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ある夏の日
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『ほーら、早くしなよ』
『ちょ、ちょっと待ってよ』
「……えっと…………ユタカ先輩、昔から好きでした。付き合ってもらえませんか?」
私は向田マリ、高校1の夏に3年生の先輩に告白した。先輩は頭が良くて運動も出来てさり気ない気遣いが出来る。そんな幼馴染のお兄さんに小さい頃から、淡い恋心を抱いていた。
「ごめん。メグミからまだ聞いてないかな? 俺たちこの夏が終わった後には北海道へ行くんだよ」
「聞いています。でも、好きなんです。ダメですか?」
「だけど……」
「お願いしますっ!」
「……愛知と北海道は遠すぎるよ。メグミからも言ってくれないか」
「私は、お兄ちゃんが惚れられたのが悪いと思うなぁ。女の娘《こ》をその気にさせたなら責任取らなきゃ」
「そう言われてもな……」
そんな風に言われているユタカさんはとても困った顔をしていてそれが申し訳なく思う。
(困らせるくらいならやめた方が良かったんじゃないかな?)
そう思ってメグミちゃんに目配せをするが、隣の娘《こ》はニコニコ顔で答えてはくれない。
「やっぱりごめん。君とは付き合えない」
「はい……」
こうして、私の初めての告白は終わってしまった。けれど。
「でも、もし大学……または大人になった時なら」
「待っていてくれるんですか?」
「それは分からないけれど。マリちゃんの事……その前から気になってたし……」
そう言いながら彼は、顔を逸らしてしまう。私は嬉しくなって隣のメグミちゃんと抱き合いながら幼馴染にあるお願いをした。
「(お兄さんに他の女が寄ってこない様に見張っててよね♪)」
「(うん。わかった。マリちゃんも浮気しちゃダメだよ?)」
「もちろん♪」
――それから、2年と少し経って大学受験をする時期になった。
私は、両親と相談して北海道の大学を受験させて貰える事になった。お父さんからは
『お前がそんなに言うなら良いけれど。地元愛知の大学も受けるんだぞ』
と言われてるので、両方きちんとしないとならない。
飛行機で北海道の千歳空港に到着し、そこから札幌の水井家にやってきた。
(教えて貰った住所はここで合ってるよね? マップアプリは正しいよね?)
そんな心配に手の平を湿らせながら、私はチャイムを鳴らした。
ピンポーン
本当に久々に会う事が出来る。
彼が今の私にどんな反応をしてくれるのか期待に胸を膨らませながら、ジっと待っているとやがて扉が開いた。
ガチャ
「はーい。マリちゃんかな?」
メグミちゃんが出迎えてくれた。彼女は、前と変わらずとても可愛くて人目を引く女の子だったけれど、成長した事でそれがより鮮明になっていた。
「メグミちゃん。こんにちは、お兄さんは居ますか?」
「もー、せっかく直接会うのにすぐ男なの?」
「止めてよそんな言い方……」
「冗談だって♪ お兄ちゃんは夜に帰ってくるから、とりあえず上がって」
「それじゃ、お邪魔します」
初めて入る幼馴染の家は昔、愛知に住んで居た時とは違う家だけれどなぜか同じ匂いと言うか雰囲気を感じる。その事が昔覚えた恋心を思い出させてくれた。
――私は、ユタカさんが卒業してしまってから勉強を頑張って、頑張って……色々な選択肢を作れる様にしてきた。それにこれから大学生になるから、お化粧にも気を使っている。
「ど、どうかな?」
「ん? 何が?」
「私、綺麗になった?」
「うん。綺麗になったよ。お化粧しているんだよね? 一瞬見違えちゃったよ」
「そうなの……でも、変に思われていかなって心配で」
メグミちゃんに褒められたけれど、それでもやっぱり気になった私はカバンから手鏡を取り出して自分の容姿を確認し始めた。けれど、鏡の中の自分がブレてしまっていて表情も硬い。
その事に焦りを感じていると、メグミちゃんが微笑みながら私の手を包んでくれた。
「大丈夫だって、お兄ちゃんは今もマリちゃんの事が好きだよ。妹の私が言うんだから間違いないっ」
「ほ、本当? なんか自信無くなって来ちゃって」
「もー、何言ってるの。良くメッセージしてるじゃん。お兄ちゃん画面見ながらいつも気持ち悪い顔でニヤニヤしてるんだよっ」
「そうなの? ちょっと想像出来ないけれど」
私の記憶の中ではいつもカッコイイお兄さんだったけれど、家ではどうやら違うらしい。まだ知らないユタカさんがいるという事を知らされて、その秘密を知っているこの娘《こ》に嫉妬してしまう。
「ズルイなぁ、メグミちゃんは」
「あ、私が言ったって言わないでよね! お兄ちゃんってばマリちゃんの前ではいつもカッコつけてるんだから」
「そうなの? どうして?」
「男って気になる娘《こ》の前ではいつもカッコ付けたいんだよ。女もそうでしょ?」
「確かに、そうかも」
私達がそうやって旧交を温めていると玄関の方から音がした。どうやら私の想い人が帰って来たみたい。
もう一度、身だしなみを整えてから自分史上最高の笑顔でお迎えしよう。そう心に決めて彼を待つ。
「お帰りなさい。お久しぶりですユタカさん♡」
おわり
----------------------------------------------------
あとがき
"主演女優と作品テーマから物語を紡ぐ"
短編小説の映像化プロジェクト
向けの短編になります。
2000文字で、登場人物4人で起承転結を入れる……と言うお題でした。
映像で女の娘《こ》を可愛く映すなら告白シーンとゆるゆりですよねっ!
と言うのがこの作品のアピールポイントです(笑)
面白かった、この3人の続きが気になる。
と言う方は、ぜひフォロー、☆、いいね! を宜しくお願い致します。
『ちょ、ちょっと待ってよ』
「……えっと…………ユタカ先輩、昔から好きでした。付き合ってもらえませんか?」
私は向田マリ、高校1の夏に3年生の先輩に告白した。先輩は頭が良くて運動も出来てさり気ない気遣いが出来る。そんな幼馴染のお兄さんに小さい頃から、淡い恋心を抱いていた。
「ごめん。メグミからまだ聞いてないかな? 俺たちこの夏が終わった後には北海道へ行くんだよ」
「聞いています。でも、好きなんです。ダメですか?」
「だけど……」
「お願いしますっ!」
「……愛知と北海道は遠すぎるよ。メグミからも言ってくれないか」
「私は、お兄ちゃんが惚れられたのが悪いと思うなぁ。女の娘《こ》をその気にさせたなら責任取らなきゃ」
「そう言われてもな……」
そんな風に言われているユタカさんはとても困った顔をしていてそれが申し訳なく思う。
(困らせるくらいならやめた方が良かったんじゃないかな?)
そう思ってメグミちゃんに目配せをするが、隣の娘《こ》はニコニコ顔で答えてはくれない。
「やっぱりごめん。君とは付き合えない」
「はい……」
こうして、私の初めての告白は終わってしまった。けれど。
「でも、もし大学……または大人になった時なら」
「待っていてくれるんですか?」
「それは分からないけれど。マリちゃんの事……その前から気になってたし……」
そう言いながら彼は、顔を逸らしてしまう。私は嬉しくなって隣のメグミちゃんと抱き合いながら幼馴染にあるお願いをした。
「(お兄さんに他の女が寄ってこない様に見張っててよね♪)」
「(うん。わかった。マリちゃんも浮気しちゃダメだよ?)」
「もちろん♪」
――それから、2年と少し経って大学受験をする時期になった。
私は、両親と相談して北海道の大学を受験させて貰える事になった。お父さんからは
『お前がそんなに言うなら良いけれど。地元愛知の大学も受けるんだぞ』
と言われてるので、両方きちんとしないとならない。
飛行機で北海道の千歳空港に到着し、そこから札幌の水井家にやってきた。
(教えて貰った住所はここで合ってるよね? マップアプリは正しいよね?)
そんな心配に手の平を湿らせながら、私はチャイムを鳴らした。
ピンポーン
本当に久々に会う事が出来る。
彼が今の私にどんな反応をしてくれるのか期待に胸を膨らませながら、ジっと待っているとやがて扉が開いた。
ガチャ
「はーい。マリちゃんかな?」
メグミちゃんが出迎えてくれた。彼女は、前と変わらずとても可愛くて人目を引く女の子だったけれど、成長した事でそれがより鮮明になっていた。
「メグミちゃん。こんにちは、お兄さんは居ますか?」
「もー、せっかく直接会うのにすぐ男なの?」
「止めてよそんな言い方……」
「冗談だって♪ お兄ちゃんは夜に帰ってくるから、とりあえず上がって」
「それじゃ、お邪魔します」
初めて入る幼馴染の家は昔、愛知に住んで居た時とは違う家だけれどなぜか同じ匂いと言うか雰囲気を感じる。その事が昔覚えた恋心を思い出させてくれた。
――私は、ユタカさんが卒業してしまってから勉強を頑張って、頑張って……色々な選択肢を作れる様にしてきた。それにこれから大学生になるから、お化粧にも気を使っている。
「ど、どうかな?」
「ん? 何が?」
「私、綺麗になった?」
「うん。綺麗になったよ。お化粧しているんだよね? 一瞬見違えちゃったよ」
「そうなの……でも、変に思われていかなって心配で」
メグミちゃんに褒められたけれど、それでもやっぱり気になった私はカバンから手鏡を取り出して自分の容姿を確認し始めた。けれど、鏡の中の自分がブレてしまっていて表情も硬い。
その事に焦りを感じていると、メグミちゃんが微笑みながら私の手を包んでくれた。
「大丈夫だって、お兄ちゃんは今もマリちゃんの事が好きだよ。妹の私が言うんだから間違いないっ」
「ほ、本当? なんか自信無くなって来ちゃって」
「もー、何言ってるの。良くメッセージしてるじゃん。お兄ちゃん画面見ながらいつも気持ち悪い顔でニヤニヤしてるんだよっ」
「そうなの? ちょっと想像出来ないけれど」
私の記憶の中ではいつもカッコイイお兄さんだったけれど、家ではどうやら違うらしい。まだ知らないユタカさんがいるという事を知らされて、その秘密を知っているこの娘《こ》に嫉妬してしまう。
「ズルイなぁ、メグミちゃんは」
「あ、私が言ったって言わないでよね! お兄ちゃんってばマリちゃんの前ではいつもカッコつけてるんだから」
「そうなの? どうして?」
「男って気になる娘《こ》の前ではいつもカッコ付けたいんだよ。女もそうでしょ?」
「確かに、そうかも」
私達がそうやって旧交を温めていると玄関の方から音がした。どうやら私の想い人が帰って来たみたい。
もう一度、身だしなみを整えてから自分史上最高の笑顔でお迎えしよう。そう心に決めて彼を待つ。
「お帰りなさい。お久しぶりですユタカさん♡」
おわり
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あとがき
"主演女優と作品テーマから物語を紡ぐ"
短編小説の映像化プロジェクト
向けの短編になります。
2000文字で、登場人物4人で起承転結を入れる……と言うお題でした。
映像で女の娘《こ》を可愛く映すなら告白シーンとゆるゆりですよねっ!
と言うのがこの作品のアピールポイントです(笑)
面白かった、この3人の続きが気になる。
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