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あなたが恋に落ちるまで
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「この発注書に対して来た納品書の金額が合わないんです」
私は主任に2枚の紙を見せた。
「確認してみるね。急ぎ?」
「早ければ早いほど助かります」
「分かった」
「北川さんはいつも社内のあっちこっちにいるね」
横山さんは私を見て微笑む。
「そうですか?」
爽やかな笑顔で言われても、横山さんだとそれが恥ずかしいことのように感じてしまう。
私の仕事は社内の他の部署からも呼び出され、仕事を押し付けられ、フロアを行ったり来たりしている。『都合のいい雑用係の社員』だと思われている気がして嫌だった。
「いつも一生懸命だもんね」
その言葉に一転して胸が熱くなる。横山さんにそう言われると社内を駆け回るのも苦じゃないと思える。
どうやら横山さんを好きになってから単純な思考回路になってしまったらしい。
「そうだ、北川さんこれ食べてみて」
横山さんは調理台の上に置かれたお皿を私に手渡す。
「今度軽食として販売するものなんだけど、今試作を作ったんだ」
お皿にはフランスパンのようなパンに具を挟んだサンドイッチが載っている。
「カルボナーラサンドなんだけど」
「カルボナーラ……ですか?」
「ベーコンと半熟卵とカルボナーラフィリングを挟んでみたんだけど、どうかな?」
「いただきます」
私はサンドイッチを一口かじった。横山さんと主任の視線を感じて緊張する。
「美味しいですけど……何かが足りない気がします」
「何かな?」
「えっと……卵がとろっとしてるのはカルボナーラっぽいですけど、これだとパンから垂れてきちゃって食べにくいです……」
「あとは?」
「別にもう少し食感がほしいです。固形のものというか……噛み応えのある具材があるとパンに挟んで食べたときにちょうどいいかもしれないです……」
「そうか……」
横山さんも主任も黙って考え込んでしまった。
「あ、あの……私の意見ですから、あまり気になさらないでください!」
「いや、北川さんの感想はそのままお客様の感想だから」
「もう少し考える」
「北川さんありがとう」
「いえ……」
こんな私の意見でも役に立ったなら嬉しいな。
「あの横山さん、それで思い出したんですけど、花の装飾のカタログをもらったんですけど要りますか?」
「ほんとに? ありがとう。是非見たいな」
「じゃあ今度お持ちします」
良かった! 余計なお世話じゃなくて。
「ねえ北川さん、七原の駅に行ったことある?」
「はい。七原に映画を観に行ったことがあります」
「去年七原駅の近くに新しいカフェがオープンしたのは知ってるかな?」
「いえ、知りませんでした……」
「お願いがあるんだけど、そのカフェに一緒に行ってくれないかな?」
「え?」
「うちの新店も七原駅なんだ。北口と南口だし、あっちは駅から少し歩くから真っ向から争うわけじゃないけど、気になるからさ」
「そうですね……」
「男一人で入れる雰囲気じゃないんだよね。女性をターゲットにしたパンケーキメインのカフェだから。本当はレストラン事業部の人と行くつもりだったけどスケジュールが合わなくて。同僚と行くのも男だけだと浮くし、一緒に行ってくれる女の子がいなくて」
「私でよければ」
「助かるよ! ありがとう」
こちらこそ、横山さんとカフェに行けるなんて。
「あ、じゃあ連絡先教えて」
横山さんはスマートフォンを出した。
「すみません、私今携帯置いてきちゃって」
「じゃあ僕の教えるよ」
近くにあるメモ用紙に番号とアドレスをすらすらと書いて私に渡した。
「後で送っといて」
「ありがとうございます」
私はメモを大事に握った。
社用携帯じゃない、プライベートな連絡先だと思ってもいいかな? それを教えてもらって、浮かれてもいいかな?
ピリリリリリ
横山さんの携帯の着信音が調理室に響いた。
「ごめん、出てくる」
そう言うと横山さんは調理室から出ていった。
私もそろそろ戻ろう。
「北川さん雰囲気変わった」
突然主任が私に話しかけた。
「え? そうですか?」
「前よりも明るい」
それはよく言われることだが、主任にまでそう言ってもらえるとは思っていなかった。
「ありがとうございます」
「でも中身は変わらないね。真面目で」
それは褒めているの? 嫌みなの?
感情を出さない主任の表情からは判断ができない。
「横山さんはああ見えて結構だらしないから、そこは気をつけて」
「……はい?」
横山さんがだらしない? そんな風には見えないんだけど。気をつけてとはどういう意味?
「あの……」
「横山さんに高いメニュー奢ってもらいな」
「あはは……そうですね……」
主任の言葉は簡略すぎて何が言いたいのかはさっぱり分からなかった。
帰りの電車に乗っている時も、夕ご飯を食べている時も、お風呂に入っても落ち着かない。
横山さんにいつメールを送ろう……。早すぎてもがっついてるみたいだし、遅すぎても迷惑だよね。
短文のメールなのに悩みながら送信した。
プライベートで男の人にメールを送る機会が滅多にない。こんなことで悩んでしまう自分が悲しい。
数分して横山さんから返信が来た。
昼間話したカフェには日曜に行くことになった。口約束じゃなくて実際に待ち合わせの時間まで決めることができた。
休日にも横山さんと会えるのは嬉しいけど今から緊張する。
今日はなんて良い日なんだろう。横山さんとメールができて、一緒に出掛ける約束まで。
嫌なことの後には良いこともあるもんだな。
七原駅のトイレで入念にメイクと服をチェックして、横山さんと会う改札前まで歩いた。
待ち合わせの15分前だというのに横山さんは既に待っていて、歩いてくる私を見つけると安定の爽やかな笑顔で迎えてくれた。スーツ姿しか見慣れていないため、私服の横山さんは新鮮でいつも以上にかっこよく見える。
「休みなのにごめんね」
「いえ、パンケーキ好きなので楽しみです」
お昼前にカフェに着いても、休日だからか店内は満席に近かった。
元々七原駅は周辺に商業ビルが多く、映画館や公園もあり利用者の多い駅だ。住宅地近くにあるこのカフェは学生や主婦に人気のようだ。
「北川さんは好きなの頼んでね。今日は僕の奢りだから」
「いえ、そんな! 自分で払いますから」
「遠慮しないで。一緒に来てほしいってお願いしたのは僕だから」
「じゃあお言葉に甘えて」
メニューには複数のパンケーキとデザートが並び、メインではないパスタの写真までが美味しそうに載っている。
私はベリーパンケーキを頼み、横山さんはサーモンとほうれん草のパスタを頼んだ。
店内を見渡すと女性客やカップルが多い。私と横山さんも今はカップルに見えているのだろうか。
パンケーキとパスタがテーブルに運ばれてくると横山さんは「マナーが悪くてごめんね」と言ってスマートフォンで写真を撮り始めた。
「パンケーキも撮りますか?」
「うん」
私は横山さんに向けてパンケーキのお皿を動かした。
一通り撮り終わると「ごめんね、行儀悪くて。参考資料に保存しないといけなくて」と申し訳なさそうな顔をする。
「いえ、気にしないでください」
彼は今日仕事で来たのだから。私は横山さんの邪魔をしてはいけない。
「北川さんが一緒に来てくれて助かるよ。僕一人だと写真撮るのも撮りづらいし」
「確かにこのお店では浮きそうですね」
とは言ったけど、横山さんが一人でパンケーキを頼んで写真を撮っていたら、見た目とのギャップで可愛らしいかもしれない。
「いただきます」
イチゴとブルーベリーに彩られ、ソースがかかったパンケーキはふわっとしてとても美味しい。
「すごく美味しいです」
そう言って横山さんを見ると、私をじっと見て微笑んでいる。
「よかった」
ああ、だめだ……目が合わせられない。
今までの私からはこの状況はとても想像できない。社内でも人気の横山さんとプライベートで会って食事してるんだもん。
私は主任に2枚の紙を見せた。
「確認してみるね。急ぎ?」
「早ければ早いほど助かります」
「分かった」
「北川さんはいつも社内のあっちこっちにいるね」
横山さんは私を見て微笑む。
「そうですか?」
爽やかな笑顔で言われても、横山さんだとそれが恥ずかしいことのように感じてしまう。
私の仕事は社内の他の部署からも呼び出され、仕事を押し付けられ、フロアを行ったり来たりしている。『都合のいい雑用係の社員』だと思われている気がして嫌だった。
「いつも一生懸命だもんね」
その言葉に一転して胸が熱くなる。横山さんにそう言われると社内を駆け回るのも苦じゃないと思える。
どうやら横山さんを好きになってから単純な思考回路になってしまったらしい。
「そうだ、北川さんこれ食べてみて」
横山さんは調理台の上に置かれたお皿を私に手渡す。
「今度軽食として販売するものなんだけど、今試作を作ったんだ」
お皿にはフランスパンのようなパンに具を挟んだサンドイッチが載っている。
「カルボナーラサンドなんだけど」
「カルボナーラ……ですか?」
「ベーコンと半熟卵とカルボナーラフィリングを挟んでみたんだけど、どうかな?」
「いただきます」
私はサンドイッチを一口かじった。横山さんと主任の視線を感じて緊張する。
「美味しいですけど……何かが足りない気がします」
「何かな?」
「えっと……卵がとろっとしてるのはカルボナーラっぽいですけど、これだとパンから垂れてきちゃって食べにくいです……」
「あとは?」
「別にもう少し食感がほしいです。固形のものというか……噛み応えのある具材があるとパンに挟んで食べたときにちょうどいいかもしれないです……」
「そうか……」
横山さんも主任も黙って考え込んでしまった。
「あ、あの……私の意見ですから、あまり気になさらないでください!」
「いや、北川さんの感想はそのままお客様の感想だから」
「もう少し考える」
「北川さんありがとう」
「いえ……」
こんな私の意見でも役に立ったなら嬉しいな。
「あの横山さん、それで思い出したんですけど、花の装飾のカタログをもらったんですけど要りますか?」
「ほんとに? ありがとう。是非見たいな」
「じゃあ今度お持ちします」
良かった! 余計なお世話じゃなくて。
「ねえ北川さん、七原の駅に行ったことある?」
「はい。七原に映画を観に行ったことがあります」
「去年七原駅の近くに新しいカフェがオープンしたのは知ってるかな?」
「いえ、知りませんでした……」
「お願いがあるんだけど、そのカフェに一緒に行ってくれないかな?」
「え?」
「うちの新店も七原駅なんだ。北口と南口だし、あっちは駅から少し歩くから真っ向から争うわけじゃないけど、気になるからさ」
「そうですね……」
「男一人で入れる雰囲気じゃないんだよね。女性をターゲットにしたパンケーキメインのカフェだから。本当はレストラン事業部の人と行くつもりだったけどスケジュールが合わなくて。同僚と行くのも男だけだと浮くし、一緒に行ってくれる女の子がいなくて」
「私でよければ」
「助かるよ! ありがとう」
こちらこそ、横山さんとカフェに行けるなんて。
「あ、じゃあ連絡先教えて」
横山さんはスマートフォンを出した。
「すみません、私今携帯置いてきちゃって」
「じゃあ僕の教えるよ」
近くにあるメモ用紙に番号とアドレスをすらすらと書いて私に渡した。
「後で送っといて」
「ありがとうございます」
私はメモを大事に握った。
社用携帯じゃない、プライベートな連絡先だと思ってもいいかな? それを教えてもらって、浮かれてもいいかな?
ピリリリリリ
横山さんの携帯の着信音が調理室に響いた。
「ごめん、出てくる」
そう言うと横山さんは調理室から出ていった。
私もそろそろ戻ろう。
「北川さん雰囲気変わった」
突然主任が私に話しかけた。
「え? そうですか?」
「前よりも明るい」
それはよく言われることだが、主任にまでそう言ってもらえるとは思っていなかった。
「ありがとうございます」
「でも中身は変わらないね。真面目で」
それは褒めているの? 嫌みなの?
感情を出さない主任の表情からは判断ができない。
「横山さんはああ見えて結構だらしないから、そこは気をつけて」
「……はい?」
横山さんがだらしない? そんな風には見えないんだけど。気をつけてとはどういう意味?
「あの……」
「横山さんに高いメニュー奢ってもらいな」
「あはは……そうですね……」
主任の言葉は簡略すぎて何が言いたいのかはさっぱり分からなかった。
帰りの電車に乗っている時も、夕ご飯を食べている時も、お風呂に入っても落ち着かない。
横山さんにいつメールを送ろう……。早すぎてもがっついてるみたいだし、遅すぎても迷惑だよね。
短文のメールなのに悩みながら送信した。
プライベートで男の人にメールを送る機会が滅多にない。こんなことで悩んでしまう自分が悲しい。
数分して横山さんから返信が来た。
昼間話したカフェには日曜に行くことになった。口約束じゃなくて実際に待ち合わせの時間まで決めることができた。
休日にも横山さんと会えるのは嬉しいけど今から緊張する。
今日はなんて良い日なんだろう。横山さんとメールができて、一緒に出掛ける約束まで。
嫌なことの後には良いこともあるもんだな。
七原駅のトイレで入念にメイクと服をチェックして、横山さんと会う改札前まで歩いた。
待ち合わせの15分前だというのに横山さんは既に待っていて、歩いてくる私を見つけると安定の爽やかな笑顔で迎えてくれた。スーツ姿しか見慣れていないため、私服の横山さんは新鮮でいつも以上にかっこよく見える。
「休みなのにごめんね」
「いえ、パンケーキ好きなので楽しみです」
お昼前にカフェに着いても、休日だからか店内は満席に近かった。
元々七原駅は周辺に商業ビルが多く、映画館や公園もあり利用者の多い駅だ。住宅地近くにあるこのカフェは学生や主婦に人気のようだ。
「北川さんは好きなの頼んでね。今日は僕の奢りだから」
「いえ、そんな! 自分で払いますから」
「遠慮しないで。一緒に来てほしいってお願いしたのは僕だから」
「じゃあお言葉に甘えて」
メニューには複数のパンケーキとデザートが並び、メインではないパスタの写真までが美味しそうに載っている。
私はベリーパンケーキを頼み、横山さんはサーモンとほうれん草のパスタを頼んだ。
店内を見渡すと女性客やカップルが多い。私と横山さんも今はカップルに見えているのだろうか。
パンケーキとパスタがテーブルに運ばれてくると横山さんは「マナーが悪くてごめんね」と言ってスマートフォンで写真を撮り始めた。
「パンケーキも撮りますか?」
「うん」
私は横山さんに向けてパンケーキのお皿を動かした。
一通り撮り終わると「ごめんね、行儀悪くて。参考資料に保存しないといけなくて」と申し訳なさそうな顔をする。
「いえ、気にしないでください」
彼は今日仕事で来たのだから。私は横山さんの邪魔をしてはいけない。
「北川さんが一緒に来てくれて助かるよ。僕一人だと写真撮るのも撮りづらいし」
「確かにこのお店では浮きそうですね」
とは言ったけど、横山さんが一人でパンケーキを頼んで写真を撮っていたら、見た目とのギャップで可愛らしいかもしれない。
「いただきます」
イチゴとブルーベリーに彩られ、ソースがかかったパンケーキはふわっとしてとても美味しい。
「すごく美味しいです」
そう言って横山さんを見ると、私をじっと見て微笑んでいる。
「よかった」
ああ、だめだ……目が合わせられない。
今までの私からはこの状況はとても想像できない。社内でも人気の横山さんとプライベートで会って食事してるんだもん。
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