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形単影隻
発見
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白虎を捜索していた班の者達が帰ってきた。皆、足取りが軽く、何か有力な情報を掴んだのだと出迎えた者達は悟る。
「何!?赤架だと!?」
部下の報告を受けたリョンヘは、刷毛を取り落とした。刷毛が乾いた音を立てて転がる。近頃、彼は王族の者ならばすることのない仕事にも意欲を持ち、皆が止めるのも構わず行っている。ちなみに今は厩で馬の世話をしているところだ。
「はい。どうやら元にいた白虎は十年以上前に他界されたそうで、今の白虎は数年前に赤架に現れたのだとか。」
「赤架か…。まさか隣の郡だったとはな。しかしまぁ、元よりも近いところではあるし、白虎を探しやすい場所だ。」
リョンヘはそう言いながら、先程取り落とした刷毛を拾った。その時、ふと部下の顔を見直すと、何やら不安そうな顔をしている。ついさっきまでは誇らしげに結果を報告していた彼だが、何かあったのだろうか。
「浮かない顔をしておるが、体調が優れないのか?四日も身を隠しながら白虎を探したのだから、疲れたのだろうな…。お前達はよくやった、今日と明日、ゆっくり休め。」
リョンヘがそう優しく声をかけ、肩に手をかけると、部下は慌てたように手を振った。
「いえ、確かに少し疲れてはいるんですが、違うんです。実は心配事がありまして…」
「心配事?」
リョンヘがそう問い返すと、部下は唇を少し噛んだ。
「…実は、どうやら白虎は…人々から嫌われているようなんです。」
リョンへは大きく目を瞠った。昔、伝説の生き物として崇められた白虎が、そのような事になっていると、思ってもみなかったからだ。
「白虎が…?なぜだ…。」
「…わかりません。ただ、少しだけ赤架の民にも話を尋いてきたのですが、どうやら魔物の子とか、穢らわしいといっている人もいて…。」
そんな扱いを受けてなお、赤架にとどまる白虎も不思議である。むしろ先代の白虎よりも、彼の方が引越しが必要だろう。
「何にせよまずは話を本人に聴いてみないとな。ありがとう、ご苦労だった。班の者に、休むように伝えてくれ。」
リョンへがそう伝えると、部下は勢いのよい敬礼をし、その場を去っていった。その部下の後ろ姿を見送ったリョンヘは、先ほどまで世話をしていた馬の胴にそっと手を置く。
「悪いな、今日のお前の相手はこれで終わりだ。次は餌やりまでやるからな。」
馬は静かに耳を動かしている。リョンヘの言葉に耳を傾けているようだった。
(時折、動物に言葉が通じているのかと思うことがあるけれど、これは王族の力の名残なのだろうか…。リョンヤンが言葉で命令すると、鳥がその言葉通りに従ったのを見たことがある…。)
しかし、リョンヘがどんなに動物たちに言葉を投げかけても、確信的な動きをする動物がいたことはなかった。れっきとした王族であるならば、力が使えるはずなのに、と記憶を失った当初は何度思ったことだろう。
面と向かって言われたことはなかったが、王子の替え玉が、記憶喪失のふりをして王城の前に倒れていたのだとも噂され、リョンヘは本当に己が王族なのかを悩んだこともあった。
(俺に力があれば、今の状況も随分変わっていたのかもしれないのにな)
リョンヘは久々に胸の中に広がる苦い思いを持て余しながら、厩を後にしたのだった。
一方、後にリョンヘの執務室に呼び出されたセチャンは、部下の予定について書き込まれている巻き物を取り出して腕組みしていた。
「明日からさっそく、リョンヘ様自ら捜索されると言うことですが、誰に供をさせるのか決めなければなりませんね。」
この城では、人数も少ない上に、突然の予定変更も多い。予定を調整する役目を担っているセチャンは、しょっちゅう組み替えねばならぬのが悩みの種だった。
(せめてあと数人いれば、もっとこの組み替え方も融通がきいて楽になるのだがな…)
もう持ち場の人数もぎりぎりで、一杯一杯だ_______いや、本音を言えば人が足りず、手薄な箇所もあるため、これ以上人員を割くことは苦しい。
「これはわがままなのかもしれないが…。ハヨンは連れていきたい。彼女は私の護衛だからな。あとはチェヨン殿にもできればついてきてもらいたい。彼女は四獣について詳しい方だからな…。ただ、老体に旅はきついかもしれないから、彼女の意見もきかねばならないが。」
「そうですね…。チェヨン殿は四獣についてとても詳しいです。できればそうしてもらいたい。供をする場合は、馬が必要になりますな。」
本来、赤架であれば馬に乗らずとも1日もかからずに着く。この孟の城は何もかもが不足しているため、馬を使わずに行く方が良い。
白虎の手がかりが見つかり、少しずつ動き出すように思えたが、対応しなければならない問題はまだまだあるのだった。
「何!?赤架だと!?」
部下の報告を受けたリョンヘは、刷毛を取り落とした。刷毛が乾いた音を立てて転がる。近頃、彼は王族の者ならばすることのない仕事にも意欲を持ち、皆が止めるのも構わず行っている。ちなみに今は厩で馬の世話をしているところだ。
「はい。どうやら元にいた白虎は十年以上前に他界されたそうで、今の白虎は数年前に赤架に現れたのだとか。」
「赤架か…。まさか隣の郡だったとはな。しかしまぁ、元よりも近いところではあるし、白虎を探しやすい場所だ。」
リョンヘはそう言いながら、先程取り落とした刷毛を拾った。その時、ふと部下の顔を見直すと、何やら不安そうな顔をしている。ついさっきまでは誇らしげに結果を報告していた彼だが、何かあったのだろうか。
「浮かない顔をしておるが、体調が優れないのか?四日も身を隠しながら白虎を探したのだから、疲れたのだろうな…。お前達はよくやった、今日と明日、ゆっくり休め。」
リョンヘがそう優しく声をかけ、肩に手をかけると、部下は慌てたように手を振った。
「いえ、確かに少し疲れてはいるんですが、違うんです。実は心配事がありまして…」
「心配事?」
リョンヘがそう問い返すと、部下は唇を少し噛んだ。
「…実は、どうやら白虎は…人々から嫌われているようなんです。」
リョンへは大きく目を瞠った。昔、伝説の生き物として崇められた白虎が、そのような事になっていると、思ってもみなかったからだ。
「白虎が…?なぜだ…。」
「…わかりません。ただ、少しだけ赤架の民にも話を尋いてきたのですが、どうやら魔物の子とか、穢らわしいといっている人もいて…。」
そんな扱いを受けてなお、赤架にとどまる白虎も不思議である。むしろ先代の白虎よりも、彼の方が引越しが必要だろう。
「何にせよまずは話を本人に聴いてみないとな。ありがとう、ご苦労だった。班の者に、休むように伝えてくれ。」
リョンへがそう伝えると、部下は勢いのよい敬礼をし、その場を去っていった。その部下の後ろ姿を見送ったリョンヘは、先ほどまで世話をしていた馬の胴にそっと手を置く。
「悪いな、今日のお前の相手はこれで終わりだ。次は餌やりまでやるからな。」
馬は静かに耳を動かしている。リョンヘの言葉に耳を傾けているようだった。
(時折、動物に言葉が通じているのかと思うことがあるけれど、これは王族の力の名残なのだろうか…。リョンヤンが言葉で命令すると、鳥がその言葉通りに従ったのを見たことがある…。)
しかし、リョンヘがどんなに動物たちに言葉を投げかけても、確信的な動きをする動物がいたことはなかった。れっきとした王族であるならば、力が使えるはずなのに、と記憶を失った当初は何度思ったことだろう。
面と向かって言われたことはなかったが、王子の替え玉が、記憶喪失のふりをして王城の前に倒れていたのだとも噂され、リョンヘは本当に己が王族なのかを悩んだこともあった。
(俺に力があれば、今の状況も随分変わっていたのかもしれないのにな)
リョンヘは久々に胸の中に広がる苦い思いを持て余しながら、厩を後にしたのだった。
一方、後にリョンヘの執務室に呼び出されたセチャンは、部下の予定について書き込まれている巻き物を取り出して腕組みしていた。
「明日からさっそく、リョンヘ様自ら捜索されると言うことですが、誰に供をさせるのか決めなければなりませんね。」
この城では、人数も少ない上に、突然の予定変更も多い。予定を調整する役目を担っているセチャンは、しょっちゅう組み替えねばならぬのが悩みの種だった。
(せめてあと数人いれば、もっとこの組み替え方も融通がきいて楽になるのだがな…)
もう持ち場の人数もぎりぎりで、一杯一杯だ_______いや、本音を言えば人が足りず、手薄な箇所もあるため、これ以上人員を割くことは苦しい。
「これはわがままなのかもしれないが…。ハヨンは連れていきたい。彼女は私の護衛だからな。あとはチェヨン殿にもできればついてきてもらいたい。彼女は四獣について詳しい方だからな…。ただ、老体に旅はきついかもしれないから、彼女の意見もきかねばならないが。」
「そうですね…。チェヨン殿は四獣についてとても詳しいです。できればそうしてもらいたい。供をする場合は、馬が必要になりますな。」
本来、赤架であれば馬に乗らずとも1日もかからずに着く。この孟の城は何もかもが不足しているため、馬を使わずに行く方が良い。
白虎の手がかりが見つかり、少しずつ動き出すように思えたが、対応しなければならない問題はまだまだあるのだった。
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