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目覚めの時
逆襲
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「これより孟の城へと進軍する!ヒチョル前王を弑逆したリョンヘ王子に裁きの鉄槌を!!」
イルウォンは伝令役の兵士に、そう伝えさせた。体は軽い。先ほどの火矢による攻撃で、操っていた大半の歩兵は命を落としたからだ。そのため、男は気分が高揚していた。
孟の城へと進み始めると、先ほど火矢を放った山が小気味よいほど燃えていた。流石に向こう側まで火が届くかは疑問だが、山にいたリョンヘ側の兵士に多少は被害を与えたであろうし、こうなると孟の地で籠城することとなるだろう。そうすれば一気に叩ける。例え青龍がいようとこの兵力の差では数日も保つまい。
(進め、進め!このままこの国を、この世の全てを手に入れる…!!)
遙か昔、この国の初代王によって潰えた夢が今まさに、叶おうとしている。イルウォンは腹の底から笑いたくなった。
その時、彼の先を行く歩兵や騎馬隊のいる辺りから、異変を知らせる笛の音が鳴った。しばらくして伝令役がイルウォンの元まで下がってくる。
「何事だ。」
伝令役は汗をかいており、ひどく緊張した面持ちだった。
「は。山の方から奇妙な鳥のようなものが近づいております。」
イルウォンは眉をひそめる。
(そのようなことで笛を鳴らしたのか?どうせ火事に驚いた鷹なんぞが逃げてきたのではないのか。)
「ただの鳥だろう。気にするな。」
そう吐き捨てるように男が返した時、再び前方から兵士たちの叫び声が聞こえた。離れた所にいる男からでも見えるほど大きな火の手が、行く手を阻んでいる。しかし枯れ草すらないこの荒地で、なぜ火の手が上がるのか、さっぱりわからない。その上、火事が起こったのは山だ。ここまで火が届くはずもない。
(そんなまさか…!!)
理を打ち壊せるもの。考えられるとしたら一つしかない。イルウォンは何百年ぶりに鳥肌を立てた。
(いや、そんなまさか。私がこの手で殺してから、姿を見た者はいないというのに…!!いつの間に生まれ変わったのだ…!!)
頭上で大きな羽音が聞こえる。見上げると大きく、美しく、燃え立つように煌めきを放つ朱い鳥だった。くちばしの隙間から炎をこぼしながら、こちらに向かって勢いよく突っ込んでくる。
(やはり朱雀…!!)
イルウォンは刀を構え、もう片方の手で呪詛を放った。しかし、虚しく朱雀にかわされてしまう。朱雀は脇目もふらず、ただただ一直線に向かって来る。炎を身に纏い、風になびかせ飛ぶ姿はまさに炎の化身だった。朱雀はついに己の側まで来ると、炎を吐いた。彼を守ろうとしていた兵士たちは恐れをなして逃げていく。イルウォンは力を使って炎を吸収させようとしたが、咄嗟のことで一部を取りこぼし、目に火傷を負った。視界が闇に閉ざされる。
「くそっ…!!」
慌てて傷を癒すが遅かった。傷が癒えた頃には目の前に鉤爪が迫り、彼の顔を引き裂く。
「ああぁぁああ!!」
顔の傷口から己の魔力が噴き出した。慌ててそれを抑え込む。この何百年もかけて蓄えてきた魔力を、ここで失うわけにはいかない。そのことで反撃が遅れた。次は背中を衝撃が襲う。旋回して朱雀が引き裂いたのだ。
「うろちょろと下劣な鳥が…!!」
なんとか呪詛をもう一度放ち、朱雀に命中した。朱雀は大きく姿勢を崩す。今にも堕ちそうだった。しかし、朱雀の瞳の殺気は消えない。もう一度イルウォンに炎を吐きかけ、彼の前に立ちはだかる炎の海へと、ふらつきながら姿を消したのだった。
「退けぇ!退けぇ!作戦は中止だ!!」
辺りは火の海で、退却するしか道はない。今の彼の状態では、兵士を操るのもいっぱいいっぱいで、勝てるかどうかも怪しかった。イルウォンは歯噛みしながら朱雀の去った方を睨みつけるしかないのだった。
イルウォンは伝令役の兵士に、そう伝えさせた。体は軽い。先ほどの火矢による攻撃で、操っていた大半の歩兵は命を落としたからだ。そのため、男は気分が高揚していた。
孟の城へと進み始めると、先ほど火矢を放った山が小気味よいほど燃えていた。流石に向こう側まで火が届くかは疑問だが、山にいたリョンヘ側の兵士に多少は被害を与えたであろうし、こうなると孟の地で籠城することとなるだろう。そうすれば一気に叩ける。例え青龍がいようとこの兵力の差では数日も保つまい。
(進め、進め!このままこの国を、この世の全てを手に入れる…!!)
遙か昔、この国の初代王によって潰えた夢が今まさに、叶おうとしている。イルウォンは腹の底から笑いたくなった。
その時、彼の先を行く歩兵や騎馬隊のいる辺りから、異変を知らせる笛の音が鳴った。しばらくして伝令役がイルウォンの元まで下がってくる。
「何事だ。」
伝令役は汗をかいており、ひどく緊張した面持ちだった。
「は。山の方から奇妙な鳥のようなものが近づいております。」
イルウォンは眉をひそめる。
(そのようなことで笛を鳴らしたのか?どうせ火事に驚いた鷹なんぞが逃げてきたのではないのか。)
「ただの鳥だろう。気にするな。」
そう吐き捨てるように男が返した時、再び前方から兵士たちの叫び声が聞こえた。離れた所にいる男からでも見えるほど大きな火の手が、行く手を阻んでいる。しかし枯れ草すらないこの荒地で、なぜ火の手が上がるのか、さっぱりわからない。その上、火事が起こったのは山だ。ここまで火が届くはずもない。
(そんなまさか…!!)
理を打ち壊せるもの。考えられるとしたら一つしかない。イルウォンは何百年ぶりに鳥肌を立てた。
(いや、そんなまさか。私がこの手で殺してから、姿を見た者はいないというのに…!!いつの間に生まれ変わったのだ…!!)
頭上で大きな羽音が聞こえる。見上げると大きく、美しく、燃え立つように煌めきを放つ朱い鳥だった。くちばしの隙間から炎をこぼしながら、こちらに向かって勢いよく突っ込んでくる。
(やはり朱雀…!!)
イルウォンは刀を構え、もう片方の手で呪詛を放った。しかし、虚しく朱雀にかわされてしまう。朱雀は脇目もふらず、ただただ一直線に向かって来る。炎を身に纏い、風になびかせ飛ぶ姿はまさに炎の化身だった。朱雀はついに己の側まで来ると、炎を吐いた。彼を守ろうとしていた兵士たちは恐れをなして逃げていく。イルウォンは力を使って炎を吸収させようとしたが、咄嗟のことで一部を取りこぼし、目に火傷を負った。視界が闇に閉ざされる。
「くそっ…!!」
慌てて傷を癒すが遅かった。傷が癒えた頃には目の前に鉤爪が迫り、彼の顔を引き裂く。
「ああぁぁああ!!」
顔の傷口から己の魔力が噴き出した。慌ててそれを抑え込む。この何百年もかけて蓄えてきた魔力を、ここで失うわけにはいかない。そのことで反撃が遅れた。次は背中を衝撃が襲う。旋回して朱雀が引き裂いたのだ。
「うろちょろと下劣な鳥が…!!」
なんとか呪詛をもう一度放ち、朱雀に命中した。朱雀は大きく姿勢を崩す。今にも堕ちそうだった。しかし、朱雀の瞳の殺気は消えない。もう一度イルウォンに炎を吐きかけ、彼の前に立ちはだかる炎の海へと、ふらつきながら姿を消したのだった。
「退けぇ!退けぇ!作戦は中止だ!!」
辺りは火の海で、退却するしか道はない。今の彼の状態では、兵士を操るのもいっぱいいっぱいで、勝てるかどうかも怪しかった。イルウォンは歯噛みしながら朱雀の去った方を睨みつけるしかないのだった。
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