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実録!ポリネシアンセックスのすゝめ。
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同棲して三年、最近レス気味の俺達に年下の恋人から突然提案された一言から事は始まる。
「あ~~~……のさ、ちょっと話があるんだけど……」
いつものように俺、高橋郁哉は持ち帰っていた仕事をリビングのテーブルに置いたノートパソコンで片付けていた時に、幼馴染みで四つ年下の恋人、山﨑遼平の台詞で手を止める。
言いにくそうにしている遼平の態度で、俺は一瞬にして、あぁ、この時がきてしまったのか……。と心の中で神様に両手を組んでいた。
「何、改まって……? 怖ぇ~んだけど……」
同棲して三年だが、付き合った期間を含めると五年。遼平が高校生の時から付き合っていて、俺が社会人になる時に一緒に暮らし始めた。幼馴染みという事もあり、遼平の両親も俺と一緒に住む事に対してさほど何も思う事無く了承してくれて……、結構スムーズに同棲がスタート。
最初の頃はそりゃもう楽しくて、慣れない仕事に悪戦苦闘しながらも、家に帰れば遼平が居ると思えば頑張れたし若い遼平の性欲にもついていけてたんだけど……。
段々仕事にも慣れて、この生活リズムにも慣れてくると遼平が居るのが当たり前になって、家族みたいな存在? って言えば良いのか……。勿論、遼平の事は好きだから一緒に暮らしてるんだし、俺からその……別れを切り出すとかは考えた事も無いワケで……。
ケド、遼平は? って考えた時に……ちょっとゾッとしたよね。
先週、やっと仕事の繁忙期が終わって、久し振りに一人で友達が経営している飲み屋に顔を出した時に、そんな事を彼女から言われてドキリとした事を思い出す。
『仕事にかこつけて恋人を蔑ろにすると、他で素敵な人を見つけちゃうかもね♡』
この彼女は俺と大学が同期の奴で、大学の時から何かと相談に乗ってもらっている奴だ。だから遼平の事も知ってるし、俺達がそういう関係だっていうのも理解している。
社長の彼氏にお強請りして飲み屋をしてる一見オットリした感じの負けん気が強い奴。誰に対してもズバズバ言うから好き嫌いがハッキリ別れるタイプで、俺は嫌いじゃない。
『え!? …………、イヤイヤ俺達は大丈夫だろ』
その時も一緒に来てない遼平の事を気にして、面白がって脅してるんだと……。冗談言うなよ。なんて返した俺に
『アンタから色々聞くけど、私ならそんな彼氏嫌だわ~。キープしてて他に良い人見付けたらすぐに切るわね』
…………………。
言われて俺は、一抹の不安が過ぎる。
本当に最近ゆっくり遼平と会話したのはいつだった? とか、一緒に出掛けた記憶も最近のは全く思い出せないとか……。
え? 俺等って最後いつセックスしたっけ?
『アンタ……本当、遼平君が可哀想過ぎるわ……。久し振りに仕事が一段落しても、恋人放っといて飲みに来るとか……』
追い打ちをかけてくる友達の台詞を聞きながら、俺の顔は赤から青に変わる。
仕事が慣れてくると、一人で任される事も多くなって……、それに伴って遼平を構う回数も少なくなった。それでも最初は俺なりに、誘われれば受けてたけど……、それも段々とフェラになって、最近じゃお互いのを抜き合うだけになってた気が……。
先日までは繁忙期プラス、プロジェクトチームに参加してた事もあり、家の事まで遼平に頼りっきりで……。
えっ? ……俺、マジでヤバいかも……。
『やっと自覚した?アンタ、マジでヤバいわよ』
走馬灯のように友達に言われた一言が蘇って、俺はゴクリと喉を鳴らす。
テーブルを挟んで俺の真正面に静かに遼平は座ると、言い辛い事があるのかモジモジしている。
あぁ……、止めてくれ。そんな顔を俺に向けるんじゃ無い。
繁忙期が終わって、家の事は協力出来てただろ? ゴミ出しとか。……まぁ、たまに出し忘れて遼平に出して貰ってたけど……。
洗濯とかさ。……干しっぱなしで寝こけてて、遼平が取り込んでくれたり……。
あ、食べ終わった後の食器洗い……、何枚か皿、割ったな。
思い返してみて余計に遼平の負担が増えた事を思い出すと、俺はガクリと項垂れる。
「ちょ……、どした? いきなり項垂れて」
俺が項垂れてパソコンに額をくっつけそうな勢いに、遼平は途端に心配そうな声を上げるが、俺はそのままの状態で
「イヤ……、何でも無い」
………………。そうだ、言うなら早い事言ってくれ!こんな状態をずっとは俺のメンタルが保たないっ!
遼平に呟いて先を促す。
早く言ってもらって終わらせたい。もし、遼平が別れ話をしたとしても、終わらせなければ良いだけだ。なんて、自分勝手な気持ちが持ち上がる。
何も言わない遼平に、俺は顔を微かに上げてチラリと上目遣いに髪の隙間から覗き込むと、少しだけ困ったような表情で俺を見ている遼平の顔があり、ドキリとしてしまう。
その顔……。そんな顔、俺がさせてるのか?
途端にツキンと傷んだ心臓に、俺は膝に置いていた手をギュッと握り込むと
「何だよ……話って……」
あぁッ、あぁ~~……。自分から聞いてしまったッ! コレもう逃げられないやつッ!
自分で自分の顔をビンタしたい衝動に駆られるが、グッと堪えて遼平の言葉を待っていると
コトッ。
テーブルの上にスマホを置いて、遼平はそれを俺の方へスッと差し出す。
「あの……さ、コレ……試してみないか?」
差し出されたスマホの画面が明るく光っていて、俺はズイッと身を乗り出し画面を覗き込むと
『マンネリになってしまったカップルにオススメ! ポリネシアンセックスの手引き♡』
「……………、ポリネシアンセックス?」
聞いた事も無い言葉を呟く俺に、遼平は途端に喋り始める。
「イヤ、ホラさ……、最近郁哉とゆっくり出来てね~なと思って……。俺なりに色々考えたんだけど、たまたまネットサーフィンしてる時に……コレが目に付いてさ……」
ん? まぁ、二人でゆっくりは出来てなかったな……。主に俺が飲みに行ったりとかしてたし……、誘われても言い訳ばっかして断ってたし、な。
別れ話じゃ無い事が解って、俺は安堵に細く長い溜め息を遼平に気付かれないように吐き出し
「……、まぁ最近は出来て無かったよな、ゆっくり……」
「だろ? ……だからまぁ、良い機会かなって思って……どう?」
遼平はお伺いを立てるように聞いてくるが、それがまるで構って欲しい大型犬に見える。ケモ耳ペターンなのに、尻尾ブンブン振り回してるように見えるのは俺だけか? それに、グッ……、その顔に俺が弱い事知ってんだろッ! あざと可愛い上目遣いをするんじゃありません!!
遼平は俺よりもデカい体格をしている立派な男だ。付き合い始めた高校生の時は、まだ俺の方が身長的には大きかったものの、途中から入部したバスケを始めてからグングン伸びてアッサリ追い越されてしまったし、毎日のように筋トレも欠かさないので体格も普通に遼平の方が大きい。
大学生の今も部活はバスケ部で、よくモテているのかバレンタインの時とかはえげつない程のチョコを持って帰ってくる。
一応、お付き合いしている相手はいると言っているらしいが……。
性格も明るく大らかで、俺がおっちょこちょいのドジで抜けてる所があるから、よく遼平に迷惑をかけるが、怒られたり嫌味を言われた事は無い。
何でも『イイヨ』って言ってくれるケド、締めるとこはキッチリ締めるし、セックスの時は……滅茶苦茶雄って感じで……。
「まぁ……ケド、そのポリネ、シアン? ナンチャラって知らないし……どういう感じのヤツ?」
「だよな……で、郁哉に聞きたい事があるんだけど」
「何だよ……」
そのポリネシアンナンチャラをする事とは別に、まだ俺に言いたい事があったのか? と、俺は身構える。すると、そんな俺の反応に遼平は少し苦笑いする感じで
「イヤイヤ、普通に今週は土日休みなのかなって聞きたいだけ」
「あ……休み? まぁ、繁忙期は過ぎたからな普通に土日休みだけど?」
「そっか、なら大丈夫」
「何が大丈夫なんだ?」
遼平の真意が掴めず聞き返した俺に、遼平はスマホをトントンと指で叩きながら
「コレさ、五日目まではセックス出来ないんだよね」
「……は?」
遼平の台詞に、トントンと叩かれているスマホの画面を俺はもう一度覗き込む。そこには
『一日目から4日目まではお互いの体を愛撫するだけに留め、最大限快感のメーターを高めておきましょう!』
なんて文言が書かれている。
「四日間は愛撫だけ……」
ボソリと呟いた俺の言葉に
「しかもその間は性器に触れられないって」
「え? ……無理だろ……」
素直に言った俺に、クスリと笑った遼平に視線を向けると、どこか嬉しそうな顔とぶつかる。
「何だよ……その顔……」
「イヤ、無理なんだと思って……」
呟かれたが、返す言葉が見付からず黙った俺に遼平はニンマリ顔のまま
「じゃぁ、明日から始めて土曜にするって事で良い?」
と確認をとってくる。
今日は月曜日。火曜の明日から始めて、セックスするのは土曜という事になる。
「まぁ……問題無いけど……」
了承するが、果たして上手くいくのか? という不安も心の中ではあった。
◇
一日目。
「んじゃ、一緒に寝ますか?」
「お、おぅ……」
晩飯や風呂を済ませた後、一緒にリビングで映画を見終わり遼平からそう声をかけられる。
今日から昨日提案されたポリネシアンセックスなるものを試すのだけれど、今一どういうのか解らなかった俺は、仕事の休憩時に一人で検索してどういうものなのかリサーチしていた。
普通のセックスやスローセックスとは違い、精神的繋がりに重きを置いたものになるらしい。
それに期間が長く四日間はお互いにイチャイチャするだけで、遼平も言っていた通り性器に触れる事はNG。その他の部位を愛撫したり、会話したりを楽しんで今までよりもより絆を深めていくって感じなんだと。
で、五日目でやっと性器に触れたり行為に及ぶというワケだ。
その一日目が今日からなんだが……、今日から五日間俺は遼平の部屋で一緒に寝る事になっている。それはまぁ……、遼平の部屋のベッドがアイツサイズでデカい事が一番の理由なんだけど……。本当に最近は遼平と一緒に寝る事も無かったから変に緊張するというか……。
同棲を始めた当初、遼平から寝室は一緒にっていう提案があったんだが、俺はそれを丁重にお断りしていた。
俺が社会人になってからの同棲って事もあり、仕事でどうしたって遼平よりも遅くまで起きて、朝は遼平よりも早く家を出る事が多い。そうなるとゆっくり寝かせてやれね~よなとか、俺なりに色々考えて出した結論なんだけど……。
それに、もし遼平の友達やおじさん、おばさんとかが泊まりに来た時の事を考えたりしたらその方が良いって結論になったワケだ。
ケド、遼平はこの家に友達を呼んだ事は無いし、泊まりにも行った事が無い。遼平のおじさん、おばさんも中に入ってお茶を飲む事はあっても泊まりまではした事が無いし……。
前に一度遼平には『友達のトコに泊まりに行っても良いんだぞ?』と言った事があるが、そう言った途端に何故か不機嫌になって、泣いても離してくれなくて抱き潰された事がある。だからそれ以降は何も言わずに、遼平のしたいようにさせているけど……。
なんかさ、勿体無ぇって思ってしまうのは俺だけかな? 折角気の合う友達が出来ても、遼平の中では俺が最優先。そりゃぁそう思ってくれたり、思うがこその行動はメチャメチャ嬉しいんだけどさ、その歳でしか出来ない楽しみ方も勿論あるワケじゃん? 羽目外し過ぎるのもどうかと思うけど、遼平に限ってそんな事にはならないって信頼してるから、たまには目一杯友達と遊んで欲しいって気持ちもあるワケ。
『俺なりにちゃんと楽しんでるし、遊んでる』って言われてしまえば、それ以上俺的には何も言えないし……。
「郁哉? どうした?」
いつまでもリビングでまったりしている俺に、遼平が立ち上がって俺を見下ろしながら言ってくるから
「イヤ、何でも無い。寝るかぁ……」
ヨッコイショ~。と重い腰を上げて立ち上がり、遼平の後に続いて部屋へと向かう。
ドアを開けて中へと入ると、綺麗に整頓された部屋がお出迎えしてくれる。本当、俺の部屋とは大違いだよな。と、入る度に同じ感想を思ってしまう。俺の部屋は仕事の書類が散らばってたり、雑誌が山積みになってたり、テーブルの上には飲みかけのペットボトルがあったり……。
イヤ……、思い出すまい。
きちんとベッドメイクされている上に腰を下ろした俺の目の前で、遼平は早速着ていたスウェットを脱ぎ始めていて
「郁哉も早く脱ぎなよ」
「ん? ……おぅ」
スウェットから覗いた逞しい体躯。
運動部らしい鍛えられた腹筋、血管の浮いた逞しい腕に、ハリのある太腿。
久し振りに見る恋人の裸に目が逸らせなくなった俺の視線に気が付いたのか
「郁哉?」
遼平がキョトンとした顔で俺に呟いてきて、俺はハッとなり急いで遼平から視線を逸らす。
俺が不自然な感じで目を逸した事で何を勘付いたのか、遼平は側まで近付いて来ると
「脱がせて欲しい?」
ニコニコとした笑顔を浮かべながら俺が着ているパジャマに手を伸ばしボタンを外そうと指先を動かすので
「ッ……じ、自分で」
出来る。まで言う直前で遼平はパッと指先を引っ込めると
「早く入ろう?」
スッと俺の横からベッドへと上がり、イソイソと奥まで詰めると掛け布団を捲って俺が来るのを待っている。
俺は焦りながらモタモタとパジャマのボタンを外して、スルリと肌から布を滑らす。そうしてパンツも脱ぎ捨てると、遼平が空けてくれているスペースへと潜り込むと
「はぁ~……、なんか久し振りだなこうやってるのも……」
隣に俺が入るとすかさず遼平の腕が俺の頭の下に伸びて腕枕される。
「だな……」
………………本当に久し振りだと思う。こうやって遼平と同じベッドに寝るのも。
クルッと俺は遼平の方へと向きを変え、ジッと俺を見ている視線と目が合う。
「へへッ」
嬉しそうに口元が緩みっぱなしの恋人の顔を見て、あぁ、遼平も寂しかったのかな? なんて思ってしまう。
結局、俺の事を優先させてしまうって事は遼平には我慢させている事が多いって事だ。
俺も久し振りに遼平の温もりに包まれ、安心している部分もあるし……。
ブワッと感情が溢れて、俺は腕枕されている腕にスッと手の平を置いてスリスリと撫でると
「ッ……」
途端に遼平の息が上がった感じがして、少し伏せていた視線を上げれば俺に対して欲情していると解る表情がある。
遼平のそんな顔を見るのも久し振りで、自然とゴクリと喉を鳴らしてしまった俺に対して、少し失敗した苦笑いを浮かべながら
「コレ……今日はキスも出来ないから……結構辛いな……」
欲求と理性のせめぎ合いを苦笑いで誤魔化そうとしている顔が、逆に可愛くて胸をギュウゥッと締め付けられる。
ぅ゛あぁ~~~ッ、ワンコがお預け食ってる顔って、なんでこんなに可愛いンだよッ!
あるはずの無いケモ耳が頭の上でペショッてなってるように見えるのは、俺だけか!?
ワックスでセットしていない色素の薄いフワフワな髪を撫で回したい衝動に勝てず、俺は腕から手を離して遼平の髪に指を差し込むとワシャワシャと左右に手の平を振る。
「チョッ、何だよ郁哉~」
構われて嬉しそうに声を上げる遼平の反応に気を良くして、俺が際限無くワシャワシャしていると笑顔の遼平に手を掴まれて逆にガバッと抱き込まれる。
「うぉッ、遼平苦しいって!」
腕枕していた手が俺の肩口を抱き込み、もう片方が背中に回って力強く俺を抱きしめるから、俺は笑いながらも苦しい事を投げ掛けるが、遼平は無言のまま脚まで絡めてきて身動きが出来なくなる。
「お~い、遼平。聞いてんのか?」
俺も片腕を遼平の背中に回してポンポンと叩くが、首筋に埋められた顔から何かを言う事無く暫く遼平は黙ったまま。
俺は恋人の好きなようにさせ、ポンポンと叩く動作から背中を撫でるように変えて甘えさせている。首筋の所が遼平の息で熱く感じられるようになってきた頃、やっと遼平は顔を上げて
「俺さ……、別れたくねぇよ?」
ボソリと呟いた突然の台詞に、俺はバッと顎を下げて遼平の顔を覗き込む。
「え? 何を……突然……」
視線を合わせた先に揺れている目とぶつかって俺は息を飲む。その台詞をお前が言うのか? と思ったが、次いではそう言わせてしまったんだと俺は眉間に皺を寄せて
「……ごめん、な?」
「なんのごめんだよ……。図星だったって事か?」
「イヤイヤ、ンなワケね~しッ! どっちかと言えば、俺の方が遼平に聞く方だろ?」
「そぅ、なのか?」
「そうなんですよ」
溜め息を吐き出しながら、俺は遼平の頭の上に顎を乗っけて今度は自分の方へと抱き寄せると
「お前に甘え過ぎて、今回遼平から意味深にコレの提案される時に別れ話かと思ったしな」
「マジで?」
「マジで。別れ話されたら全力で拒否ろうとは思ってたから、コレで良かったって安心したし……」
言い終わって頭の上に乗せていた顎を外し、再び遼平の顔を覗き込んでからここはキスの一つでもするところだろうと、俺は顔を近付ける。
「厶ッ……」
だが、近付く速度と同時に伸びてきた遼平の手の平で口を塞がれ
「だから、今日はキス出来ないんだって」
と、ニッコリ笑いながら言われてしまえば
「ムグムムッ、ンムム、グンムムンンムムッ」
嘘だろッ、ここは、キスするとこだろッ! っていう言葉は、くぐもって台詞にならない。
「ハハッ、何言ってんのか解んね~しッ」
「……ッ、言わせなかったんだろッ!」
プハッと手から逃れて言う俺に、一瞬後には遼平の表情も笑いから真剣なものになって
「俺もしたいけど、折角郁哉が提案に乗ってくれたし……今日は我慢な? 明日からはキス出来るから明日、一杯しようぜ?」
「ぅンム~……」
最後にニコリと笑顔で言われてしまえば、俺に拒否る事なんて出来ない。遼平に言われて素直に従う俺に、スススと手の平が伸びて俺の背中を優しく上下に撫でると
「今日は沢山話して、郁哉の体をナデナデしたいなぁ~」
甘えた声で囁かれ、ボッと自分の顔が赤くなるのを感じるが、俺も遼平の体に手を伸ばして
「俺も堪能するからなッ!」
少しの恥ずかしさをそう言う言い回しで誤魔化し、遼平の肩口に手をあてる。そのまま逞しく張った胸筋へと滑らせてまた元の肩口まで戻ると、今度は首筋から顔に指先で辿って遼平の顔をマジマジと見詰める。
高校生の時の遼平はまだ幼さを残した顔立ちだった。顎も今よりは細く頬も少しふっくらしていた。けれど今はもうその面影は無い。
何時の間にかしっかりと髭も生えるようになった顎は細くは無いし、頬もふっくらよりはシュッとしたって表現の方が似合う。垂れ目気味の奥二重に長い睫毛、筋の通った鷲鼻。唇は俺よりも厚く、キスすると弾力が気持ち良い。
眉毛は一体いつ整えているのか細くも太くも無い一本眉で、綺麗に切り揃えられている。
「……………、男前だよなお前……」
こんなにもマジマジと見詰める事も無かったから、改めて恋人の顔を見て溢れた台詞に、遼平は嬉しそうに口元を歪めて
「郁哉のタイプの顔で良かった」
と、背中に回した手を俺の頬に持ってきてスリッと撫でる。
ウン。タイプなんだよな、お前の顔。それに性格だって俺好みだしさ、言う事無いんだよ……。
「俺も郁哉の顔、タイプだよ。綺麗だし」
「女顔って言いたいんだろ?」
俺は遼平とは違って女顔だ。
顎も細ければ鼻筋も通っているとは言え少し小ぶりだ。目も一重のくせにデカくて睫毛が下向いてるから、よく目の中に入って悶絶する。眉毛も半月形。格好良い遼平みたいな眉毛が良かったが、この顔に遼平みたいな眉毛も変だろ? 唇は小さいし薄い。
「女顔かぁ? 綺麗系だろ?」
「体だって、お前みたいに筋肉付かないし……」
言いながら再び胸筋から腹筋へと手を滑らせていくと
「それだって体質だろ? 俺は好きだけどなぁ」
俺同様に遼平も俺の胸から腹にかけて手をあてて撫でると、プニッと腹の肉を摘んで
「太っても痩せても無い、良い体じゃん?」
と言ってるが、摘んでんだよ。俺の腹をッ!!
バシッと摘んでいる指を払い落としキッと睨み付けるが、睨んだ先の顔はへニャリと嬉しそうな顔で……。
「なんつ~顔してんだよお前……」
遼平のそんな顔を見ては、睨む事も出来ずに呟くと
「イヤ~、本当久し振りだからさこうやって郁哉とイチャイチャ出来るの」
「まぁ……そうだな」
気不味そうに呟く俺に苦笑いを浮かべて
「嫌味じゃ無くてさ。プロジェクトチームに入って忙しそうだったし、後半は繁忙期と被って更に大変そうでさ……体壊すんじゃ無いかって結構ヒヤヒヤしてたし」
「けど……お前に甘えて家事とか諸々任せっきりだったし……構って、やれなかったし?」
モゴモゴと口の中で呟いた俺に遼平は再び手の平で俺の体を撫でながら
「ン~~、ケド頑張ってんのにさ、色々しろとは言えないし。それに俺がしたかったから……。まぁ結局不安になってたんだけど……」
「ごめんな……」
「も~~~、謝るのは止めよ?」
グリグリと俺の肩口に額を押し当てて首を振る恋人の頭を、俺も手の平で優しく撫で返し心の中で沢山のありがとう。を呟く。
◇
二日目。
何だかなぁ~。
今日一日、仕事でのパフォーマンスがすこぶる良かった俺は、何気に立ち寄ったコンビニで遼平の好きなスイーツを見付け、買ってから帰路についている。
昨日はお互いに言いたい事を言って、終始体を触ったり撫でたりしただけ。
どの位してたっけ? 多分……一時間位か?
あの後も思い出話や、これからの事を話してそのまま気持ち良く寝てしまって……。
朝もスゲ~スッキリ目が覚めて仕事に行けたっけ?
何となくずっとモヤモヤしていた遼平に対しての不安や自分の不甲斐無さとかが解消されたって事や、久し振りに恋人の肌の温もりに包まれて安心して寝れたって事が大きく影響してんだろうけど…。
イヤイヤ、単純だな俺。
朝も俺の方がやっぱり仕事で遼平よりは早く起きなきゃなんなくて……、コソコソ起きて支度してたら気配で解ったかのか遼平が目を覚ましてしまった。
『悪い……、起こしたか?』
申し訳無さそうに小声で喋る俺に、フンワリと笑顔で
『イヤ? 見送り出来るの嬉しいけど?』
なんて……。イケメン過ぎるだろ!? 俺の恋人は本当に俺を甘やかすのが上手いなぁ。って、朝から関心しちゃっただろがッ!
…………。俺より年下なんだよ。なのにあの包容力。何食べたらあんなに良い子になれるんだよ? 俺もなりて~よ。
朝からのそんな返しで俺の心を軽くしてくれて、宣言通り手を振って俺を見送ってくれ……。そりゃぁ、仕事に張りが出ましたわなぁ。
本当……捨てられないように頑張ろ、俺。
「ただいまぁ~」
マンションの玄関を開けて、そう部屋の中へと挨拶を言いながら靴を脱ぐ。
「お帰り~」
ガチャッとリビングの扉を開いて、俺を迎えてくれる遼平にガサリとコンビニの袋を差し出すと
「何?」
「お前の好きなの買ってきた」
俺の言葉にガサガサと袋の中身を覗いて
「うぉ~めっちゃ嬉しい。ありがとう、ご飯の後で一緒に食おう?」
「ン」
取り敢えず自室に入ってからスーツを掛けて、パジャマに着替えてリビングに向かう。
テーブルの上には夕飯が出来上がっていて
「腹減ったよな。食べようぜ?」
キッチンから残りのおかずを運びながら俺に言ってくる声を聞きながら、俺は定位置に座ると
「よし、食べよう。頂きます」
「頂きます」
お互いに手を合わせてそう言って、夕飯を向かい合って食べる。
楽しく夕飯を食べ終えて、食器を俺が洗った後風呂へ。一緒に入るか? と誘ってはみたが遼平は俺が帰って来る前に入ったらしく、一人で足を伸ばして湯船に浸かっている。
ホカホカになって風呂から出て、ガシガシとタオルドライしている手を止められ遼平にドライヤーで髪を乾かしてもらい、二人でバラエティー番組を見ながら俺が買って帰ったスイーツを頬張った後
「んじゃ、ソロソロ寝ますか?」
テーブルの上に乗ってあるスイーツの残骸を袋に入れながら遼平が俺の顔を見詰める。
「そうだな」
お互いに好きなバラエティー番組を見終わってテレビを消すと、俺は定位置から腰を上げて一つ伸びをする。
「先俺の部屋行ってて」
「ン~~」
キッチンにゴミを捨てに行った遼平に言われ、俺は一足先に恋人の部屋へと入るとそのままベッドへとダイブし、ウゴウゴと体を動かして掛け布団を下から自分の上へと掛け、溜め息を吐き出す。
はぁ~、今日も終わったなぁ。明日も仕事か……。
嫌だな。と考えていると遼平が部屋へと入って来て、ゆっくりとそちらに視線を動かすと、遼平は着ていたスウェットを脱ぎ始めていて……。
ア、俺……パジャマ脱いでね~わ。
ヤベッと表情に出ていたのか、遼平は俺の顔を見てすぐに掛け布団を剥ぐと
「俺が脱がせても、良い?」
逆にニンマリと笑われ、ドキリとしてしまう。
「まぁ……良い、ケド……」
ニンマリと笑った顔ではあるが、目の奥で遼平の欲望が見て取れて心拍数が上がる。ギシッと音を立てて片膝がベッドへと上がると、そのまま遼平は俺の体を跨ぐ形で上にきた。
「んじゃぁ、脱がせま~す」
明るく言っているが微かにコクリと喉が鳴ったのを俺は聞き逃さない。
伸びてきた指先が器用に動いて、着ているパジャマのボタンを一つ一つ外しにかかる。遼平の手で素肌から剥がされる布の感触に、普段はあまり感じないのに何故だが酷くエロいなと思ってしまう。
ボタンが全て外され大きく開けると、袖口に向かって遼平の指が俺の腕を滑る。
「ン……」
吐息混じりに微かに鼻から声が漏れて、たったそれだけの事でゾクリと感じてしまった自分が恥ずかしく、俺は顔を赤くしてしまう。遼平はそんな俺に気付いているはずなのに、何も言わずに反対側の腕からも生地を剥がすと
「郁哉、腰上げて」
パジャマのパンツに手をかけて、下へとおろそうとしている遼平の指示に素直に応じ、俺は腰をベッドから浮かすとススス……とボクサーパンツだけ残して脚からパジャマを引き抜く。
引き抜いたものをベッドから外に落とすと、一度俺の上半身を横に向けて俺の背中にあった上のパジャマも取り上げパンツ同様下へと落とす。
昨日と同じでお互いボクサーだけになると、遼平は俺の隣に入り込み掛け布団を俺達の上へと掛ける。
「寒くねぇ?」
「ン、大丈夫……」
伸びてきた指がスリッと頬に触れて、その感触に項が粟立つ。
「今日はキス出来るから、しよっか?」
隣から優しく言われ、俺の返事を待たずに遼平の顔が近付いてくる。俺はゆっくりと目を閉じるとチュッと唇に柔らかい感触。
何度かついばむような可愛いキスに、俺は薄っすらと唇を開くと
「……ッ、郁哉ぁ……ディープなのは出来ないんだよね」
残念そうな遼平の声音に目を開くと、またしてもケモ耳がペシャッとなっている風に見える顔とぶつかり、俺はフフッと笑ってしまうと
「何、笑ってんだよ~」
「イヤ……だってお前……」
「郁哉~~……」
ドサリと隣から俺の上に覆い被さり、体重をかけて抱きついてきた遼平の背中に腕を回して、ポンポンと叩く。すると遼平のモノが俺の太腿にグリッとあたって……。
「ッ……」
俺のもボクサーの中で半勃ちになっていて、それが遼平のお腹で圧迫されている。当然遼平には俺のも変化しているってバレているだろう。
昨日の夜だってお互いにボクサーを穿いたまま抱き合っていたが、体を触ったり撫でたりするだけでも気持ち良くなってリラックスしたらそりゃぁ勃つワケで……。それに遼平と触れ合ったのも本当に久し振りだったから、近くにある体温や匂いに興奮するのもしょうがなく……。
出来ればすぐにでも深くキスして、遼平を舐めたり味わったり暴かれたい欲求があったが、珍しく可愛い恋人から提案されたお願いだ。叶えてやりたいって気持ちが自分の欲を上回った。
お互いの欲を体に押し付ける形で抱き締め合っている状況を、遼平が少し上半身を上げて距離を取ると
「今日は郁哉の体中にキスしても良い?」
遼平も欲求を理性で押し込んでいる表情で俺に尋ねてくるから、俺は一つ首を縦に振る事しか出来ない。
俺からOKの合図が出ると、一度遼平はヘヘッと笑って軽く唇にキスをすると、そのまま頬に唇を移動させる。
頬から耳、首筋へと……、昨日の手の平や指での愛撫が唇に変わって俺の全身を愛おしそうにチュッ、チュッと音を立てて愛撫していく。
鎖骨下に唇が落ちると、チリッとした痛みに視線を下げれば、遼平が唇で強く吸った跡が赤く花びらのようになっている。
「……ッ、ごめん。何か、堪んなくなって」
チラリと言いながら俺の顔を見てきた遼平の顔が、思いの外雄の顔付きで俺は無意識にコクリと喉を鳴らす。
俺にぶつけたい欲を遼平も我慢してるんだ……。と、よりハッキリと認識してしまうとゾワッと背中に甘く緩い電流が流れて、はぁっ。と吐息が漏れ出る。
唇が鎖骨から胸に移動してきて、期待に立ち上がった乳首がキスしてと主張しているが、遼平はそのままフイと乳首を避けて脇腹やお腹、臍へとキスを落とす。
……………ッ、焦れったい。
優しい口付けはジリジリと快感を煽るだけで直接的な刺激にはならない。柔らかい感触が肌にあたる度ヒクリと体は反応するが、快感が蓄積されていくだけで歯痒いだけだ。
「郁哉、うつ伏せになって」
言いながら遼平の手が俺の肩口に伸びてコテンと体を反転させる。
そうして再び俺の上に遼平が乗っかってくるのだが、丁度俺の尻の辺りに遼平のモノがあたる位置で……。
意識するまいとするが、遼平が俺の背中にキスをする度に前屈みになった反動でモノの先端が尻の割れ目にクイックイッと刺さる感触に、無意識に俺は尻を突き出すような格好になっていたらしく
「郁哉……、チョッ……と煽らないで……」
はぁ。と遼平が吐息を吐き出しながら手の平で俺の浮いた腰をグッとベッドへと押し戻すので、その体になってやっと自分がそうしているだと自覚して俺は枕に顔を埋めて
「ごめん……」
くぐもった声を出して、遼平に謝る。
◇
三日目。
ソロソロ限界が近い。
昨日だって散々キスを全身に受け止めただけで、その後は普通に抱き合って眠っただけ。
そりゃぁ俺だってお返しとばかりに遼平の体中キスの雨を降らせたけど、もっと舐めて味わったりしたかった……。
それに普段体中キスされる事なんて無いから、自分も知らなかった所が気持ち良かったりして……。
まさか足首とか足の甲とかが性感帯だったなんて、知るわけ無いだろ!?
「………ッ色々、ヤバいよなぁ……」
仕事中も、フトした切っ掛けでここ二日間のイチャイチャを思い出して、腰に甘い疼きが走ったりして……。
中々にヤバい。
気にせず大丈夫なら会社のトイレで致してしまいたい程には欲求不満だ。
そりゃぁそうだろ? 二日前から始まった行為だが、その前から自分の欲を吐き出す行為はしてなかったのだ。それに上乗せしての遼平とのイチャイチャだし、時間を普段より使う分、地味に快感を引き出されている感覚に体が限界だと訴えかけている。
昨日も結構……、一時間位かけてお互いの全身にキスしてたし……。
まぁ、体は限界だよ? そりゃぁスッキリしたいって欲求は溜まってますよ? けど、気持ち的には満たされているって感じる不思議。
笑いながら、会話しながら、お互いを愛撫する行為に心は満たされている。
「んじゃ、お先です」
「お~、お疲れ~」
デスクのパソコンの電源を切って、同僚に声を掛けると俺は会社のフロアーを後にする。
今日は遼平と外で待ち合わせして、一緒に夕飯を食べて帰ろうと約束している。
今日の朝に一限目から講義があった遼平と一緒に支度しながらそう決めて、場所はあっちが探してくれるらしい。どこの店にしたのか楽しみに、俺は足早に待ち合せしている駅まで歩いて行く。
暫くラインで遼平とやり取りしながら歩くと、駅前で立っている遼平を見付けて手を挙げる。
「お待たせ」
「お疲れ~」
会社帰りのスーツ姿の俺に、遼平は部活終わりのラフな格好にスポーツバッグを斜め掛けにしていて、傍から見たら兄弟に見えるのだろうか?
「どこにしたんだ? 腹減って死にそうなんだわ」
「肉バルにした。俺も結構減ってる」
「お~、良いね肉バル。どっち?」
「こっち、ついて来て」
頭を振ってこちらだと言う遼平の後を付いて歩くと、探してくれた肉バルに到着。
ちょっとお洒落な立ち食いの店で、奥にはちゃんと座って食べれるスペースもある。外のテラス席も一応は椅子がある席だが、そこにも人がいっぱいで取り敢えず俺達は立って食べれるスペースに通された。
「座れなくてごめん……」
「え? イヤ良いよ。今日はずっとデスクワークだったし、逆に立ってる方が楽かも」
「本当に?」
「本当、本当。ホラ、どれにする? 俺は取り敢えずビール飲むけど」
メニューを見ながら幾つか頼むものを決めてスタッフの人に注文。
先にきたビールとジンジャエールで乾杯して何気無い会話をしていると、注文した品々ですぐにテーブルの上がいっぱいになる。
美味しい肉料理とビールからワインに変えて、久し振りの外食を遼平と堪能して家に戻って来た。
今日は一緒に風呂入ろうな~。と酒で上機嫌になっている俺を置いて、遼平は風呂の準備をしにバスルームへ。
俺はキッチンの冷蔵庫から水のペットボトルを取り出してゴクゴクと喉を潤し、リビングの定位置に座るとテレビを点けてのんびりしている。
「郁哉、スーツ皺になるよ?」
バスルームからリビングへ入って来た遼平に言われ俺は遼平の方に腕を伸ばすと、呆れながらも優しい恋人はジャケットを脱がしてくれる。
「ホラ、下も」
遼平に言われるまま俺は両足を伸ばして両手を後ろにして床に付くと、ベルトを緩めてくれた遼平が取りやすいように腰を浮かす。
脚から引き抜いたパンツとジャケット、ネクタイを持って俺の部屋まで持って行ってくれるらしい。
「ありがと~」
気分良く遼平の背中に言った後再び水を飲んでいると
「ちょっと早いけど風呂入ろう」
「ン~~~」
バスルームから呼ばれて俺はその場から立ち上がり向かうと
「脱げる?」
一足早く脱衣所で服を脱いだ遼平が俺にそう尋ねてくるから
「無問題」
と、答えてワイシャツのボタンをプチプチと外していく。次いではソックスとボクサーを脱いで風呂場へと入ると、シャワーで体を流している遼平が俺に気付いて
「ホラ、こっち」
手首を掴まれて遼平の側まで行くと、少し温めのお湯をかけられて
「湯船そんなにお湯溜まってないけど、頭洗ってやるから」
そのうち貯まるだろ? と、湯船に促される。
湯船も何時もより温めの温度になっていて、酒を飲んでいる俺にしてみれば有り難い。浴槽の端に首を乗っけて仰向けになると、頭にシャワーのお湯がかかる。それと同時に遼平の指が頭皮をマッサージするみたいに流してくれて、俺は気持ち良さに目を閉じて、はぁ~。と溜め息を吐き出す。
「痒いとこありませんか?」
楽しそうにそう言う遼平に
「大丈夫です……気持ち良い、です」
と、ホワぁとなりながら呟くと
「ン、じゃシャンプーしていくな」
手際良く頭を洗ってくれる遼平をチラリと見ると、遼平と目が合って
「ありがとな遼平」
気持ち良さに言いながら目を閉じる俺の唇に、チュッと柔らかい感触。
薄っすらと目を開けば、優しい笑顔の恋人の顔。
「まだしろ」
そう言ってキスをせがむと、チュッ、チュッ。と何度かキスをしてくれるが、それだけじゃもう満足出来ない。
「ま~だ」
お互いにクスクスと笑いながら何度も唇を合わせているが、俺が薄く口を開くと遼平が口の中に舌を差し入れてきた。
「ンぅッ!?」
まさか舌を入れてくるとは思って無かった俺は、ビクリと体を震わせる。そんな俺の反応に遼平は楽しそうに唇を離しながら
「今日からディープは解禁だからな」
「あ……そう」
俺がリサーチした内容は、五日目にセックス出来る事とそれまでは性器に触れない事、四日目まではイチャイチャ出来るって事位で、そのイチャイチャの内容までは記載されてなかったから、どのタイミングで何が出来るのかは遼平頼りになっていた。
今日からディープキスは大丈夫なのか……。ならもっとしたいし、して欲しい。
物欲しそうな表情で見ていたのか、遼平は俺の額にキスして
「風呂から上がったら、な?」
自分も我慢しているんだと、少し眉間に皺を寄せて言う遼平に俺も笑顔でコクンと頷くと、続きをしてもらう。
体はお互いに洗い合って風呂場から出ると、バスタオルで体を拭き合いボクサーだけ履いた状態ですぐに遼平の部屋へと向かう。
ベッドに横になってすぐにキスするが、遼平の舌が俺の唇をノックしてくるから開くと、ヌッと歯列を割って舌が口腔内へと侵入してくる。
「フゥ、ンぅ……ッ」
昨日からしたかった深いキスに、自分から積極的に舌を絡める。厚くて湿った感触が気持ち良くて迎え入れた舌を唇を窄めて吸うと、遼平も気持ち良かったのか鼻から甘い吐息が漏れている。それに煽られて遼平の口腔内へと舌を差し入れ自分がされて気持ち良くなる箇所を舌先で愛撫すれば、バッと両肩を掴まれ後ろに引かれる。
「ハッ……何、で?」
気持ち良かっただろ? と伺うような視線を向ければ、獰猛な獣じみた視線と絡んで息を飲む。
「郁哉……ッ」
興奮している遼平は、俺の名前を呼んで首筋に吸い付くと、両手で俺の腰を掴んでそのまま上へと撫で上げる。
たったそれだけの事なのに、我慢していた体はその刺激にさえもゾクゾクと疼きをまとって俺の体を支配していく。
「ンッ……ハ、ァ……」
敏感になっている体の快感を逃すように俺は喘ぎ声を出す。それに気を良くした遼平が両方の親指を乳首へとあてると、クリクリと円を描きながら押し潰してくるから……。俺はビクンッと大きく体を波打たせ喉を仰け反らせる。
「ハ、ぁ……郁哉気持ち良ぃの? 鳥肌立ってる……ッ」
ゾワリとくる気持ち良さに鳥肌が立ったのか、遼平は楽しそうにそう呟いて弄っていた片方の乳首に顔を近付けてフッと一度息を吹きかけ、舌先でチロチロと舐め始めた。
「遼、平……ッそれ、ヤバ……ッ」
咄嗟に遼平の頭に指を差し入れて髪の毛を掴んでしまう。遼平は俺がそうした事で引き剥がされると勘違いしたのか、舐めていた乳首を口に含んでジュゥッと吸い付き歯で乳首の根元を甘噛みしながら舌先でネロネロと舐ってくる。
「ぁ……、ふ、ぁッ、ンぅ~~……ッ」
乳首から脳髄にダイレクトに電気が走った感覚に、髪を掴んでいる手に力が入る。と
「ひもひいいか? おふぇのあたまおひつへてる」
乳首を口に含んだまま遼平は『気持ち良いか? 俺の頭押し付けてる』と上目遣いで俺に聞いてくるから、俺は掴んでいた手をパッと離して顔を赤め
「ぁッ……、ご、めん……そんなつもりじゃ……ッ」
と、恥ずかしさにフイと顔を横に向けると
「ン~~、解ってるよ。もっと乱れて欲しいなぁ?」
意地悪そうに乳首から唇を離して言う遼平は、今度は指先の爪でカリカリと引っ掻くように愛撫したかと思うと、次いでは親指と人差し指で摘んでギュウゥと圧をかけ、そのまま乳首を引っ張った。
「あ゛ッ!? ン、イ゛ッ、~~~~ッ」
ジリジリと追い上げるような快感から、急に強くなった刺激に俺は背骨をくねらせて仰け反ると、次いで力の入った臀部からキュンキュンと勃起したモノに熱が集まる。先走りでボクサーが濡れていると解る程気持ち良くて、俺はモジモジと内腿を擦り合わせていると
「郁哉、イっちゃったら駄目だからな?」
雄の顔付きで楽しそうに笑う遼平に、ゾクリと背筋がしなる。
◇
四日目。
今日はどうやってされるのかと考えて、仕事が手につかない。
出来ればもう抱いて欲しい。
昨日もあれから散々舌で体中舐められ、息も出来ない程キスされて……。けど一番辛かったのは射精出来ない事だった。
ディープキスでトロトロにされ、敏感になった体や乳首を重点的に愛撫されても、射精しそうになれば手や唇、舌は無情にも俺の体から離れていく。
それに人生で初めて乳首イキしそうになってしまった……。
ビリビリと乳首から全身に快感が広がり、重たく甘い疼きが腹の中で渦巻いていたところでキツく乳首を抓られたり、引っ張られたりしてガクガクと内腿が震え腹の中に溜まった熱が出ようとしたところで、またお預けを食らって……。
ずっとその繰り返しに最後はイキたいと泣きながら懇願したのに……、結局イかせて貰えず不完全燃焼のまま眠りについて仕事場に出勤。
寝る前に一度先走りでベトベトになったボクサーは履き替える羽目になったし、今日一日ずっと今日はどうされるのかばかり気になってしまって……。同僚からは『体調悪いのか?』なんて、心配までされてしまった。
休憩中にトイレの鏡で見た自分の顔は、目が潤んで少し熱っぽくて……。そんな顔凝視出来ずにバシャバシャと水で顔を洗ってから午後の仕事に戻ったが、フト気付けばやはりどうされるんだろう? って考えてる自分がいる。
俺……、こんなに厭らしい事ばかり考える質じゃ無いのに……。
一日そんな感じで終業時間まで過ごし、定時に素早くタイムカードを切るとどこにも寄り道する事無く家路に着いた。
遼平と向き合って食事している時も、一人で風呂に入っている時も、グルグル、グルグル今日は? 今日は? ってそればかりが頭の中を占めている。
風呂から上がり遼平の部屋へと入ると
「郁哉お疲れ様~、今日は仕事頑張った郁哉を俺が精一杯癒やすからさ」
部屋に入るとニコニコの遼平が、俺をベッドへと来るように手招きしている。
「え? な、ンだよ……?」
オズオズとベッドヘ近づくと、バスタオルを敷いたベッドが目に入り、ン? と遼平の顔を見れば
「パジャマ脱いでバスタオルのところに寝転がってよ」
「何?」
言われて素直にパジャマを脱いで、ベッドへと上がりながら尋ねた俺に遼平はニコニコの顔を崩さず
「今日はさ、郁哉にマッサージしようかと思って」
「マッサージ?」
ベッドヘ上がって、遼平の台詞に固まる俺を
「ン、そうそう普通のマッサージな。ホラ俺部活でたまに終わってからしてもらうんだけど、最近それ教わっててさ。それを郁哉にしてやろうかなって?」
「教わったのか?」
遼平からの意外な申し出に、そう聞くと
「そうだな。部活の顧問がたまにマッサージしてくれんだよな。それが結構気持ち良くてさ教わったんだ」
「そう、なんだ……」
「そうそう、だからうつ伏せで横になってよ」
マッサージとかいつぶりだ? てか、今日はそういう雰囲気じゃ無くって事か?
俺はバリバリそういうつもりで帰って来たんだけど……。なんだか一人だけで盛り上がっている自分が恥ずかしくなって、そんな自分を気付かれたくなくて俺はバッと遼平に言われた通りベッドヘとうつ伏せになる。
「で、郁哉にはオイルマッサージしてやるな?」
「は? オイル……ってそんなのお前、どうした?」
「ん? 昨日ご飯行く待ち合わせ前に買ったから」
「そうなん?」
「ん、結構種類あってさ。店員に聞いてリラックス効果高いやつにしてみた」
「ヘ~~」
結構本格的に考えてくれたんだな。と、少し嬉しくもあって、それならば素直にマッサージをしてもらおうと俺は両手を自分の頬の下に入れ込んで体の力を抜く。
「んじゃ、脚からいくな」
「ん、よろしく」
カシュカシュとポンプ式のオイルを手に出しているのか、何度か乾いた音の後に両手を合わせている音、そうして遼平の手の平が脹ら脛に触れる。
馴染ませるように足首、そこからまた脹ら脛へと手の平が少し強目に上下していく。
「郁哉、結構張ってんな」
「マジか~、ケドめっちゃ気持ち良いわ」
オイルでスムーズに滑る手の平の感触が気持ち良く、またオイルの匂いもキツ過ぎず良い匂いだ。何度か脹ら脛を重点的に揉まれた後、太腿の方へと手が伸びてくるが痛気持ち良い位の圧力で、俺は、はぁ。と溜め息を出す。
「気持ち良い?」
「ン~~、ケド、寝ちゃいそう」
「良いよ。そのまま寝てても」
「ン~~……」
反対側の脚も同様にオイルを塗って解されていく。普段あんまりマッサージとかにも行かない俺は、こんなに気持ち良いのか~、たまには仕事帰りにでも寄っても良いなぁ。なんて思いながらウトウトし始める。
脚が終われば次に腰、背中と程よい圧力をかけられながら遼平の手が俺の体を滑っていく。
「なぁ、なんか脚温かいんだけど?」
「あ、解る? コレ温感らしいよ」
「へぇ~、そんなのもあるのか」
塗られたオイルがじんわりと温かく、更に俺の眠気を誘う。
「よし、郁哉今度は仰向けになって」
「ン」
遼平に言われるまま体を半回転させて仰向けになると、また脚の方からオイルを塗ってマッサージされる。
月曜からの疲れを気持ち良く癒やされていると、ムズムズとした感触に体がピクリと反応する。
「ンッ……は、ァ……」
ん? なんだ……? それにこんな甘い声……。誰が……
何度か気持ち良さに意識が遠退いていた俺は、閉じていた目を薄っすらと開く。
「あ、目ぇ覚めちゃった?」
上から覗き込むように俺の顔を見詰めていた遼平がニコリと笑ってそう言った瞬間。
「ヘ、ぇ? ……ンァッ?」
ビリッと流れた甘い電流の感覚に俺は間抜けな声を上げてしまう。
「気持ち良いだろ?」
「ヒ、ン……ッ、何、して? ぁン……ッ」
遼平は俺にマッサージしてるのに、体が……変?
俺は回らない頭で目を見開いて、何をされているのか確かめるように顎を引いて下を見ると、オイルでぬるついた乳首を遼平の指先が上下に愛撫している。
その事実を視覚で捉えた俺は、ピンピンと弾かれる気持ち良さに先程よりも敏感に反応してしまう。
「ンンッ……遼、平……何? して……」
「イヤ、だからマッサージ?」
マッサージ? って、そんな乳首ばっか刺激しないだろ!?
そう反論したいのに、オイルでいつもと違った感触が快感を倍増させているみたいで……。立ち上がった乳首を摘まれて伸ばすようにシコシコと引っ張られ俺は胸を付き出す形で背中を反らせてしまう。
「あ゛ッ……、ダめ、だ……それッ、気持ち良い~~ッ」
「気持ち良い? もっと気持ち良くさせるな?」
手の平全体で胸を揉まれ、乳首が押し潰される感覚に唇を噛んで喘ぎを止めると
「ちゃんと言ってくんないと、解んないじゃん?」
そのまま手の平を臍まで滑らせたと思ったら、遼平は俺の脚の方へと移動して閉じていた脚を広げ、その間に座るとオイルを自分の手へ出し
「リンパも流そうか? 結構むくんでるし」
なんて言いながら太腿の付け根の方まで手を滑らせてボクサーの中へと手を差し込んでくる。
「え? ………ッな、何……」
リンパを流すって、どうやって? と聞く前に入ってきた指が鼠径部をスリスリと上下して、それに伴って親指が微かに玉にあたる感触に俺は上半身を捩らせて枕に顔を埋める。
「郁~哉、気持ち良い?」
上体を俺の方へと傾けて聞いてくる遼平の吐息が耳元をくすぐって、俺はビクリと首を窄めてしまう。
「顔見せてよ? なぁ、郁哉?」
甘い声で言われて、俺はオズッと枕から顔を離して遼平を見上げる。
「ハハッ。堪んないって顔してる」
俺の表情を見て満足したのか、止まっていた指が再び鼠径部を刺激し始める。それと同時に遼平の舌が先程の愛撫で勃起した乳首に伸びてピチャピチャと先端を舐めるから……
「ン、ぃ゛~~~ッ、ダ、メ……リョ……ヘ……ッ、一緒、は…無理」
「無理かなぁ?」
俺が無理って言ってんのに……ッ、何でお前が、疑問系で返してくるんだよッ!
ギッと睨み付けたいのに、気持ち良さに目に力が入らない。
ボクサーの中で完勃ちしている俺のモノは、トロトロと先走りを流しながら限界が近いのかビクビクと痙攣し始めていて
「遼、平……ッイ゛、ク……からぁ……も、……もぅ゛、イッちゃ………ッ!」
気持ち良さに持ち上がった腰が、ヘコヘコと上下に激しく揺れる。それと同時に内腿やお腹も痙攣し始め臀部がキュウッと中央に力んで寄ると、パッと遼平の指と舌が俺の体から離れる。
「んじゃ、マッサージ終わりな」
…………………。鬼かよ。
◇
五日目。
寝起きは最悪だと言っておこう。
ン十年振りに夢精しそうな夢を見て目を覚ました。
隣を見ればスカ~~ッと気持ち良さそうな寝息を立てて恋人の遼平が寝ていて、些か厶ッとしたが体の中心の掛け布団が持ち上がっているのを見付けて、あぁ……遼平も我慢してるんだ。と自分に言い聞かせる。
だけど、昨日の仕打ちは少し酷くないか?当初のマッサージは本当に気持ち良くて、仕事の疲れも吹っ飛ぶなと思っていたのに、最後の方は完全に騙し討ちにあった感じだ。
手を離されても数秒腰の動きや痙攣は止まらなかった。もう少しで気持ち良く達しそうになっていたところを寸止めされて、ジワッと滲んだ涙をチュッとキスで慰められただけ。しかも
『お~~、凄いじゃん。我慢出来て偉い、偉い』
と、頭をポンポンと叩かれて終わり。
あの後先走りやオイルで濡れたボクサーを着替えるのも敏感になった体には辛いものがあったし、ベッドに敷いたバスタオルでオイルを拭うのだって生地が肌にあたるだけで気持ち良くて……。
やっぱり納得いかね~ッ!
俺はスヤ~っと眠っている遼平の鼻を指で塞ぐ。何秒間後
「フゴッ……グッ、ハッ! ハァッ」
息苦しさに目を開いた遼平は、バシッと本能で俺の指を鼻から叩き落して大きく開いた口から息を吸っている。
「おはよ」
「カハッ……はよ……ッ、ング、何して……?」
「え? 悪戯?」
「………ッ、質悪ぃ、から」
遼平の台詞を無視して俺はベッドから起き上がると
「風呂……行ってくる」
一言そう言って、部屋から出て行く。
早く抱かれたい。
けれどその前に、準備する必要がある。
脱衣所でボクサーを早々に脱ぎ捨てて、俺はバスルームへと入るとシャワーのコックを捻ってお湯を浴びる。昨日のオイルがお湯を弾いているのを見て、ボディーソープで軽く洗い流し準備する。
「郁哉~、俺も一緒入る~」
中を綺麗にして、少し解しておくか? というところで、脱衣所から遼平の声。
「へ、ぇ?」
間抜けな返事を返すと、カラッと扉が開いて遼平が入って来る。
「え? イヤ、チョッ、と……」
まさか準備している時に入ってこられるとは思って無かった俺は、動揺して遼平から背中を向ける格好をとると
「あ、準備してた? 俺も手伝おうか?」
背中にピッタリとくっついてきた遼平の体にドキリとしてしまうが、次いでは尻にガチガチに硬いモノがあたって息を飲む。
「どこまでできた? 中まだ洗って無い?」
「そ、れは……出来てる……」
「そうなん? んじゃ、解そうか?」
ツッと伸びてきた指が尻たぶに触れて、ビクンッと臀部が揺れる。
「やッ……だ、大丈夫だしッ」
「ンなワケねぇじゃん? 久々にするんだぜ? それに俺もこんなにガチガチになってんのに……」
遼平は俺の手を掴むと、後ろ手に自分のモノに触れさせる。
「あ……ッ」
「解しもしないで、いきなりは無理でしょ?」
言いながら自分のモノから俺の手を離させると、シャンプーボトルを置いている棚から粘度の高いローションを手に取りパカッと蓋を開ける。俺はその音にクルリと遼平に向き直り
「じ、自分でするから……。今、お前に触られたら……絶対イっちゃうし……ッ」
俺はモゴモゴと呟いて遼平の手からローションを奪うと自分の手にトロリとローションを落とす。
と。
突然遼平から食べられそうなキスをされて、俺は壁に背中をぶつける。
「ン、ッ……ンンッ!」
キツく抱き締められながら、息もつけない程のキス。
舌がすぐに上顎を舐めねぶり、裏側の歯列をゆっくりと味わうように愛撫されて俺の膝が笑う。
腰に力が入らずにガクッとよろけると、伸びてきた腕にグッと支えられ唇を離される。
「ン、じゃぁ見せて」
「……へ?」
「郁哉が解してるとこ、見せて?」
首をコテンと傾けて可愛く言ってるつもりなんだろうが、目の奥がギラギラしてんだよッ!
ゆっくりと離された遼平の腕から、俺はズルズルと壁伝いに尻もちをつく形で座ってしまい、俺が何を言っても聞かないと解る遼平の眼差しに負けて、そのまま俺は自分の後ろを解す事になってしまう。
ローションの付いた指をゆっくりと内壁へと挿入させて、奥を開くように指を動かす。変に刺激しないように注意深く動かして、更に開くようにともう一本指を嵌め込むと、ハッ、ハッと荒い吐息を吐き出す自分の息遣いが響く。
入り口を重点的に縦へと開くように指を動かして、上から痛い位に感じる視線にチラリと目線を上げれば、俺の解している行為を見ながら遼平はユルユルとそそり立つ自分のモノを扱いていて……。
恋人の痴態にゾゾゾッと快感が全身を包んで、俺は両膝をキュッと合わせてその快感をいなそうとするが、中に入れた指を内壁が甘く締め付けて
「ン、ァ……」
堪らずといった感じで出てしまった喘ぎが合図になってしまったのか、遼平は屈んで中に入っている俺の指を手首を掴んで引き抜くと、無言で俺を立たせそのまま手首を掴んだまま自分の部屋へと連れて行く。
体も拭かずに出た俺達はビショビショのままで遼平のベッドへと上がると、すぐに押し倒され両脚を左右に割られる。
「……、ごめん。もう我慢の限界……ッ」
遼平も性急にチェストからゴムを取り出し勃起している自身に着けると、ゴムと一緒に出したジェルを手の平に出してそのままモノを掴んで扱き、開いた俺の蕾に押し当てて上下にクチュクチュと何度か擦り付けるとゆっくりと挿入してくる。
「ぁ、あ゛ッ……、~~~~♡♡♡」
やっと入れられる充足感に、シビビビビッと体中が喜んでいるのが解る。
「はッ……すっげぇ……」
遼平のモノを内壁がうねりながらしゃぶる感覚も自分で解って、もっと奥まで欲しくて絡み付きながら奥まで迎え入れる。
ピッチリと奥まで嵌まったモノが、そのままの状態で動かない。
「りょ……ヘ? ン、……な、んで……ッ?」
動かないんだ? と言わなくても解ったのか、遼平は俺の唇に軽くキスをしながら
「入れてから……ッ、三十分は……動けない、からッ……」
「マジで……?」
「マジ、で」
会話の振動でさえも響いて気持ち良いのに……、ここから更に三十分も動けないなんて……なんの罰ゲームだろうか?
俺の中でドクドクと脈打つ遼平のモノに、滅茶苦茶にされたい欲求が強過ぎて、俺は無意識に緩く腰を上下に動かしてしまう。
「クッ、ぁ……郁、哉……だからッ、動いたら、駄目……なんだって……」
緩く腰を動かしただけなのに、そこからビリビリと脳まで貫くような快感が走り、内壁が厭らしくクチュゥッとゆっくり吸い付くように遼平のモノへとキスする。
「あ゛……は、ぁ……グッぅ゛、ぅッ~~♡」
内壁が締め付けて遼平がギュッと俺を抱き締めた刹那。一瞬息を詰めた後くぐもった息を吐き出すと同時に、ビュッ、ビュルル~~ッ!とゴムに射精する感覚。
次いでは気持ち良さそうに、ハッ、ハァ~ッ。と遼平が息を吐き出して固まってしまう。
「………、狡い」
「ッ! ………ッしょ、しょうが無いだろッ! あんな締め付けられたら、誰だって……ッ」
耳元で恥ずかしさを隠す為に大きな声で喋る遼平は、ズルッと腰を引いて俺の中から出ていくと、素早くゴムを外してすぐに新しいのを装着すると
「……………、泣かす」
ボソリと怖い事を呟いて再び俺の中へと入ってきた。
今し方射精したばかりだというのに、既に遼平のモノはガチガチで……。そして一度達してしまったので、幾分か余裕さえも見えて……。
もしかしなくても俺、ヤバいんじゃ……?
◇
「イヤ……ッ動、か無い……でぇ……」
俺の予想通り、一度達した遼平はヤバかった。
再び挿入した遼平は、中で感じる俺の内壁にも堪えながら耐えると、お返しだと言わんばかりに挿入したまま乳首を甘噛したり、緩く腰を振ったりして俺を追い詰める。
けれど決して重く深くは腰を動かさない。先程言った通り三十分は挿入したままでいるらしい。
ユルユルと小さな火種をずっと絶やさずにいればどうなると思う?
それは徐々に大きな火になって、俺を内側から蝕んでいくのだ。
今は遼平に乳首に息を吹き掛けられただけでも中でイッてしまう。決定打の激しさが無い分射精には至らないが、メスイキを繰り返している俺は、頭に白いボヤが掛かる程度には何度もイかされ頭が回らない。
「動いて無いって……、自分で腰揺すってんの」
楽しそうに上からそう言う遼平の言葉に、自分で……? と思うが、すかさず伸びてきた舌先がピンピンピンと乳首を転がしビックンと体が跳ねる。
跳ねた振動でグリリッと遼平の怒張が前立腺を刺激して、俺はハクッと喉を仰け反らせガクガクと体を揺らす。
「あ゛~~~♡♡ 、イ゛ッでる゛……気持ち゛……良い゛~~♡」
「はぁ、可愛い♡」
言いながら遼平は俺の耳を舐め、空いている両方の指で乳首を弾くとギュウゥッと強く捻り上げる。
「乳首ッ♡ 、もっと、して……ッ♡ い゛っぱい……イジメて♡♡」
「もっと酷くされたい?」
「ンぅ……、して♡」
気持ち良い事で頭がいっぱいで、自分が何を口走っているのか最早ワケが解っていない。
遼平は俺の望み通りに、乳首をシコシコと上下に扱いて爪でカリカリすると、先程と同様にギュッと力を入れて摘む。
乳首をされる度に連動して内壁が遼平のモノをしゃぶって締め上げると、亀頭部分がグッと前立腺を圧迫する。それを何度も何度も繰り返しているのだ。
「あッ、あ゛~~~~……♡♡♡」
何度目かのメスイキで、体中の力が抜けてクタッとした俺に、遼平が緩く腰を動かせばビクビクと過ぎた快感が俺を襲って再び体に力が入る。
「……、ソロソロかな?」
遼平が呟き、ゆっくりと腰を引く。そうしてドチュンッ! と勢い良く怒張したモノが内壁を擦った途端、俺のモノからビュルル~ッ! と勢い良く白濁が溢れ出る。
「カッ、ヒュッ……♡ ぁ゛~~~ッ、イ゛、けたぁ~♡♡♡」
尿道から射精する気持ち良さにビクビクと全身が震え、俺は遼平の首に両手を回す。
「動くな?」
「はぁ、ぁ……♡ 遼、平ッも……イク?」
「ン、俺も……限界」
「一緒……イこ? ンぅッ♡」
「郁哉……」
パンッ、パンッ、とお互いの肌が打つかる音に煽られ、遼平の動きが早くなる。
俺の膝裏を自分の腕で持ち上げ、腰の位置が高くなると、叩き付けるように腰を打ち付け始める。その重く深い動きに俺はハクハクと空気を噛み締め、目の裏でバチバチと火花が飛ぶ。
「気持ち良いか?」
ハァッ、ハァッと荒い息に混じってそう聞かれ、俺は首に回していた手に力を更に込めると
「ぎ持ち、良い゛……♡♡ 遼平……キス、嵌めッじで……♡♡♡」
言い終わるタイミングで舌を伸ばすと、中に入っている怒張が更に質量を増す。
遼平はグイッと俺を起き上がらせると対面座位の格好になり深くキスしながら俺の腰を片方の手で掴み、もう片方をベッドへと伸ばして腰を振る。
俺もベッドヘ足裏を着け、遼平の体をしゃがんで跨ぐ形にすると恋人のリズムに合わせて上下に腰を振る。
「ンンぅ♡♡ フゥン……♡ ~~~~ッ♡♡♡」
唾液を交換しながら、内壁の奥を捏ねられ何度目かのメスイキでギュウゥッと遼平のモノを食い締めると
「グ、ウゥ……ッ」
堪らずといった感じで遼平が呻くので、強弱をつけて内壁でしゃぶれば再びドサリと押し倒されてしまう。
「ハッ……、も……イク……ッ」
「ンぅ……ッ、イッて? 俺ン、中……ビュ~して……♡」
俺の台詞に煽られて遼平の動きが早くなる。
「あ゛~~、イッ、ク……、イクッ、イクッ!」
「俺も……♡♡ ッあ゛、イ゛ッグ……♡♡♡」
もう一度俺の中で吐き出す感触を味わいながら、俺は意識を手放した。
◇
目を覚ましたのはお昼過ぎ。
起きた直後に腹の虫が鳴って、俺より先に起きて遅めの昼食作ってくれていた遼平が、俺を起こしに来て笑われた。
「体、綺麗にしてくれてたんだな」
「爆睡してたから」
「ごめん……」
「イヤ……、ぶっちゃけさ三日目位からあんまりよく寝れて無かっただろ?」
「バレてたか……。ムラムラし過ぎてて……」
遼平の作ったパスタを食べながら、白状した俺に苦笑いをしながら
「大丈夫。俺も同じ理由であんま寝れて無かったから」
遼平も俺と同じ理由で睡眠不足だったのかと、少し安心していると
「で、どうだった? ポリネシアンセックスした感想は?」
興味津々で聞かれ、俺は視線を上へと向けてしばし考えると
「気持ち良かった。……、ケド遼平とするセックスはどれも気持ち良いからな……」
「グッ……何、その答え」
「え? 感想、だろ?」
「狡ぃンだよ……」
言いながらフイとそっぽを向く可愛い恋人に、俺はフォークに巻き付けたパスタを差し出すと
「この後は普通に抱いてくれるんだろ?」
ニコリと微笑みながら言った俺に対して、パクリと差し出されたパスタを食べながら
「その前に郁哉の部屋の掃除しないとな?」
と返され、俺はあ゛~~~。と嫌そうな声を上げる。
「俺も手伝ってやるし、それが出来たらご褒美あるから」
年下の恋人に優しく諭されながら言われて
「頑張ります……」
弱々しく返事をした俺の頭をポンポンと優しく遼平が撫でる。
おしまい。
「あ~~~……のさ、ちょっと話があるんだけど……」
いつものように俺、高橋郁哉は持ち帰っていた仕事をリビングのテーブルに置いたノートパソコンで片付けていた時に、幼馴染みで四つ年下の恋人、山﨑遼平の台詞で手を止める。
言いにくそうにしている遼平の態度で、俺は一瞬にして、あぁ、この時がきてしまったのか……。と心の中で神様に両手を組んでいた。
「何、改まって……? 怖ぇ~んだけど……」
同棲して三年だが、付き合った期間を含めると五年。遼平が高校生の時から付き合っていて、俺が社会人になる時に一緒に暮らし始めた。幼馴染みという事もあり、遼平の両親も俺と一緒に住む事に対してさほど何も思う事無く了承してくれて……、結構スムーズに同棲がスタート。
最初の頃はそりゃもう楽しくて、慣れない仕事に悪戦苦闘しながらも、家に帰れば遼平が居ると思えば頑張れたし若い遼平の性欲にもついていけてたんだけど……。
段々仕事にも慣れて、この生活リズムにも慣れてくると遼平が居るのが当たり前になって、家族みたいな存在? って言えば良いのか……。勿論、遼平の事は好きだから一緒に暮らしてるんだし、俺からその……別れを切り出すとかは考えた事も無いワケで……。
ケド、遼平は? って考えた時に……ちょっとゾッとしたよね。
先週、やっと仕事の繁忙期が終わって、久し振りに一人で友達が経営している飲み屋に顔を出した時に、そんな事を彼女から言われてドキリとした事を思い出す。
『仕事にかこつけて恋人を蔑ろにすると、他で素敵な人を見つけちゃうかもね♡』
この彼女は俺と大学が同期の奴で、大学の時から何かと相談に乗ってもらっている奴だ。だから遼平の事も知ってるし、俺達がそういう関係だっていうのも理解している。
社長の彼氏にお強請りして飲み屋をしてる一見オットリした感じの負けん気が強い奴。誰に対してもズバズバ言うから好き嫌いがハッキリ別れるタイプで、俺は嫌いじゃない。
『え!? …………、イヤイヤ俺達は大丈夫だろ』
その時も一緒に来てない遼平の事を気にして、面白がって脅してるんだと……。冗談言うなよ。なんて返した俺に
『アンタから色々聞くけど、私ならそんな彼氏嫌だわ~。キープしてて他に良い人見付けたらすぐに切るわね』
…………………。
言われて俺は、一抹の不安が過ぎる。
本当に最近ゆっくり遼平と会話したのはいつだった? とか、一緒に出掛けた記憶も最近のは全く思い出せないとか……。
え? 俺等って最後いつセックスしたっけ?
『アンタ……本当、遼平君が可哀想過ぎるわ……。久し振りに仕事が一段落しても、恋人放っといて飲みに来るとか……』
追い打ちをかけてくる友達の台詞を聞きながら、俺の顔は赤から青に変わる。
仕事が慣れてくると、一人で任される事も多くなって……、それに伴って遼平を構う回数も少なくなった。それでも最初は俺なりに、誘われれば受けてたけど……、それも段々とフェラになって、最近じゃお互いのを抜き合うだけになってた気が……。
先日までは繁忙期プラス、プロジェクトチームに参加してた事もあり、家の事まで遼平に頼りっきりで……。
えっ? ……俺、マジでヤバいかも……。
『やっと自覚した?アンタ、マジでヤバいわよ』
走馬灯のように友達に言われた一言が蘇って、俺はゴクリと喉を鳴らす。
テーブルを挟んで俺の真正面に静かに遼平は座ると、言い辛い事があるのかモジモジしている。
あぁ……、止めてくれ。そんな顔を俺に向けるんじゃ無い。
繁忙期が終わって、家の事は協力出来てただろ? ゴミ出しとか。……まぁ、たまに出し忘れて遼平に出して貰ってたけど……。
洗濯とかさ。……干しっぱなしで寝こけてて、遼平が取り込んでくれたり……。
あ、食べ終わった後の食器洗い……、何枚か皿、割ったな。
思い返してみて余計に遼平の負担が増えた事を思い出すと、俺はガクリと項垂れる。
「ちょ……、どした? いきなり項垂れて」
俺が項垂れてパソコンに額をくっつけそうな勢いに、遼平は途端に心配そうな声を上げるが、俺はそのままの状態で
「イヤ……、何でも無い」
………………。そうだ、言うなら早い事言ってくれ!こんな状態をずっとは俺のメンタルが保たないっ!
遼平に呟いて先を促す。
早く言ってもらって終わらせたい。もし、遼平が別れ話をしたとしても、終わらせなければ良いだけだ。なんて、自分勝手な気持ちが持ち上がる。
何も言わない遼平に、俺は顔を微かに上げてチラリと上目遣いに髪の隙間から覗き込むと、少しだけ困ったような表情で俺を見ている遼平の顔があり、ドキリとしてしまう。
その顔……。そんな顔、俺がさせてるのか?
途端にツキンと傷んだ心臓に、俺は膝に置いていた手をギュッと握り込むと
「何だよ……話って……」
あぁッ、あぁ~~……。自分から聞いてしまったッ! コレもう逃げられないやつッ!
自分で自分の顔をビンタしたい衝動に駆られるが、グッと堪えて遼平の言葉を待っていると
コトッ。
テーブルの上にスマホを置いて、遼平はそれを俺の方へスッと差し出す。
「あの……さ、コレ……試してみないか?」
差し出されたスマホの画面が明るく光っていて、俺はズイッと身を乗り出し画面を覗き込むと
『マンネリになってしまったカップルにオススメ! ポリネシアンセックスの手引き♡』
「……………、ポリネシアンセックス?」
聞いた事も無い言葉を呟く俺に、遼平は途端に喋り始める。
「イヤ、ホラさ……、最近郁哉とゆっくり出来てね~なと思って……。俺なりに色々考えたんだけど、たまたまネットサーフィンしてる時に……コレが目に付いてさ……」
ん? まぁ、二人でゆっくりは出来てなかったな……。主に俺が飲みに行ったりとかしてたし……、誘われても言い訳ばっかして断ってたし、な。
別れ話じゃ無い事が解って、俺は安堵に細く長い溜め息を遼平に気付かれないように吐き出し
「……、まぁ最近は出来て無かったよな、ゆっくり……」
「だろ? ……だからまぁ、良い機会かなって思って……どう?」
遼平はお伺いを立てるように聞いてくるが、それがまるで構って欲しい大型犬に見える。ケモ耳ペターンなのに、尻尾ブンブン振り回してるように見えるのは俺だけか? それに、グッ……、その顔に俺が弱い事知ってんだろッ! あざと可愛い上目遣いをするんじゃありません!!
遼平は俺よりもデカい体格をしている立派な男だ。付き合い始めた高校生の時は、まだ俺の方が身長的には大きかったものの、途中から入部したバスケを始めてからグングン伸びてアッサリ追い越されてしまったし、毎日のように筋トレも欠かさないので体格も普通に遼平の方が大きい。
大学生の今も部活はバスケ部で、よくモテているのかバレンタインの時とかはえげつない程のチョコを持って帰ってくる。
一応、お付き合いしている相手はいると言っているらしいが……。
性格も明るく大らかで、俺がおっちょこちょいのドジで抜けてる所があるから、よく遼平に迷惑をかけるが、怒られたり嫌味を言われた事は無い。
何でも『イイヨ』って言ってくれるケド、締めるとこはキッチリ締めるし、セックスの時は……滅茶苦茶雄って感じで……。
「まぁ……ケド、そのポリネ、シアン? ナンチャラって知らないし……どういう感じのヤツ?」
「だよな……で、郁哉に聞きたい事があるんだけど」
「何だよ……」
そのポリネシアンナンチャラをする事とは別に、まだ俺に言いたい事があったのか? と、俺は身構える。すると、そんな俺の反応に遼平は少し苦笑いする感じで
「イヤイヤ、普通に今週は土日休みなのかなって聞きたいだけ」
「あ……休み? まぁ、繁忙期は過ぎたからな普通に土日休みだけど?」
「そっか、なら大丈夫」
「何が大丈夫なんだ?」
遼平の真意が掴めず聞き返した俺に、遼平はスマホをトントンと指で叩きながら
「コレさ、五日目まではセックス出来ないんだよね」
「……は?」
遼平の台詞に、トントンと叩かれているスマホの画面を俺はもう一度覗き込む。そこには
『一日目から4日目まではお互いの体を愛撫するだけに留め、最大限快感のメーターを高めておきましょう!』
なんて文言が書かれている。
「四日間は愛撫だけ……」
ボソリと呟いた俺の言葉に
「しかもその間は性器に触れられないって」
「え? ……無理だろ……」
素直に言った俺に、クスリと笑った遼平に視線を向けると、どこか嬉しそうな顔とぶつかる。
「何だよ……その顔……」
「イヤ、無理なんだと思って……」
呟かれたが、返す言葉が見付からず黙った俺に遼平はニンマリ顔のまま
「じゃぁ、明日から始めて土曜にするって事で良い?」
と確認をとってくる。
今日は月曜日。火曜の明日から始めて、セックスするのは土曜という事になる。
「まぁ……問題無いけど……」
了承するが、果たして上手くいくのか? という不安も心の中ではあった。
◇
一日目。
「んじゃ、一緒に寝ますか?」
「お、おぅ……」
晩飯や風呂を済ませた後、一緒にリビングで映画を見終わり遼平からそう声をかけられる。
今日から昨日提案されたポリネシアンセックスなるものを試すのだけれど、今一どういうのか解らなかった俺は、仕事の休憩時に一人で検索してどういうものなのかリサーチしていた。
普通のセックスやスローセックスとは違い、精神的繋がりに重きを置いたものになるらしい。
それに期間が長く四日間はお互いにイチャイチャするだけで、遼平も言っていた通り性器に触れる事はNG。その他の部位を愛撫したり、会話したりを楽しんで今までよりもより絆を深めていくって感じなんだと。
で、五日目でやっと性器に触れたり行為に及ぶというワケだ。
その一日目が今日からなんだが……、今日から五日間俺は遼平の部屋で一緒に寝る事になっている。それはまぁ……、遼平の部屋のベッドがアイツサイズでデカい事が一番の理由なんだけど……。本当に最近は遼平と一緒に寝る事も無かったから変に緊張するというか……。
同棲を始めた当初、遼平から寝室は一緒にっていう提案があったんだが、俺はそれを丁重にお断りしていた。
俺が社会人になってからの同棲って事もあり、仕事でどうしたって遼平よりも遅くまで起きて、朝は遼平よりも早く家を出る事が多い。そうなるとゆっくり寝かせてやれね~よなとか、俺なりに色々考えて出した結論なんだけど……。
それに、もし遼平の友達やおじさん、おばさんとかが泊まりに来た時の事を考えたりしたらその方が良いって結論になったワケだ。
ケド、遼平はこの家に友達を呼んだ事は無いし、泊まりにも行った事が無い。遼平のおじさん、おばさんも中に入ってお茶を飲む事はあっても泊まりまではした事が無いし……。
前に一度遼平には『友達のトコに泊まりに行っても良いんだぞ?』と言った事があるが、そう言った途端に何故か不機嫌になって、泣いても離してくれなくて抱き潰された事がある。だからそれ以降は何も言わずに、遼平のしたいようにさせているけど……。
なんかさ、勿体無ぇって思ってしまうのは俺だけかな? 折角気の合う友達が出来ても、遼平の中では俺が最優先。そりゃぁそう思ってくれたり、思うがこその行動はメチャメチャ嬉しいんだけどさ、その歳でしか出来ない楽しみ方も勿論あるワケじゃん? 羽目外し過ぎるのもどうかと思うけど、遼平に限ってそんな事にはならないって信頼してるから、たまには目一杯友達と遊んで欲しいって気持ちもあるワケ。
『俺なりにちゃんと楽しんでるし、遊んでる』って言われてしまえば、それ以上俺的には何も言えないし……。
「郁哉? どうした?」
いつまでもリビングでまったりしている俺に、遼平が立ち上がって俺を見下ろしながら言ってくるから
「イヤ、何でも無い。寝るかぁ……」
ヨッコイショ~。と重い腰を上げて立ち上がり、遼平の後に続いて部屋へと向かう。
ドアを開けて中へと入ると、綺麗に整頓された部屋がお出迎えしてくれる。本当、俺の部屋とは大違いだよな。と、入る度に同じ感想を思ってしまう。俺の部屋は仕事の書類が散らばってたり、雑誌が山積みになってたり、テーブルの上には飲みかけのペットボトルがあったり……。
イヤ……、思い出すまい。
きちんとベッドメイクされている上に腰を下ろした俺の目の前で、遼平は早速着ていたスウェットを脱ぎ始めていて
「郁哉も早く脱ぎなよ」
「ん? ……おぅ」
スウェットから覗いた逞しい体躯。
運動部らしい鍛えられた腹筋、血管の浮いた逞しい腕に、ハリのある太腿。
久し振りに見る恋人の裸に目が逸らせなくなった俺の視線に気が付いたのか
「郁哉?」
遼平がキョトンとした顔で俺に呟いてきて、俺はハッとなり急いで遼平から視線を逸らす。
俺が不自然な感じで目を逸した事で何を勘付いたのか、遼平は側まで近付いて来ると
「脱がせて欲しい?」
ニコニコとした笑顔を浮かべながら俺が着ているパジャマに手を伸ばしボタンを外そうと指先を動かすので
「ッ……じ、自分で」
出来る。まで言う直前で遼平はパッと指先を引っ込めると
「早く入ろう?」
スッと俺の横からベッドへと上がり、イソイソと奥まで詰めると掛け布団を捲って俺が来るのを待っている。
俺は焦りながらモタモタとパジャマのボタンを外して、スルリと肌から布を滑らす。そうしてパンツも脱ぎ捨てると、遼平が空けてくれているスペースへと潜り込むと
「はぁ~……、なんか久し振りだなこうやってるのも……」
隣に俺が入るとすかさず遼平の腕が俺の頭の下に伸びて腕枕される。
「だな……」
………………本当に久し振りだと思う。こうやって遼平と同じベッドに寝るのも。
クルッと俺は遼平の方へと向きを変え、ジッと俺を見ている視線と目が合う。
「へへッ」
嬉しそうに口元が緩みっぱなしの恋人の顔を見て、あぁ、遼平も寂しかったのかな? なんて思ってしまう。
結局、俺の事を優先させてしまうって事は遼平には我慢させている事が多いって事だ。
俺も久し振りに遼平の温もりに包まれ、安心している部分もあるし……。
ブワッと感情が溢れて、俺は腕枕されている腕にスッと手の平を置いてスリスリと撫でると
「ッ……」
途端に遼平の息が上がった感じがして、少し伏せていた視線を上げれば俺に対して欲情していると解る表情がある。
遼平のそんな顔を見るのも久し振りで、自然とゴクリと喉を鳴らしてしまった俺に対して、少し失敗した苦笑いを浮かべながら
「コレ……今日はキスも出来ないから……結構辛いな……」
欲求と理性のせめぎ合いを苦笑いで誤魔化そうとしている顔が、逆に可愛くて胸をギュウゥッと締め付けられる。
ぅ゛あぁ~~~ッ、ワンコがお預け食ってる顔って、なんでこんなに可愛いンだよッ!
あるはずの無いケモ耳が頭の上でペショッてなってるように見えるのは、俺だけか!?
ワックスでセットしていない色素の薄いフワフワな髪を撫で回したい衝動に勝てず、俺は腕から手を離して遼平の髪に指を差し込むとワシャワシャと左右に手の平を振る。
「チョッ、何だよ郁哉~」
構われて嬉しそうに声を上げる遼平の反応に気を良くして、俺が際限無くワシャワシャしていると笑顔の遼平に手を掴まれて逆にガバッと抱き込まれる。
「うぉッ、遼平苦しいって!」
腕枕していた手が俺の肩口を抱き込み、もう片方が背中に回って力強く俺を抱きしめるから、俺は笑いながらも苦しい事を投げ掛けるが、遼平は無言のまま脚まで絡めてきて身動きが出来なくなる。
「お~い、遼平。聞いてんのか?」
俺も片腕を遼平の背中に回してポンポンと叩くが、首筋に埋められた顔から何かを言う事無く暫く遼平は黙ったまま。
俺は恋人の好きなようにさせ、ポンポンと叩く動作から背中を撫でるように変えて甘えさせている。首筋の所が遼平の息で熱く感じられるようになってきた頃、やっと遼平は顔を上げて
「俺さ……、別れたくねぇよ?」
ボソリと呟いた突然の台詞に、俺はバッと顎を下げて遼平の顔を覗き込む。
「え? 何を……突然……」
視線を合わせた先に揺れている目とぶつかって俺は息を飲む。その台詞をお前が言うのか? と思ったが、次いではそう言わせてしまったんだと俺は眉間に皺を寄せて
「……ごめん、な?」
「なんのごめんだよ……。図星だったって事か?」
「イヤイヤ、ンなワケね~しッ! どっちかと言えば、俺の方が遼平に聞く方だろ?」
「そぅ、なのか?」
「そうなんですよ」
溜め息を吐き出しながら、俺は遼平の頭の上に顎を乗っけて今度は自分の方へと抱き寄せると
「お前に甘え過ぎて、今回遼平から意味深にコレの提案される時に別れ話かと思ったしな」
「マジで?」
「マジで。別れ話されたら全力で拒否ろうとは思ってたから、コレで良かったって安心したし……」
言い終わって頭の上に乗せていた顎を外し、再び遼平の顔を覗き込んでからここはキスの一つでもするところだろうと、俺は顔を近付ける。
「厶ッ……」
だが、近付く速度と同時に伸びてきた遼平の手の平で口を塞がれ
「だから、今日はキス出来ないんだって」
と、ニッコリ笑いながら言われてしまえば
「ムグムムッ、ンムム、グンムムンンムムッ」
嘘だろッ、ここは、キスするとこだろッ! っていう言葉は、くぐもって台詞にならない。
「ハハッ、何言ってんのか解んね~しッ」
「……ッ、言わせなかったんだろッ!」
プハッと手から逃れて言う俺に、一瞬後には遼平の表情も笑いから真剣なものになって
「俺もしたいけど、折角郁哉が提案に乗ってくれたし……今日は我慢な? 明日からはキス出来るから明日、一杯しようぜ?」
「ぅンム~……」
最後にニコリと笑顔で言われてしまえば、俺に拒否る事なんて出来ない。遼平に言われて素直に従う俺に、スススと手の平が伸びて俺の背中を優しく上下に撫でると
「今日は沢山話して、郁哉の体をナデナデしたいなぁ~」
甘えた声で囁かれ、ボッと自分の顔が赤くなるのを感じるが、俺も遼平の体に手を伸ばして
「俺も堪能するからなッ!」
少しの恥ずかしさをそう言う言い回しで誤魔化し、遼平の肩口に手をあてる。そのまま逞しく張った胸筋へと滑らせてまた元の肩口まで戻ると、今度は首筋から顔に指先で辿って遼平の顔をマジマジと見詰める。
高校生の時の遼平はまだ幼さを残した顔立ちだった。顎も今よりは細く頬も少しふっくらしていた。けれど今はもうその面影は無い。
何時の間にかしっかりと髭も生えるようになった顎は細くは無いし、頬もふっくらよりはシュッとしたって表現の方が似合う。垂れ目気味の奥二重に長い睫毛、筋の通った鷲鼻。唇は俺よりも厚く、キスすると弾力が気持ち良い。
眉毛は一体いつ整えているのか細くも太くも無い一本眉で、綺麗に切り揃えられている。
「……………、男前だよなお前……」
こんなにもマジマジと見詰める事も無かったから、改めて恋人の顔を見て溢れた台詞に、遼平は嬉しそうに口元を歪めて
「郁哉のタイプの顔で良かった」
と、背中に回した手を俺の頬に持ってきてスリッと撫でる。
ウン。タイプなんだよな、お前の顔。それに性格だって俺好みだしさ、言う事無いんだよ……。
「俺も郁哉の顔、タイプだよ。綺麗だし」
「女顔って言いたいんだろ?」
俺は遼平とは違って女顔だ。
顎も細ければ鼻筋も通っているとは言え少し小ぶりだ。目も一重のくせにデカくて睫毛が下向いてるから、よく目の中に入って悶絶する。眉毛も半月形。格好良い遼平みたいな眉毛が良かったが、この顔に遼平みたいな眉毛も変だろ? 唇は小さいし薄い。
「女顔かぁ? 綺麗系だろ?」
「体だって、お前みたいに筋肉付かないし……」
言いながら再び胸筋から腹筋へと手を滑らせていくと
「それだって体質だろ? 俺は好きだけどなぁ」
俺同様に遼平も俺の胸から腹にかけて手をあてて撫でると、プニッと腹の肉を摘んで
「太っても痩せても無い、良い体じゃん?」
と言ってるが、摘んでんだよ。俺の腹をッ!!
バシッと摘んでいる指を払い落としキッと睨み付けるが、睨んだ先の顔はへニャリと嬉しそうな顔で……。
「なんつ~顔してんだよお前……」
遼平のそんな顔を見ては、睨む事も出来ずに呟くと
「イヤ~、本当久し振りだからさこうやって郁哉とイチャイチャ出来るの」
「まぁ……そうだな」
気不味そうに呟く俺に苦笑いを浮かべて
「嫌味じゃ無くてさ。プロジェクトチームに入って忙しそうだったし、後半は繁忙期と被って更に大変そうでさ……体壊すんじゃ無いかって結構ヒヤヒヤしてたし」
「けど……お前に甘えて家事とか諸々任せっきりだったし……構って、やれなかったし?」
モゴモゴと口の中で呟いた俺に遼平は再び手の平で俺の体を撫でながら
「ン~~、ケド頑張ってんのにさ、色々しろとは言えないし。それに俺がしたかったから……。まぁ結局不安になってたんだけど……」
「ごめんな……」
「も~~~、謝るのは止めよ?」
グリグリと俺の肩口に額を押し当てて首を振る恋人の頭を、俺も手の平で優しく撫で返し心の中で沢山のありがとう。を呟く。
◇
二日目。
何だかなぁ~。
今日一日、仕事でのパフォーマンスがすこぶる良かった俺は、何気に立ち寄ったコンビニで遼平の好きなスイーツを見付け、買ってから帰路についている。
昨日はお互いに言いたい事を言って、終始体を触ったり撫でたりしただけ。
どの位してたっけ? 多分……一時間位か?
あの後も思い出話や、これからの事を話してそのまま気持ち良く寝てしまって……。
朝もスゲ~スッキリ目が覚めて仕事に行けたっけ?
何となくずっとモヤモヤしていた遼平に対しての不安や自分の不甲斐無さとかが解消されたって事や、久し振りに恋人の肌の温もりに包まれて安心して寝れたって事が大きく影響してんだろうけど…。
イヤイヤ、単純だな俺。
朝も俺の方がやっぱり仕事で遼平よりは早く起きなきゃなんなくて……、コソコソ起きて支度してたら気配で解ったかのか遼平が目を覚ましてしまった。
『悪い……、起こしたか?』
申し訳無さそうに小声で喋る俺に、フンワリと笑顔で
『イヤ? 見送り出来るの嬉しいけど?』
なんて……。イケメン過ぎるだろ!? 俺の恋人は本当に俺を甘やかすのが上手いなぁ。って、朝から関心しちゃっただろがッ!
…………。俺より年下なんだよ。なのにあの包容力。何食べたらあんなに良い子になれるんだよ? 俺もなりて~よ。
朝からのそんな返しで俺の心を軽くしてくれて、宣言通り手を振って俺を見送ってくれ……。そりゃぁ、仕事に張りが出ましたわなぁ。
本当……捨てられないように頑張ろ、俺。
「ただいまぁ~」
マンションの玄関を開けて、そう部屋の中へと挨拶を言いながら靴を脱ぐ。
「お帰り~」
ガチャッとリビングの扉を開いて、俺を迎えてくれる遼平にガサリとコンビニの袋を差し出すと
「何?」
「お前の好きなの買ってきた」
俺の言葉にガサガサと袋の中身を覗いて
「うぉ~めっちゃ嬉しい。ありがとう、ご飯の後で一緒に食おう?」
「ン」
取り敢えず自室に入ってからスーツを掛けて、パジャマに着替えてリビングに向かう。
テーブルの上には夕飯が出来上がっていて
「腹減ったよな。食べようぜ?」
キッチンから残りのおかずを運びながら俺に言ってくる声を聞きながら、俺は定位置に座ると
「よし、食べよう。頂きます」
「頂きます」
お互いに手を合わせてそう言って、夕飯を向かい合って食べる。
楽しく夕飯を食べ終えて、食器を俺が洗った後風呂へ。一緒に入るか? と誘ってはみたが遼平は俺が帰って来る前に入ったらしく、一人で足を伸ばして湯船に浸かっている。
ホカホカになって風呂から出て、ガシガシとタオルドライしている手を止められ遼平にドライヤーで髪を乾かしてもらい、二人でバラエティー番組を見ながら俺が買って帰ったスイーツを頬張った後
「んじゃ、ソロソロ寝ますか?」
テーブルの上に乗ってあるスイーツの残骸を袋に入れながら遼平が俺の顔を見詰める。
「そうだな」
お互いに好きなバラエティー番組を見終わってテレビを消すと、俺は定位置から腰を上げて一つ伸びをする。
「先俺の部屋行ってて」
「ン~~」
キッチンにゴミを捨てに行った遼平に言われ、俺は一足先に恋人の部屋へと入るとそのままベッドへとダイブし、ウゴウゴと体を動かして掛け布団を下から自分の上へと掛け、溜め息を吐き出す。
はぁ~、今日も終わったなぁ。明日も仕事か……。
嫌だな。と考えていると遼平が部屋へと入って来て、ゆっくりとそちらに視線を動かすと、遼平は着ていたスウェットを脱ぎ始めていて……。
ア、俺……パジャマ脱いでね~わ。
ヤベッと表情に出ていたのか、遼平は俺の顔を見てすぐに掛け布団を剥ぐと
「俺が脱がせても、良い?」
逆にニンマリと笑われ、ドキリとしてしまう。
「まぁ……良い、ケド……」
ニンマリと笑った顔ではあるが、目の奥で遼平の欲望が見て取れて心拍数が上がる。ギシッと音を立てて片膝がベッドへと上がると、そのまま遼平は俺の体を跨ぐ形で上にきた。
「んじゃぁ、脱がせま~す」
明るく言っているが微かにコクリと喉が鳴ったのを俺は聞き逃さない。
伸びてきた指先が器用に動いて、着ているパジャマのボタンを一つ一つ外しにかかる。遼平の手で素肌から剥がされる布の感触に、普段はあまり感じないのに何故だが酷くエロいなと思ってしまう。
ボタンが全て外され大きく開けると、袖口に向かって遼平の指が俺の腕を滑る。
「ン……」
吐息混じりに微かに鼻から声が漏れて、たったそれだけの事でゾクリと感じてしまった自分が恥ずかしく、俺は顔を赤くしてしまう。遼平はそんな俺に気付いているはずなのに、何も言わずに反対側の腕からも生地を剥がすと
「郁哉、腰上げて」
パジャマのパンツに手をかけて、下へとおろそうとしている遼平の指示に素直に応じ、俺は腰をベッドから浮かすとススス……とボクサーパンツだけ残して脚からパジャマを引き抜く。
引き抜いたものをベッドから外に落とすと、一度俺の上半身を横に向けて俺の背中にあった上のパジャマも取り上げパンツ同様下へと落とす。
昨日と同じでお互いボクサーだけになると、遼平は俺の隣に入り込み掛け布団を俺達の上へと掛ける。
「寒くねぇ?」
「ン、大丈夫……」
伸びてきた指がスリッと頬に触れて、その感触に項が粟立つ。
「今日はキス出来るから、しよっか?」
隣から優しく言われ、俺の返事を待たずに遼平の顔が近付いてくる。俺はゆっくりと目を閉じるとチュッと唇に柔らかい感触。
何度かついばむような可愛いキスに、俺は薄っすらと唇を開くと
「……ッ、郁哉ぁ……ディープなのは出来ないんだよね」
残念そうな遼平の声音に目を開くと、またしてもケモ耳がペシャッとなっている風に見える顔とぶつかり、俺はフフッと笑ってしまうと
「何、笑ってんだよ~」
「イヤ……だってお前……」
「郁哉~~……」
ドサリと隣から俺の上に覆い被さり、体重をかけて抱きついてきた遼平の背中に腕を回して、ポンポンと叩く。すると遼平のモノが俺の太腿にグリッとあたって……。
「ッ……」
俺のもボクサーの中で半勃ちになっていて、それが遼平のお腹で圧迫されている。当然遼平には俺のも変化しているってバレているだろう。
昨日の夜だってお互いにボクサーを穿いたまま抱き合っていたが、体を触ったり撫でたりするだけでも気持ち良くなってリラックスしたらそりゃぁ勃つワケで……。それに遼平と触れ合ったのも本当に久し振りだったから、近くにある体温や匂いに興奮するのもしょうがなく……。
出来ればすぐにでも深くキスして、遼平を舐めたり味わったり暴かれたい欲求があったが、珍しく可愛い恋人から提案されたお願いだ。叶えてやりたいって気持ちが自分の欲を上回った。
お互いの欲を体に押し付ける形で抱き締め合っている状況を、遼平が少し上半身を上げて距離を取ると
「今日は郁哉の体中にキスしても良い?」
遼平も欲求を理性で押し込んでいる表情で俺に尋ねてくるから、俺は一つ首を縦に振る事しか出来ない。
俺からOKの合図が出ると、一度遼平はヘヘッと笑って軽く唇にキスをすると、そのまま頬に唇を移動させる。
頬から耳、首筋へと……、昨日の手の平や指での愛撫が唇に変わって俺の全身を愛おしそうにチュッ、チュッと音を立てて愛撫していく。
鎖骨下に唇が落ちると、チリッとした痛みに視線を下げれば、遼平が唇で強く吸った跡が赤く花びらのようになっている。
「……ッ、ごめん。何か、堪んなくなって」
チラリと言いながら俺の顔を見てきた遼平の顔が、思いの外雄の顔付きで俺は無意識にコクリと喉を鳴らす。
俺にぶつけたい欲を遼平も我慢してるんだ……。と、よりハッキリと認識してしまうとゾワッと背中に甘く緩い電流が流れて、はぁっ。と吐息が漏れ出る。
唇が鎖骨から胸に移動してきて、期待に立ち上がった乳首がキスしてと主張しているが、遼平はそのままフイと乳首を避けて脇腹やお腹、臍へとキスを落とす。
……………ッ、焦れったい。
優しい口付けはジリジリと快感を煽るだけで直接的な刺激にはならない。柔らかい感触が肌にあたる度ヒクリと体は反応するが、快感が蓄積されていくだけで歯痒いだけだ。
「郁哉、うつ伏せになって」
言いながら遼平の手が俺の肩口に伸びてコテンと体を反転させる。
そうして再び俺の上に遼平が乗っかってくるのだが、丁度俺の尻の辺りに遼平のモノがあたる位置で……。
意識するまいとするが、遼平が俺の背中にキスをする度に前屈みになった反動でモノの先端が尻の割れ目にクイックイッと刺さる感触に、無意識に俺は尻を突き出すような格好になっていたらしく
「郁哉……、チョッ……と煽らないで……」
はぁ。と遼平が吐息を吐き出しながら手の平で俺の浮いた腰をグッとベッドへと押し戻すので、その体になってやっと自分がそうしているだと自覚して俺は枕に顔を埋めて
「ごめん……」
くぐもった声を出して、遼平に謝る。
◇
三日目。
ソロソロ限界が近い。
昨日だって散々キスを全身に受け止めただけで、その後は普通に抱き合って眠っただけ。
そりゃぁ俺だってお返しとばかりに遼平の体中キスの雨を降らせたけど、もっと舐めて味わったりしたかった……。
それに普段体中キスされる事なんて無いから、自分も知らなかった所が気持ち良かったりして……。
まさか足首とか足の甲とかが性感帯だったなんて、知るわけ無いだろ!?
「………ッ色々、ヤバいよなぁ……」
仕事中も、フトした切っ掛けでここ二日間のイチャイチャを思い出して、腰に甘い疼きが走ったりして……。
中々にヤバい。
気にせず大丈夫なら会社のトイレで致してしまいたい程には欲求不満だ。
そりゃぁそうだろ? 二日前から始まった行為だが、その前から自分の欲を吐き出す行為はしてなかったのだ。それに上乗せしての遼平とのイチャイチャだし、時間を普段より使う分、地味に快感を引き出されている感覚に体が限界だと訴えかけている。
昨日も結構……、一時間位かけてお互いの全身にキスしてたし……。
まぁ、体は限界だよ? そりゃぁスッキリしたいって欲求は溜まってますよ? けど、気持ち的には満たされているって感じる不思議。
笑いながら、会話しながら、お互いを愛撫する行為に心は満たされている。
「んじゃ、お先です」
「お~、お疲れ~」
デスクのパソコンの電源を切って、同僚に声を掛けると俺は会社のフロアーを後にする。
今日は遼平と外で待ち合わせして、一緒に夕飯を食べて帰ろうと約束している。
今日の朝に一限目から講義があった遼平と一緒に支度しながらそう決めて、場所はあっちが探してくれるらしい。どこの店にしたのか楽しみに、俺は足早に待ち合せしている駅まで歩いて行く。
暫くラインで遼平とやり取りしながら歩くと、駅前で立っている遼平を見付けて手を挙げる。
「お待たせ」
「お疲れ~」
会社帰りのスーツ姿の俺に、遼平は部活終わりのラフな格好にスポーツバッグを斜め掛けにしていて、傍から見たら兄弟に見えるのだろうか?
「どこにしたんだ? 腹減って死にそうなんだわ」
「肉バルにした。俺も結構減ってる」
「お~、良いね肉バル。どっち?」
「こっち、ついて来て」
頭を振ってこちらだと言う遼平の後を付いて歩くと、探してくれた肉バルに到着。
ちょっとお洒落な立ち食いの店で、奥にはちゃんと座って食べれるスペースもある。外のテラス席も一応は椅子がある席だが、そこにも人がいっぱいで取り敢えず俺達は立って食べれるスペースに通された。
「座れなくてごめん……」
「え? イヤ良いよ。今日はずっとデスクワークだったし、逆に立ってる方が楽かも」
「本当に?」
「本当、本当。ホラ、どれにする? 俺は取り敢えずビール飲むけど」
メニューを見ながら幾つか頼むものを決めてスタッフの人に注文。
先にきたビールとジンジャエールで乾杯して何気無い会話をしていると、注文した品々ですぐにテーブルの上がいっぱいになる。
美味しい肉料理とビールからワインに変えて、久し振りの外食を遼平と堪能して家に戻って来た。
今日は一緒に風呂入ろうな~。と酒で上機嫌になっている俺を置いて、遼平は風呂の準備をしにバスルームへ。
俺はキッチンの冷蔵庫から水のペットボトルを取り出してゴクゴクと喉を潤し、リビングの定位置に座るとテレビを点けてのんびりしている。
「郁哉、スーツ皺になるよ?」
バスルームからリビングへ入って来た遼平に言われ俺は遼平の方に腕を伸ばすと、呆れながらも優しい恋人はジャケットを脱がしてくれる。
「ホラ、下も」
遼平に言われるまま俺は両足を伸ばして両手を後ろにして床に付くと、ベルトを緩めてくれた遼平が取りやすいように腰を浮かす。
脚から引き抜いたパンツとジャケット、ネクタイを持って俺の部屋まで持って行ってくれるらしい。
「ありがと~」
気分良く遼平の背中に言った後再び水を飲んでいると
「ちょっと早いけど風呂入ろう」
「ン~~~」
バスルームから呼ばれて俺はその場から立ち上がり向かうと
「脱げる?」
一足早く脱衣所で服を脱いだ遼平が俺にそう尋ねてくるから
「無問題」
と、答えてワイシャツのボタンをプチプチと外していく。次いではソックスとボクサーを脱いで風呂場へと入ると、シャワーで体を流している遼平が俺に気付いて
「ホラ、こっち」
手首を掴まれて遼平の側まで行くと、少し温めのお湯をかけられて
「湯船そんなにお湯溜まってないけど、頭洗ってやるから」
そのうち貯まるだろ? と、湯船に促される。
湯船も何時もより温めの温度になっていて、酒を飲んでいる俺にしてみれば有り難い。浴槽の端に首を乗っけて仰向けになると、頭にシャワーのお湯がかかる。それと同時に遼平の指が頭皮をマッサージするみたいに流してくれて、俺は気持ち良さに目を閉じて、はぁ~。と溜め息を吐き出す。
「痒いとこありませんか?」
楽しそうにそう言う遼平に
「大丈夫です……気持ち良い、です」
と、ホワぁとなりながら呟くと
「ン、じゃシャンプーしていくな」
手際良く頭を洗ってくれる遼平をチラリと見ると、遼平と目が合って
「ありがとな遼平」
気持ち良さに言いながら目を閉じる俺の唇に、チュッと柔らかい感触。
薄っすらと目を開けば、優しい笑顔の恋人の顔。
「まだしろ」
そう言ってキスをせがむと、チュッ、チュッ。と何度かキスをしてくれるが、それだけじゃもう満足出来ない。
「ま~だ」
お互いにクスクスと笑いながら何度も唇を合わせているが、俺が薄く口を開くと遼平が口の中に舌を差し入れてきた。
「ンぅッ!?」
まさか舌を入れてくるとは思って無かった俺は、ビクリと体を震わせる。そんな俺の反応に遼平は楽しそうに唇を離しながら
「今日からディープは解禁だからな」
「あ……そう」
俺がリサーチした内容は、五日目にセックス出来る事とそれまでは性器に触れない事、四日目まではイチャイチャ出来るって事位で、そのイチャイチャの内容までは記載されてなかったから、どのタイミングで何が出来るのかは遼平頼りになっていた。
今日からディープキスは大丈夫なのか……。ならもっとしたいし、して欲しい。
物欲しそうな表情で見ていたのか、遼平は俺の額にキスして
「風呂から上がったら、な?」
自分も我慢しているんだと、少し眉間に皺を寄せて言う遼平に俺も笑顔でコクンと頷くと、続きをしてもらう。
体はお互いに洗い合って風呂場から出ると、バスタオルで体を拭き合いボクサーだけ履いた状態ですぐに遼平の部屋へと向かう。
ベッドに横になってすぐにキスするが、遼平の舌が俺の唇をノックしてくるから開くと、ヌッと歯列を割って舌が口腔内へと侵入してくる。
「フゥ、ンぅ……ッ」
昨日からしたかった深いキスに、自分から積極的に舌を絡める。厚くて湿った感触が気持ち良くて迎え入れた舌を唇を窄めて吸うと、遼平も気持ち良かったのか鼻から甘い吐息が漏れている。それに煽られて遼平の口腔内へと舌を差し入れ自分がされて気持ち良くなる箇所を舌先で愛撫すれば、バッと両肩を掴まれ後ろに引かれる。
「ハッ……何、で?」
気持ち良かっただろ? と伺うような視線を向ければ、獰猛な獣じみた視線と絡んで息を飲む。
「郁哉……ッ」
興奮している遼平は、俺の名前を呼んで首筋に吸い付くと、両手で俺の腰を掴んでそのまま上へと撫で上げる。
たったそれだけの事なのに、我慢していた体はその刺激にさえもゾクゾクと疼きをまとって俺の体を支配していく。
「ンッ……ハ、ァ……」
敏感になっている体の快感を逃すように俺は喘ぎ声を出す。それに気を良くした遼平が両方の親指を乳首へとあてると、クリクリと円を描きながら押し潰してくるから……。俺はビクンッと大きく体を波打たせ喉を仰け反らせる。
「ハ、ぁ……郁哉気持ち良ぃの? 鳥肌立ってる……ッ」
ゾワリとくる気持ち良さに鳥肌が立ったのか、遼平は楽しそうにそう呟いて弄っていた片方の乳首に顔を近付けてフッと一度息を吹きかけ、舌先でチロチロと舐め始めた。
「遼、平……ッそれ、ヤバ……ッ」
咄嗟に遼平の頭に指を差し入れて髪の毛を掴んでしまう。遼平は俺がそうした事で引き剥がされると勘違いしたのか、舐めていた乳首を口に含んでジュゥッと吸い付き歯で乳首の根元を甘噛みしながら舌先でネロネロと舐ってくる。
「ぁ……、ふ、ぁッ、ンぅ~~……ッ」
乳首から脳髄にダイレクトに電気が走った感覚に、髪を掴んでいる手に力が入る。と
「ひもひいいか? おふぇのあたまおひつへてる」
乳首を口に含んだまま遼平は『気持ち良いか? 俺の頭押し付けてる』と上目遣いで俺に聞いてくるから、俺は掴んでいた手をパッと離して顔を赤め
「ぁッ……、ご、めん……そんなつもりじゃ……ッ」
と、恥ずかしさにフイと顔を横に向けると
「ン~~、解ってるよ。もっと乱れて欲しいなぁ?」
意地悪そうに乳首から唇を離して言う遼平は、今度は指先の爪でカリカリと引っ掻くように愛撫したかと思うと、次いでは親指と人差し指で摘んでギュウゥと圧をかけ、そのまま乳首を引っ張った。
「あ゛ッ!? ン、イ゛ッ、~~~~ッ」
ジリジリと追い上げるような快感から、急に強くなった刺激に俺は背骨をくねらせて仰け反ると、次いで力の入った臀部からキュンキュンと勃起したモノに熱が集まる。先走りでボクサーが濡れていると解る程気持ち良くて、俺はモジモジと内腿を擦り合わせていると
「郁哉、イっちゃったら駄目だからな?」
雄の顔付きで楽しそうに笑う遼平に、ゾクリと背筋がしなる。
◇
四日目。
今日はどうやってされるのかと考えて、仕事が手につかない。
出来ればもう抱いて欲しい。
昨日もあれから散々舌で体中舐められ、息も出来ない程キスされて……。けど一番辛かったのは射精出来ない事だった。
ディープキスでトロトロにされ、敏感になった体や乳首を重点的に愛撫されても、射精しそうになれば手や唇、舌は無情にも俺の体から離れていく。
それに人生で初めて乳首イキしそうになってしまった……。
ビリビリと乳首から全身に快感が広がり、重たく甘い疼きが腹の中で渦巻いていたところでキツく乳首を抓られたり、引っ張られたりしてガクガクと内腿が震え腹の中に溜まった熱が出ようとしたところで、またお預けを食らって……。
ずっとその繰り返しに最後はイキたいと泣きながら懇願したのに……、結局イかせて貰えず不完全燃焼のまま眠りについて仕事場に出勤。
寝る前に一度先走りでベトベトになったボクサーは履き替える羽目になったし、今日一日ずっと今日はどうされるのかばかり気になってしまって……。同僚からは『体調悪いのか?』なんて、心配までされてしまった。
休憩中にトイレの鏡で見た自分の顔は、目が潤んで少し熱っぽくて……。そんな顔凝視出来ずにバシャバシャと水で顔を洗ってから午後の仕事に戻ったが、フト気付けばやはりどうされるんだろう? って考えてる自分がいる。
俺……、こんなに厭らしい事ばかり考える質じゃ無いのに……。
一日そんな感じで終業時間まで過ごし、定時に素早くタイムカードを切るとどこにも寄り道する事無く家路に着いた。
遼平と向き合って食事している時も、一人で風呂に入っている時も、グルグル、グルグル今日は? 今日は? ってそればかりが頭の中を占めている。
風呂から上がり遼平の部屋へと入ると
「郁哉お疲れ様~、今日は仕事頑張った郁哉を俺が精一杯癒やすからさ」
部屋に入るとニコニコの遼平が、俺をベッドへと来るように手招きしている。
「え? な、ンだよ……?」
オズオズとベッドヘ近づくと、バスタオルを敷いたベッドが目に入り、ン? と遼平の顔を見れば
「パジャマ脱いでバスタオルのところに寝転がってよ」
「何?」
言われて素直にパジャマを脱いで、ベッドへと上がりながら尋ねた俺に遼平はニコニコの顔を崩さず
「今日はさ、郁哉にマッサージしようかと思って」
「マッサージ?」
ベッドヘ上がって、遼平の台詞に固まる俺を
「ン、そうそう普通のマッサージな。ホラ俺部活でたまに終わってからしてもらうんだけど、最近それ教わっててさ。それを郁哉にしてやろうかなって?」
「教わったのか?」
遼平からの意外な申し出に、そう聞くと
「そうだな。部活の顧問がたまにマッサージしてくれんだよな。それが結構気持ち良くてさ教わったんだ」
「そう、なんだ……」
「そうそう、だからうつ伏せで横になってよ」
マッサージとかいつぶりだ? てか、今日はそういう雰囲気じゃ無くって事か?
俺はバリバリそういうつもりで帰って来たんだけど……。なんだか一人だけで盛り上がっている自分が恥ずかしくなって、そんな自分を気付かれたくなくて俺はバッと遼平に言われた通りベッドヘとうつ伏せになる。
「で、郁哉にはオイルマッサージしてやるな?」
「は? オイル……ってそんなのお前、どうした?」
「ん? 昨日ご飯行く待ち合わせ前に買ったから」
「そうなん?」
「ん、結構種類あってさ。店員に聞いてリラックス効果高いやつにしてみた」
「ヘ~~」
結構本格的に考えてくれたんだな。と、少し嬉しくもあって、それならば素直にマッサージをしてもらおうと俺は両手を自分の頬の下に入れ込んで体の力を抜く。
「んじゃ、脚からいくな」
「ん、よろしく」
カシュカシュとポンプ式のオイルを手に出しているのか、何度か乾いた音の後に両手を合わせている音、そうして遼平の手の平が脹ら脛に触れる。
馴染ませるように足首、そこからまた脹ら脛へと手の平が少し強目に上下していく。
「郁哉、結構張ってんな」
「マジか~、ケドめっちゃ気持ち良いわ」
オイルでスムーズに滑る手の平の感触が気持ち良く、またオイルの匂いもキツ過ぎず良い匂いだ。何度か脹ら脛を重点的に揉まれた後、太腿の方へと手が伸びてくるが痛気持ち良い位の圧力で、俺は、はぁ。と溜め息を出す。
「気持ち良い?」
「ン~~、ケド、寝ちゃいそう」
「良いよ。そのまま寝てても」
「ン~~……」
反対側の脚も同様にオイルを塗って解されていく。普段あんまりマッサージとかにも行かない俺は、こんなに気持ち良いのか~、たまには仕事帰りにでも寄っても良いなぁ。なんて思いながらウトウトし始める。
脚が終われば次に腰、背中と程よい圧力をかけられながら遼平の手が俺の体を滑っていく。
「なぁ、なんか脚温かいんだけど?」
「あ、解る? コレ温感らしいよ」
「へぇ~、そんなのもあるのか」
塗られたオイルがじんわりと温かく、更に俺の眠気を誘う。
「よし、郁哉今度は仰向けになって」
「ン」
遼平に言われるまま体を半回転させて仰向けになると、また脚の方からオイルを塗ってマッサージされる。
月曜からの疲れを気持ち良く癒やされていると、ムズムズとした感触に体がピクリと反応する。
「ンッ……は、ァ……」
ん? なんだ……? それにこんな甘い声……。誰が……
何度か気持ち良さに意識が遠退いていた俺は、閉じていた目を薄っすらと開く。
「あ、目ぇ覚めちゃった?」
上から覗き込むように俺の顔を見詰めていた遼平がニコリと笑ってそう言った瞬間。
「ヘ、ぇ? ……ンァッ?」
ビリッと流れた甘い電流の感覚に俺は間抜けな声を上げてしまう。
「気持ち良いだろ?」
「ヒ、ン……ッ、何、して? ぁン……ッ」
遼平は俺にマッサージしてるのに、体が……変?
俺は回らない頭で目を見開いて、何をされているのか確かめるように顎を引いて下を見ると、オイルでぬるついた乳首を遼平の指先が上下に愛撫している。
その事実を視覚で捉えた俺は、ピンピンと弾かれる気持ち良さに先程よりも敏感に反応してしまう。
「ンンッ……遼、平……何? して……」
「イヤ、だからマッサージ?」
マッサージ? って、そんな乳首ばっか刺激しないだろ!?
そう反論したいのに、オイルでいつもと違った感触が快感を倍増させているみたいで……。立ち上がった乳首を摘まれて伸ばすようにシコシコと引っ張られ俺は胸を付き出す形で背中を反らせてしまう。
「あ゛ッ……、ダめ、だ……それッ、気持ち良い~~ッ」
「気持ち良い? もっと気持ち良くさせるな?」
手の平全体で胸を揉まれ、乳首が押し潰される感覚に唇を噛んで喘ぎを止めると
「ちゃんと言ってくんないと、解んないじゃん?」
そのまま手の平を臍まで滑らせたと思ったら、遼平は俺の脚の方へと移動して閉じていた脚を広げ、その間に座るとオイルを自分の手へ出し
「リンパも流そうか? 結構むくんでるし」
なんて言いながら太腿の付け根の方まで手を滑らせてボクサーの中へと手を差し込んでくる。
「え? ………ッな、何……」
リンパを流すって、どうやって? と聞く前に入ってきた指が鼠径部をスリスリと上下して、それに伴って親指が微かに玉にあたる感触に俺は上半身を捩らせて枕に顔を埋める。
「郁~哉、気持ち良い?」
上体を俺の方へと傾けて聞いてくる遼平の吐息が耳元をくすぐって、俺はビクリと首を窄めてしまう。
「顔見せてよ? なぁ、郁哉?」
甘い声で言われて、俺はオズッと枕から顔を離して遼平を見上げる。
「ハハッ。堪んないって顔してる」
俺の表情を見て満足したのか、止まっていた指が再び鼠径部を刺激し始める。それと同時に遼平の舌が先程の愛撫で勃起した乳首に伸びてピチャピチャと先端を舐めるから……
「ン、ぃ゛~~~ッ、ダ、メ……リョ……ヘ……ッ、一緒、は…無理」
「無理かなぁ?」
俺が無理って言ってんのに……ッ、何でお前が、疑問系で返してくるんだよッ!
ギッと睨み付けたいのに、気持ち良さに目に力が入らない。
ボクサーの中で完勃ちしている俺のモノは、トロトロと先走りを流しながら限界が近いのかビクビクと痙攣し始めていて
「遼、平……ッイ゛、ク……からぁ……も、……もぅ゛、イッちゃ………ッ!」
気持ち良さに持ち上がった腰が、ヘコヘコと上下に激しく揺れる。それと同時に内腿やお腹も痙攣し始め臀部がキュウッと中央に力んで寄ると、パッと遼平の指と舌が俺の体から離れる。
「んじゃ、マッサージ終わりな」
…………………。鬼かよ。
◇
五日目。
寝起きは最悪だと言っておこう。
ン十年振りに夢精しそうな夢を見て目を覚ました。
隣を見ればスカ~~ッと気持ち良さそうな寝息を立てて恋人の遼平が寝ていて、些か厶ッとしたが体の中心の掛け布団が持ち上がっているのを見付けて、あぁ……遼平も我慢してるんだ。と自分に言い聞かせる。
だけど、昨日の仕打ちは少し酷くないか?当初のマッサージは本当に気持ち良くて、仕事の疲れも吹っ飛ぶなと思っていたのに、最後の方は完全に騙し討ちにあった感じだ。
手を離されても数秒腰の動きや痙攣は止まらなかった。もう少しで気持ち良く達しそうになっていたところを寸止めされて、ジワッと滲んだ涙をチュッとキスで慰められただけ。しかも
『お~~、凄いじゃん。我慢出来て偉い、偉い』
と、頭をポンポンと叩かれて終わり。
あの後先走りやオイルで濡れたボクサーを着替えるのも敏感になった体には辛いものがあったし、ベッドに敷いたバスタオルでオイルを拭うのだって生地が肌にあたるだけで気持ち良くて……。
やっぱり納得いかね~ッ!
俺はスヤ~っと眠っている遼平の鼻を指で塞ぐ。何秒間後
「フゴッ……グッ、ハッ! ハァッ」
息苦しさに目を開いた遼平は、バシッと本能で俺の指を鼻から叩き落して大きく開いた口から息を吸っている。
「おはよ」
「カハッ……はよ……ッ、ング、何して……?」
「え? 悪戯?」
「………ッ、質悪ぃ、から」
遼平の台詞を無視して俺はベッドから起き上がると
「風呂……行ってくる」
一言そう言って、部屋から出て行く。
早く抱かれたい。
けれどその前に、準備する必要がある。
脱衣所でボクサーを早々に脱ぎ捨てて、俺はバスルームへと入るとシャワーのコックを捻ってお湯を浴びる。昨日のオイルがお湯を弾いているのを見て、ボディーソープで軽く洗い流し準備する。
「郁哉~、俺も一緒入る~」
中を綺麗にして、少し解しておくか? というところで、脱衣所から遼平の声。
「へ、ぇ?」
間抜けな返事を返すと、カラッと扉が開いて遼平が入って来る。
「え? イヤ、チョッ、と……」
まさか準備している時に入ってこられるとは思って無かった俺は、動揺して遼平から背中を向ける格好をとると
「あ、準備してた? 俺も手伝おうか?」
背中にピッタリとくっついてきた遼平の体にドキリとしてしまうが、次いでは尻にガチガチに硬いモノがあたって息を飲む。
「どこまでできた? 中まだ洗って無い?」
「そ、れは……出来てる……」
「そうなん? んじゃ、解そうか?」
ツッと伸びてきた指が尻たぶに触れて、ビクンッと臀部が揺れる。
「やッ……だ、大丈夫だしッ」
「ンなワケねぇじゃん? 久々にするんだぜ? それに俺もこんなにガチガチになってんのに……」
遼平は俺の手を掴むと、後ろ手に自分のモノに触れさせる。
「あ……ッ」
「解しもしないで、いきなりは無理でしょ?」
言いながら自分のモノから俺の手を離させると、シャンプーボトルを置いている棚から粘度の高いローションを手に取りパカッと蓋を開ける。俺はその音にクルリと遼平に向き直り
「じ、自分でするから……。今、お前に触られたら……絶対イっちゃうし……ッ」
俺はモゴモゴと呟いて遼平の手からローションを奪うと自分の手にトロリとローションを落とす。
と。
突然遼平から食べられそうなキスをされて、俺は壁に背中をぶつける。
「ン、ッ……ンンッ!」
キツく抱き締められながら、息もつけない程のキス。
舌がすぐに上顎を舐めねぶり、裏側の歯列をゆっくりと味わうように愛撫されて俺の膝が笑う。
腰に力が入らずにガクッとよろけると、伸びてきた腕にグッと支えられ唇を離される。
「ン、じゃぁ見せて」
「……へ?」
「郁哉が解してるとこ、見せて?」
首をコテンと傾けて可愛く言ってるつもりなんだろうが、目の奥がギラギラしてんだよッ!
ゆっくりと離された遼平の腕から、俺はズルズルと壁伝いに尻もちをつく形で座ってしまい、俺が何を言っても聞かないと解る遼平の眼差しに負けて、そのまま俺は自分の後ろを解す事になってしまう。
ローションの付いた指をゆっくりと内壁へと挿入させて、奥を開くように指を動かす。変に刺激しないように注意深く動かして、更に開くようにともう一本指を嵌め込むと、ハッ、ハッと荒い吐息を吐き出す自分の息遣いが響く。
入り口を重点的に縦へと開くように指を動かして、上から痛い位に感じる視線にチラリと目線を上げれば、俺の解している行為を見ながら遼平はユルユルとそそり立つ自分のモノを扱いていて……。
恋人の痴態にゾゾゾッと快感が全身を包んで、俺は両膝をキュッと合わせてその快感をいなそうとするが、中に入れた指を内壁が甘く締め付けて
「ン、ァ……」
堪らずといった感じで出てしまった喘ぎが合図になってしまったのか、遼平は屈んで中に入っている俺の指を手首を掴んで引き抜くと、無言で俺を立たせそのまま手首を掴んだまま自分の部屋へと連れて行く。
体も拭かずに出た俺達はビショビショのままで遼平のベッドへと上がると、すぐに押し倒され両脚を左右に割られる。
「……、ごめん。もう我慢の限界……ッ」
遼平も性急にチェストからゴムを取り出し勃起している自身に着けると、ゴムと一緒に出したジェルを手の平に出してそのままモノを掴んで扱き、開いた俺の蕾に押し当てて上下にクチュクチュと何度か擦り付けるとゆっくりと挿入してくる。
「ぁ、あ゛ッ……、~~~~♡♡♡」
やっと入れられる充足感に、シビビビビッと体中が喜んでいるのが解る。
「はッ……すっげぇ……」
遼平のモノを内壁がうねりながらしゃぶる感覚も自分で解って、もっと奥まで欲しくて絡み付きながら奥まで迎え入れる。
ピッチリと奥まで嵌まったモノが、そのままの状態で動かない。
「りょ……ヘ? ン、……な、んで……ッ?」
動かないんだ? と言わなくても解ったのか、遼平は俺の唇に軽くキスをしながら
「入れてから……ッ、三十分は……動けない、からッ……」
「マジで……?」
「マジ、で」
会話の振動でさえも響いて気持ち良いのに……、ここから更に三十分も動けないなんて……なんの罰ゲームだろうか?
俺の中でドクドクと脈打つ遼平のモノに、滅茶苦茶にされたい欲求が強過ぎて、俺は無意識に緩く腰を上下に動かしてしまう。
「クッ、ぁ……郁、哉……だからッ、動いたら、駄目……なんだって……」
緩く腰を動かしただけなのに、そこからビリビリと脳まで貫くような快感が走り、内壁が厭らしくクチュゥッとゆっくり吸い付くように遼平のモノへとキスする。
「あ゛……は、ぁ……グッぅ゛、ぅッ~~♡」
内壁が締め付けて遼平がギュッと俺を抱き締めた刹那。一瞬息を詰めた後くぐもった息を吐き出すと同時に、ビュッ、ビュルル~~ッ!とゴムに射精する感覚。
次いでは気持ち良さそうに、ハッ、ハァ~ッ。と遼平が息を吐き出して固まってしまう。
「………、狡い」
「ッ! ………ッしょ、しょうが無いだろッ! あんな締め付けられたら、誰だって……ッ」
耳元で恥ずかしさを隠す為に大きな声で喋る遼平は、ズルッと腰を引いて俺の中から出ていくと、素早くゴムを外してすぐに新しいのを装着すると
「……………、泣かす」
ボソリと怖い事を呟いて再び俺の中へと入ってきた。
今し方射精したばかりだというのに、既に遼平のモノはガチガチで……。そして一度達してしまったので、幾分か余裕さえも見えて……。
もしかしなくても俺、ヤバいんじゃ……?
◇
「イヤ……ッ動、か無い……でぇ……」
俺の予想通り、一度達した遼平はヤバかった。
再び挿入した遼平は、中で感じる俺の内壁にも堪えながら耐えると、お返しだと言わんばかりに挿入したまま乳首を甘噛したり、緩く腰を振ったりして俺を追い詰める。
けれど決して重く深くは腰を動かさない。先程言った通り三十分は挿入したままでいるらしい。
ユルユルと小さな火種をずっと絶やさずにいればどうなると思う?
それは徐々に大きな火になって、俺を内側から蝕んでいくのだ。
今は遼平に乳首に息を吹き掛けられただけでも中でイッてしまう。決定打の激しさが無い分射精には至らないが、メスイキを繰り返している俺は、頭に白いボヤが掛かる程度には何度もイかされ頭が回らない。
「動いて無いって……、自分で腰揺すってんの」
楽しそうに上からそう言う遼平の言葉に、自分で……? と思うが、すかさず伸びてきた舌先がピンピンピンと乳首を転がしビックンと体が跳ねる。
跳ねた振動でグリリッと遼平の怒張が前立腺を刺激して、俺はハクッと喉を仰け反らせガクガクと体を揺らす。
「あ゛~~~♡♡ 、イ゛ッでる゛……気持ち゛……良い゛~~♡」
「はぁ、可愛い♡」
言いながら遼平は俺の耳を舐め、空いている両方の指で乳首を弾くとギュウゥッと強く捻り上げる。
「乳首ッ♡ 、もっと、して……ッ♡ い゛っぱい……イジメて♡♡」
「もっと酷くされたい?」
「ンぅ……、して♡」
気持ち良い事で頭がいっぱいで、自分が何を口走っているのか最早ワケが解っていない。
遼平は俺の望み通りに、乳首をシコシコと上下に扱いて爪でカリカリすると、先程と同様にギュッと力を入れて摘む。
乳首をされる度に連動して内壁が遼平のモノをしゃぶって締め上げると、亀頭部分がグッと前立腺を圧迫する。それを何度も何度も繰り返しているのだ。
「あッ、あ゛~~~~……♡♡♡」
何度目かのメスイキで、体中の力が抜けてクタッとした俺に、遼平が緩く腰を動かせばビクビクと過ぎた快感が俺を襲って再び体に力が入る。
「……、ソロソロかな?」
遼平が呟き、ゆっくりと腰を引く。そうしてドチュンッ! と勢い良く怒張したモノが内壁を擦った途端、俺のモノからビュルル~ッ! と勢い良く白濁が溢れ出る。
「カッ、ヒュッ……♡ ぁ゛~~~ッ、イ゛、けたぁ~♡♡♡」
尿道から射精する気持ち良さにビクビクと全身が震え、俺は遼平の首に両手を回す。
「動くな?」
「はぁ、ぁ……♡ 遼、平ッも……イク?」
「ン、俺も……限界」
「一緒……イこ? ンぅッ♡」
「郁哉……」
パンッ、パンッ、とお互いの肌が打つかる音に煽られ、遼平の動きが早くなる。
俺の膝裏を自分の腕で持ち上げ、腰の位置が高くなると、叩き付けるように腰を打ち付け始める。その重く深い動きに俺はハクハクと空気を噛み締め、目の裏でバチバチと火花が飛ぶ。
「気持ち良いか?」
ハァッ、ハァッと荒い息に混じってそう聞かれ、俺は首に回していた手に力を更に込めると
「ぎ持ち、良い゛……♡♡ 遼平……キス、嵌めッじで……♡♡♡」
言い終わるタイミングで舌を伸ばすと、中に入っている怒張が更に質量を増す。
遼平はグイッと俺を起き上がらせると対面座位の格好になり深くキスしながら俺の腰を片方の手で掴み、もう片方をベッドへと伸ばして腰を振る。
俺もベッドヘ足裏を着け、遼平の体をしゃがんで跨ぐ形にすると恋人のリズムに合わせて上下に腰を振る。
「ンンぅ♡♡ フゥン……♡ ~~~~ッ♡♡♡」
唾液を交換しながら、内壁の奥を捏ねられ何度目かのメスイキでギュウゥッと遼平のモノを食い締めると
「グ、ウゥ……ッ」
堪らずといった感じで遼平が呻くので、強弱をつけて内壁でしゃぶれば再びドサリと押し倒されてしまう。
「ハッ……、も……イク……ッ」
「ンぅ……ッ、イッて? 俺ン、中……ビュ~して……♡」
俺の台詞に煽られて遼平の動きが早くなる。
「あ゛~~、イッ、ク……、イクッ、イクッ!」
「俺も……♡♡ ッあ゛、イ゛ッグ……♡♡♡」
もう一度俺の中で吐き出す感触を味わいながら、俺は意識を手放した。
◇
目を覚ましたのはお昼過ぎ。
起きた直後に腹の虫が鳴って、俺より先に起きて遅めの昼食作ってくれていた遼平が、俺を起こしに来て笑われた。
「体、綺麗にしてくれてたんだな」
「爆睡してたから」
「ごめん……」
「イヤ……、ぶっちゃけさ三日目位からあんまりよく寝れて無かっただろ?」
「バレてたか……。ムラムラし過ぎてて……」
遼平の作ったパスタを食べながら、白状した俺に苦笑いをしながら
「大丈夫。俺も同じ理由であんま寝れて無かったから」
遼平も俺と同じ理由で睡眠不足だったのかと、少し安心していると
「で、どうだった? ポリネシアンセックスした感想は?」
興味津々で聞かれ、俺は視線を上へと向けてしばし考えると
「気持ち良かった。……、ケド遼平とするセックスはどれも気持ち良いからな……」
「グッ……何、その答え」
「え? 感想、だろ?」
「狡ぃンだよ……」
言いながらフイとそっぽを向く可愛い恋人に、俺はフォークに巻き付けたパスタを差し出すと
「この後は普通に抱いてくれるんだろ?」
ニコリと微笑みながら言った俺に対して、パクリと差し出されたパスタを食べながら
「その前に郁哉の部屋の掃除しないとな?」
と返され、俺はあ゛~~~。と嫌そうな声を上げる。
「俺も手伝ってやるし、それが出来たらご褒美あるから」
年下の恋人に優しく諭されながら言われて
「頑張ります……」
弱々しく返事をした俺の頭をポンポンと優しく遼平が撫でる。
おしまい。
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