怯える猫は威嚇が過ぎる

涼暮つき

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繋いだ手のその先に

繋いだ手のその先に⑦

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「葉山さん……これ、シャツ取って」
「腕、痛いのか?」
「俺ばっかり好きにされるの嫌なんです。俺だって触りたい」
 そう訴えると、葉山が仕方ないなというように暁人の腕からシャツを引き抜いて自由にした。
「葉山さん」
 大きく腕を伸ばすと、葉山が暁人の意図を汲むように身体を屈めてくれた。彼の首に腕をまわしてしがみつくと、葉山がそのままゆっくりと身体を起こした。
 そのまま葉山のシャツの裾を引っ張り上げて彼を半裸にする。そのまま唇を重ね、葉山の肌に触れると彼の身体がしっとりと汗ばんでいて暁人の手のひらに吸い付いた。キスをしたまま彼の下半身に手を伸ばすと、葉山のほうもかなり興奮しているのか股間がはち切れそうなほどに勃ち上がっていた。
「痛てぇ……」
 葉山が顔を紅潮させ、熱い息を吐きながら呟いた。
 ──興奮してくれている。
 暁人は葉山のベルトに手を掛け、下着まで全て剥ぎ取った。葉山のむき出しになった屹立が彼の激しい欲情を証明している。
「我慢できないんで……このまま入れていいですか?」
 暁人が葉山の上に跨り、彼の今にもはち切れそうなものを手で支えて自分の疼きの奥に導くようにあてがった。
「──っ」
 先が当たっただけですでに気持ちいい。暁人がゆっくりと腰を落としていくと葉山が僅かに息を止めた。
 暁人が葉山のモノに押し上げられている感覚と、葉山が暁人の中に押し入っていく感覚が重なり合って「はぁ……」と漏らした声は同時だった。息苦しいような圧迫感とともに、彼が自分の中にいるという征服感に似た興奮に身体が震える。
「……ヤバイ、おまえの中。すげぇ締めつけてくんだけど」
「……ぁ、はぁ」
「動くぞ」 
 言葉とともに葉山が身体を揺らした。彼の動きが激しくなるにつれ繋がりが深くなり、その幸福感に涙が出そうになる。
 葉山が動きを止めて暁人をベッドの上に降ろし、腰を持ち上げた。暁人の太腿を裏側から押さえ、何度も何度も激しく腰を打ち付けるたびに暁人の口の端から
「あっ、あ、ああぁ、ああ、っ」
 甘い切れ切れの吐息が漏れた。葉山の手に汗が滲み、額からも汗が滴る。見上げた彼の表情が興奮に紅潮しているのを見て喜びが溢れた。
 自分だけでなく、葉山もちゃんと感じてくれているんだ。それだけで、嬉しかった。
 愛のないセックスは今思えばただ虚しいだけだった。ほんの一瞬満たされたような気になっても、結局なにも残らない。愛し、愛され身体を繋げることが、これほどの幸福感と快感をもたらすものだとは──。
「気持ち、いいっ、……もっと、葉山さ……っ」
「煽り上手だな、柴。もっと奥当たるようにするか?」
 そう言った葉山が息を弾ませて額に汗を光らせながら身体を起こし、暁人の身体を横向きに変えた。上になった暁人の左足を葉山が腕で抱えるようにして、さらに激しく腰を打ち付けた。
「あっ、や。んっ、……ああっ、あ」
「また、泣いてるぞ?」
「葉山さんがっ……奥ばっかりするからっ、ん」
「泣くほど気持ちいいってことか」
「……気持ちいいっ、葉山さんのっ」
「じゃあ、もっと気持ちよくなれ。俺も、おまえの中よ過ぎてもう……」
 激しく身体を揺さぶられながら、快感の波にのまれる。自分を見下ろす葉山の表情が大きく歪んで、小さな呻き声とともに熱い息を零して身体を震わせたところまではなんとなく覚えている。



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