134 / 221
形単影隻
発見
しおりを挟む
「何だか複雑そうね?王子。」
ハヨンがその後、険しい顔で考え込んでいる横で、あることを察知してしまったムニルはそう王子に小さな声で話しかけた。
「何がだ?」
リョンヘは本当に心当たりがないと言うように怪訝そうにムニルを見つめる。ムニルは彼の反応に少し呆れた。
「嘘ついたって無駄よ。私はしっかり見てましたもんね。ハヨンが白虎の報告してるときのあなたときたら…。まぁ、確かに綺麗な子だったから、ハヨンがあんな表情になっても仕方ないでしょうよ」
ムニルは面白い事を見つけたと言わんばかりに、人の悪い笑みを見せた。リョンヘはムニルのその反応を見て、目を逸らす。かれの耳は僅かに赤かった。
「私は別にハヨンにそういった感情は抱いていない。」
本当はますますにやにやと笑いそうになったのだが、ムニルはすんでのところで顔を引き締めた。
(真面目が取り柄の面白味のない王子と最初は思っていたけど…。そうでもなさそうね。いつからハヨンのことが好きなのかしら。)
久しく恋愛話に触れてこなかったムニルは、思わず好奇心が疼く。人の機微というものは、何気ない日常に彩りを添える存在だ。この二人の関係は、戦だ反逆だと殺伐とした毎日を送る中で、ムニルにとっての楽しみの一つになるだろう。
(あ…。でも、ハヨンちゃんの方はどうなのかしら。たしか王城に主人がいるのよね…。しかもその主人はリョンへの兄…。でもまあ、私は見知らぬ王子よりも見知った王子を応援しておきましょう。)
ムニルは度々、リョンヘとハヨンがただの王子と臣下の関係ではないことも薄々気がついていた。その上2人の息が妙に合っており、気安いようすだ。
(恋愛話は嫌いじゃないわ…。それもこんなに初心そうな者同士の恋愛なんてそうそう見れないもの…。)
「まぁまぁ、安心しなさいよ。あなたも綺麗、とはまた違うかもしれないけど、いい男だと思うわよ。」
ムニルはそうやって肩を叩く。リョンヘは眉を寄せ不機嫌そうに小さくため息をつく。
「男のお前に慰められても仕方がないだろう」
彼はへそを曲げたような表情になった。これではハヨンに好意があると肯定しているようなものである。
(この二人がどうなるか…。これから先が楽しみね。)
ムニルはちらりとハヨンに目をやった。当の本人も、何か考え込んでいる様子で、こそこそと話していたにも関わらず、こちらを気にする素振りも見せない。
彼らには主従関係がある、そして越えようにも越えられない身分の差がある。戦を目前とし、死線をくぐり抜けようとしている。そんな中で、彼らが手と手を取り合い愛し合う日が果たしてくるのか。結末は全くわからないが、ムニルは彼らのことをひっそりと応援することを心に決めるのだった。
ハヨンがその後、険しい顔で考え込んでいる横で、あることを察知してしまったムニルはそう王子に小さな声で話しかけた。
「何がだ?」
リョンヘは本当に心当たりがないと言うように怪訝そうにムニルを見つめる。ムニルは彼の反応に少し呆れた。
「嘘ついたって無駄よ。私はしっかり見てましたもんね。ハヨンが白虎の報告してるときのあなたときたら…。まぁ、確かに綺麗な子だったから、ハヨンがあんな表情になっても仕方ないでしょうよ」
ムニルは面白い事を見つけたと言わんばかりに、人の悪い笑みを見せた。リョンヘはムニルのその反応を見て、目を逸らす。かれの耳は僅かに赤かった。
「私は別にハヨンにそういった感情は抱いていない。」
本当はますますにやにやと笑いそうになったのだが、ムニルはすんでのところで顔を引き締めた。
(真面目が取り柄の面白味のない王子と最初は思っていたけど…。そうでもなさそうね。いつからハヨンのことが好きなのかしら。)
久しく恋愛話に触れてこなかったムニルは、思わず好奇心が疼く。人の機微というものは、何気ない日常に彩りを添える存在だ。この二人の関係は、戦だ反逆だと殺伐とした毎日を送る中で、ムニルにとっての楽しみの一つになるだろう。
(あ…。でも、ハヨンちゃんの方はどうなのかしら。たしか王城に主人がいるのよね…。しかもその主人はリョンへの兄…。でもまあ、私は見知らぬ王子よりも見知った王子を応援しておきましょう。)
ムニルは度々、リョンヘとハヨンがただの王子と臣下の関係ではないことも薄々気がついていた。その上2人の息が妙に合っており、気安いようすだ。
(恋愛話は嫌いじゃないわ…。それもこんなに初心そうな者同士の恋愛なんてそうそう見れないもの…。)
「まぁまぁ、安心しなさいよ。あなたも綺麗、とはまた違うかもしれないけど、いい男だと思うわよ。」
ムニルはそうやって肩を叩く。リョンヘは眉を寄せ不機嫌そうに小さくため息をつく。
「男のお前に慰められても仕方がないだろう」
彼はへそを曲げたような表情になった。これではハヨンに好意があると肯定しているようなものである。
(この二人がどうなるか…。これから先が楽しみね。)
ムニルはちらりとハヨンに目をやった。当の本人も、何か考え込んでいる様子で、こそこそと話していたにも関わらず、こちらを気にする素振りも見せない。
彼らには主従関係がある、そして越えようにも越えられない身分の差がある。戦を目前とし、死線をくぐり抜けようとしている。そんな中で、彼らが手と手を取り合い愛し合う日が果たしてくるのか。結末は全くわからないが、ムニルは彼らのことをひっそりと応援することを心に決めるのだった。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる