怯える猫は威嚇が過ぎる

涼暮つき

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繋いだ手のその先に

繋いだ手のその先に⑥

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「……葉山さん?」
「これで動けないな」
 そう言った葉山がにやりと笑って、暁人の首筋や脇にいくつもキスを落としながら両手の指で胸の小さな突起を弾いた。
 葉山に触れられているというだけで気持ちよくなってしまうのに、両手を拘束されて抵抗も叶わない。両手が不自由であることで興奮が増し、胸を何度も何度も指の腹でこすられているうちにその摩擦で先がひりひりしてくる。ひりひりとしたところをさらに指の先でつままれて、捏ねられているうちに胸の先がますます過敏になっていく。
「待って。胸ばっか……やだっ」
「柴は待ったが多いな。嫌なんて嘘だろ。触って欲しそうに立ってるぞ」
 そう言った葉山が指を離し、ふっと胸の先に息を吹きかけた。
「……っ」
 葉山の言う通りだ。触れられていないのに、先がじんじんする。
 やめてほしいと思っていたはずなのに、今度は触って欲しくて刺激を求めて身体が疼く。
「なにもじもじしてんだよ」
「だって……っ。葉山さんが変に弄るから、胸疼いて……っ」
「そりゃ、辛いな。どうして欲しい?」
「……さ、触ってほし……」
 暁人が最後まで言い終わらないうちに、葉山が暁人の敏感になった胸の先に吸い付いた。
「……ぁあ」
 それまでさんざん弄られて敏感になったところを舌で転がされ、ときに歯を立てながら執拗なほど休みなく与えられる刺激に、身体の熱が一気に一点に集まって来るのを感じた。
「待って……そんなにしたらっ、ぅ」
 激しい刺激に耐えきれなくなった暁人の身体はついに限界を迎え、自分の意思とは関係なく大きく跳ねあがった。
「ああっ、──っ!」
 葉山と身体を重ねるようになった初めの頃は、毎回葉山が自分に反応してくれるかどうかが怖くて、暁人のほうから彼の身体に触れていた。
 自分の愛撫で葉山が反応してくれることで安心感を得たかったというのもあるが、暁人自身が葉山の身体に愛撫を施すことが嬉しかったし、彼が感じてくれている表情を見ることでも興奮した。
 彼を気持ちよくしたい、気持ちよく感じている顔を見たい。これまで自分が気持ちいいかどうかが最優先だった行為に、自分を差し置いてでも相手に──といういままでになかった感情が生まれた。
 好きで、好きで。触れたくて、触れられたくて。
 もっと、もっと──と、相手を求めずにはいられない貪欲な感情が生まれてくる。
 そうして何度か身体を重ねるうちに、自分が握っていた主導権を葉山に奪われることが増えた。
 元々何でも器用にこなす葉山は、対男とのセックスを覚えることも早かった。
 いつのまにか暁人の身体の敏感な部分を把握し、巧みにそこを攻めたてる。元々胸なんて敏感ではなかったはずなのに、彼に弄られているだけで、身体中が震えるほど興奮が高められていく。
「胸だけで前までビンビンだな? こっちも一緒に触るか?」
 葉山が暁人の下着の上から暁人の硬化した部分を手のひらで刺激した。すでに痛いほど勃ち上がったそこから先走りが溢れ下着を湿らせているのが分かる。興奮が高まると厄介なのは後ろも疼いて仕方がなくなることだ。興奮して身体が敏感になればなるほど、彼によって刻まれた感覚が鮮明に呼びおこされる。暁人が堪えきれなくなって小さく腰をよじると、それに気づいた葉山の手が太腿を撫でそのまま臀部へと移動した。
「柴は、前よりこっちか。後ろも触って欲しいって?」
 葉山が耳元で囁きながら暁人の下着に指を掛け、そのまま下へずらした。
「ちょっ、待っ……」
 いつの間にかベッド横のチェストからローションとゴムを取り出していた葉山が、すでに慣れた手つきで手のひらにローションを垂らし、汁気をたっぷり含んだ指で暁人の疼いた部分を刺激する。入口付近で指を浅く抜き差しされているうちに身体が小刻みに震えていく。ほとんど音にならないような短い声を発しながら、縋るように葉山を見ると、少し興奮たように息を吐く姿に暁人の興奮もますます高まって行った。
「──っああっ」
 依然、シャツで腕を拘束されたままの暁人の両手が不自由なことを利用して、葉山が普段より大胆に身体に触れる。暁人の後ろをわざと音を立てて弄りながら、容赦なく首に噛みつき熱い舌で耳の中を犯す。
「あっ、う、イっ……」
 耳の中で響く艶めかしく湿った音に、足元からぞくぞくとした感覚が這い上がって来て、思わず身体を震わせた。
「やだっ、それ……イきそっ、葉山さん……っ」
「後ろだけで? 前、ほとんど触ってないのにな」
 身体を重ねた回数はそれほど多くない筈なのに、順応力の高い葉山に主導権を握られ自分が葉山を気持ちよくしたいと思っているのに、ここ最近は気持ちよくされてばかりだ。


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