βの俺が、αのアイツに愛されるまで。

庵慈莉仁

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βの俺が、αのアイツに愛されるまで。

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 初恋は実らない。っていうジンクスは、本当だと思う。
 そう思っている自分をより納得させようとその理由を幾つも探してみたが、結局は恋愛経験が浅くて相手との距離の詰め方が解らなかったり、逆に詰め過ぎたり……。ネットではそんな答えが多かった。
「……そういう事じゃねぇ~んだよなぁ……」
 ボソリと呟いた俺、安藤奏汰は溜め息を吐き出しながらスマホの画面を暗くする。
 俺とアイツの理由はもっと単純なようで複雑だ。
 それはアイツ、宮本冬悟がαで俺がβだから。
「その理由で……って答えは、どこにも無い……か」
 いくらネットで調べてみても、バース性でのそういう恋愛事に関して出てくるのは、αとΩに対してのみ。やれ、運命の番がどうのこうのとか、魂の番がどうのとか……。都市伝説的なαとΩのそれらをロマンティックに煽る文言だけがピックアップされていて、所詮βはいつも弾き出されてしまう。

 この世界には男女性の他にバース性と言われる特殊な性が存在する。それはα、β、Ωと言われる性で、その中で一番数が多くノーマルなβに俺は属している。
 αとΩにはそれぞれ特徴があり、お互いに体内からフェロモンが放出され番相手を探す事だ。番とはαとΩにしか無い特別な事柄。お互いから出るフェロモンに反応してαがΩの項を噛むと、その二人は番関係になる。それはノーマルのβに置き換えれば婚姻関係によく似た行為だが、一度でも番関係になったαとΩは離婚みたいな事が出来なくなり一生を添い遂げる。
 まぁ、詳しく言ってしまえば一生を添い遂げ無い事もあるが……。中には犯罪行為で誤って番ってしまった場合や、αからの申し出で番関係を解消してしまうって事も少なからずあるからだ。けれどそうなってしまった場合、負担が大きいのはΩ。
 一度番ってしまったΩは相手にしか発情しない特性を持つ。Ωには三ヶ月に一度一週間程度の発情期と呼ばれる期間があり、番関係が解消されたとしても一度番ったαに対してのみ発情する。なので他のαとは一生番え無いってワケ。解消されたαを想って、もて余す熱を自分で処理するしか無くなる。他のαが体に触れても嫌悪感から嘔吐したり、精神的に衰弱してしまうとか……。αは番を解消しても他のΩとまた新たに番関係を築けてしまうのに……。
 けれど俺はそれでも凄く羨ましいって思ってしまう。犯罪行為で無ければ、βの婚姻関係よりも強固に好きな人とずっと一緒にいれると保証されてるみたいなものだ。
「……俺がΩだったら……」
 なんにも気にせず冬悟と番えたかもしれない。
「まぁ……無理なんだけどさ……」
 重く長い溜め息を吐き出しながらボソリと呟く。
「何お前、溜め息なんか吐いて」
 突然ガバリと肩に腕を回され、俺は飛び上がらんばかりにビクリと体を揺らす。声のした方へと顔を向ければ山内洋介がニヤついた表情で俺を見ている。
「なんだ、洋介か……」
「なんだってなんだよ、失礼な奴だな。宮本じゃ無くて残念だったか?」
「ちょっ、と黙れよッ」
 今は昼休み。ボーっと一人大学のテラスでスマホをいじっていた俺に声をかけてきたのは、見た目αなΩの洋介だ。
 洋介との関係は俺が大学に入学してしばらく経った頃、誰彼構わず遊びまくっているΩがいるという噂を耳にして、俺から洋介に声をかけた事で始まる。それは冬悟に対して長年積もっていたクソデカな感情と欲を誰でも良いから解消して欲しかったという気持ちからだ。好都合な事に洋介はΩだがタチで、昔から抱かれたいと思っていた俺には好都合な相手だった。
 ………ケドまぁ、結局のところ洋介とはそんな関係にはなっていない。
 俺から声をかけて、ホテルには行った。それは本当だ。交代でシャワーを浴びて準備も万端だった俺だが、いざしようとする体になって、俺が怖くて出来なくて……泣いてしまったのだ。
 洋介も泣きじゃくる相手に手を出そうとは思えなかったのか、それから友達として付き合いが始まった。
「昴君は?」
「もう少しで来るけど」
「そか」
 この見た目αな洋介には、運命の番がいる。それは本郷昴君。二人はこの大学で出会い、最近付き合う事を決めたらしい。詳しい事は知らないが、ここ最近洋介の奴がパタリと遊ぶ事を止めてから取り巻きだった連中がブーブー文句を言っていたのは知っている。そして昴君も突然、今まで野暮ったい感じだったのをイメチェンして、α然としているところを見ると、二人の間で色々とあったんだなと……。それにいつの間にか洋介の取り巻き連中があんなに文句を言っていたのに、一切洋介に絡まなくなったから……。
 どういう理由でそうなったのか知りたい反面、怖くて聞けない。
 俺は周りから洋介と体の関係があるのに今でも仲良くしている唯一のβだと思われているみたいだけど、本当の事を知っているのは俺と洋介位だし、当人同士が余りその噂に興味が無いから気にせずに、今まで通りの付き合いを継続中だ。
「いい加減お前、宮本に告ったら?」
 呆れた溜め息を吐き出しながら、俺の目の前に座った洋介が呟く。
 洋介には俺の想い人が誰なのかは知られている。それは、最初のラブホで泣いて出来なかった時に俺の心の内を洋介に吐露したからだ。流石に冬悟だとその時名前までは言った事は無かったが、洋介が昴君とまとまってから数日後洋介に俺の想い人が冬悟だと告白した。
 なんでそのタイミングだったかと言えば、昴君と冬悟が仲が良かったから。
 お互いにα同士でそのバース性にしか解らない事もあるだろうし、同じ講義を取ってる事も多かった。昴君が洋介とまとまるまでは、もしかしたら冬悟と昴君がくっ付く可能性だって無きにしもあらずなワケで……。
 そりゃぁ、昴君は洋介の運命の番なんだから、冬悟とどうこうなるって確率は限り無く低いって解ってはいたケド……、何がどう転ぶかなんて誰にも解らないだろ?
 洋介は俺の想い人を知って、何故か凄く嬉しそうに毎回「早く告白してくっつけよ」なんて軽く言うようになっていて……。
 それが出来たら俺だってこんなに悩んでね~よッ!!
 俺は正面に座った洋介の台詞にジロリと奴を睨み付け
「そんなに簡単なモンじゃね~から」
 唇を突き出して文句を言うみたいに呟いた俺は、洋介のはるか後ろから昴君と冬悟が一緒に近付いて来ているのを目視するとガタッと席を立って
「俺、もぅ行くわ。昴君に宜しく言っといてな!」
 と、洋介に片手を上げる。俺の行動に洋介は一度俺の視線を追って後ろを振り返り
「別に行かなくても良いだろ? 一緒に昼飯食おうぜ?」
 俺の顔を見ながらニヤニヤと口元が歪んでいる奴に、俺は小声で「うるせー」と呟いてその場から離れた。
 スタスタと歩いている自分の後ろからタッタッタッと小走りに近付いてくる足音に、俺の口は微かにニンマリと持ち上がる。と
「奏汰、一緒に昼飯食べよう」
 ポンと肩を叩かれ俺の歩調に合わせるように並んだ体躯が、顔を覗き込むように少し屈み俺と視線を合わせてくるので、俺もそちらに視線を泳がせ
「冬悟……、洋介達と約束してたんじゃないのか?」
 幼馴染みの顔を見詰めながら答えた俺に、冬悟はハニカミながら
「あの二人の邪魔をするのは野暮だろ?」
 と、答えが返ってくる。
 まぁ、最近上手くまとまった奴等と一緒に飯を食うのもアレか……。と納得して
「学食行こうぜ」
 そう答えた俺に冬悟はニコリと笑って、一緒の歩調で歩き出す。
 大学には学食とカフェがあるのだが、カフェは女子の比率が多く、またΩも多くいる。出来る限り、Ωと冬悟が接触しないようにってワケでも無いが……、冬悟と一緒にいる時は極力学食の方へと足が向いてしまう。
 学食に着いて食券を購入してから配膳の列に並ぶ。と、途端に視線とコソコソと囁く声が聞こえてきて……。
『ヤバ~……宮本君なんだけど……』
『学食来ててラッキー』
『格好良い~……』
 折角カフェを回避してもこの始末だ。
 冬悟はモテる。αとか幼馴染みとしての欲目を差し引いても目立つ部類に入る奴だ。身長は外国人かと思うほど高く俺よりも十五センチも高い百八十五あるし、顔も切れ長の奥二重にシュッとした鼻梁でバランス良く整った唇。デカい体躯から伸びた手足はモデルか? って位に長いし、昔から護身の為にやっているキックボクシングで無駄の無い筋肉が綺麗にのっている。好きなブランドは無いらしいケド、自分の兄から定期的に貰っていると言っていた服はセンスの良い物ばかりで、冬悟に良く似合っているし、髪型も美容師の兄に強引にやられると言っていても、毎回冬悟の魅力を引き出すのに申し分無い仕上がりで……。それにプラスアルファ、αという数少ないバース性が加わってみろ、Ωじゃ無くても誰だって冬悟に惹かれるだろ?
 で、その隣にいるのが、何の変哲も無い普通のβの俺。
 身長は百七十で平均位だが、顔面はモロ平凡。二重の目は小さ過ぎないが大きいワケじゃ無し、鼻も平均的な高さなのか? でも少し団子っ鼻っぽいのはコンプレックスだ。口も薄くは無いけど少し小さいと思う。服装は当たり障りなくファストファッションでまとめて、髪も美容院では無く近所の散髪屋。馴染みのおっちゃんにいつもお任せで切られてるから、大体いつも同じ感じで……。
 実家は自営業で、普通からしたら裕福の部類に入るんだろうけど、如何せんβの俺に服や髪型を着飾っても……と思ってしまう自分がいる。
 周りからしたらザ・平凡の俺がハイスペックなα様の隣にいつもいるっていうのは、不思議でしょうがないはずだ。
 ホラ、現に今も……
『隣……またいるよ……』
『洋介のセフレでしょ?』
『今度は宮本君狙いって事?』
『タチ悪~……』
 聞こえてます。ハイ、聞こえるように言ってるんですよね?
 洋介のセフレっていうのは本当は違うが周りからすればそれは事実……。体の関係なんて無いんですって言ったところで、誰も信じてはくれないだろうから今更何も言わないが、冬悟狙いって……。
 俺は昔、冬悟からの告白断ってんだぞッ!! って言ってやりたいよ。
 配膳のお盆におばちゃんが次々におかずやらご飯やらを乗せてくれて、俺は無言のまま列から解放されると、スタスタと空いている席を探す。奥の窓際の席が空いているのを見付けて、そちらに足を向けると
「宮本君、一緒にお昼どう?」
「ここ、席空いてるよ?」
 なんて、後ろから次々に声をかけられている冬悟がいる。俺はいつも通りそんな冬悟を無視していると
「悪いな、奏汰と食べるから」
 笑顔で断っていると解る声音が聞こえ、俺は唇に力を入れてしまう。力を抜いてしまうと絶対ニヤけた顔になってしまう自信があるからだ。
 俺が席に着くとすぐに正面に冬悟が座るので
「良かったのか?」
 他の人と食べなくて。とまでは言わない俺に、一瞬冬悟は嫌そうな顔を向けると
「毎回聞かなくても、解るだろう?」
 と、俺と同じで決まった会話のやり取りをする。
 そうやって冬悟からの言葉を聞いて、俺はいつも安心して箸に手を付けるのだ。
 いつものようにお互い無言で飯を食っていると
「今日もお前の家、行くからな」
 あらかた飯を食べ終わり水を飲み干した冬悟からそう言われ視線を上げれば、優しい眼差しで俺を見詰めている表情があり、俺はパッと視線を外すと
「……、何か最近来るの多くね?」
 ボソボソと呟く俺に、冬悟は苦笑いを浮かべながら
「だったら、ちゃんとまともな食事しろよ」
 と言ってくるから、俺は口を尖らせ
「料理が破壊的に出来ないの知ってるだろ?」
 拗ねるように言った俺に対して、冬悟は何か思い出したように可笑しそうにプッと吹き出すと
「まぁお前、昔卵をレンジに入れて爆発させてたしな」
 俺の黒歴史をサラリと言われ、俺は自分の顔が赤くなるのを感じながら眉間に皺を寄せ
「お前ッ! まだその話引っ張るのかよッ」
「何気にアレは目の前にいた俺がトラウマになったからな……だから飯食わせてやってんだろ?」
 中学の時に俺の実家で冬悟と二人きりの時、腹が減ってた俺は簡単なものでも作ろうと一人キッチンに立っていた。冬悟はリビングでスマホを弄っていて、パパッと何か作ろうとした俺の行動を見ていなかった。暫くして何気にスマホから視線を上げた冬悟から
『何作ってる?』
 と、問われたので
『茹で卵』
 と、返した俺にしばしの沈黙。
 キッチンではレンジの音だけ鳴っていて、お湯を沸かすガスや鍋の中のお湯が沸騰する音がしなかった為に、ガタッと焦ったように立ち上がった冬悟が近付いてレンジを覗き込んだ瞬間にバンッ! と卵が破裂した。
 その後で延々冬悟からの説教。
 そりゃぁ目の前で卵が破裂したのがトラウマになるのは解るけど、俺だってその後の説教はトラウマだ。
 冬悟的には食パンをチンしていると思ってたらしい。
 俺はその失敗から怖くてあんまりキッチンに立つ事をしなくなった。だから大学で一人暮らしを始めても自分で料理を作った事は全く無いし、しようとも思わない。まぁ、冬悟が作りに来てくれる時は隣に立って野菜をむしったりはしているが……。
 反対に冬悟は、元々なんでも器用にこなしてしまう事もあって料理の腕も半端無い。
「けどさ、冬悟だって色々予定あるだろ? こんな頻繁に来なくても、コンビニとか外食とか……俺、大丈夫だけど……」
「何言ってんだ、お前今からそんな食生活じゃ将来早死にするぞ?」
「早死にって……」
 縁起でも無い事言うなよ……。と口の中でモゴモゴと喋る俺に
「お前に拒否権はねぇからな」
 クイっと顎で言われてしまえば、もう言い返す事も出来ない。冬悟はこうと決めたら絶対に曲げない頑固なところがあるから。
 破壊的に料理が出来ない俺を心配して、冬悟は頻繁に飯を作りに来る。大学に入学してそれぞれ一人暮らしを始めたタイミングからそれは変わらない。
 俺は、はぁ~。と溜め息を吐き出して今日は一緒に帰るのか、後から冬悟が一人で俺の家に来るのか確認を取ろうとして息を吸い込んだが
「宮本君、今ちょっと良いかな?」
 俺達が飯を食っているテーブルに、何人かの女子が集まって冬悟に声をかけてくる。その雰囲気から、声をかけてきた子が冬悟に告白でもするんじゃ無いかって安易に予想できてしまい、俺は気不味さに上げていた顔を下に向け吸い込んだ息を細く吐き出した。
「今は無理って、状況見て解らないかな?」
 そう静かに返した冬悟をチラリと前髪の間から盗み見ると、口角は上がっているのに声と目は笑っていない表情が見えて、俺はギクリとする。
 ヤバイ、この顔は怒ってる。
 俺は冬悟から女子達へと視線を移すと、女子達もまた冬悟が怒ってると感じ取っているらしく、チラチラと俺の方へと助けを求めるように視線を投げ掛けてくるから……、俺は自分のトレーを持ちガタリと席を立つ。
「奏汰?」
 席を立った俺に、冬悟は何をしているんだ? という顔を俺に向けてくる。だから俺はニカリと笑って
「ちょっと呼ばれてたの思い出したから、先に行くな。お前はユックリすればいいから」
 と、冬悟に一言言って俺はその場から離れる。
「ちょっ、奏汰っ!」
 背中に冬悟の声が当たるが、俺は振り返らずに学食を後にする。暫く歩いて大学の中庭へと出ると、近くにあるベンチに腰掛け溜め息を吐き出す。
 さっきも言ったけど、俺は昔冬悟に告白されている。あれは、俺達が高校を卒業する少し前だ。
 俺も冬悟の事が昔から好きだった。だから告白された時は夢かと思うくらい嬉しかったのを覚えている。だけど俺は冬悟からの告白を断った。
 それは、アイツがαで俺がβだからだ。
 バース性がハッキリするまではお互いに相手しかいないっていう位好き合っていたように思う。
 俺達は家が近所で、いつもお互いの家に行き来するくらい一緒にいた。俺の家も冬悟くらいじゃ無いケド父親が自営業をしていて、事業は順調。そのかいあってか裕福で、親同士も仲が良かったと思う。けれどその環境が変わったのが俺のバース性がハッキリしてからだ。
 冬悟は中学二年のバース性検査で俺達の中の誰よりも早くα性である事が解った。まぁ、両親共にαである冬悟がα以外になるなんて誰も思って無かったから、当たり前っちゃぁ、当たり前だったのだけど……。
 で、俺のバース性がハッキリ出たのは冬悟から一年遅れの中学三年の時。俺の両親は共にβだったけど、親族の中にはΩがいたから俺も淡い期待はしていた。だが、出たバース性はβで……。
 冬悟とは番え無い現実に打ちのめされたっけ。
 その時には冬悟も俺も高校から大学までエスカレーター式の学校に行ける事が推薦で決まっていて、同じ高校の違う学科にいく事になっていた。その時の俺はそれさえも苦痛だったけどさ……。
 好きな相手と同じ高校から大学に行けると、バース性が解る前までは凄く楽しみで、冬悟とも大学に入ったらルームシェアしちゃうか? なんて冗談めかして言ったりしていたのだが、俺のバース性が解ってからはそれらが全て変わったから……。
 冬悟は俺がβでも変わらず一緒にいようと言ってくれていた。大学に行っても約束してた通りにルームシェアをしようとも……。
 けど俺からその問いに首を縦に振る事は無くて……。だってどう足掻いたってこの先冬悟と俺が一緒になれる事はもう無い。βの俺では、いつか現れるであろう冬悟のΩに奪われてしまうのだから……。
 だから高校卒業間近の時に、冬悟から告白されても俺は断わったのだ。だって最終的にもっと苦痛になる事が解っているのなら、最初から無かった事にすればいい。
 それに、俺のバース性が解ってから冬悟の母親に度々嫌な顔をされていた事実もある。
「まぁ……気持ちは解るけどね……」
 冬悟の家はα同士の婚姻で冬悟が生まれた。だが、上の兄二人は父親が囲っているΩから生まれた腹違いの兄達だ。長男は今父親の会社を手伝っていて、次男は美容室を何店舗も経営する美容師だ。
 α同士の婚姻では必ずαが生まれるが、着床率が低く大体はお互いが囲っているΩにα性を産ませる事が多い。当然、冬悟の家も冬悟が生まれる確率が低かった為、Ωにαを生ませた経緯がある。
 冬悟の母親は遅く出来た我が子を溺愛していて、将来的にはαかΩと婚姻させたいと昔から言っていた。だから俺のバース性が解るまでは俺に幾度となくΩであったなら冬悟と一緒になって欲しいと言われていた。それは、冬悟が俺を気に入ってくれていたからだ。だけど結局俺はβ性だった為に、それが解ってからは俺と一緒にいる事をよく思わなくなった。
 冬悟の家に行く度に険しい表情で俺を見詰め、何か言いたげにいつも唇に力を入れていた姿を思い出す。
 ある日喉が乾いて冬悟の部屋からキッチンへと下りると、長年お手伝いをしている清美さんと冬悟の母親が俺について話をしているところを聞いてしまった。
『βと解った時点で冬悟を想うなら離れるべき』や『何人かのΩを早急に冬悟へあてがわなければ、あの子に何をされるか解らない』等。まるで俺が冬悟にとって害悪とでも言わんばかりの言い方に、俺は打ちのめされた。
 それを聞いてから冬悟の家には行かなくなったし、あまり冬悟とも一緒にいる事が無くなった。
 冬悟は相変わらず俺に近付いて来ていたが、俺があからさまに避けるようになったのだ。
 告白を断って、大学では洋介との噂も否定しない俺に、変わらない態度で接してくる冬悟。 
 諦めようと距離を空けたり、冬悟に他の人の事を敢えて良い風にアピールしているのに変わらず来られると俺も踏ん切りがつかない……。
 どうしたもんか……。と顔を上に向けて晴れ渡っている空を見上げていると、スマホがラインを告げて俺はパンツのポケットから取り出し画面を確認すれば
『十八時に行くからな!』
 少し怒っているような冬悟からの文面に俺は返信を返し、午後の講義を受ける為ベンチから立ち上がる。


          ◇


「やっぱ、告白されたの?」
 大学の講義を終えて自宅に帰った俺は、簡単に部屋を掃除していると食材を買い込んだ冬悟が到着し、キッチンに並んで一緒に夕飯を作っている。まぁ、俺は相変わらず野菜をむしっているだけだけど……。
 俺は昼に学食で女子に囲まれた後の事を知らない為、何気なく話題を振ってみるとジトッと嫌そうな視線を俺に向けながら冬悟が
「まぁ……断ったし」
 と、簡潔に答えてその話を終わらせる。
 だが俺はニヘラと笑いながら
「えぇ~、また断ったのかよ。可愛い子だったじゃん?」
 冬悟が誰かとくっついてくれれば俺もスッパリと諦められるのに……。と思っている感情は本心の為、そのまま言ってしまう。
「俺にはお前がいるのにか?」
「ッ……」
 最近の冬悟は、こうやって自分の気持ちを隠す事をしなくなった。それは洋介が昴君と正式に付き合った位から顕著に変わり始め、隙あらば俺に対してストレートに気持ちを言ってくる時もある。
「イヤ……何回も言ってるけど、冬悟はさ選り取り見取りなんだから別に俺じゃ無くて……」
「オイ、それ以上は聞かないって解ってるだろ?」
「……」
 不機嫌そうに答えながら冬悟は出来上がったおかずを皿へと移して、黙った俺に
「出来たから、テーブル拭いて箸持って行って」
 自分の側にある布巾をズイと俺に差し出す。俺は無言で布巾を取り、リビングのテーブルを拭くためキッチンから移動した。
 冬悟がなぜこんなにも俺に執着するのか解らない。今日みたいにアイツと付き合いたい、番たいっていう相手は引く手数多いるのに……。
 そりゃぁ、なまじ昔から一緒にいたから冬悟の性格だったり、癖は良く理解しているつもりだ。だから誰よりも楽でいられる相手だと自負もしている。
 冬悟の家には腹違いの兄が二人いる事で、表面上は穏やかで問題無いように見えるが、一歩懐に入ってしまえば考えられないようなギスギスした暗い部分がある事も知っている。
 すぐ上の美容師の兄とは、その兄が美容師になり家の後継者問題から離脱し独立したことで前よりも良い関係が築けていると思うが、既に父親の会社を手伝っている長男とは、当人同士云々よりもその母親同士が自分の子供を競わせるようにしている為に問題も多い。
 冬悟の父親も母親同士が歪み合っている事は知っている筈なのに、そこには興味が無いのか……それとも競わせる事でより優秀な息子のどちらかと……と思っているのか、見て見ぬ振りを決め込み傍観している節がある。
 折角裕福な環境で育ち、周りの誰よりも自由に出来る事が多い筈なのに、一番信頼出来る家族が信頼出来無いなんて環境……
「オイ、何ボ~っとしてる? 早く持って行ってくれよ」
 上の空でテーブルを拭く俺に、後ろから声がかかり俺はビクリと肩を震わせて後ろへと顔を向けると、冬悟が少し呆れながら対面のカウンターへ料理を置いているところだった。
「悪い」
 ボソリと呟きながら近付いて、俺はテーブルに二人分の料理を並べる。


 飯を食い終わって、お互いにある課題をあらかた済ませると交代で風呂に入り映画を見ている。
「冬悟お前、今日どうするつもりだ?」
「泊まる」
 映画も終盤に差し掛かった頃、チラリと時計を見れば結構ないい時間になっていて、そうだろうな。と思いながらも冬悟に尋ねれば、予想通りの返答が返ってきて俺は
「布団は自分で敷けよ」
 と、呟く。
 俺の返しに冬悟は一度俺の顔を見たが、俺はずっと画面から視線を外さない。
 きっとこうやって釘を刺しても冬悟は俺のベッドで俺と一緒に寝ると解っているからだ。
 昔からの名残で、大きくなった今でも冬悟は俺と一緒に寝たがる。それに良いのか悪いのかベッドはダブルサイズで俺達が寝たところで窮屈に感じた事はあまり無い。冬悟もそれが解っているからか、いつも俺が布団敷けよと言っても敷いた試しが無い。
 映画が終わりエンドロールを見ない冬悟は、先に歯を磨く為洗面所へと姿を消す。
 俺はちゃんと最後まで見終わってから洗面所ヘ行くと、冬悟はもう歯を磨き終わっていて
「先に行っとくから」
 と、手の平をヒラヒラと振りながら出て行く。その後ろ姿を目で追いながら、ぜってぇ今日も布団敷かないなコイツ。と心の中で思いながら、俺は歯ブラシに歯磨き粉を押し出した。
 寝室へ入ると、案の定俺のスペースを空けて冬悟がベッドで寝ている。
 俺は小さく溜め息を吐き出すと、掛け布団を剥いで空いてるスペースへと体を滑り込ませ鼻から息を吐き出す。
 隣で起きているのか既に寝ているのか解らない背中に
「お休み」
 と、小さく呟いて俺は瞼を閉じた。


         ◇


 柔らかい良い匂いに包まれている感覚に俺は微睡みながら重くなっている瞼をユックリと開く。
 実家で使っているお気に入りの柔軟剤を母に教えてもらい一人暮らしでも使っているが、その匂いでも無い。
 目の前にある良い匂いの元に鼻先を押し付け開いた視界がクリアになってくると、俺はドキリとして固まってしまう。
 抱き締められる形で冬悟と密着しているからだ。
「ッ……」
 息を呑んで呼吸が止まり、体に変な力が入ってしまう。
 ……起こさないように、ユックリ離れないと……。
 先ずは顔からと、擦り寄せた鼻先を冬悟の胸から離し肩から背中に回っている腕を退かそうとソッと持ち上げてみる。そうして自分の体をずらして冬悟と俺の間に出来た空間に持ち上げた腕を置いて、ジリジリと横を向いた態勢はそのままに足からユックリと抜け出す。
「ぅ……ン……」
 ベッドから出るとすぐに冬悟が小さく唸る。ビクビクしながらもある程度まで冬悟から背中を見せずにソロソロと歩き、ドア付近か? と予想して体の向きをクルリと変えるとすぐにあったドアノブを掴んで俺は寝室を出る。
「……ッ、ハァ~……」
 詰めていた息を吐き出し、ドアに背中をあてて額に手を置く。
 …………毎回、自分の心臓に悪い起き方をしているなと自覚しているが、無意識の自分に行動を慎めとは流石に言えない。
「てか……何であんな良い匂いしてんだよ……」
 匂いは全部同じはずだ。冬悟が着ているスウェットだって俺が洗濯している俺の物なんだから。
 自分が着ているスウェットをクンクン匂っても、いつもと同じ柔軟剤の匂いがするだけで俺は首を傾げる。
 冬悟の体臭って事か? だって風呂でも使っているシャンプーやボディーソープは同じだから、違うとすればそれしか無いが……。
「まさか……フェロモン?」
 って、βの俺にはαやΩのフェロモンを感じる事はあまり考えられない。βの中には敏感にαやΩのフェロモンを感じる人はいるらしいが、悲しいかな俺は本当に平凡なβだ。未だかつてフェロモンを嗅いだ事は無い。
「はぁ、考えるの止めよう。虚しくなるのは自分だ」
 それよりも起きてくる冬悟に美味いコーヒーでも飲ませてやるか。と、俺はキッチンに足を向ける。


 冬悟は俺が朝の用意を終わらせ、コーヒーメーカーに豆をセットしたところで寝室から出て来た。
「おはよう」
「……ウン」
 低血圧の気がある冬悟は俺の挨拶に素っ気無く返事を返し、スタスタと俺に近付いて肩に顎を乗せると
「コーヒー……」
「飲むだろ?」
「ン……」
 短く返事をしながら顎を滑らせ俺の肩口に額をスリスリと擦り付けて顔を上げると、まだ完全に開いていない目をそのままに洗面所の方へと歩いて行く。
 ……………ッ、何なんだよあの態度ッ! 普段のお前と違い過ぎるだろッ!
 寝起きの時だけ隙がありまくる冬悟は、α然としているいつもよりだいぶ幼く見える。そしてあんな風に甘えてくるアイツに、キュンキュンしてしまう俺も俺なんだが……。
 けど普段甘えてこないアイツがああやって寝起きの時にだけ擦り寄って来るのは、正直言って悪い気はしない。むしろ可愛がりたくて仕方なくなってしまう。
 あれが属に言うギャップ萌えってやつか……。クソぅっ、末恐ろしい奴だな。
 心を落ち着かせようとスーハーと深呼吸を繰り返して、食器棚からマグを二つ取り出す。
 ポットに二人分のコーヒーが落ちきったところで冬悟が洗面所から戻って来ると、先程とはうって変わりいつもの冬悟がそこにはいて
「奏汰、冷蔵庫から牛乳出して」
 なんて、すぐに俺を顎で使い出す。
 俺は冬悟の方を振り返らずにシンク横の棚に取り出した牛乳を置くと
「砂糖は? いるよな?」
 と、次いでは聞きながら冬悟が揃えている調味料棚から砂糖を手にすると顔を冬悟の方へと向ける。
「ン? あ、あぁ……」
 一瞬冬悟は焦ったような表情を浮かべるので、俺は不思議そうに視線を冬悟の手元へと移動させると、いきなり俺が砂糖は? と話しかけたからか微かにコーヒーがマグから溢れていた。
「あ、悪い」
 俺はそう言って近くにある布巾でコーヒーを拭くと
 グュッ、ルルル~……。
 と、俺の腹の虫が鳴る。
「……ッ、すぐ何か作るからお前はコーヒー持ってあっち行ってろッ」
 笑いを堪えながら肩を震わせて冬悟は俺にそう言うと、ズイと俺へコーヒーを入れたマグを差し出す。
「あ、あれがいいッ、ホットサンドッ」
 俺はニカリと笑いながらコーヒーを受け取ってリビングの方へと移動する。
 今日は確か俺も冬悟も昼過ぎからの講義だ。ユックリ朝食を摂って、多分冬悟は一度自分のマンションへと帰るだろうから、俺は冬悟が帰ったら洗濯でもしよう。


          ◇


 最近なんだか体調が思わしくない。
 季節の変わり目だからだろうか? 寒い日があったり、暑い日があったりして服装もどっちつかずな難しい日が続いている。
 食欲はある。相変わらず通い妻的な事をしてくれている冬悟の飯を毎日とまではいかないが食べているし、吐き気等も無い。ただ怠い日が多く微熱が続いているのだ。
「オイ、お前今日も熱あるだろ?」
 大学の昼休み、今日は構内にあるコンビニで昼飯を買って冬悟と二人中庭のベンチに座って昼食を摂っていると、おもむろに奴の手が俺の額に触れ、眉間の皺を寄せてそう言ってくる。
「ン~……最近ずっとなんだよな~」
「病院行ったのか?」
「いンや、ただの微熱だから解熱剤飲んでるだけ」
「酷くならないうちに病院行けよ」
「ウ~ン……」
 たかだか微熱が続いてる位で病院までは大げさなんだよな~……喉が痛いとか寒気も無いし……。
 ここ最近は学科の課題が多かったから、季節の変わり目と重なって疲れが溜まっているという可能性が大きいかな? と自分的には思っている。
「まぁ、課題も一区切りついたし寝れば治ると思うから」
「そうか……」
 俺の台詞に冬悟もしつこく言ってこなくなり、俺は頷く。
 今日は、早目に寝るかな。
「じゃぁ今日は晩飯だけ作りに行ってすぐに帰るから、早目に寝ろよ」
 心配してくれている冬悟からそう言われ、俺はプッと吹き出してしまうと
「あ? なんだよ」
 心配しているのに笑われて心外だという表情が俺を見るから
「イヤ、飯は作りに来てくれるんだと思って?」
 と、返すと
「当たり前だろ? 体調悪いのに外食とかさせたくない」
 なんて、どこのオカンだよ。とは言わずに
「フフ、そうか。ありがとな。何時頃来れそう?」
 課題にかまけて部屋の中は何時もより荒れている。冬悟にはもう見られているが、出来るだけ綺麗な場所で気持ち良く過ごして欲しい。
「ン~そうだな。今日はゼミの集まりがあるから少し遅くなりそうだけど、早目には行くつもりだから」
「え? 無理しなくて良いよ?」
「馬鹿、俺がしたいんだから良いんだよ。それにいつもよりお前の部屋からは早く帰るから睡眠時間は心配すんな」
「その辺は、心配してね~ケド……」
 そういう事では無くて、用事があるのにと表情に出ている俺の頭に手を置き
「じゃ問題無いだろ? 俺の好きにさせてくれ」
 言いながら冬悟はクシャリと俺の髪を掻き交ぜる。
「……冬悟がそれで良いなら……ケド、何かあったら早目に連絡欲しい」
「解った」


          ◇


 微熱はあるが、わざわざ冬悟が飯だけを作りに来てくれると解って、俺は講義が全て終わってから何か買って帰ろうと大学から電車に乗って街まで出る。
 まぁ、今日だけじゃ無くていつも飯は作ってくれてるし……こんな事しか出来ないからな。と自分を納得させ、わりと有名なケーキ屋へと足を運んだ。
 甘いものが苦手な冬悟も、以前一度食べた時に美味しいと言っていたチョコレートケーキを買って店を出る。
 折角余り来ない街に出て来た勿体無さから、少しだけブラブラしようと俺は歩き出す。
 冬悟から連絡が無いって事は、まだゼミの集まりで大学にいるという事だ。もし今日来れなくなっても大丈夫なように百貨店の地下に行って惣菜でも見ようと俺は近くの百貨店ヘ向かい色々と惣菜を物色する。
 もし冬悟が来ても明日まで食べられる物や余り味の濃い物は避けるか……とウロウロする。
 何店舗か回って惣菜をゲットした俺は、ソロソロ帰ろうと百貨店を後にして駅へと向かっていると、数百メートル先に冬悟によく似た人影を見付けて足を止めた。
 ……冬悟? イヤ、アイツは今ゼミのはず……。
 見間違いだと思い何歩か進んだが、今日着ていた服装そのままの人影に冬悟だと改めて確信した俺は、近くにあった自販機の影に隠れる。それはアイツが一人では無かったからだ。
 一人であれば迷わず声をかけれていたが、冬悟の隣にはボブ位の髪をした女性が立って何事か話をしている。
 女性と表現したのは、俺達と同じ位の年齢では無く少し年上だと感じたから。
 それでも二人を見てみればフランクに話している事が遠目からでも解る。だって女性は終始冬悟の体に触っていて、冬悟もそれを嫌がっている素振りはない。それに二人共仲良さ気に笑い合っている。
 大学で俺以外の奴から絡まれた時だってあんな表情は見せないのに……。見せるとしたら洋介の番の昴君位だ。
「誰……だよ」
 腹の奥から湧き上がってくる仄暗い感情に俺はキツく唇を噛み締めていると、女性が何か白い袋のような物を冬悟に渡し、次いで冬悟の服をクイッと引っ張ったかと思った瞬間、二人はキスをしている。
「……は?」
 自分の目の前で何が起こっているのか理解出来ずに、俺は停止してしまう。周りの人や雑音も聞こえなくなり、ただ鮮明に冬悟と誰か知らない女の人が口を合わせている場面だけが俺の視界をいっぱいにする。
 二人にとっては一瞬の事で、キスに満足したのか女性は冬悟にまたねという感じで片手を上げると、俺が隠れている方へと足を向けこちらに歩いてくる。俺はハッとして自販機の影から出ると、不自然にならないように歩き出した。
 視線を女性よりも遠くへ向ければ、冬悟は既に背中を向けて道の曲がり角を曲がる直前だった為、俺には気付いていない。そうしてまた俺は視線を近付いて来る女性へと向ければ、彼女は首にカラーを付けているのが目に入って……。
 -----ドクンッ。
 すれ違って行く彼女の顔を横目でチラリと盗み見て、次いでは再度確認の為に首元へと視線をずらせば、やはりアクセサリーでは無く鍵でキッチリと留められたカラーが首に装着してあって、俺はグッと力強く握り拳を作った。


 あの後、自分がどうやって部屋に戻ってきたのか記憶が曖昧だ。
 テーブルの上に投げ捨てたスマホが着信を告げて、やっと自分が部屋にいる事に気付いた。
 部屋は暗く、帰って来て電気も点けずに……と、スマホを手に持ち部屋の電気を点ける。
「もしもし」
『奏汰か? お前、ラインしたのに返信無いから心配しただろ?』
 電話口から冬悟の声が聞こえてドキリとする。
 相手を確認せずに出てしまった……。今は結構冬悟と会話するのは苦痛なのに……。
 返事を返すよりも先ず冬悟の声を聞いて胸が締め付けられ痛くなる感覚に、ハッ……と口が開くだけで言葉が出てこない。
『奏汰大丈夫か? 体調、悪化したのか?』
 何も言わない俺に、冬悟は心配そうにそう言ってくれるが、俺は絞り出すように
「……あぁ、だから今日は……やっぱ来なくて大丈夫だから……」
『は? むしろ心配だから行くぞ』
「イヤ、来なくていいから……感染っても嫌だし」
『風邪かどうかも解らないのに?』
「ッ……」
 それ以上頭の回らない俺は、上手いかわし方が解らずに黙ってしまいギュッと目を閉じる。
『……まぁ、これから行くから』
 返事が返せず、俺はそのまま通話を切ってしまう。
 明るくなった部屋のテーブルには、俺が帰って来たままの状態で、冬悟の為に買ったケーキと惣菜の袋が置かれていて、俺は力無くそれらを持ち上げると冷蔵庫の扉を開けて無造作に入れ、バタンと扉を閉める。
 フラフラと再びリビングへ戻り、カーテンを引いて寝室ヘ向かいスウェットへと着替えてからベッドヘ潜り込むと瞼を閉じた。
 何も……、今は何も考えたく無い。
 瞼を閉じれば鮮明に冬悟と女性がキスしていた場面が蘇って、パッと目を開ける。
 あの人はΩだった。アクセじゃない本物のカラーを着けていたって事は、そういう事だ。
 Ωは自己防衛の為に首にカラーを着ける。そうすれば万が一発情期になってフェロモンが出てしまっても、不用意にαから項を噛まれない。そして、番ったαからカラーを貰う場合もある。それは所有の証。
 二人はキスをしていた。それも自然に……。
 だとすれば一番考えられる可能性としては、冬悟の番……。
 今までそんな影さえ匂わせなかったのに……。何度か冬悟からの告白を断っていたが、冬悟はずっと俺の事が好きだと思っていた。だけどそれは俺の思い違いで、知らぬうちにそんな相手を見つけていたのだ。
「俺の、馬鹿……」
 大学でも他の人からのアプローチを断っていたのは、俺じゃ無く彼女の為?
 じゃぁ俺に対して思わせ振りな態度や言葉は何だったのか? 俺の事が好きだと言っている言動に、告白を断ってもまだ冬悟の一番は俺だとそれで確信が持てていたのに。
「……ッ、解ンね~よッ」
 ガバリと掛け布団を頭まで被り、もう一度俺は目を閉じる。すると
 ピンポ~ン。
 冬悟が到着したとインターフォンが鳴り、俺はビクリと体を震わせた。
 出来ることなら出て行きたくない。
 そう思っていても鳴り止まない音と、リビングに置いてあるスマホが着信を告げ、俺はノソリとベッドから這い出ると重い足取りで玄関まで行き、ガチャリと鍵を開ける。
 鍵が開いたと解り、勢い良くドアが開いて冬悟の心配そうな顔がすぐに飛び込んでくる。
「大丈夫か? 出ないから何かあったかと……」
「……大丈夫。体、怠いだけだから……」
 力無く答えて俺は一度リビングの方へ行くと、テーブルにあるスマホを手に持ち
「本当、食欲無いし……作ってくれても食べないかもだから……」
 帰って欲しい。とは言えなかった。
 そのままフイと冬悟を極力視界に入れず寝室ヘ行こうと足を踏み出したところで
「大丈夫か?」
 と、冬悟の手が俺の額へと伸びてくる。その動きに合わせて空気が踊り、フワッと匂ってきた冬悟の体臭に俺はカッと体に熱を持つ。
 その一瞬に自分の体が別人のように熱くなり鼓動が跳ね、それを知られたくなくて俺は伸ばされた冬悟の手をパシンッと跳ね退けてしまった。
「ぁ……悪いッ……」
 合わさった瞳がお互いに揺れている。
 だが俺はすぐに視線を外して
「もう、寝るから……冬悟も……」
 モゴモゴと口の中で呟き、俺は逃げるように足早に寝室へと行ってドアを閉めた。


         ◇


 冬悟がいつ帰ったのか解らない。
 ただ、キッチンの鍋にはスープが作ってあって、リビングのテーブルに
『食べれるようなら食べて、ゆっくり休め』と癖の強い字で置き手紙があった。
 昨日買った惣菜を食べれるほど食欲は無いな……。と感じ、俺は鍋を温める。
 カーテンを開けるのも億劫でそのままにし、温まったスープを皿へと入れてリビングのソファーに座ってテレビを点ける。朝のニュースがかかり、アナウンサーが色々と喋っているが俺の頭の中には入ってこない。昨日からずっと俺の中にあるのは、冬悟と彼女の事だけだ。
 ダラダラと食事をしながら、持ってきていたスマホで同じ学科の奴に今日は休むとラインして、代返を頼む。
 食べ終わり、食器を洗って再び寝室に戻って寝ようとベッドに横になるが寝れず、考え事をしたくなくてスマホでユーチューブを眺めていると、いつの間にか気を失うように眠っていた。


 今、何時だ?
 寝ている筈なのに気持ち良く起きる事が出来無い。むしろ体は前よりも怠く、熱も上がっていると感じる。
 本格的に風邪ひいたかな……?
 カーテンを閉めている為、時間の感覚が無い。怠い体をベッドから起こしてスマホに視線を落とすと、冬悟からラインが何件も入っている。
『今日大学来てないって聞いた』
『大丈夫なのか?』
『寝てんのか』
『今日も飯、作りに行こうか?』
 心配している文面に、フハッと笑みが零れてしまうが次いでは眉間に皺が寄り、俺は
『大丈夫。今日も昨日作ってもらったスープ飲むから来なくて平気』
 とだけ返して、スマホの電源を切る。そうして昨日冬悟が知らぬうちに帰ったという事は玄関が開いているのか……と気付いて、俺は鍵を閉めにベッドから出る。
 ガチャリ。
 鍵を閉めて水でも飲むかと一歩踏み出したところでフワリと良い匂いを感じ、俺はその匂いに誘われるように洗面所へと向きを変えた。
 洗面所に入って視線を彷徨わせれば、洗濯籠の中に冬悟が脱ぎ捨てたスウェットが目に入り近付いて手に取る。そうして無意識のままスウェットを鼻へあてがいスゥ~と息を吸い込めば、ビリビリと鼻孔から脳へと電流が走る感覚にペタリとその場に座り込んでしまった。
「……………え?」


          ◇


「お、久し振りじゃん。もう大丈夫になったのか?」
 大学のテラスで一人、カフェオレを飲んでいた俺の後ろから洋介が声をかけてきて、俺の真正面の席に座る。
「あぁ……」
 本当は今日も大学を休むつもりでいたのだが、提出しないといけない課題があり、それだけ提出する為に大学に来ていた俺は洋介の台詞に少しビクビクしながら答える。すると
「何お前、大丈夫?」
 あからさまにキョドっている俺の態度に、洋介は首を傾げながら再度俺に問うてくるが、俺はキョロキョロと周りを見渡しながら
「まぁ、体調は……良くなったような?」
 と、曖昧な返事を返す。
 俺はあれから一週間大学を休んでいる。今日提出する課題も、本来なら既に提出期限は過ぎていたのだが、体調不良を理由に期限を伸ばしてもらっていたのだ。通常であればパソコンから直接課題を提出出来るのだが、俺がとっている講師は、遅れた生徒については皆一律に紙で提出しないといけない事になっている。
 なぜ俺が、一週間も大学を休む羽目になったのかというと、あの日冬悟のスウェットを嗅いだ直後からΩ特有のヒート……、発情期に近い症状が出て、部屋に引き籠もっていたからだ。
 どうしてβの俺がΩの発情期に似た体験をしてしまったのか……。いくら考えても答えは出てこなかった。
 基本的にバース性は発現したらずっとその性のまま。だから俺がΩ性に変わる事は無いはずだ。だが、あの冬悟が着ていたスウェットを嗅いだ瞬間に全身の血が沸き立ち体の中心に熱がこもって、どうしようもなく淫らな気持ちになってしまった。
 スウェットを掴んだまま寝室に戻って、匂いを嗅ぎながら体の熱を発散させた。それに……信じられないが臀部の……奥の……孔、から……ッ、Ω特有の分泌液が出てきて……。
 人生で初めて濡れるって体験をした俺は、βのはずなのにと混乱していた。
 熱を発散させながも、体調が万全になったタイミングでバース専門の病院に行こうと思っていた俺は、できれば今日課題を提出した後病院へ行こうと思っている。
「本当に大丈夫?」
 洋介はガタリと落ち着けた腰を上げ俺の額へと手を伸ばしてきたが、俺が顔を反らして洋介の手から逃れると
「……ッ、は?」
 近付いた洋介が弾かれたように驚き、俺の顔を凝視する。
「……何?」
 訝しげに尋ねると、眉間に皺を寄せて
「お前……何、その匂い……」
 と、俺に聞いてくる。
 俺はその言葉にピクリと反応してしまい
「何が……?」
 きっと下手くそな笑みを浮かべていると自覚しながら返事を返すと
「俺……鼻は効かない方だけど、お前匂うよ」
 途端に声のトーンを落として俺に呟く洋介の台詞に、俺は視線を下げながら
「イヤ……気のせいでしょ……」
 自分で言いながらきっと誤魔化せてない事も解るが、それ以外に答えられずに呟き返す。
 そうなのだ、ヒートみたいな熱は治まったものの今日大学へ行く道中や、着いてからいつもは感じない視線をビリビリと感じてしまっている。
 それは同じ学科のΩの奴だったり、話した事も無いαだと言われる奴等から……。
「イヤ……気のせいじゃ……」
「奏汰、具合良くなったんだな~」
 洋介の言葉を遮って、俺達が座っているテーブルにズイッと入ってきたのは、同じ学科の加藤。
 コイツはαだと言われている……。
「ぁ……イヤ、まだ本調子じゃ無いンだけど課題提出で……」
 俺は側に来た加藤の体から匂う甘い香りに動揺しながらボソボソと返事を返し、鞄に入れていたレポートをテーブルの上へと出すと
「あ、そうなん? 良かったら一緒に着いて行ってやろうか?」
 なんて、今までコイツからそんな事を言われた事は無かったし、ましてや名前で呼ばれたのも初めてで……。
 洋介が言ってたように、俺からΩの匂いがしているのかと感じて、緊張に体が硬くなってしまう。
「だ、大丈夫……。洋介が付き合ってくれるって言ってるから……」
 吃りながらチラリと洋介に助けを求めるように視線を上げると
「ソーソー、俺が付き添うから問題無ぇよ」
 洋介もまた、俺の反応を見て軽々しくαと一緒にさせるのは良く無いと思ったのか、そう言ってくれる。だが
「え~……でもさ、Ωが二人で一緒にいても大丈夫だとは言い切れ無ぇじゃん? こんなに良い匂い撒き散らしてんだからさ~」
 と、厭らしく口元を歪めて加藤が俺の肩に腕を回し首筋に鼻を近付けてくるから、俺はビクリッと更に固まり動けなくなった。
「オイ止めろッ、奏汰が嫌がってんだろッ」
 洋介がガタリと立ち上がり、俺の首筋に顔を近付けてくる加藤を押し退けようと手を伸ばしてくれるが、それよりも早く加藤は洋介の手首を掴んで
「オイオイ、こんなに良い匂いしてカラー付けて無いって事は、誘ってるのと同じだろ?」
 ギリッと掴んでいる洋介の手首を少し捻りながら上へとあげる加藤に、痛さを我慢して眉根に深く皺が寄る洋介の表情がある。
 そもそもβの俺がΩ用のカラーなんて持っているはずは無いし、一週間熱にうなされていた俺にカラーを買う時間は無かった。
「誘ってんだよな、奏汰?」
 再び俺の首筋に鼻を近付けてこようとする加藤だったが、次いでは「ギャッ!」と短い悲鳴を上げて首筋から顔が離れる。
 仰け反った加藤の顔を視線で追うと、奴の髪が後ろに引っ張られ、その後ろに冬悟が無表情で立っていた。
「ッ!」
 一目で怒っていると解る顔付きに俺は息を呑むと
「何やってる?」
 暗く低い声で冬悟が加藤に尋ねる。それと同時に冬悟からαのフェロモンが強烈に放たれ、その圧に加藤が一瞬にして負けを認めたのか俺の肩と洋介の手首から手を離し
「ご、ごめんってッ! まさか奏汰が宮本のだとは知らなかったから」
「あ?」
 加藤の台詞に更に圧を強くした冬悟を、後ろから昴君が止めに入る。
「宮本君、もうその辺にしてあげないと……安藤君が怖がってるから……」
 昴君のその一言で、冬悟がまとっていた圧とフェロモンが柔らかくなって、加藤がその場にへたり込む。
「だ、大丈夫?」
 気の毒そうに昴君がそう加藤へ尋ねると
「ほ、本当に俺……知らなくて……」
「ウンウン、解ったから。立てる?」
 昴君が差し出した手を掴んで加藤が立ち上がると、テーブルに置いてあった俺のレポートを掴み
「お、お詫びに俺が出して来るから……ッ」
 と、早口でそう言い逃げるように俺達の前からいなくなってしまう。
「助かったわ、宮本」
 ホッとしたように洋介がそう冬悟に呟いてチラリと俺の顔を見るが、俺は何も言えずに立ち尽くしたままだ。すると冬悟は俺の手首を掴むと無言で踵を返す。
「ッ、ちょっ、冬悟ッ!?」
 半ば引きずられるようにテラスと大学を出て、俺の部屋とは逆の方向に向かう冬悟の背中に
「オイッ! 冬悟ッ」
 と、投げかけるが冬悟はこちらに顔も向けない。
 怒っているのか? その理由はなんだ?
 引っ張られながら考えを巡らすが、どれも決定打に欠ける。
 俺が逡巡しているうちに、いつの間にか着いてしまった冬悟が住んでいるマンションへと入って行く。
 こんな冬悟は見た事が無くて、俺は戸惑いながらも玄関を開けて待っている冬悟を横目に部屋へと入ってしまう。俺を先に入れると冬悟は静かに鍵を閉め、そうして無言のまま靴を脱ぐとサッサと中へと行ってしまった。
 俺も戸惑いながら靴を脱ぎ、冬悟の後を追うように部屋へと上がる。
 冬悟は寝室に入って着ている服から楽なスウェットへと着替えている途中で……、寝室のドアは開いていたから俺は顔を覗かせ
「……冬悟」
 上半身をドアから部屋の中へと少し入れ込む形で顔を覗かせた俺は瞬間、先程怒っていた時とは違う冬悟のフェロモンに全身を包まれ、立ってられずにガクガクと小刻みに膝を震わせてその場にへたり込んでしまった。
「何……ッ、コレ……」
 自分の体が自分のものでは無い感覚に、俺は顔を上げて冬悟を凝視する。
「ハッ……まじか……」
 視線を上げた先、真顔で、でも口元だけは嬉しそうに歪められた冬悟の表情があり、俺は喉を鳴らす。そんな俺に冬悟はゆっくりと近付いて指先で俺の顎を掴むと
「本当に、Ωになったの?」
 俺の目の奥まで見透かすような顔付きにドキリとしてしまうが、近付いて来た冬悟から更に濃厚なαのフェロモンが香って、俺はギュッと瞼を閉じる。
「それで? Ωフェロモン振り撒いて、俺以外のαに媚び売ってたのか?」
 俺が瞼を閉じたのが気に入らなかったのか、掴んだ指先に力を入れて一度フルッと顎を揺らされ、俺は再び薄っすらと目を開ければ
「奏汰、答えろ」
 と、怒りが滲む瞳で囁かれる。
 俺は痺れる唇をハクと動かし
「……ッ、違ッ!」
 とだけ吐き出せば、顎にあった指先を今度は手首に移動させ掴まれるとグイッと上へ引っ張り上げられる。
 力の入らない体は冬悟のなすがまま、俺はよろめきながら立ち上がり、今度は冬悟の方へと引き寄せられて肩口に頬が打つかる。そうして予告無く抱き締められたと思った次には、俺は背中に柔らかいベッドの感触を受けていて……。
「なっ……何、して……ッ」
 必死に口を動かし言った俺の唇を冬悟は躊躇無く俺へと覆いかぶさり、ガブリと噛み付く勢いでキスをしてきた。
「ンンッ……フ、ンッ……ンン~ッ!」
 突然のキスに俺は目を見開き何なんだと言いたかったのに、口を開けた途端冬悟の舌が口腔内へと侵入して、俺の舌を絡め取る。
 たかだかキスのはずなのに、じぃんと頭の芯が蕩けそうなほど気持ち良い感覚に襲われ、俺は縋り付くように冬悟のスウェットを掴む。
 その俺の行動が冬悟にしてみれば許されると思ったのか、先程よりも更に縦横無尽に舌が動き回り歯列の裏や、上顎を重点的に愛撫され俺の鼻からは甘ったるい矯声が漏れ出てしまう。
「お前は……奏汰は俺のΩだ……」
 唇が離れてうわ言のように冬悟がそう呟いた途端、シビビビビッと嬉しさに全身が震える。そうして俺の双丘の蕾からジュワッと分泌液が溢れ出る感覚。
「ハッ……ハハッ、匂いがキツくなった。嬉しい? 俺にそう言われて……」
 言いながら性急に俺が着ている服を脱がそうと、もどかしそうに両手が俺の素肌を滑る。
「アッ、……ンぅ、冬悟……」
 触れられたか所から強烈に快感が這い上がって俺は背中を弓形に仰け反らせると、たくし上げられた服から覗いた乳首に舌を這わせられる。
「ヒッ! アッ……ふう、ゥッ、とぅ、ごッ……やめッ」
「無理だよ奏汰……、やっと全部手に入るのに……」
 乳首を舐りながらそう呟かれ、俺は冬悟の顔を見ようと顎と視線を下げれば、嬉しそうにチロチロと舌先で愛撫しながら滑らせた片方の指先で、触られても無いのに既にピンッと立ち上がっているもう一方の乳首を爪先でカリカリと刺激され、ビュクリと体の中心で痛いほど張り詰めているモノから漏らしたように先走りが溢れ出る。
「ンぅッ、イ~~……」
 気持ち良さで無意識にヘコヘコと腰を持ち上げて、冬悟の腹へと擦り付けるが下着とパンツが邪魔をして上手く刺激を拾えない。
 そんな俺の気持ちを解ったのか、乳首へはそのまま舌と指先で刺激を与えながら空いているもう一方の手で器用にパンツと下着をずり降ろされ勢い良く飛び出したモノは先の先走りでテラテラと光っている。
「エロ……」
 顔を乳首から離して、飛び出たモノを見詰めた冬悟は熱にうなされるようにウットリとした声音でそう呟き、態勢を下へと落としていく。
 俺は気持ち良さと羞恥心で頭の中がグチャグチャで、次にされる事への予想が出来ず短く浅い吐息を吐き出していると
「あ゛? ……ッ、ヒィ……ンぅぅ~~♡♡♡」
 ヌラヌラと光っている先走りを味わうように、冬悟は根元から先端にかけて裏筋を舌で舐め上げる。
 その強烈な快感に、俺はガクガクと太腿を痙攣させ喉を仰け反らせるとハクハクと空気を喰む。
「ン……奏汰、喘いで……? その方が辛く無いから……」
 何度も、何度も舌で裏筋を舐め上げられ最終的には熱い吐息が吐かれる唇が俺の鈴口に近付いてきたと思った瞬間には、ジュルル~ッ。と下品な音を立てて先端からカリ部分までスッポリと冬悟の唇に包まれる。
「ンぁッ♡♡ やぁ……イ゛ッ、ク゛……」
「好きな時に……イッて、良いから……」
 ジュパジュパと重点的に亀頭を唇で扱かれながらそう言われ、冬悟の歯が微かにカリに引っ掛かった刹那、ビュッ、ビュルル~と俺は我慢出来ずに冬悟の口の中へ射精してしまう。
 冬悟は嫌がる素振りも見せずにコクコクと受け止めた俺の精液を嚥下すると、尿道に取り残された残滓さえもジュゾゾッと吸い上げ……
「ハ、……あぁ……♡」
 気持ち良い余韻にピクピクと体が震えて、何も言えないでいると、膝まで落とされていたパンツと下着を足から抜き取られ、左右に割られる。そうしてその間に冬悟が入ってきたかと解ると俺はくったりとしながら視線を泳がせれば、いつの間にか冬悟もスウェットを脱いでいて……。
「俺の奏汰……」
 熱に浮かされたように呟き、チュッ、チュッと音を立てて内腿にキスを落とす冬悟に、俺は一度達して少しだけクリアになった頭で彼女の事を思い出していた。
 俺と冬悟のこの行為は、許される事じゃ無い……。けれど、俺が今までずっと望んでいた事だ……。
 この一度だけ許されるなら……、俺は……。
 好きで、好きで、好きで……。でもそれさえも伝えられなかった俺に巡ってきた奇跡に近い事柄は、駄目だと解っていても蜜のように甘く俺を離してくれない。
 これが終われば、無かった事にします。ちゃんと貴女の側に返すので、今だけ許してもらえませんか?
 俺はもうこれから先、この思い出だけで十分だから……。
 じんわりと自分の瞳に水の膜が張るのが解り、俺は唇を噛み締める。
 「ハァ……ッ、勝手に濡れて、俺を受け入れる準備……してくれてたんだ?」
 嬉しそうに冬悟が呟き、俺は我に返ったようにハッとすると、節ばって長い指が二本ズニュニュ~……と双丘の孔へと侵入してきて俺は息を詰めてしまうが
「奏汰、息吐いて……。ユックリ出す時みたいにいきんで」
 入れながら指示されて、俺は言われた通りにいきむと自然に濡れている事もあって先程よりもスムーズに冬悟の指が内壁を掻き分けて入ってくる。
「ンぁ、は……あァ゛ッ……」
 収まった指は何かを探すように動き出すが、あるか所を掠めた時に俺の体がビクリッと跳ねて
「見付けた……」
 口を嬉しそうに歪めた冬悟の指が、グニィと一点を押し上げるように鉤型に曲げられる。
「~~~♡♡♡」
 その瞬間、俺は声にならない矯声を吐き出し体を快感に硬くさせる。そうした次には全身が跳ねるようにガクガクと痙攣して、息を吐き出すと同時に
「あ゛~~♡♡ 気持ち、イ゛ィッ……」
 と、素直に喘ぎ声を上げる。
 俺のその声を聞いた途端、冬悟からまた重いフェロモンが溢れ、俺はヒュッと喉を鳴らすと
「可愛い……奏汰、好きだよ……」
 そうして見付けた俺の弱いか所を何度も指先で押し潰すように持ち上げられれば、会陰からポコリと指の形が浮き上がるほど愛撫され、俺は舌を突き出す。
 ジュプッ、ジュブッと愛液と冬悟の指が絡み付く音が厭らしく、その音でまた俺は感じて先端から蜜を零してしまう。
「ハァッ……ハァッ……奏汰のここ……泡立って滅茶苦茶やらしいよ……ッ」
 徐々に指での愛撫が追い上げるように早く、重くなってくる頃には射精とは違う大きな波が全身を攫ってイキそうで、俺は奥歯を噛み締めシーツを握り込むと
「冬悟……、だめッ♡ ヤバイ、からッ♡♡……ッ俺、ィ゛ッ……♡♡♡」
「イク?」
「ンぅ♡♡ お尻……ッ、お尻で、ぇ♡♡」
「ン、オマ○コでイク?」
「やぁッ♡ ……ィ゛、イ……♡♡ と……ごぉ♡」
「イケよッ♡ オマ○コでイケ……ッ♡」
「イ゛ッ、ギュッ♡♡ イ゛グッ♡ イ゛ッ~~~♡♡♡」
 俺と冬悟のフェロモンが絡み合う不思議な感覚と、脳まで焼け付く快感の波に攫われ俺は腰を高く持ち上げた状態でメスイキしてしまう。
 余韻は長く、イッてからもヘコヘコと腰を揺すって甘イキし、キュウッ、キュウと冬悟の指をしゃぶりながら徐々に腰を落としていくと
「上手にイケたな」
 冬悟は再び内腿にキスを落としながらユックリと指を引き抜いて、熱り勃ちビキビキに張っているモノを孔へと擦り付けると
「ハァ……やっと……やっとだ……」
 うわ言のようにそう呟き、俺の中へと怒張を入れ込む。
 襞がチュウゥッと冬悟のモノを嬉しさに吸い上げ迎え入れる。絡み付くように内壁が蠢き、もっと奥へときて欲しくてしゃぶっているのが自分でも解って……
「フウ、ぅ……♡♡ ンぁ♡ 持ち、良いよぉ~♡♡」
 切なげに喘ぐと中にある冬悟がビキビキと更に膨張し、トチュッと軽く腰を揺すられただけで、俺のモノからビュルルッと再び白濁の液が零れ落ちた。
「ハッ……無理……♡」
 それが合図になったように、ズルルルッと限界まで引き抜かれれば、ゾリゾリと張ったカリ首が抉るように内壁を刺激して腰が浮く。
 そうして入口の襞にカリ首が引っ掛かる感じで止まれば、前立腺をグポッ、チュポッと厭らしい音を立てながら押し潰し、引っ掻いて愛撫する。
 会陰の内側からポコッとチンポの形が浮き上がるほど前立腺を叩かれ、喘ぎ声を出している俺を見詰めながら冬悟は指先を三本浮き上がっている会陰に押し当て、内側と外側から同時に前立腺を潰すから、俺は堪らず冬悟の太腿に爪を立ててしまって……
「ン゛ッ、~~♡♡♡ イ゛~~♡♡」
 快感にブワリと溢れた涙を拭う事も出来ずに悶える俺を見下ろしながら、次いではズパンッと勢い良く冬悟が腰を奥まで入れ込む。
「ヒッ! ギ、ィ~~♡♡♡ しょれ……すごッ、~~~♡♡」
「ン? コレ好きか?」
「ン、ン゛……ッ、好き♡ 好ぎ、ィ゛♡♡」
「ハッ、可~愛い」
 グイッと片脚を持たれて肩に担がれると、冬悟は力強く腰を打ち付けてきた。
「あ゛ッ、冬、悟ぉ♡ 無理ッ、無理♡♡」
「ハッ……ハッ、奏汰ッ♡ 奏汰……もぅッ」
「ンぁ゛♡ ~~~♡♡ イ、ィッ♡ 気持ち゛、ィ゛ッ♡」
「ン?オマ○コ、気持ち良いッ?」
「ハァ、ァ゛♡ オマ○コ……♡♡」
「そう、オマ○コ気持ち……ッ良い?」
「ぎ持ち……ィ゛♡♡ オマ○コ♡ 気持ち、イ゛ィ♡♡♡」
「ァ゛~~、ィッ……クッ、イクッ♡」
「ナカ……ッ、ビュ~、しで♡♡ 冬悟ぉ、ビュ~してッ♡」
「クソッ……♡ イク、イグッ、イ゛、~~ッ!」
「あ゛~~~~~ッ♡♡♡」
 重く早い突き上げに、キュウゥッと限界が近くブワッと張った怒張を内壁で締め上げ、先端をチュッ、チュッとお腹の痙攣で絡めるようにキスをした刹那、俺が望んだ通り冬悟は俺の中で果て、俺はガクガクと揺さぶられながら記憶を手放した。


          ◇


 薄っすらと目を開ければ、隣にいるはずの奴がいない。
 俺はガバリッと起き上がり、寝室を見渡すが昨夜体を交わした相手が見当たらずボー然としてしまう。
 ……………嘘だろ?
 あんまりにも酷い仕打ちだとフツフツと沸き上がってくる怒りに、ベッドの上に放り投げられた冬悟のスウェットの上だけ羽織って床へと足を着ける。
 そうして今何時なんだとフト視線をベッド横のチェストへと移動させれば、癖の強い字で『朝ごはん買ってくる。起きたならゆっくりしててくれ』と書かれたメモを見付け、俺は安堵の溜め息を吐き出した。
 足に力を入れて立ち上がると、一瞬フラリとなってしまうが、さほど体に違和感は感じない。体も綺麗にしてもらったのか、ベタベタした感触は無く至って普通だ。
 俺は顔でも洗おうと寝室を出て洗面所へと向かうが、途中気になる事に足を止めた。
 実は俺が冬悟の部屋ヘ来るのは数えたほどしかない。冬悟はしょっちゅう俺の部屋ヘ来ているというのに、だ。
 まぁ、それは俺が出来る限り冬悟から距離を取っていた事が原因なのだが……。
 冬悟の部屋ヘ来る度に、気になっていた事が一つある。それは見た事の無い部屋が一つある事だった。
 別に冬悟から入るなよ。とも、見るな。とも言われた事は無いが、リビング、キッチン、寝室、トイレにバスルーム以外でもう一部屋冬悟のところは部屋がある。それが今俺が立っているドアの向こう側。
 普段はさほど気にした事は無かったが、今無性に気になって仕方ない理由は、もしかしたらここが冬悟の彼女の部屋なんじゃ無いかって推測している自分がいるから。
 まぁ、泊まるとなれば寝室で一緒に寝てるとは思うけど、彼女の私物とかが置いてある部屋なのかなって勘ぐってしまって……。
 駄目だとは解っているし、その通りなら自分でダメージを与える事になるのだが、どうしても彼女の人となりを垣間見たいっていう欲が強過ぎて、俺はドアノブを握って奥へと扉を押す。


「……………ッ、え?」
 部屋の扉を開けて、俺は息を呑む。
 俺の目の前に広がっている光景は、俺が想像していたものとは全く違ったものだったからだ。
 正面窓には遮光カーテンが引かれ部屋の中は暗いが、カーテンの前にあるデスクにはパソコンがあって、その画面には俺の部屋が映し出されている。
「は? ……え?」
 画面は二つに分かれていて、一方は寝室、一方はリビングが映っていた。
 俺はドアを開けたままパソコン画面に近付き、映し出されている自分の部屋を凝視すると、リビングはエアコン付近からのアングルで、寝室は本棚からのアングルだと解り俺は混乱してしまう。
「な、ンだよ……コレ……」
 デスクへ力の抜けた体を支える為手を着けると、カサッと手の平に何かあたり俺は視線をデスクへと向ければ、俺の写真が何枚か広げられていて、それを手に取ると……
「嘘……だろ?」
 自分の部屋や大学、冬悟と出かけていない時の俺が写真に写っていて言葉を無くす。
 そうしてユックリと写真をデスクへ戻せば、白い病院で処方される薬の袋に、冬悟では無い文字が何か書いていて、俺はその袋を持ち上げて文字を確認すると
 『用法用量は説明した通り。無味無臭の為、何に入れても気付かれないよ。早く想い人がΩになれば良いね。後、たまには連絡頂戴!』
 男の文字では無い。見るからに女が書いたものだ。
 用法用量……、無味無臭……、想い人がΩ……?
「何してんの奏汰?」
 後ろから感情が伝わってこない冬悟の声が聞こえて、俺はバッと後ろを振り返る。
 そこにはコンビニの袋を片手に持って立っている冬悟がいて……。
「なぁ……、この部屋何? それに……これってどういう事だよ?」
「……そのままの意味だよ」
 静かに冬悟はそう言うと、部屋の中へと入って来てパチリと明かりを点け
「俺にはお前だけ……、昔からそうだ。ケド、お前はβだからって簡単に俺から離れようとするだろ?」
 ポツポツと苦しそうに冬悟が喋り出す。
「いつだってお前はそうだよな。俺のためだからって自分の大切な物も簡単に捨てれる」
 ………小さい時から一緒だった。俺には冬悟は大切で、大切だから自分の好きなモノも手放す事が出来た。
「俺の母親が、俺にはお前が不釣り合いだからって言ってた事も知ってる。それが原因で俺が告白した時に断った事も、避け始めた事も……」
 だから、冬悟に相応しくない俺よりも相応しい相手がいると言い聞かせて……。
「お互いにお互いが一番なのに、痛い位そんなの解りきってんのに……βだからって俺を諦めるのか?」
「冬悟……」
「それは本当にお前が望んだ事なのかよッ?」
 ……………俺の望み。言えなかった心の内側。
「だから俺が全部叶えてやる。俺とお前の願いを、お前をΩにする事で……」
 本当に良いのか? 俺と一緒にいてくれるのか?
「ケドお前……女の人と……Ωの人とこの前キスしてた、だろ?」
 あの女性とはどういう関係なのか……。ジッと俺が見詰めていると冬悟は俺が持っている薬の袋を指差して
「その薬……格安で提供してくれるかわりの対価で……」
 それでキスしていたって事か?
「じゃ、じゃぁ……あの人とは全く……」
「関係なんか結んで無い……」
 本当なのかと、伺うように冬悟を見詰めるが、冬悟もまた真っ直ぐ逸らさずに俺を見ているから、それ以上俺は疑う事を止めた。
「いつからこの薬、俺に飲ませてた?」
 話には聞いた事があった。バース性を変える薬があると。通常では出回っていない為、高額取り引きでしか手に入れる事が出来ないと……。
 まことしやかに言われていて、都市伝説だとばかり思っていたが、まさか本当に実在するなんて……。
「……大学入ってからだよ。俺が作って奏汰が食べる料理には毎回入れてた。……この前はバレるかもって焦ったケドな」
 この前……もしかして……
「コーヒーにも?」
「あぁ……。俺は絶対に欲しいものは手に入れるし、諦めない。奏汰、お前は俺のΩだ」
 真っ直ぐにそう言われて、俺はハクッと空気を噛んでから
「俺……本当にΩになったって……こと?」
 変わるはずが無いと思っていたバース性が本当に……?
「あぁ……、昨日で解っただろ? 俺のフェロモンも感じて、匂ってたはずだ」
 ……………本当に? 夢では無くて?
 俺が言わなくても、冬悟は俺の表情で何が言いたいのか解ったのだろう。もう一歩俺に近付いて手首を掴むと
「本当かどうか、項を噛めば解る……」
 そう言って俺の手を引いて部屋を出て行く。
 俺は冬悟の背中を見詰めながら、嬉しさに口元が歪むのを止められない。




おしまい。
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