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援助要請
宣布作戦 伍
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ハヨンは子供のもとへ下り立った。竈は家の入り口の側にあり、子供もハヨンにすぐに気がついた。
「鳥…?何て鳥だろう。見たことないなぁ」
子供は竈の前でしゃがんだ体勢のまま、こちらへ視線を向ける。燃えるような赤一色の鳥など、もはや不可思議な存在であると言っても過言ではないが、そのことに気づかないのは幼さ故なのだろうか。
ハヨンは跳ねるようにして竈の前へ進む。いつもより軽やかに足が動くのは人間の脚の方が重みがあるからかもしれない。
「うわっ」
子供はまさか近づいてくると思わなかったのか、しゃがんだまま後退ろうとして尻餅をつく。しかし、その体制のままハヨンを興味深げに見ているため、怪我は無さそうだ。
ハヨンが竈の薪にふっと優しく息を吹きかけると、穏やかな炎が揺らめき始めた。
「すごい!すごい!どうやったの…!?」
子供は頬を上気させ、目を輝かせている。今の鳥の姿では何も言えないため、ハヨンはそのまま飛び立った。子供は家の外まで飛び出して、ハヨンの姿を目で追っている。
くるりとその場で一周、飛んでみせたあとその場を後にしたのだった。
その後もハヨンの人助けは続いた。浴場の火の管理、家々の前にある灯りを灯す、野営での薪への火付け等、恐らく助けずとも出来ることまで行った。本来ならば当人で行えば良いのだろうが、今は四獣が人々を救うために現れたのだと知らせるために、些細なことでも行動しなければならない。
新たな戦が起こる前の時期だからなのか、大きな人助けは必要とされていないのだろう。
ハヨンは人の姿に戻ろうと、人目のつかぬ所に舞い降りた。目を閉じて、頭の中で自身の目線が鳥から人へと高くなっていくのを想像する。そして、翼は腕へ、鉤爪は脚へと変化していく様を思い浮かべていく。
目を開ければ、先程の何倍も遥か下に地面があると言う事実が飛び込んできて、ハヨンは眩暈がした。慌てて目を閉じ、治るまで待つ。
再び目を開けて、安全なことを確認してから手足の感覚を確認すべく動かしていく。
(まだ変化した時の感覚の差に慣れないな)
こうして徐々に動いて体を慣らさなければ転びそうになるのだ。人としての感覚が戻ってきたのを確認し、ハヨンはほっと息をつく。歩き出すと、地に足がつかぬような危うげな感触があったが、それも次第に薄れた。
細い路地を抜けて、商店の立ち並ぶ大通りに出る。人々が忙しなく行き来する一方で、端には買い物や商談のために立ち止まっている者もいる。戦の影響を受け、どこも以前より活気はないが、やはり王都は賑わっている。
大通りの先には、民がそうして暮らしているのを見下ろすようにして、王城が聳え立っていた。
兵士となる前は王族の権威の象徴で輝かしく思えていたが、今は難攻不落の要塞のように見える。
いつの日か帰ることを、ハヨンは改めて心の中で誓った。
(まずは私ができることをやらないと。)
ハヨンだからこそ出来ることとはなんだろうと、城から追われた日以来ずっと考え続けていた。
そして武芸を磨く、知識を深めること、つまり己を高めることばかりを考えていたが今は違う。戦いを経て、人々と力を合わせることが大切だと分かったのだ。
ハヨンは王都に着いたらまず、ある場所を訪ねようと考えていた。それは父の生家であるチュ家の屋敷である。
ハヨンは叔母のドゥナと一度言葉を交わしただけだが、父の一族は武官を輩出してきた。この国の危機を守るためなら、力を借りることが出来ると踏んでのことだった。
万が一、チュ家の人間がイルウォンに洗脳されたとしても、今のハヨンであれば朱雀の姿で逃げ出すことも可能だ。
(チュ家の人が力を貸してくだされば、他の貴族も動き出すかもしれない。)
とはいえ、怪しい動きをすればイルウォンに操られてしまう可能性もある。ハヨンも、協力する人々も慎重に動かざるを得ない。
歩みを進めると、大通りを横一文字になるように道が通っている。これ以降は貴族の屋敷や高価な品物を扱う店が立ち並ぶ区画となっている。
ハヨンは左に曲がった。チュ家の屋敷の位置は大まかではあるが知っている。
なぜなら、入隊の決まった新兵は最初に王都の貴族の屋敷の位置を把握する。緊急時にどこの屋敷が民に支援をし、混乱した都を警備するのかがもとから決められているからだ。
チュ家の屋敷の近辺に辿り着けば、あとは家紋を確認していけばいい。
ハヨンはあちこちに視線を向けながら歩いていく。そして、ついに目的であるチュ家の屋敷の前で歩みを止めた。
「鳥…?何て鳥だろう。見たことないなぁ」
子供は竈の前でしゃがんだ体勢のまま、こちらへ視線を向ける。燃えるような赤一色の鳥など、もはや不可思議な存在であると言っても過言ではないが、そのことに気づかないのは幼さ故なのだろうか。
ハヨンは跳ねるようにして竈の前へ進む。いつもより軽やかに足が動くのは人間の脚の方が重みがあるからかもしれない。
「うわっ」
子供はまさか近づいてくると思わなかったのか、しゃがんだまま後退ろうとして尻餅をつく。しかし、その体制のままハヨンを興味深げに見ているため、怪我は無さそうだ。
ハヨンが竈の薪にふっと優しく息を吹きかけると、穏やかな炎が揺らめき始めた。
「すごい!すごい!どうやったの…!?」
子供は頬を上気させ、目を輝かせている。今の鳥の姿では何も言えないため、ハヨンはそのまま飛び立った。子供は家の外まで飛び出して、ハヨンの姿を目で追っている。
くるりとその場で一周、飛んでみせたあとその場を後にしたのだった。
その後もハヨンの人助けは続いた。浴場の火の管理、家々の前にある灯りを灯す、野営での薪への火付け等、恐らく助けずとも出来ることまで行った。本来ならば当人で行えば良いのだろうが、今は四獣が人々を救うために現れたのだと知らせるために、些細なことでも行動しなければならない。
新たな戦が起こる前の時期だからなのか、大きな人助けは必要とされていないのだろう。
ハヨンは人の姿に戻ろうと、人目のつかぬ所に舞い降りた。目を閉じて、頭の中で自身の目線が鳥から人へと高くなっていくのを想像する。そして、翼は腕へ、鉤爪は脚へと変化していく様を思い浮かべていく。
目を開ければ、先程の何倍も遥か下に地面があると言う事実が飛び込んできて、ハヨンは眩暈がした。慌てて目を閉じ、治るまで待つ。
再び目を開けて、安全なことを確認してから手足の感覚を確認すべく動かしていく。
(まだ変化した時の感覚の差に慣れないな)
こうして徐々に動いて体を慣らさなければ転びそうになるのだ。人としての感覚が戻ってきたのを確認し、ハヨンはほっと息をつく。歩き出すと、地に足がつかぬような危うげな感触があったが、それも次第に薄れた。
細い路地を抜けて、商店の立ち並ぶ大通りに出る。人々が忙しなく行き来する一方で、端には買い物や商談のために立ち止まっている者もいる。戦の影響を受け、どこも以前より活気はないが、やはり王都は賑わっている。
大通りの先には、民がそうして暮らしているのを見下ろすようにして、王城が聳え立っていた。
兵士となる前は王族の権威の象徴で輝かしく思えていたが、今は難攻不落の要塞のように見える。
いつの日か帰ることを、ハヨンは改めて心の中で誓った。
(まずは私ができることをやらないと。)
ハヨンだからこそ出来ることとはなんだろうと、城から追われた日以来ずっと考え続けていた。
そして武芸を磨く、知識を深めること、つまり己を高めることばかりを考えていたが今は違う。戦いを経て、人々と力を合わせることが大切だと分かったのだ。
ハヨンは王都に着いたらまず、ある場所を訪ねようと考えていた。それは父の生家であるチュ家の屋敷である。
ハヨンは叔母のドゥナと一度言葉を交わしただけだが、父の一族は武官を輩出してきた。この国の危機を守るためなら、力を借りることが出来ると踏んでのことだった。
万が一、チュ家の人間がイルウォンに洗脳されたとしても、今のハヨンであれば朱雀の姿で逃げ出すことも可能だ。
(チュ家の人が力を貸してくだされば、他の貴族も動き出すかもしれない。)
とはいえ、怪しい動きをすればイルウォンに操られてしまう可能性もある。ハヨンも、協力する人々も慎重に動かざるを得ない。
歩みを進めると、大通りを横一文字になるように道が通っている。これ以降は貴族の屋敷や高価な品物を扱う店が立ち並ぶ区画となっている。
ハヨンは左に曲がった。チュ家の屋敷の位置は大まかではあるが知っている。
なぜなら、入隊の決まった新兵は最初に王都の貴族の屋敷の位置を把握する。緊急時にどこの屋敷が民に支援をし、混乱した都を警備するのかがもとから決められているからだ。
チュ家の屋敷の近辺に辿り着けば、あとは家紋を確認していけばいい。
ハヨンはあちこちに視線を向けながら歩いていく。そして、ついに目的であるチュ家の屋敷の前で歩みを止めた。
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