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錯綜
激昂
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「これはどういうことだ!」
男はたった今、書状を携えて返ってきた手下に向かって怒鳴り散らした。手下の男は肩をすくめてじっと耐える。
「も、申し訳ありません!しかし今の燐ではリョンヤン様が正真正銘の王であり、リョンヘは逆賊である、と何度説得しても滓の王達は納得しないのです。」
男は気にくわない様子で、手にしていた書状を手下に投げつけた。紙は手下にぶつかったが、かさりと控えめな音を立てて地に落ちた。紙に大して威力もないが、思わず手下は体を竦ませる。主人は腹立たしいと言った様子で、手下は主の醸し出すその険悪な雰囲気にたじたじだった。
(くそ!これで滓がこちら側につけば、青龍相手でも倒せるぐらいの援軍を見込めたのに…!)
一方、男は歯軋りしながらもう一度その書状を拾い上げた。しかし何度読み返しても結果は同じで、[リョンヘ殿が貴殿のもとへ戻っていらしてないのならば、その同盟は有効とはなっておらず、我々は動くことはできません]といった内容が書いてあるのだ。
「リョンヘの小僧も、あのハヨンとか言う女も、四獣も、滓のヨンホも全てが気に食わん!」
男は部屋をぐるぐると歩き回り始める。
(そもそもリョンヤンだって軟禁状態にして、脅しながら権威を奪っているようなものだ。あれはなかなかしぶといやつだから、何を起こされるかわからない…)
しかし男のこの反逆は、まだまだ動き出したばかりだ。そのためできるだけ多くの手札を残しておきたい。だから危険だといってすぐさま切り捨てるということは、今のところはしたくないのである。
「ええい仕方がない!今は国内で人手を集めるしか手だてはない。徴兵の令旨(王じきじきの命令のこと)を出す。」
男は苛立ちをぶつけるように声を張り上げた。
「おそれながら…。それでは民からの反感を買う上に、士気も低いのではないでしょうか…。リョンヘ王子は平民には慕われております。国王が崩御されたあと、リョンヤン様が即位された一方、リョンヘ王子が追放された…。そして討伐をするなど、民達は混乱と疑念の目を向けるのでは…。」
手下は身を縮ませるようにしながら、そう男に意見した。男は手下の目の前に立って見下ろす。
「いいや?私たちが令旨を出したとなれば、やはり民達は王の命に従うしかない。普通の戦であれば、勝利の1番の要因はやはり数だ。士気も逃げさえしなければ関係ない。私も元のの力を取り戻したし、民たちを操ることなど造作もない。青龍一匹と雑魚兵士数十人なんて決着は火を見るよりも明らかだ。」
男は笑みを浮かべて再び部屋を歩き回る。次は自信がわいてきたようで、足取りは軽やかだった。
以前から男の感情の起伏が激しいので、手下はどうすれば男が機嫌良くなるのかがわからず、困り果てている。
しかしその苛烈さ故に、誰にも男のことを止められる者はいないし、実際にどのような荒技を使おうとも、やると決めたことは全て成し遂げてきた。
男のやることは突拍子もないことが多いが、その実行力と恐怖により人を押さえつける力が、ここまでのし上げてきたのかもしれない。
「そう言えばあのがさつな男はどうした。」
「ヘウォンとやらのことでしょうか?」
男にまでがさつと言われてしまうヘウォンはなかなかである。しかし男は彼を一目置いていた。何しろこの国では最強の武人だからだ。
「今だ我々に下る意思は見せておりません。」
「ふぅむ…」
男は己の力でヘウォンを操り、無理やり配下に置こうとしたのだが、ヘウォンの精神はあまりにも強靭で、操ることができなかったのだ。
(今まで王族と四獣以外、このようなことはなかった…。これでは王族、もしくは四獣みたいなやつがもう1人いるみたいなものだ。あの男がこちら側につけば、相当な戦力となるだろう…。出来れば我が支配下におきたい…)
男はどこまでも欲深かった。
男はたった今、書状を携えて返ってきた手下に向かって怒鳴り散らした。手下の男は肩をすくめてじっと耐える。
「も、申し訳ありません!しかし今の燐ではリョンヤン様が正真正銘の王であり、リョンヘは逆賊である、と何度説得しても滓の王達は納得しないのです。」
男は気にくわない様子で、手にしていた書状を手下に投げつけた。紙は手下にぶつかったが、かさりと控えめな音を立てて地に落ちた。紙に大して威力もないが、思わず手下は体を竦ませる。主人は腹立たしいと言った様子で、手下は主の醸し出すその険悪な雰囲気にたじたじだった。
(くそ!これで滓がこちら側につけば、青龍相手でも倒せるぐらいの援軍を見込めたのに…!)
一方、男は歯軋りしながらもう一度その書状を拾い上げた。しかし何度読み返しても結果は同じで、[リョンヘ殿が貴殿のもとへ戻っていらしてないのならば、その同盟は有効とはなっておらず、我々は動くことはできません]といった内容が書いてあるのだ。
「リョンヘの小僧も、あのハヨンとか言う女も、四獣も、滓のヨンホも全てが気に食わん!」
男は部屋をぐるぐると歩き回り始める。
(そもそもリョンヤンだって軟禁状態にして、脅しながら権威を奪っているようなものだ。あれはなかなかしぶといやつだから、何を起こされるかわからない…)
しかし男のこの反逆は、まだまだ動き出したばかりだ。そのためできるだけ多くの手札を残しておきたい。だから危険だといってすぐさま切り捨てるということは、今のところはしたくないのである。
「ええい仕方がない!今は国内で人手を集めるしか手だてはない。徴兵の令旨(王じきじきの命令のこと)を出す。」
男は苛立ちをぶつけるように声を張り上げた。
「おそれながら…。それでは民からの反感を買う上に、士気も低いのではないでしょうか…。リョンヘ王子は平民には慕われております。国王が崩御されたあと、リョンヤン様が即位された一方、リョンヘ王子が追放された…。そして討伐をするなど、民達は混乱と疑念の目を向けるのでは…。」
手下は身を縮ませるようにしながら、そう男に意見した。男は手下の目の前に立って見下ろす。
「いいや?私たちが令旨を出したとなれば、やはり民達は王の命に従うしかない。普通の戦であれば、勝利の1番の要因はやはり数だ。士気も逃げさえしなければ関係ない。私も元のの力を取り戻したし、民たちを操ることなど造作もない。青龍一匹と雑魚兵士数十人なんて決着は火を見るよりも明らかだ。」
男は笑みを浮かべて再び部屋を歩き回る。次は自信がわいてきたようで、足取りは軽やかだった。
以前から男の感情の起伏が激しいので、手下はどうすれば男が機嫌良くなるのかがわからず、困り果てている。
しかしその苛烈さ故に、誰にも男のことを止められる者はいないし、実際にどのような荒技を使おうとも、やると決めたことは全て成し遂げてきた。
男のやることは突拍子もないことが多いが、その実行力と恐怖により人を押さえつける力が、ここまでのし上げてきたのかもしれない。
「そう言えばあのがさつな男はどうした。」
「ヘウォンとやらのことでしょうか?」
男にまでがさつと言われてしまうヘウォンはなかなかである。しかし男は彼を一目置いていた。何しろこの国では最強の武人だからだ。
「今だ我々に下る意思は見せておりません。」
「ふぅむ…」
男は己の力でヘウォンを操り、無理やり配下に置こうとしたのだが、ヘウォンの精神はあまりにも強靭で、操ることができなかったのだ。
(今まで王族と四獣以外、このようなことはなかった…。これでは王族、もしくは四獣みたいなやつがもう1人いるみたいなものだ。あの男がこちら側につけば、相当な戦力となるだろう…。出来れば我が支配下におきたい…)
男はどこまでも欲深かった。
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