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異変
不本意な敵
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「リョンヘ王子及び王への反逆者を捕らえよ!抵抗した者たちが命を落としたとしても咎めは無しとする!」
つまり抵抗した者は殺しても構わないと言うことだ。これはきっと新たな王に盾突く者たちがどうなるか、見せしめにも利用されるのだろう。
(私はリョンヤン様にリョンヘ様をお守りするように直々に命を受けた。あの命は確実に心からのものだった…)
その上、ハヨンはリョンヤン王子を主として慕っていた。この方についていきたいと思っていた。そしてリョンヘ王子の考え方を好ましいと思っていた。何より、裏の顔である旅芸人のリョンは友と思っている。リョンヤン王子の命に従い、リョンヘ王子を守りたい。
以前は王族に仕え恩に報いることが夢だったが、もはや今は王子だからというよりもリョンヤン、リョンヘ個人を守りたい、願いに力を貸したいと思うようになっていた。
(こんなにも思いというのは変わるものなんだな…)
ハヨンは心の中で一人わらった。そして剣を鞘からすらりと抜いた。セチャンも同時に剣を抜いている。
もはや平穏に城へ戻ることはできない。
(リョンヤン様、どうかご無事で)
おかしくなってしまった城内に残されたリョンヤンを案じながら、ハヨンは構えた。
そんな時、後ろで大きな衣擦れの音がする。
「お前たち、そんなことをしなくて良い。私一人が捕らえられれば良いことだ。お前たちのような優秀な者を捕らえたり命を落とさせる必要性はない!」
といいながらリョンヘが輿から無理矢理飛び降りる音がする。
「…リョンヘ様。申し訳ありませんが、これは私が決めたことなのです。」
ハヨンは構えた姿勢を崩さぬまま、そう答えた。そのためリョンヘがどのような表情をしているかは知れないが、嫌がっていることは伝わってきた。
「行け!」
城の正門に控えていた指揮官に命じられ、ハヨンたちと敵対することになった一行の一部の兵と、城の兵たちの急襲となった。
「リョンヘ様、危険ですのでお側を離れないようお願いします」
ハヨンはリョンヘの前に立ち、そう言いながら飛んできた矢を凪ぎ払った。そして一呼吸おいて、飛びかかってきた兵士を剣で応戦する。
「できるだけ相手を殺すな!動けなくなるようにだけしておけ!」
「はい!」
セチャンの指示は正しい。これでむやみに城の兵士を犠牲にしてしまうと、この事で確実に逆賊と認定され、全員が処刑される可能性もなくはないからだ。
それにしてもこちらが持っていない飛び道具を相手が持っているのが痛かった。戦っていると時おり矢が飛んできて、注意が逸れてしまう。
幾人か兵をのしたとき、兵士と戦っているリョンヘの姿が目に飛び込んできた。
「リョンヘ様!」
ハヨンが思わず叫ぶと、
「私が原因で皆が戦っているのに、私だけ高見物など耐えられるわけがないだろう?」
とにこやかに笑いながら相手の首に手刀を叩き込む。そう、リョンヘは公式の場では戦用の剣を帯刀できないので、丸腰と言っていい。
しかし辺りには地に伸びてしまっている兵が何人もいる。ハヨンの肝が冷えるのは一瞬で、一気に呆れへと変わった。この桁外れな強さは一体どこで身につけたのだろうか。
そうは言っても、やはりハヨンたちの手勢は少ない。その上、城からは次から次へと兵士が出てきた。そのうち少しずつハヨン達は追い詰められていく。ハヨン、リョンヘ、セチャンと加担していた兵達はいつのまにか周りを取り囲まれ始めていた。
「お前たち…今からでも逃げろ」
「何をおっしゃいます!私はリョンヘ様の側を離れないと決めました。それだけは絶対にいたしません!」
そう答えたときにリョンヘの背に矢が飛んできているのが見えた。
「リョンヘ様!」
ハヨンの体は、考える前にリョンヘの前に飛び出す。矢はハヨンの左腕に刺さった。ずん、と腕に鈍い痛みが襲いかかる。
「ハヨン!!」
リョンヘがハヨンに駆け寄ろうとしたが、手振りで近づくなと伝える。
(今ここで抜いても止血する時間などない。むしろこのままの方が出血は少ないはず。…あとは毒矢で無いことを祈るしかない。)
ハヨンは景色が遠のいていくような感覚を必死に引き止めながら立ち上がった。耳の奥でがんがんと音がする。頭上から降ってくる刃が見えて、歯を食いしばってなぎ払う。片手が自由に動かないため、重心がぶれて姿勢を保つことが難しい。相手をいなす間に、いつの間にか痛みのことを忘れていった。しかし、皆の動きは次の一声で一斉に止まった。
「リョンヘ王子、ご覚悟!」
ある兵士の槍の穂先がリョンヘの首すれすれを掠めた。
(まずい…!!何か手立ては…!)
ハヨンが歯ぎしりしたときに、側の堀から多数の叫び声が聴こえた。叫び声というよりも絶叫に近い。みなの視線が一斉にそちらに向けられた。
つまり抵抗した者は殺しても構わないと言うことだ。これはきっと新たな王に盾突く者たちがどうなるか、見せしめにも利用されるのだろう。
(私はリョンヤン様にリョンヘ様をお守りするように直々に命を受けた。あの命は確実に心からのものだった…)
その上、ハヨンはリョンヤン王子を主として慕っていた。この方についていきたいと思っていた。そしてリョンヘ王子の考え方を好ましいと思っていた。何より、裏の顔である旅芸人のリョンは友と思っている。リョンヤン王子の命に従い、リョンヘ王子を守りたい。
以前は王族に仕え恩に報いることが夢だったが、もはや今は王子だからというよりもリョンヤン、リョンヘ個人を守りたい、願いに力を貸したいと思うようになっていた。
(こんなにも思いというのは変わるものなんだな…)
ハヨンは心の中で一人わらった。そして剣を鞘からすらりと抜いた。セチャンも同時に剣を抜いている。
もはや平穏に城へ戻ることはできない。
(リョンヤン様、どうかご無事で)
おかしくなってしまった城内に残されたリョンヤンを案じながら、ハヨンは構えた。
そんな時、後ろで大きな衣擦れの音がする。
「お前たち、そんなことをしなくて良い。私一人が捕らえられれば良いことだ。お前たちのような優秀な者を捕らえたり命を落とさせる必要性はない!」
といいながらリョンヘが輿から無理矢理飛び降りる音がする。
「…リョンヘ様。申し訳ありませんが、これは私が決めたことなのです。」
ハヨンは構えた姿勢を崩さぬまま、そう答えた。そのためリョンヘがどのような表情をしているかは知れないが、嫌がっていることは伝わってきた。
「行け!」
城の正門に控えていた指揮官に命じられ、ハヨンたちと敵対することになった一行の一部の兵と、城の兵たちの急襲となった。
「リョンヘ様、危険ですのでお側を離れないようお願いします」
ハヨンはリョンヘの前に立ち、そう言いながら飛んできた矢を凪ぎ払った。そして一呼吸おいて、飛びかかってきた兵士を剣で応戦する。
「できるだけ相手を殺すな!動けなくなるようにだけしておけ!」
「はい!」
セチャンの指示は正しい。これでむやみに城の兵士を犠牲にしてしまうと、この事で確実に逆賊と認定され、全員が処刑される可能性もなくはないからだ。
それにしてもこちらが持っていない飛び道具を相手が持っているのが痛かった。戦っていると時おり矢が飛んできて、注意が逸れてしまう。
幾人か兵をのしたとき、兵士と戦っているリョンヘの姿が目に飛び込んできた。
「リョンヘ様!」
ハヨンが思わず叫ぶと、
「私が原因で皆が戦っているのに、私だけ高見物など耐えられるわけがないだろう?」
とにこやかに笑いながら相手の首に手刀を叩き込む。そう、リョンヘは公式の場では戦用の剣を帯刀できないので、丸腰と言っていい。
しかし辺りには地に伸びてしまっている兵が何人もいる。ハヨンの肝が冷えるのは一瞬で、一気に呆れへと変わった。この桁外れな強さは一体どこで身につけたのだろうか。
そうは言っても、やはりハヨンたちの手勢は少ない。その上、城からは次から次へと兵士が出てきた。そのうち少しずつハヨン達は追い詰められていく。ハヨン、リョンヘ、セチャンと加担していた兵達はいつのまにか周りを取り囲まれ始めていた。
「お前たち…今からでも逃げろ」
「何をおっしゃいます!私はリョンヘ様の側を離れないと決めました。それだけは絶対にいたしません!」
そう答えたときにリョンヘの背に矢が飛んできているのが見えた。
「リョンヘ様!」
ハヨンの体は、考える前にリョンヘの前に飛び出す。矢はハヨンの左腕に刺さった。ずん、と腕に鈍い痛みが襲いかかる。
「ハヨン!!」
リョンヘがハヨンに駆け寄ろうとしたが、手振りで近づくなと伝える。
(今ここで抜いても止血する時間などない。むしろこのままの方が出血は少ないはず。…あとは毒矢で無いことを祈るしかない。)
ハヨンは景色が遠のいていくような感覚を必死に引き止めながら立ち上がった。耳の奥でがんがんと音がする。頭上から降ってくる刃が見えて、歯を食いしばってなぎ払う。片手が自由に動かないため、重心がぶれて姿勢を保つことが難しい。相手をいなす間に、いつの間にか痛みのことを忘れていった。しかし、皆の動きは次の一声で一斉に止まった。
「リョンヘ王子、ご覚悟!」
ある兵士の槍の穂先がリョンヘの首すれすれを掠めた。
(まずい…!!何か手立ては…!)
ハヨンが歯ぎしりしたときに、側の堀から多数の叫び声が聴こえた。叫び声というよりも絶叫に近い。みなの視線が一斉にそちらに向けられた。
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