──だから、なんでそうなんだっ!

涼暮つき

文字の大きさ
上 下
2 / 15

第二話

しおりを挟む

『フレリアぁ、シよう。』
「何をですか…って、《剣精サマ》ではないですか。ご無沙汰しております。」
『そう、そう、それや。わいの惚れたんは、その笑顔や!』

フレリアはわいの言葉に首を傾げる。
かわいい! 好きだ!! いつか抱きたい!!!
わいは前世の記憶を振り返った。

わいの前世での記憶は、高3の夏までやった。
それ以降は受験勉強やら部活引退やら諸々あって、記憶の濃度が薄い気ぃがするんや。

それが、たった11ヶ月しか違わない癖にまだ高2で青春真っ盛りな弟がやっていたゲームで、わいの記憶はバラ色になった。

恋をしたのだ。

ゲームのヒロイン、フレリアに。

フレリアは、最終的には登場人物の男という男に抱かれる。

ロマンチックだったのは僅かで、酷かったり、激しかったり、変態チックだったり、性奴隷のようだったり、いろいろな方法でヤられ、喘いでいた。

でも、わいが好きになったのはエロシーンやない。その前の、相手役の男達と恋に落ちて、だんだんその気持ちを意識し、告白するまでの期間の、恋するフレリアに恋をしたんや。

それで、わいの成績は大変なことになった。

高3の夏休み直前、希望していた5番目の学校まで全てが圏外になった。
でもわいには、後悔などなかった。

フレリアの恋を見守ることだけが、わいの生きる希望やったからや。

でも、思えば《見守り方》があかんかったんやろう。
わいは、弟がプレイする画面の中のフレリアに恋をしていたから…

ある日、弟が言った。
わいのことを《キモい》と。
そんなに気になるなら、自分でゲームを買ってプレイしろと。

その日は朝からクーラーの調子が悪くて、室内は室外と同じくらい暑かった。
やから、たぶん弟もイラついていたんやろう。

どこからかナイフを取り出すとわいの胸をぷすりと刺し、そのまま引き抜いた。

弟は、あんなに震える手ではナイフを掴んでいられなかったのだろう。
その場にナイフを落とし、奇声を発しながら玄関を飛び出した。



わいは、その場で膝をつき、そのまま横に倒れた。
目の前には、わいの血の付いたナイフ。

もうダメだと思ったその時、わいの頭に走馬灯のように駆けたのは、フレリアと、一番応援していた《剣聖》と呼ばれていた攻略対象の騎士のスチル。

「生まれ変わったら、フレリアのいる世界に行きたい。《剣聖》と呼ばれる強い男になって、フレリアをあいつらから守りたい!」
『よし、その願い、儂が叶えてやろう。』

目が覚めたら、フレリアのいる世界で《剣精》になっていた。

──神様よ、《ケンセイ》違いやろうが!!!

わいがこの世界で最初に叫んだのは、この言葉だった。






で、それからウン100年…
わいはとうとう、フレリアに出おうた。

それにフレリアは、わいにキッスもしてくれた。

わいは《剣精サマ》の持つ様々な力を使って、フレリアを守った。

ケド、やっぱり実体をもっとらんのは不利や!
結局、将来の《剣聖》にフレリアを取られてもうた。






『フレリア、好きやで!』
「《剣精サマ》、まさか今日でお別れですの? フラグ立ってません?」
『わいは消えん! フレリアをイかすまでは!!』
「はぁ。でも《剣精サマ》、私をイかせてしまえば消えてしまうかもしれませんわ。でもそれは嫌。いつまでも、愉快な話し相手になってくださいませんと。」
『フレリア~! わかった。わいはフレリアをイかせん!』
「はい、言質、頂戴致しました!!」
『なんやと? でもイかせんでも、キスくらいはしたる!』

チュッ

「…んっ……あんっ! どこにキスしてるの!」

「いやぁ~んっ!!!」

バシッ

『あう~っ』

フレリアのビンタは、今日も強烈だった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あの頃の僕らは、

のあ
BL
親友から逃げるように上京した健人は、幼馴染と親友が結婚したことを知り、大学時代の歪な関係に向き合う決意をするー。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

目標、それは

mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。 今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト

春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。 クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。 夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。 2024.02.23〜02.27 イラスト:かもねさま

処理中です...