ出した。

「……ううっ……僕が悪いのかよ……ひどいよ…」

騎士科のマクシムと出会ったのは、ロジェが廊下で重い書物を運んでいるときに手伝ってもらったのが始まりだ。たまに会うと話しかけてくれて、だんだんと仲良くなっていった。告白したのはマクシムの方からだった。男同士でも結婚しているカップルがいるこの国では同性同士の交際は珍しくもない。自分達はうまく言っていると思っていたが、同じ魔術科のクラスメートから騎士科の生徒たちが娼館に行ったと聞きマクシムもその中にいたと聞いた。彼に問いただすために呼び出して人気がない校舎裏で聞いた結果がこれだった。

「ううっ……ひどい……性欲処理は浮気じゃないって……グスッ……」
「へえ、気になる言葉だね?」

ここには自分しかいないと思っていたら、誰かの声が聞こえた。俯いていた顔を上げると、ロジェと同じ魔術科の生徒のカラスバ=ノシタモクがいた。

「……うひゃあぁっっ!い、いたんだ……ノシタモクさん……」
「それはこっちのセリフだよ。こんなところで痴話喧嘩しててさ。真面目なロジェくんに彼氏がいたんだね。僕、ショックだなあ。しかも騎士クラスの人じゃないか」
「……冷やかしはやめてくれませんか……」

ロジェは気まずげに顔をそらした。恥ずかしい所をクラスメートのノシタモクに見られてしまった。天才魔術師を父に持つかれは父譲りの才能で成績はトップ。生徒からも一目置かれていて教師からも覚えが良い。特別に研究室が与えられるなど特例扱いを受けていた。
鴉の濡れ羽色の黒髪を後ろでしばり、魔術科の制服の黒いローブを着て、かけている眼鏡から見える底が見えない黒目でロジェを見つめるノシタモクに見透かされているようで気まずくなる。同じクラスとはいえノシタモクは授業よりも研究室に籠もっているのでクラスでの交流は特になかった。

「っ……そのっ……変なもの見せてごめん……じゃあ、さよなら」

ロジェは気まずさに耐えきれなくこの場から離れたが、マクシムが去っていった方向とは反対方向に走っていった。もしもマクシムが待っていたら、どうしていいかわからなかったし、今はとにかく一人になりたかった。

「あー、ロジェくん!そっちは帰り道じゃ……これはヤバいじゃん……」

ノシタモクが独り言を言ったのにすでに走り去ったロジェには届かなかった。

ロジェは気まずさのあまりに焦って帰り道とは逆の方向に来てしまった。校舎裏の更に奥は草木の手入れがされておらず伸び放題になっていて、よく言えば植物の楽園のようだった。

「……帰り道と逆に来ちゃった……あーあ……」

自分のうっかりぶりに更に自己嫌悪に陥る。元来た道を戻ればノシタモクと会うと思うと気まずいが、マクシムが待っているかもしれないと思うとますます戻りたくなかった。

「…はぁ…ここで一人で時間つぶそうかな…?」

なにか、近くの茂みで人の声が聞こえる。くぐもった声のような…まさか人が倒れているのか?とロジェは思い、そっと声が聞こえる方にゆっくり歩いていった。

のび放題の緑の茂みが顔にかかって不快に思った時、茂みの隙間から人影が見えたがロジェは驚愕して声が出せなかった。

「はぁっ、やだあ!おしり、壊れちゃうよぉ!」

茂みの隙間からは、可憐な美少年…どこかの貴族令息だったと思われる少年が木の幹に両手を置いて腰を突き出し体格の良い男に後ろから犯されている光景だった。

「サレイユ様っのすごいよぉ!」
「お前の中も最高だっ!」

ロジェには気づかずかなり盛っているようだが、サレイユという名前はこの学園には一人しかいない。騎士団長の息子の名前だったような…とロジェが思い出して、顔が青くなる。とんでもないものを見てしまった…早くここから逃げないとと後ずさりすると背中に何かがぶつかった。

「あー、見られちゃったかぁ…油断した。僕のツメが甘かったよ」
「…えっ…」

後ろを見るとノシタモクがいた。彼はまいったなーとイタズラがバレた子供のような顔をしてロジェを見ている。

「見られたからには、このまま大人しく返すわけにはいかないなあ」
「へっ…?あっあの…だっ、誰にも言いませんから…」
「それは無理かな?」

ロジェは後ろから両肩を掴まれて身体をこわばらせる。

「ちょっと眠っといて」
「…まって!ノシタモク君…」

ロジェは急激な眠気に襲われて意識を失った。
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