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第2章 もふもふにまみれる
7.
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「ぅわっ!………ぁっ、………ふっ、」
「違う!もっとこっちだ」
「できないですよぉ、……」
ちゃんと、ちゃんと魔法の授業は理解したのに!!
魔法学を学んでいたはずなのに、一体どうしてこんなにも変な声をあげているのかというと……
遡ること3時間前───
「神子、お前には役割よりなによりもこの世界の知識を身につけること。せめて平民よりも秀でた成績を修めることが最優先になる。そこで、これから出来る限り毎日授業を受けてもらう」
「この世界の知識、ですか…」
「大きく分けると魔法学全般、歴史、文化、獣人についてだ。人間として生まれたお前に知識はなくとも理解するに必要な年齢はあるだろう」
「それは、まあ」
「質問があれば可能な限り答えてやる。ただし、こちらが質問したときにも嘘偽りなく答えてもらう」
「わかりました」
ちょっと強引な人だなぁ、とは思ってしまった。別に反論したりしないのにどんどん話を進めるんですよ。そんなに俺のことが嫌いなんでしょうか……。
それより!毎日授業って大変そうですね…。確かに本で異世界ものも読むことが多くて、魔法とか憧れることだってありましたけど。ちょっとですよ、ちょっとだけ…ね。
日本でも土曜日と日曜日はお休みだったのに…ついていけるでしょうか。というより、『一週間』という概念はあるのでしょうか…。歴史のときにでも聞いてみましょうか。
「はぁ……転生者くらいなら楽だったんだが……」
「え?」
「気にするな。一度で理解しろ。今日は実習も行う」
「は、はい」
淡々とした説明を一回だけ聞いた後、魔法学の授業が始まった。一応日本の小学校や中学校みたいな感じの授業の雰囲気だと思う。部屋にある小さなテーブルを前に俺が座って、それを挟んだ向かいにラウルさんが立っている。
マンツーマンの家庭教師かな?楽しそうですね!
「魔法発生源は核だ。役割としては心臓と同じようなものだが、核には魔力を制御する機能がある。この制御ができるのものが貴族や我ら王族のみとなる」
「ふむふむ」
「魔力は最初から決定されており、増減することはない。平民はそもそも魔力が上位の獣人より明らかに少ない。職業の幅が狭いのもそのせいだな」
「へぇー…」
「魔力制御が暴走した場合、耐久力がなければ一瞬で魔人になる。お前も気をつけておけよ」
「ふんふん」
「……おい」
「はい」
「さっきからそのまぬけな返事はなんだ」
「へぁ?」
「気の抜けた返事ばかりしおって、さっきの話を聞いていたのか?」
「ち、ちゃんと聞いてましたよ!」
マヌケな返事ってなんですかぁ!これでも聞き慣れない言葉を分かろうと真面目に聞いてたんですよ!実習のときに、最高の魔法を見せてあげましょう。きっと驚くはずです。だってちゃんと聞いてましたもん!!
まだ魔法使ったことありませんけど……。
「はぁ……なら、次に属性について説明する。
これらを操れるのはさっきも言った上位の獣人だ。平民にはそんな力はない。」
「じゃあ、俺は属性保有の魔法は使えるんですね」
「そういうことだ」
たくさんの魔法が使えると聞いただけでこんなにも喜んでしまえる俺、なんて単純なんでしょう。
いやいや、多分日本人の大半は喜ぶはずですよ。ね、皆さん!
これでもっと実習のやる気が出ました。
作者さんや世界観によって魔法も異なると思うんですけど、この世界の魔法はどんな感じになるんでしょうかね…。
「取り敢えず手始めに『炎』属性から始める。お前にどれだけの順応力があるのか分からんからな」
「了解です!」
「実習は庭でやる。3分以内に移動しろ」
「うぇっ!?わ、わかりました」
またまたラウルさんは無理難題を!一度も部屋を出たことないのに、お庭の場所なんかわかりませんって。でも時間オーバーしたらきっと怒られるんですよね…。
なんとかしなくては。
「俺は先に行く」
と言って俺を残してさっさと部屋を出ていってしまった。誰も頼りにできないんですけど。
そんなおいおい、と焦っているところに
バァン!!!!
と、部屋の扉が勢いよく開いた。この世界では勢いよく扉を開けるのが普通なのかな?いやいや、そんなこと…ないよね?
まあ、それはいいとして。扉を開けたのは…もう一人の護衛のギルくんだった。
「ハル。なんか困ってるッスよね?」
「え、うん。どうして分かったの?」
「ふふーん、俺にかかればこんなもんスよ~。それより、庭に行きたいんスよね?だったら、魔法使ったら早く行けるッス。ほら、手繋いで」
「え、わぁ!」
まぬけにも突っ立っている俺を、ギルくんは手を引いて額を寄せた。うさぎさんだし甘えたさんだと思っていたから、ちょっと力が強くてびっくりした。そうだよね、聖騎士だもんね。
「ハル。移動の魔法、心象して」
「心象………ぁ、わかった!」
多分、「イメージ」ってことだと思う。イメージしたら、魔法できるよって誰かが言ってましたし、これで行きましょう!
一番花や木や草があって、鳥や蝶がたくさん集まっている漠然としたイメージ。
身近な瞬間移動の魔法イメージを加えて、そこに行きたいのだと願ってみる。意味はないかもしれないけど。
「ハル。そのまんま、目を閉じててね。俺がいいよって言ったら開けていいッスから」
「うん」
言われたとおりに目を閉じて、イメージし続ける。これが成功したら初めての魔法ってことで、いいかな。そう考えるとどうしても成功させたくなってきて、もっと強く願う。
「え、」
近くでギルくんの声がしたときに、瞼の向こうが鋭く光った。目を閉じていてもわかる光の強さに顔を歪めると、繋いでいた手がやんわりと繋ぎ直された。その手の温もりで少し安心した。後でお礼を言わなくては。
「違う!もっとこっちだ」
「できないですよぉ、……」
ちゃんと、ちゃんと魔法の授業は理解したのに!!
魔法学を学んでいたはずなのに、一体どうしてこんなにも変な声をあげているのかというと……
遡ること3時間前───
「神子、お前には役割よりなによりもこの世界の知識を身につけること。せめて平民よりも秀でた成績を修めることが最優先になる。そこで、これから出来る限り毎日授業を受けてもらう」
「この世界の知識、ですか…」
「大きく分けると魔法学全般、歴史、文化、獣人についてだ。人間として生まれたお前に知識はなくとも理解するに必要な年齢はあるだろう」
「それは、まあ」
「質問があれば可能な限り答えてやる。ただし、こちらが質問したときにも嘘偽りなく答えてもらう」
「わかりました」
ちょっと強引な人だなぁ、とは思ってしまった。別に反論したりしないのにどんどん話を進めるんですよ。そんなに俺のことが嫌いなんでしょうか……。
それより!毎日授業って大変そうですね…。確かに本で異世界ものも読むことが多くて、魔法とか憧れることだってありましたけど。ちょっとですよ、ちょっとだけ…ね。
日本でも土曜日と日曜日はお休みだったのに…ついていけるでしょうか。というより、『一週間』という概念はあるのでしょうか…。歴史のときにでも聞いてみましょうか。
「はぁ……転生者くらいなら楽だったんだが……」
「え?」
「気にするな。一度で理解しろ。今日は実習も行う」
「は、はい」
淡々とした説明を一回だけ聞いた後、魔法学の授業が始まった。一応日本の小学校や中学校みたいな感じの授業の雰囲気だと思う。部屋にある小さなテーブルを前に俺が座って、それを挟んだ向かいにラウルさんが立っている。
マンツーマンの家庭教師かな?楽しそうですね!
「魔法発生源は核だ。役割としては心臓と同じようなものだが、核には魔力を制御する機能がある。この制御ができるのものが貴族や我ら王族のみとなる」
「ふむふむ」
「魔力は最初から決定されており、増減することはない。平民はそもそも魔力が上位の獣人より明らかに少ない。職業の幅が狭いのもそのせいだな」
「へぇー…」
「魔力制御が暴走した場合、耐久力がなければ一瞬で魔人になる。お前も気をつけておけよ」
「ふんふん」
「……おい」
「はい」
「さっきからそのまぬけな返事はなんだ」
「へぁ?」
「気の抜けた返事ばかりしおって、さっきの話を聞いていたのか?」
「ち、ちゃんと聞いてましたよ!」
マヌケな返事ってなんですかぁ!これでも聞き慣れない言葉を分かろうと真面目に聞いてたんですよ!実習のときに、最高の魔法を見せてあげましょう。きっと驚くはずです。だってちゃんと聞いてましたもん!!
まだ魔法使ったことありませんけど……。
「はぁ……なら、次に属性について説明する。
これらを操れるのはさっきも言った上位の獣人だ。平民にはそんな力はない。」
「じゃあ、俺は属性保有の魔法は使えるんですね」
「そういうことだ」
たくさんの魔法が使えると聞いただけでこんなにも喜んでしまえる俺、なんて単純なんでしょう。
いやいや、多分日本人の大半は喜ぶはずですよ。ね、皆さん!
これでもっと実習のやる気が出ました。
作者さんや世界観によって魔法も異なると思うんですけど、この世界の魔法はどんな感じになるんでしょうかね…。
「取り敢えず手始めに『炎』属性から始める。お前にどれだけの順応力があるのか分からんからな」
「了解です!」
「実習は庭でやる。3分以内に移動しろ」
「うぇっ!?わ、わかりました」
またまたラウルさんは無理難題を!一度も部屋を出たことないのに、お庭の場所なんかわかりませんって。でも時間オーバーしたらきっと怒られるんですよね…。
なんとかしなくては。
「俺は先に行く」
と言って俺を残してさっさと部屋を出ていってしまった。誰も頼りにできないんですけど。
そんなおいおい、と焦っているところに
バァン!!!!
と、部屋の扉が勢いよく開いた。この世界では勢いよく扉を開けるのが普通なのかな?いやいや、そんなこと…ないよね?
まあ、それはいいとして。扉を開けたのは…もう一人の護衛のギルくんだった。
「ハル。なんか困ってるッスよね?」
「え、うん。どうして分かったの?」
「ふふーん、俺にかかればこんなもんスよ~。それより、庭に行きたいんスよね?だったら、魔法使ったら早く行けるッス。ほら、手繋いで」
「え、わぁ!」
まぬけにも突っ立っている俺を、ギルくんは手を引いて額を寄せた。うさぎさんだし甘えたさんだと思っていたから、ちょっと力が強くてびっくりした。そうだよね、聖騎士だもんね。
「ハル。移動の魔法、心象して」
「心象………ぁ、わかった!」
多分、「イメージ」ってことだと思う。イメージしたら、魔法できるよって誰かが言ってましたし、これで行きましょう!
一番花や木や草があって、鳥や蝶がたくさん集まっている漠然としたイメージ。
身近な瞬間移動の魔法イメージを加えて、そこに行きたいのだと願ってみる。意味はないかもしれないけど。
「ハル。そのまんま、目を閉じててね。俺がいいよって言ったら開けていいッスから」
「うん」
言われたとおりに目を閉じて、イメージし続ける。これが成功したら初めての魔法ってことで、いいかな。そう考えるとどうしても成功させたくなってきて、もっと強く願う。
「え、」
近くでギルくんの声がしたときに、瞼の向こうが鋭く光った。目を閉じていてもわかる光の強さに顔を歪めると、繋いでいた手がやんわりと繋ぎ直された。その手の温もりで少し安心した。後でお礼を言わなくては。
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