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援助要請
宣布作戦
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孟の城では、兵士の上官と四獣、そして老婆がリョンヘの招集により、一堂に会した。
ハヨン達が孟にやって来た頃と比べると、段々と陣営に人が増えて来ている。ついに広間の長机の椅子は空席が無くなった。
これは孟の民衆だけでなく、周囲の領民が逃れて来たことも影響している。無理な徴兵により、王城側に対する不信感が高まっているのだ。
上席に座しているリョンヘが、全員が集まったことを確認し、立ち上がる。
「四獣が揃い、共に闘う仲間も増えた。だが、今後の戦いでは、孟の中で支度を完結できるとは思ない。そこで一つ考えがある。滓国へ支援物資の要請をしようと思う。」
その言葉で皆がざわめいた。四獣と老婆はヘウォンと再会する前に聞いてはいたので、落ち着いているが、皆の反応も無理はない。
滓国は武力に優れた国であり、客観的に見ても、兵力の少ないリョンヘ側に付く可能性は低い。
「滓が要請を受け入れる術が、何かあるのですか?」
孟の軍事の指揮を担うセチャンが、リョンヘに問う。
「術と言えるかはわからないが、一つ手立てはある。それは、あくまで軍事同盟を結んだのは俺だと言うことだ。同盟を結んだ後に俺は王城内入れなかったのだから、王城側は同盟を受け入れていない。だから有事の際は俺と滓が協力すると言うことだ。…これは苦し紛れな方法だがな。」
滓国からすると、屁理屈とも取れる言い分である。リョンヘも苦笑していた。
「それだけでは滓は動かないでしょうな…」
「ああ、だから滓国に支援をする時、二つの手札を使う。一つ目は、こちら側には四獣がいるので、有利だと言うこと。二つ目は、滓国の武器が王城側に流れていると言うことだ。」
ハヨンは、リョンヘと共に滓を訪問した折に、ジンホ王子とそのような会話があったことを思い出した。
「一つ目は良いとして、二つ目は事実なのですか?」
招集された兵士の一人がリョンヘに問う。セチャンほどではないが、彼も長年王城にて勤めていた人物だ。勤めていた中で、そのような噂を耳にしたこともない故の質問だろう。
滓国に支援を要請すると言うことは、国内で完結する争いではなくなる。偽装された証拠では、滓国との関係が悪化するため、慎重にならなければいけない。
「ああ、事実だ。王城内で幽閉状態だったヘウォンが、見覚えのない武器を兵士が持っていたり、滓国の様式で造られた剣を見ている。そして、戦の時に相手側が使用し、のちに俺たちが回収した武器を彼と共に確認したが、こちらも同様だった」
孟の兵力は限られている。そのため戦が終わった後、落ちていた武器を回収し再利用していた。武器を手に入れる苦肉の策だったが、まさか滓に突きつける証拠となるとは思いもよらなかった。
「同盟を結んだ際に、ジンホ王子は武器の流出を突き止めたいと言っていた。このことを知れば滓国も耳を貸してくれるに違いない。」
「と言うことは、イルウォンは今まで、秘密裏に様々な手を尽くしてきたんでしょうね。他国の武器を仕入れるのは、彼一人ではできないでしょうから。」
兵士は滓国の武器の流通について説明する。彼曰く、希少価値の高い鉄を用いているため、他国への持ち出しを制限しているようだ。
ハヨンは鍛治職人の父の遺作である剣を、己の片割れのように大切にしていたが、それほどに評価の高い滓国の武器がどのようなものなのか気になった。
(後で回収した武器を、しっかり見てみよう…)
しかし、ハヨンは議題とは別のことを考えていたことに気づき、リョンヘ達の話に再び集中する。
「この事実を滓国が知れば、経緯を調べて、イルウォン達のしてきたことが他にも明るみになるかも知れないな。」
「確かに、滓国にも関わらざるを得ない理由ができますし、支援の見込みが期待できないわけではありませんね。あとは、誰が滓国へ赴くのかが問題になります。」
適任者を探しているのか、セチャンがぐるりと会議の参加者を見渡す。
現在、国内の内情が少しでも漏れるのを恐れてか、イルウォンは国境の見張りを強化している。それどころか、協力を得られた領では、領民の行き来ですら厳しい検閲と制限を強いていた。
そのような状況では、国内の視察や軍事演習への参加を積極的に行っていたリョンヘは、兵士のみならず、平民にも見つかる可能性が高い。
「…私が向かいましょう。リョンヘ様が移動することでの危険性を考えると、前回同行した我々のみで向かった方がいい。」
そのままセチャンはそう結論づける。確かに彼の言うことは正しいのだが、彼一人で任務の責任を負ってしまいそうな口ぶりである。
そして、ハヨンはもう一つの懸念点を思い出した。
「あの、ある程度若手の兵士で固めるべきだと私は思います。」
「何故だ?」
ハヨンの言葉で、その場にいた者の視線が一気に集まる。緊張が高まり息苦しい。セチャンの問いに答える前に、一息ついた。
「長年兵士として務められていたセチャン様達は、国境にいる兵士達や領主に顔が割れている可能性があります。」
ハヨンも入隊したばかりの兵士ではあったが、主要な兵士は王城や主要な領地との往来が頻繁であるため、名まで把握できずとも顔を知っている兵士は多数いた。彼らは国内の方々に出向いているため、他領の若手の兵士ですらハヨンと同様である可能性は高い。
ハヨン達が孟にやって来た頃と比べると、段々と陣営に人が増えて来ている。ついに広間の長机の椅子は空席が無くなった。
これは孟の民衆だけでなく、周囲の領民が逃れて来たことも影響している。無理な徴兵により、王城側に対する不信感が高まっているのだ。
上席に座しているリョンヘが、全員が集まったことを確認し、立ち上がる。
「四獣が揃い、共に闘う仲間も増えた。だが、今後の戦いでは、孟の中で支度を完結できるとは思ない。そこで一つ考えがある。滓国へ支援物資の要請をしようと思う。」
その言葉で皆がざわめいた。四獣と老婆はヘウォンと再会する前に聞いてはいたので、落ち着いているが、皆の反応も無理はない。
滓国は武力に優れた国であり、客観的に見ても、兵力の少ないリョンヘ側に付く可能性は低い。
「滓が要請を受け入れる術が、何かあるのですか?」
孟の軍事の指揮を担うセチャンが、リョンヘに問う。
「術と言えるかはわからないが、一つ手立てはある。それは、あくまで軍事同盟を結んだのは俺だと言うことだ。同盟を結んだ後に俺は王城内入れなかったのだから、王城側は同盟を受け入れていない。だから有事の際は俺と滓が協力すると言うことだ。…これは苦し紛れな方法だがな。」
滓国からすると、屁理屈とも取れる言い分である。リョンヘも苦笑していた。
「それだけでは滓は動かないでしょうな…」
「ああ、だから滓国に支援をする時、二つの手札を使う。一つ目は、こちら側には四獣がいるので、有利だと言うこと。二つ目は、滓国の武器が王城側に流れていると言うことだ。」
ハヨンは、リョンヘと共に滓を訪問した折に、ジンホ王子とそのような会話があったことを思い出した。
「一つ目は良いとして、二つ目は事実なのですか?」
招集された兵士の一人がリョンヘに問う。セチャンほどではないが、彼も長年王城にて勤めていた人物だ。勤めていた中で、そのような噂を耳にしたこともない故の質問だろう。
滓国に支援を要請すると言うことは、国内で完結する争いではなくなる。偽装された証拠では、滓国との関係が悪化するため、慎重にならなければいけない。
「ああ、事実だ。王城内で幽閉状態だったヘウォンが、見覚えのない武器を兵士が持っていたり、滓国の様式で造られた剣を見ている。そして、戦の時に相手側が使用し、のちに俺たちが回収した武器を彼と共に確認したが、こちらも同様だった」
孟の兵力は限られている。そのため戦が終わった後、落ちていた武器を回収し再利用していた。武器を手に入れる苦肉の策だったが、まさか滓に突きつける証拠となるとは思いもよらなかった。
「同盟を結んだ際に、ジンホ王子は武器の流出を突き止めたいと言っていた。このことを知れば滓国も耳を貸してくれるに違いない。」
「と言うことは、イルウォンは今まで、秘密裏に様々な手を尽くしてきたんでしょうね。他国の武器を仕入れるのは、彼一人ではできないでしょうから。」
兵士は滓国の武器の流通について説明する。彼曰く、希少価値の高い鉄を用いているため、他国への持ち出しを制限しているようだ。
ハヨンは鍛治職人の父の遺作である剣を、己の片割れのように大切にしていたが、それほどに評価の高い滓国の武器がどのようなものなのか気になった。
(後で回収した武器を、しっかり見てみよう…)
しかし、ハヨンは議題とは別のことを考えていたことに気づき、リョンヘ達の話に再び集中する。
「この事実を滓国が知れば、経緯を調べて、イルウォン達のしてきたことが他にも明るみになるかも知れないな。」
「確かに、滓国にも関わらざるを得ない理由ができますし、支援の見込みが期待できないわけではありませんね。あとは、誰が滓国へ赴くのかが問題になります。」
適任者を探しているのか、セチャンがぐるりと会議の参加者を見渡す。
現在、国内の内情が少しでも漏れるのを恐れてか、イルウォンは国境の見張りを強化している。それどころか、協力を得られた領では、領民の行き来ですら厳しい検閲と制限を強いていた。
そのような状況では、国内の視察や軍事演習への参加を積極的に行っていたリョンヘは、兵士のみならず、平民にも見つかる可能性が高い。
「…私が向かいましょう。リョンヘ様が移動することでの危険性を考えると、前回同行した我々のみで向かった方がいい。」
そのままセチャンはそう結論づける。確かに彼の言うことは正しいのだが、彼一人で任務の責任を負ってしまいそうな口ぶりである。
そして、ハヨンはもう一つの懸念点を思い出した。
「あの、ある程度若手の兵士で固めるべきだと私は思います。」
「何故だ?」
ハヨンの言葉で、その場にいた者の視線が一気に集まる。緊張が高まり息苦しい。セチャンの問いに答える前に、一息ついた。
「長年兵士として務められていたセチャン様達は、国境にいる兵士達や領主に顔が割れている可能性があります。」
ハヨンも入隊したばかりの兵士ではあったが、主要な兵士は王城や主要な領地との往来が頻繁であるため、名まで把握できずとも顔を知っている兵士は多数いた。彼らは国内の方々に出向いているため、他領の若手の兵士ですらハヨンと同様である可能性は高い。
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